ふれあいvol.74
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 7月、東京・銀座で山梨県産のモモが販売されていた。買った人は「環境にいい果物だと聞いたので、農家を応援しようと買いました」と話した。 県がここ数年力を入れている施策の一つが「4パーミル・イニシアチブ」。パーミルとは1000分の1=0.1%農業分野から脱炭素社会の実現を目指す「4パーミル・イニシアチブ」。取り組みの現状をやまなし in depthからダイジェスト版でお届けします。の意味。土の中に年間4パーミル(0.4%)の炭素量を増やすことを目指す、環境に配慮した先進的な農業だ。 南アルプス市の果樹園。ここのブドウから上級のワインがつくられている。このワイナリーを営むのは「ドメーヌヒデ」の渋谷英雄さんだ。 「うちのワインは他とは違った味です」 渋谷さんのつくるワインは、世界有数の国際コンクールで銀賞を受賞するなど世界的に高い評価を受けてきた。これほどまでに高品質のワインをつくれるのには秘密がある。それは「循環型農業」によって生産される「ナチュラルワイン」であるということだ。 「化学農薬や化学肥料などを使用せず、純粋に植物由来の『ボタニカル循環型農業』をしています」 それを支えているのが「炭」である。 「果樹園で切られた枝を燃焼させてできた炭とブドウの皮を混ぜて肥料にしています。その炭があるために、化学農薬などを使わずに、自分の畑でできたものだけを使って育てる循環型農業ができます。こうしてできた『ナチュラルワイン』だからこそ、独自の味をつくることができるんです」 実はこの「炭」こそが、山梨県の「4パーミル・イニシアチブ」の肝になっている。 県農業技術課の長坂克彦・新技術推進監はこう語る。 「枝をたき火のように燃やすとCO2が大気中に放出されてしまいます。しかし、蒸し焼き(炭化)にすると、酸素などは大気中に放出される一方で、多くのCO2を炭に閉じ込めることができます。それによって地球温暖化防止につながります」 「4パーミル・イニシアチブ」は、地中に貯留する炭素をわずか0.4%増やすだけで気候変動問題を解決することができるという視点に基づく活動だ。CO2の削減には、いかに石炭火力発電を減らし、再生可能エネルギーにシナチュラルワインの肝は「炭」気候変動問題の解決策地球環境にやさしくて「複雑な味」のワインができた!炭素を土に埋め込む「4パーミル・イニシアチブ」のトップランナー・山梨の現場を行く 207月に開催されたモモフェアの様子ブドウ畑に立つ渋谷さん県農政部の農業技術課は農家への普及を進め、販売・輸出支援課は農作物の販路開拓などを進めている。左から、塩野正和・販売輸出支援課主任、五味亜矢子・同課課長補佐、長坂克彦・農業技術課新技術推進監、國友義博・同課主幹やまなし in depthフルバージョンはこちらから

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