時は地域猫活動や飼い主のいない猫の不妊・去勢手術への理解も今ほど進んでいませんでしたから。この子猫たちをどうにかしないと、と始まったのがこの事業です」 20年11月、ミルクボランティアに登録した景子さん。60代半ばの女性で、子どもはすでに独立し、夫と暮らしている。きっかけは、21年間も飼っていた猫が死んでしまったことだったという。 「何かしないと自分の気持ちがどうにかなってしまいそうで。そんな時、市の広報誌でこの取り組みを知りました。今から猫を飼うのはもう年齢的にも難しい、でもミルクボランティアならと思って申し込みました」救ってあげた命が元気に育ってくれれば、との想いで続けています」 ミルクボランティアにとって、県の支援は十分なのだろうか。 「県の職員の方々は、保護された犬や猫に優しい笑顔を見せて、一生懸命向き合っています。それを見ると『長く可愛がってくれそうな飼い主さんに渡るまで、私たちに任せて』という気持ちになります。哺乳瓶など必要な物も支給してくれて、持ち出しになることはまったくありません。ホスピタリティはとても高いと感じます」 事業が始まって2年が過ぎた。しかしまだまだ課題が残っている。 センターの浅山所長は「数が圧倒的に足りていません。コロナ禍もあって、増えていないのが現状です。ミルクボランティアさんの頑張りをよく知ってもらい、もっと多くの方々に参加してもらいたい。」と話す一方で「繁殖自体を減らし、預ける必要のある猫自体を減らすことも重要です。ただ可愛いからと野良猫に餌をあげるだけでは無責任な行動だと理解していただけるとありがたいです。」とも話す。 池永さんは「致死処分せずに救える命が増えたことは私たちセンターの職員にとっても心の負担軽減になりました。ここに収容されたときには弱々しかった子猫が、ボランティアさんから戻ってくると成長していて驚き、また新しい飼い主に渡るときにはうれしい気持ちでいっぱいです。将来的には致死処分を限りなくゼロに近づけたいと思います。」と話した。 山梨県が全国をリードして始めた取り組みで、21年度の子猫の致死処分数は56匹と、19年度の約4分の1に減少した。引き取った猫を譲渡した割合も、1%と大幅に上昇した。 譲渡した割合の伸び幅は、全国トップレベルに達している。可愛い盛りに預かる「適度な距離感」ミルクボランティア事業の課題 景子さんは、一昨年16匹、昨年は20匹の子猫を育てた。1匹当たり平均して1カ月ほど預かることになる。 「何も分からない猫に、夜中にまで起きてミルクをあげたりするのはなかなかしんどいです。でも、放っておいたら生きていられない子たちですから。いちばん可愛くてやりがいを感じる期間に預かって、ある程度育ったらまた返す。その距離感が私にはちょうどいいです」 ミーミーと鳴いていた子猫が、よちよち歩きを始めて、初めて目が合ったときには「きゃああー」と思わず歓喜の声を上げてしまう。 「致死処分されるために子猫たちが生まれてくるのはあまりにかわいそう。21「救ってあげた命が元気に育ってくれれば」と語る景子さん動物愛護指導センターの職員。中央が浅山光一所長、その右が池永由梨子リーダー景子さんは育てた子猫の画像を大切に保管していた19年度の48・7%から21年度の85・
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