ふれあいvol81
19/24

炒め菜にしてビジネス化担当したのは家族内の殺人事件。背景には障害、孤立などの要因が複雑に絡み合っていた。「罪は許されない。でも、人間はみんなひとりじゃない。被告に相談相手がいれば殺害された人の命を救えたかもしれない」人と人をつなげたい。そう考えた先に、農業があった。「昔、親の手伝いをしているとき、本当に楽しかった。畑にいると、生きている感覚を味わえる。農業をしたいという思いが止められなくなりました。農業は人が集まってつながり合う場にもなるから」実家近くのブドウ農家が栽培をやめると聞き、思い立った。栽培方法を教わって毎日朝から畑に出た。農繁期の夜は、ヘッドライトを着けて農作業をした。福祉事業所で働く人やひきこもりがちな人と一緒に農作業をした。みんなの笑顔や懸命な姿が、山田さんの生きる栄養になった。2022年9月、古長禅寺(南        ー     アルプス市)の住職から、山梨の伝統野菜「長禅寺菜」の種が途絶えてしまうので一緒に普及活動をしませんかと話があった。長禅寺は信玄公が定めた「甲府五山」の一つだが、江戸時代にはすっかり荒廃。そこで、カブの仲間である野菜・長禅寺菜の収益で寺の再興を果たした。その長禅寺菜が絶滅の危機にある。山田さんは早速、福祉事業所の人に声を掛けて栽培を始めた。長禅寺菜はそれまで漬物用の野菜として流通してきたが、知り合いから「ペペロンチーノにするとおいしいよ」と聞いて「炒め菜」として使えないかと考え、おやきなどを試した。評判は上々だった。漬菜の野沢菜(5キロ=約300円)と同程度だった長禅寺菜の価格は、250グラム=150円と10倍以上に。炒め菜にしたことでビジネスとして成り立つようになった。県とセブン活性化や災害時の対応などについて「包括連携協定」を結んでいる。セブン側は山梨の地産地消やオリイレブンは地域のジナル商品の開発を県農政部に相談し、山田さんとつながった。試行錯誤を繰り返した商品開発もようやくめどが立ち、11月ごろから長禅寺菜が使われた惣菜が県内の全店舗に並ぶ予定だ。山田さんが営む「きらめき久美ファーム」は夫の電気工事会社の農業事業部だ。2023年2月に事務所兼加工場をつくった。「いろいろな人とつながれば何かが起きる。これからも前を見て止まらずに進みます」今後7年間のうちに、きらめき久美ファームを農業法人にしたいと考えている。長禅寺菜は栽培期間が2カ月と短い。太く長い葉が特徴だ(写真は山田さん提供、下の写真も)山梨学院幼稚園の子どもたちと一緒に長禅寺菜を栽培している19

元のページ  ../index.html#19

このブックを見る