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更新日:2024年12月26日

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清里をポップカルチャーの発信地に!デザイナー中野シロウさんの挑戦

デザイナーの中野シロウさんが山梨県北杜市・清里に移住して約3年半。この町に惚れこみ、ミュージアムホテルやアンティーク家具店、古着店などをオープンさせながら、町の再生に取り組んでいる。クリエイターにとっての清里の魅力を聞いた。

セット感漂う駅前で感じた再生の可能性

数多くのキャラクターデザインを手がけてきた中野シロウさんが、趣味のドライブがてら清里に立ち寄ったのは、2020年の冬のことだった。

「雪が降りそうなくらい寒い日で。空気が澄んでいて気持ちがよかったですね。当時、駅前にはコンビニもなくて、店はすべて閉まっていました。どうしてこんなに完璧に閉まっているんだろうって。でも建物はまるで映画のセットみたいでギャップが大きかった。ここなら何かおもしろいことができるんじゃないかなと思ったんです」

ここに暮らしてみたい――そう思った中野さんは、すぐに物件を探し始めた。しかし表向きには物件が売っていない。なんとか不動産屋さん経由で探してもらい、1軒購入すると、そこからは次々と物件が見つかり、駅前に7軒を購入。さらに廃屋のようになっていた現代美術館も買い取った。

デザイナー・中野シロウさん。日清食品チキンラーメンのキャラクター「ひよこちゃん」や山梨県富士吉田市出身のプロレスラー、武藤敬司さんモチーフのクマのキャラクター「MB8」をはじめ、多数のキャラクターデザインを手がける

美術館はミュージアムホテルとして今年の12月にオープン。中野さんの作品やサンプル資料、趣味のコレクションなど15万点の所有品のうち、約3万点が飾られている。もともと自分の部屋づくりのつもりだったが、友人や知人に「泊まりたい」と言われることも多く、1日1組限定の完全貸切型ホテルとして7年間限定で運営することに。おもにインバウンド需要を見込んでおり、海外のデザイナーたちの来訪も期待している。また並行して駅前のビルもリフォームし、アンティーク家具店やヴィンテージ古着店などを出店した。

町の再生に取り組んだのは、今回が初めてだという。
「僕はデザイナーだから、町の看板とか店の外装とか、デザインで貢献できるかなと。ずっと自分の住む町に関わってみたいという想いはあったんですよ。でも東京は個人でやれる規模や金額じゃないし、そもそも再生が必要な町があまりない。でもここならできそうだなと」

駅前のアンティーク家具店は元喫茶店。「アンティーク家具屋や古着屋がある町は、余裕があっていいなあと思うんです」と中野さん

クリエイターを魅了する清里時間

都内に保有していたビルも売却し、清里に完全移住するほどこの地に魅力を感じている中野さん。「自然は好き」と言いながらも、「自然だけならどこにでもある」と続ける。清里に感じた魅力は、別のところにあるそうだ。

その一つが、数千人という人口規模だ。
「別荘もあるけど、地元の人がほとんどなんですよ。知り合いはいなかったけど、いろんな人たちとすぐに仲良くなりましたね。最初は物件をたくさん買うから怪しまれたみたいだけど(笑)。清里はおしゃべり好きな人が多くて、サービス精神が旺盛。流行っていた時期の名残らしいです。食堂に行ったら隣におばちゃんが座って、ずっと話しかけてきてくれたこともありました」

土地の広さも大きな魅力となっている。「数百坪の敷地の購入を現実的に検討できるのが清里ですね。家の中で走り回れるなんて都心では考えられません」と笑顔で語る。

好きな車のドライブも自然の中では爽快。渋滞もなく快適だという。マイナスにとらえられがちな寒ささえ、中野さんのフィルターを通すと土地の魅力になる。

豊かな自然が広がる清里を好きな車でドライブするのも爽快と中野さん

「清里の冬はマイナス10度くらいまで下がる。信じられないくらい寒いんですよ。暖炉の薪やストーブの灯油を買って備えるんですけど、それも楽しいんですよね。東京で寒さに備える経験なんてしてこなかったですから。空なんて見る気がなくても見えるし、シカやウサギを見ることもあります。体感がはっきり濃く、知らないことを新たに知る機会も多くて刺激的ですね」

企業との仕事は都内にいたときと変わらず続けているが、生活のリズムは大きく変化したという。
「不思議なんですけど、清里にいると、東京より1日が2時間くらい長く感じるんですよ。もうお昼だろうと時計を見てもまだ11時。いいですよね。東京にいるときは日々予定を詰め込んでいて忙しかったし、毎日のように夕方から会食があった。清里に来てそれがなくなり、時間の余裕が生まれました」

変化を楽しめるのは中野さんの持ち前の気質もあるが、「物事のとらえ方次第」だと話す。
「東京に住んでいる人は、そこしかないと思い込んでいるだけかもしれませんよね。もちろん、学校がないとかいろいろありますよ。でもスクールバスで通学するなんてアメリカみたいですよね。一度暮らしてみれば、こっちのほうが全然いいと思う人も多いと思いますよ。生活コストも安いしね」

どこまでも空が広いのが清里の魅力。東京では考えられない寒さや冬支度もこの土地ならでは

クリエイターの力で描く清里の新しい未来

「清里は、清泉寮や清里テラス、萌木の村など人気のスポットがたくさんあり、スポット単位ではすでにかなり盛り上がっています。駅前だけが寂しかったんですよね。だから駅前を整えれば、かなり完成形に近づくと思っています。この3年位でテナントを誘致するなどして、駅前にどんどん店を開けていきたいですね」

清里は「デザイン的な町」だと中野さんは言う。
「駅前のセットみたいな建物をバブルの遺産だと好まない人もいるけど、僕は好きですね。それに富士山、南アルプス、八ヶ岳など自然の景観自体もデザイン。リゾート地ですが、駅からのアクセスも便利。電車の本数は少ないですが、駅から歩けるのも気に入っています」

清里の未来について、中野さんは明確なビジョンを持っている。目指すのは、ポップカルチャーやデザインの発信地だ。
「バブル期のように単純に観光客を呼ぶのではなくて、しっかりしたコンテンツや知的財産をつくって持続可能な町にしたいと思っています」

打ち合わせ風景。ミュージアムホテルのルームウエアのサンプルを確認中。宿泊者にはプレゼントするそう

ちょっと意外だが年齢のことも気にしているそうだ。

「70歳になると、体はきっと無理がきかなくなる。今、57歳だからもう13年ぐらいしかなくて。そのうち4年ぐらいは寝てるでしょう。本当に時間ないですよ。その間に何ができるかですよね」
その言葉からは、残された時間で最大限のことをしたいという強い意志も感じられた。

「今はまだ、ビジネスで必ず儲けるんだ、という人に清里は向いていないと思うんですよ。でも完成されていない状態だからこそ、楽しめる部分が多いと思いますよ。すでに動き始めているプロジェクトもあるし、クリエイターが力を発揮できることもたくさんあるはず。本当に可能性がある町だし、その可能性を一緒に育てていける仲間を待っています」

2024年12月オープンのナカノミュージアムホテルにて。460平方メートルを超える空間で作品に没頭できる

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