ふれあいvol.66
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 新型コロナウイルス感染症の※パンデミックにより、私たちは外出や営業の自粛といった数々の危機への対応を余儀なくされています。また、今回のコロナ危機により、今後の生活や仕事のあり方は大きく変わると予想されます。 これから迎えるパンデミックの時代を見据え、県が主宰する「やまなし自然首都圏構想研究会」の顧問で、本県を拠点に国内外で活躍されている、多摩大学大学院の田坂広志名誉教授に、山梨の魅力や未来に向けた課題について伺いました。 私は富士山と富士五湖の自然が好きで、40年以上前からたびたび山梨を訪れてきました。現在は、自宅を河口湖周辺に移し、富士山麓の原生林の中で生活しています。コロナ危機以前からテレワークを活用しており、アメリカのオンライン大学の教授も務めているので、講義は自宅から世界中の学生に向け行っています。また、国内外のテレビにもオンラインで出演するなど、この豊かな自然の中にいながら、世界とつながって仕事をしています。講演や大学院の講義で東京に出向く際も、車で80分程度なので全く不便は感じていません。こうした自然の中で生活し、仕事をすることは、健康や精神面においてはもちろん、仕事の能率や創造性という面からも、とても良いものです。また、山梨には温かい人柄の方が多く、これも私にとって、山梨の魅力の一つとなっています。 コロナの勢いは未だ衰えませんが、仮に近い将来、コロナが終息を迎えたとしても、これからも新たなパンデミックが何度もやってくるということを覚悟する必要があります。従って、コロナが終息すれば、コロナ危機以前の生活や仕事のスタイルに戻れるわけではありません。 コロナ危機後は、政治や行政、経済や経営、福祉や医療、文化や教育など、すべての分野において「ニューノーマル」(新常態)への転換を進めなければなりません。ただ、このニューノーマルとは、政府が提唱する「新しい生活様式」などの感染抑制マナーの次元のものではありません。それは、どのようなパンデミックが襲来しても持続可能な新たな社会システムのことですが、それを私は「デュアルモード社会」と呼んでいます。すなわち、自動車にスポーツモードとエコモードがあるように、社会も、経済効率を重視する「経済モード」と健康と安全を最優先する「安全モード」の2つのモードを持ち、平常時は経済モードで運営しながら、緊急時には速やかに混乱なく安全モードに切り替えていける社会システムを構築するという考えです。 例えば、今回、多くの飲食店が窮余の策として行ったテイクアウトや山梨を「自然首都圏」に丨危機の時こそ    変革の絶好機丨東京大学卒業。同大学院修了。工学博士(原子力工学)。米国シンクタンク・バテル記念研究所客員研究員、日本総合研究所取締役を経て、現在、多摩大学大学院名誉教授。全国6,100名の経営者やリーダーが集う田坂塾・塾長。4人のノーベル平和賞受賞者が名誉会員を務める世界賢人会議ブダペストクラブ日本代表。世界経済フォーラム(ダボス会議)Global Agenda Council元メンバー。元内閣官房参与。著書は『目に見えない資本主義』『知性を磨く』『運気を磨く』など国内外で90冊余。多摩大学大学院名誉教授 田坂 広志さんた さかひろ し豊かな自然環境の中から世界とつながるパンデミックにも耐えられる「デュアルモード社会」への転換を※パンデミック:感染症や伝染病が世界的に大流行する状態のこと8

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