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ページID:106907更新日:2022年12月1日
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令和4年12月定例県議会の開会に当たり、提出いたしました案件のうち、主なるものにつきまして、その概要を御説明申し上げますとともに、私の所信の一端を申し述べ、議員各位並びに県民の皆様の御理解と御協力をお願い申し上げたいと存じます。
3年半ぶりに開催された信玄公祭りは、はじめての秋の実施にもかかわらず、過去最多となる17万8000人の方にお越しいただきました。
会場に集まった多くの皆様の笑顔と、街中の賑わいは、まさにコロナ後に向けた反転攻勢を象徴するものとなりました。
単にコロナ前の姿に戻るのではなく、仮装パレードなどこれまでに無かった要素を取り入れ、多様性にあふれる新たな祭りの姿をお示しできたと考えています。
祭りの最中に実施されたヴァンフォーレ甲府の優勝パレードでは、沿道が多くの人で埋めつくされ、歓喜と熱気につつまれました。
サッカー天皇杯において、J1の5チームを撃破した末につかんだ優勝であり、県民の皆様に感動と勇気を届けてくれた選手や関係者の皆様に、心からのお祝いと感謝を申し上げます。
先ず、当面する県政の課題について、御説明いたします。
はじめに、新型コロナウイルス感染症対策について申し上げます。
本県の感染者は10月下旬から増加を続け、一日1000人を超える日も相次いで発生しており、第八波を迎えています。
今年の冬は、新型コロナとインフルエンザの同時流行が懸念されており、一日当たり5000人近い発熱患者が発生する可能性があります。
これは、夏の第七波を大きく上回る規模であり、発熱外来や救急医療がひっ迫し、医療機関の受診がままならなくなる恐れがあることから、医療提供体制の更なる増強を進めております。
発熱患者の診療・検査を行う医療機関については、現在、約350箇所を確保しており、更なる増加や診療時間の延長を働きかけて参ります。
通常の体制では手薄になる夜間・休日の対策として、山梨大学医学部附属病院に、夜間診療する「臨時発熱外来」を開設するとともに、深夜帯や休日にも対応できる「オンライン診療センター」を設置いたしました。
また、年末年始においても、医療提供体制を確保できるよう、開設する医療機関に一日最大50万円、薬局に最大6万円を助成することとしております。
県としては、診療能力を可能な限り拡充するため最大限努力いたしますが、それでも医療がひっ迫する場合には、より受診を必要とする方に、限りある資源を重点的に振り向けなければなりません。
このため、重症化リスクの低い方は、先ずは検査キットによるセルフ検査を行っていただくこととし、県民の皆様への協力を呼び掛けて参ります。
必要な方が必要な医療を受けられる体制は、現場の医療従事者の皆様方の支えがあって、はじめて成り立つものです。
最前線で懸命に診療に当たっている医師や看護師からは、終わりの見えない感染拡大が続き、疲労困憊の状態にあるとの切実な声があがっており、県医師会からも支援の要望をいただいたところです。
そこで、医療従事者の皆様がモチベーションを保ったまま、もうひと踏ん張り御力添えをいただけるよう、新型コロナ医療に携わる医療機関に対し、臨時の応援金を支給することと致します。
診療所には最大60万円、病院には100万円、コロナ病床一床当たり5万円を上乗せして支給し、医療従事者への一時金の支給や、職場環境の改善に御活用いただきたいと考えております。
次に、原油価格・物価高騰対策について申し上げます。
10月の甲府市の消費者物価指数は、生鮮食品を除く総合指数で、昨年から4.3パーセント上昇しました。
物価高騰の影響は長期化していることから、更なる対策が必要であると考え、国の交付金を活用し、生活者・事業者双方に追加的な支援策を講じて参ります。
はじめに、最も緊急性の高い「低所得世帯への支援」について申し上げます。
現在、食料品や光熱費が特に高騰していることから、これらの影響を受けやすい所得の低い方々に対する支援が必要であると考えております。
6月補正予算において、本県独自の給付金制度を創設したところですが、影響が長期化していることを踏まえ、対象や金額を見直した上で、再度給付金を支給いたします。
先般、国において「住民税非課税世帯」に対する給付金が創設されたことから、県としては、これに準じて所得の低い「均等割のみ課税世帯」を対象に、食料品・光熱費の値上がり半年分に相当する3万円を支給して参ります。
日々の生活が苦しい方々に可能な限り早くお届けできるよう、市町村からではなく、県が直接支給を行うこととし、来年1月末の支給開始を目指します。
ここで、物価高騰対策に対する本県の基本的な考え方を改めて御説明いたします。
物価上昇は出口が見えない状況ですが、この先も国の支援が続く保証はどこにもありません。
価格差補塡による支援は、一時的な効果はあるとしても、財源に限りがあるため、いずれは止めざるを得なくなり、支援が切れた後、極めて厳しい状況に置かれることは明らかであります。
そうではなく、中長期的に効果が続く対策を、今のうちに講じ、体質強化を図るべきと考えます。
こうした基本理念のもと、一般の家庭や事業者への支援策を予算に計上しております。
先ず、生活者支援の一つである「家庭のエネルギーコスト削減対策」について申し上げます。
国において、来年1月から9月分までの電気・ガス料金の負担軽減策が講じられる予定ですが、中長期的な視点で、家庭におけるエネルギー消費量を減らすとともに、発電量を増やす取り組みが有効です。
このため、一定の省エネ基準を満たすエアコン・冷蔵庫・ガス温水器・LED照明機器を購入した方に、キャッシュレスポイントや商品券を付与することにより、家庭の省エネ化を進めます。
また、家庭における太陽光パネル・蓄電池の導入に対し、新たに助成制度を創設することにより、自家発電や自家消費を進めて参ります。
続いて「事業者への支援」について御説明いたします。
物価高騰に対応するためには、価格転嫁を円滑に進めつつ、それを十分にカバーする賃上げをしっかり実現することが重要です。
一方で、県内企業のほとんどが中小企業であり、先行きが見通せない中で賃上げを行うのは容易ではありません。
このため、一定程度の賃上げをした中小企業を対象として、人材育成や設備投資など生産性向上に資する取り組みに助成し、賃金アップに向けた環境整備を進めて参ります。
国も同様の助成制度を設けていますが、この対象となる場合は、補助率を10分の10まで引き上げるとともに、国ではカバーしていない企業にも対象を拡大することで、取り組みを加速させます。
DX研修に対しては、別枠で30万円、補助率10分の10のメニューを設け、強力に推進するとともに、社会保険労務士による申請のサポートを行い、多くの事業者の活用を促して参ります。
また、業種を限定しない支援策として、9月補正予算において省エネ・再エネ設備の導入に向けた助成金を計上したところですが、事業期間を延長するとともに、予算額を大幅に拡充いたします。
LEDや高効率の空調など省エネルギー設備の導入に300万円、太陽光パネルなど再生可能エネルギー発電設備の導入に600万円を上限として補助する制度であり、先月14日の申請開始から、既に400件を超える申請をいただきました。
今般、国の交付金の繰り越しが認められる見通しとなったことから、設置完了が来年度となる取り組みにも活用可能とし、これとあわせて前回を超える17億円の予算を追加で確保いたします。
農業・水産業に対しても新たな支援策を講じます。
持続可能な農業・水産業を実現するためには、生産コストの削減や生産性の向上を図ることにより、原材料価格の急激な高騰にも対応できる経営体質に変えていく必要があります。
このため、燃油や飼料、資材等の価格の高騰により、特に経営が苦しい施設園芸農家や水産養殖業者に対して、コスト削減等に必要な機器や資材の導入を後押しする助成制度を創設いたします。
畜産農家に対しては、既に設備整備に対する助成制度を設けておりますが、更なる活用が見込まれることから予算の増額を行うことと致します。
次に、スタートアップの支援について申し上げます。
革新的な技術やビジネスモデルにより急成長を遂げていく「スタートアップ」は、経済発展に加え、地域全体を活性化させる大きな可能性を秘めています。
スタートアップが県内企業とタッグを組み、新たな製品やサービスを生み出すことができれば、本県産業の高付加価値化にもつながります。
国では、今週はじめに育成5箇年計画を決定したところであり、5年で10倍増という大規模なスタートアップの創出を目指しています。
現在、多くの自治体が誘致を狙っている状況であり、この競争に打ち勝つためには、他の地域に先んじて、スタートアップの創出や誘致・定着に向けた支援環境を整備する必要があります。
このため、スタートアップの活動をワンストップでサポートする「支援拠点」の整備を進めることとし、必要な機能や設備などについて調査を実施いたします。
県立青少年センター本館などの既存施設の活用の可能性も含め、ハード・ソフト両面から拠点施設の在り方を検討して参ります。
次に、提出案件の内容につきまして御説明申し上げます。
今回提出いたしました案件は、条例案8件、予算案5件、その他の案件32件となっております。
先ず、条例案のうち、山梨県犯罪被害者等支援条例の制定についてです。
犯罪被害の形態や被害者が直面している状況は多岐にわたることから、それぞれに寄り添ったきめ細やかな支援が必要です。
このため、犯罪被害者やその御家族を社会全体で支え、誰もが安全に安心して暮らすことができる社会の実現を目指し、条例を制定いたします。
支援に関する基本理念や施策の基本的な事項などを定め、被害者等への支援を総合的かつ計画的に推進して参ります。
次に、県職員等の給与に係る条例の改正についてです。
県職員、学校職員並びに警察職員に係る給与につきましては、去る10月18日、人事委員会から給料月額及び期末・勤勉手当の引き上げを内容とする勧告がありました。
これを踏まえ、勧告に沿った対応を行うこととし、必要な条例改正案を提出したところであります。
また、特別職等につきましても、一般職の給与改定等に鑑み、必要な措置を講ずることと致します。
次に、予算案のうち、新型コロナウイルス感染症対策及び物価高騰対策については、既に御説明したとおりですので、その他の主なるものにつきまして申し上げます。
昨年7月に静岡県熱海市で発生した土石流災害を受け、指定区域内における盛土などを規制する「宅地造成及び特定盛土等規制法」が成立し、来年5月までに施行されます。
県として規制区域を早期に指定する必要があることから、盛土などに伴い崖崩れや土砂流出の恐れがある土地について、地形や地質などを調査するための経費を計上しております。
このほか、福祉プラザ内に開設する介護福祉総合支援センターの整備に要する経費、インバウンド観光復活に向けたプロモーション活動の実施に要する経費などを計上しております。
以上の内容をもって編成しました結果、一般会計の補正額は、73億円余、既定予算と合わせますと6146億円余となります。
なお、低所得世帯向けの緊急生活支援金及び医療従事者支援のための応援金の支給に要する予算8億9000万円余については、一日も早く対象者にお届けする必要があることから、速やかな御審議・御議決をお願い申し上げる次第です。
その他の案件につきましては、いずれも、その末尾に提案理由を付記しておりますので、それによりまして御了承をお願いいたします。
なにとぞ、よろしく御審議の上、御議決あらんことをお願い申し上げます。
さて、私の任期も残すところ2箇月余となりました。
4年前、私は、「停滞から前進へ」そして「山梨から日本の未来を切り拓く」とお約束し、多くの県民の皆様の御支持をいただいて、県政執行の重責を担うこととなりました。
停滞している山梨を変革し、もっと豊かにしたい。
その豊かさを、県民の皆様にくまなくお届けしたい。
このような思いを実現すべく、総合計画では、本県の目指すべき姿として、「県民一人ひとりが豊かさを実感できるやまなし」を掲げ、全身全霊で県政運営に当たって参りました。
「4年」という任期の中で、山梨の発展に向けて種をまき、芽を育てるのみならず、可能な限り具体的な成果を上げ、県民の皆様に還元すること。
それこそが、私への信任にお応えする道であると考え、行動に移して参りました。
私としては、県議会や県民の皆様の御協力をいただき、県政の各分野において、目に見える形で結果を出すことができたと考えております。
就任後すぐに着手し、実現したのが、中部横断自動車道の県費負担の大幅削減であります。
厳しい財政状況にあって160億円を超える貴重な財源を確保できただけでなく、県が自ら知恵を絞り、創意工夫で価値を生み出すという挑戦の第一歩となりました。
以後、自然災害や感染症の発生といった数々の試練に見舞われながらも、「明日の山梨」を構築する責務を片時も忘れることなく、逆風にあっても常に前傾姿勢を保ち、山梨を前へと進めて参りました。
先ず、第一に、「強靱化」の進展について申し上げます。
未曾有の危機たる新型コロナウイルス感染症から、県民の皆様の生命をお守りする。
この究極の行政課題に対し、ほぼゼロからスタートし、手探り状態で体制を整え、対策を打ち出して参りました。
昨年度からは、感染症対策の司令塔として山梨版CDCを設立し、先手対応・事前主義のもと取り組みを進めております。
必要とする方が必要な医療を受けられる体制を確保すること。
これは、感染が急拡大する状況にあっても、守り抜いてきた本県の基本方針です。
検査能力の拡充、外来診療の受け皿拡大、病床や宿泊療養施設の確保、そして自宅療養で健康観察を行う医師・看護師の確保など、これまで地道な取り組みを重ねて参りました。
また、ワクチン接種を加速させるため、接種体制の確保や積極的な情報発信に努めて参りました。
様々厳しい御意見を頂戴しましたが、ウイルスの脅威から県民の皆様を守り、医療提供体制を守り、ひいては社会を守るため、ワクチン接種は極めて重要だと考え、全力を注いで参りました。
こうした取り組みの結果、本県の人口当たりの感染者数は、大都市圏に隣接するにもかかわらず、全国でも低い水準に抑えられてきました。
感染拡大防止と経済活動の両立を図る。
この基本理念を実現すべく創設したのが「グリーン・ゾーン認証制度」です。
本県発のグリーン・ゾーン認証制度は、今や、第三者認証制度として全国に普及し、国民の安全・安心と経済活動の継続に寄与しています。
また、県外の方々にも「安心・信頼の山梨」という評価が定着したことで、修学旅行先の人気ランキングで全国2位に躍進するなど、県内経済にも大きな波及効果をもたらしました。
ここ山梨においては、ウイルスの脅威に屈することなく、命と経済が両立し、感染症に強靱な社会、すなわち「超感染症社会」への歩みが着実に進んでいます。
この歩みを止めることなく、むしろ更に加速させていきたいと考えております。
これまでのコロナ危機への対応を振り返る中で、改めて、私は、県民の皆様、県庁職員、そして県議会の皆様に感謝の念を申し上げたいと思います。
今回のコロナ危機はまさに、誰もが経験を有しておらず、また、予測もつかない「非常時」そのものでありました。
この非常時においては、先ず、指揮を執るべき者が先頭に立ち、リーダーシップという覚悟と責任をゆるがせにしないことはもとより、これに対する各位の信頼と協力、そして司司の貢献があってこそ、はじめて戦い抜くことが可能となるところ、本県におきましては、まさにこの社会的役割分担が大いに威力を発揮したところであります。
未知のウイルスと人類との戦いの中で、リーダーシップという責任を果たすべき者が操舵を行わずして、針路は定まるのでしょうか。
先頭に立つべき役割を担う者が、まさに先頭に立って一身にリスクを引き受け、満身に矢を受ける覚悟を示さずして、組織や社会が動くのでしょうか。
県民を守り抜けるのでしょうか。
行政が人の手によるものである以上、「修正すべきは迅速に」。
謙虚な行政運営にも努め、ここ県議会の皆様からの御提案や御要請にも、スピード感をもって応えて参りました。
県民の皆様、県庁職員という仲間、県議会という同志、それぞれの声、そしてそれぞれの役割を踏まえた「協働の一期目」でした。
全員協働だからこそ、コロナ危機という未経験の大海をここまで操舵することが可能となりました。
振り返って、改めまして、心からの感謝を申し述べる次第です。
感染症の災禍とともに、本県の脆弱な部分を浮き彫りにしたのが、就任初年度に襲来した2つの大型台風でありました。
令和元年の台風19号では、道路と鉄道が同時に被災し、東京方面との交通が寸断されましたが、この苦い経験を踏まえ、国や沿線自治体、関係機関とともに、「交通強靱化プロジェクト」を立ち上げました。
このプロジェクトにより、各機関が連携して交通途絶の防止や早期復旧に向けた対策に取り組み、雨量による事前通行規制の撤廃など交通ネットワークの強靱化が進みつつあります。
また、台風15号により発生した千葉県の大規模停電を契機に、「電力供給体制強靱化戦略」を策定し、停電の原因除去のための樹木の事前伐採などに取り組んできたほか、東京電力の御理解の下、予防停電の負担の本県への偏りを是正することができました。
富士山噴火対策におきましては、庁内に専門組織として火山防災対策室を設置するとともに、東京大学・神奈川県との協定や、国の防災研究機関との協定を締結し、よりリアルで実効性の高い対策とすべく、観測体制の強化や避難体制の構築を進めております。
また、大規模噴火時の超広域的な避難体制の確保も視野に、私が発起人となって、活火山を有する23都道県全てが参加する「火山防災強化推進都道県連盟」を設立し、国への要望活動を活発に行っております。
このほか、全国初となる太陽光発電施設の適正管理のための条例制定や、中部横断自動車道をはじめとした広域道路ネットワークの整備など、安全・安心な暮らし、強くしなやかな県土づくりに向けた施策を幅広く展開し、県民の皆様の御期待に応えて参りました。
第二に、「高付加価値化」の進展について申し上げます。
県民の皆様にお届けしたい「豊かさ」の源泉となるのは、山梨が新たに生み出す「付加価値」に他なりません。
県内の産業や地域資源の可能性を掘り起こし、磨き上げ、新たな価値として国内外に提供する。
これにより、高いレベルで、かつ長期的・安定的に山梨に富がもたらされる。
このような好循環を生み出す構造へと転換することを目指して参りました。
本県の主力産業である機械電子産業におきましては、メディカル・デバイス・コリドー構想の下、専門の企業支援体制を構築し、あわせて静岡県との連携強化などビジネス環境の充実を図った結果、医療機器関連分野に新たに参入する企業が増え、生産額も大幅に増加しました。
また、水素・燃料電池分野では、国内トップクラスの研究開発拠点の集積を背景に、やまなしモデルP2Gシステムの技術開発とその県内外への展開が進みつつあり、このような本県の優位性を生かした関連産業への参入も増加しております。
こうした新たな成長産業の集積の試みは、20年、30年先までの安定成長を確保するための布石であり、若い世代に将来への希望をもたらし、人口減少の問題を解決する鍵ともなり得るものです。
農業に目を転じますと、昨年の農業生産額は27年ぶりに1100億円を超え、中でも果実の生産額は、シャインマスカットや桃が好調だったことから、過去最高となりました。
また、県産果実の輸出額も飛躍的に伸びており、昨年は17億円を上回り、こちらも過去最高となりました。
農業の成長産業化を足元からしっかり支えるため、農家が直面する経営リスクにもきめ細かく目を配り、必要な対処を迅速に行って参りました。
桃産地に深刻な被害をもたらした「せん孔細菌病」につきましては、関係市町やJAと連携して集中的な防除に対する支援を行った結果、発生から3年弱という短い期間で終息させることができました。
また、相次ぐ果実の盗難被害に対しては、直ちにパトロールの強化や防犯カメラ設置などに対する補助制度を創設し、被害を大幅に抑制することができました。
こうした個別の分野の取り組みに加えて、高付加価値化に欠かせないのが「ブランド・エクイティ」、すなわち山梨という地域全体が保有する「ブランドの資産価値」を増大させることであります。
このため、「地域プロモーション戦略」を策定し、「上質なやまなし」の訴求と「高品質な産品」の訴求の相乗効果によってブランド価値の向上を実現する戦略を打ち立て、統一的な展開に取り組んで参りました。
このほか、観光の高付加価値化や、「やまなしスポーツエンジン」を核としたスポーツの成長産業化、実証実験サポートによるテストベッドの聖地化に向けた取り組みなどを進めて参りました。
山梨への新たな人の流れをつくり、人口減少という国全体の不可避なトレンドの下にあってもなお、活力を失うことなく高い付加価値を創造し続ける社会を目指し、引き続き歩みを進めて参ります。
第三に、「社会の基礎条件の充実」について申し上げます。
困窮を見逃さず、弱者を生み出さない。
その先に、誰一人取り残さず、ともに幸せと豊かさを享受する社会をつくる。
そのための条件整備を県政における基本的な使命と考え、取り組んで参りました。
私が最重要施策の一つと位置付け、取り組んで参りましたのが、少人数教育の推進であります。
山梨の宝とも言うべき子どもたちの可能性を、一つ残らず開花させたい。
ここ山梨においては、いかなる家庭環境の子どもであっても、希望を失わず夢を掲げて学び続けられるような公教育を実践したい。
こうした思いから、全国で初めて公立の小学校1年生・2年生に25人学級を導入いたしました。
一人ひとりの児童に丁寧に向き合い、その能力や個性に寄り添ったきめ細かな教育を提供することが可能になりつつあり、学校現場からも、授業で子どもたちの発言が増えている、教員の負担が軽減されているといった好意的な声が数多く届いております。
この先にある小学校3年生以降の少人数教育の方向性については、学識経験者や学校関係者からなる検討委員会において議論が進められています。
私としては、来年度、小学校3年生にも、国の基準を上回る少人数学級を導入したいと考えておりますが、今月末にも取りまとめられる最終報告書の内容や、財源確保の状況などを踏まえ、引き続き検討を進めて参ります。
また、子育てしやすさ日本一の実現に向けては、子育て支援局を設置して全国最先端の子育て支援策を展開して参りました。
この6月には「やまなし保育士・保育所支援センター」を設置し、保育人材と保育現場をつなぐ取り組みを強化するなど、時期を問わず希望する保育所へ入所できる「新たな姿の待機児童ゼロ」の実現に向けて着実に歩みを進めています。
また、「医療的ケア児支援センター」を設置いたしまして、医療的ケアを必要とする子どもが地域で安心して生活していけるよう、医療、福祉、教育などの関係機関と連携し、切れ目のない支援を展開しております。
更に、予防可能な子どもの死亡を防ぐための「チャイルド・デス・レビュー」や、ヤングケアラーといった新たな政策課題にもいち早く取り組んで参りました。
特に、ヤングケアラーにつきましては、全国に先駆けて本格的な実態調査に踏み切り、その結果を基に支援体制の構築や支援ガイドラインの策定、相談窓口の設置を行うなど、スピード感を持って対策を講じて参りました。
教育や子育てと並んで力を入れてきたのが、介護の問題であります。
この問題は、介護を受ける高齢者や、介護サービスを提供する事業者・介護職員にとどまらず、働く人々とその御家族という広範囲に及ぶものであり、県民全体の生活の質に関わる重要課題であると認識しております。
特別養護老人ホームの定員は着実に増加しておりますが、令和8年度に向けて「介護待機者ゼロ社会」を実現すべく、今後も計画的に取り組みを進めて参りたいと考えております。
このほか、自殺対策、ひきこもり支援、障害者の経済的自立を図る産福連携の推進など、あらゆる命が大切にされ、誰一人として生きづらさを感じることなく温かく包み込まれる、安心感に満ちた社会への移行に向け、条件整備を進めて参りました。
以上、この4年間における成果と取り組みの一端を申し述べて参りましたが、全てに通底いたしますのは、山梨の可能性に対する確信であり、そして、新たな挑戦を尊ぶ姿勢であります。
首都圏の辺縁にある、存在感の薄い小さな県。
小規模県の分を守り、目立ったことはせず他県に追随する。
そのような自己規定の殻は、この4年間における政策展開をきっかけとして県内至るところで破られ、今や山梨という地域社会全体が、「山梨から国内外へ価値を提供していこう」「全国を牽引していこう」という進取果敢の気風に満ちて参りました。
こうした「攻めのマインドセットへの転換」こそが、今後の山梨の更なる飛躍のための、最も頼れる土台になると信ずるものであります。
その上で、これから先の針路をどう定めるべきなのか。
山梨というふるさとの未来に資する課題解決と期待実現、希望創造はどうあるべきなのか。
申し述べましたとおり、全県民の手に豊かさをもれなく届けるための方向性と具体性をお示ししたく、全力で取り組んで参りました。
これからも大切にしたいのは、県全体の富・利益と、個々人の幸福感が可能な限り密接する「豊かさの実感」です。
次の4年間、山梨は「豊かさをもれなく届けられるふるさと」を目指します。
これまで、数多くの「豊かさのタネ」を蒔き、コロナ危機の最中にあっても施策や予算という栄養を与え続けてきました。
ここ、ふるさと山梨はコロナ危機にあっても前進し続けています。
これも県民の皆様、県議会の皆様の御理解のもと、今、目の前の状況をしのぐだけではなく、明日を創るための努力を続けてきたことによるものです。
だからこそ、ここから先、進むべき道は、明確であるべきです。
先ず、生活・家庭から各産業に至る全ての局面で、あらゆる可能性を取り込む姿勢を基本に、富と豊かさが全ての県民に開かれた「開の国」という理念を果断に具体化して参ります。
ふるさと甲州の歴史が育んできた魅力を、内と外に大きく開かれたものにし、県内外で価値を高め、富を呼び込む。
あらゆる可能性を聖域なく検討し、受け止める「開の国」は、山梨が日本を代表する富める地域、すなわち「令和の雄藩」として跳躍するための基盤となります。
そして、可能性に開かれた土台の上に、生活・産業に必要なインフラとして新しい機能を増強していく「ふるさと強靭化」を展開いたします。
道路、医療、災害に対する耐性を高めることだけが「強靱化」ではありません。
山梨が目指すのは、弱さを補った上で、強さを築き、更に新しい利便性を加えていく「攻めの機能強化」です。
もしもの更に次を考えて、今を強く太くする。
それがふるさとでの日常を、安心で安全なものにします。
ふるさと強靱化は、明日の生活と日常を強くします。
今を補うだけではなく、明日、その先を見据えた資源と資本を注入する「開の国」という基礎に、「ふるさと強靭化」という社会基盤の厚みをさらに積み重ね、その流れを加速させます。
その上で、「豊かさをもれなく届ける仕組み」を加え、生活圏全体として「豊かさ共創社会」を目指して参ります。
山梨は必ずや、豊かさを享受する意欲、豊かさを追求する意思に、日本で最も強く応えられる場所になります。
ヒト・モノ・コトの全てが、山梨ではかけがえのない財産であり、一つとして欠かすことのできない将来価値であると考えます。
そこにあって、大切にする家族・事業・目標が、それぞれのゴールまで、くじけることなく向かえるふるさとであること。
それが、「豊かさ共創社会」の目指すべき姿であり、これからの山梨が日本の先頭を走るため目指すべき姿です。
その中で育まれる強い上昇機運においては、その場限りの施策は一つとしてありえません。
それぞれが連鎖し、強めあい、高めあう。
あらゆる施策は、いわば発展性と集束性、連続性を得て好循環を生み、生活、産業、地域社会、そして経済を支えていくものとなります。
次の4年間も、私はこの道程を、皆様とともに御一緒に歩きたいと考えております。
それは、ふるさとの豊かさを創る道に他なりません。
一期4年間の気づきと学び、県民の皆様と、そしてここ県議会の皆様からの励ましを勇気に、もっと前へ、豊かさへの道をともに拓いて参りたいと考えております。
そして、そのためにこそ、私は、改めて覚悟しなければなりません。
その覚悟とは、すなわち「常に生活者目線で豊かさを創り届けるために、決断し、責務を果たすためには躊躇しない」ことに他なりません。
この間、ここ県議会の皆様とともに築いてきた、県民自身による、県民本位、生活者本位の県政を、一部の思惑や一部の利益、密室政治に、後戻りさせることがあってはなりません。
これからも、そのための決断と責務という覚悟あるリーダーシップを実践し、先頭に立ち、そして、その成果の全てを県民全体の豊かさと幸福に還元します。
この、民主主義のあるべき本来が否定されることがあるならば、山梨は再び、苦しい時代へと戻ることになります。
前進か、さもなくば再び苦しく、暗い、先の見通せない停滞の時代に戻るのか。
私は、これからも先頭に立ち、県政の現場において「前進のための政策を創造し、万策を尽くす」、その覚悟をもって臨んで参ります。
県民の命と生活を守り抜くことに覚悟を持ち、県民派県政のためにこそ、我が身がその礎となるべく、全身全霊で、全県民の皆様、そしてここ県議会の皆様とともに歩んで参ります。
それこそが、合意と責任のもとでの県民主役の県政という、山梨が目指す民主主義の形に他なりません。
ふるさとに豊かさをもたらす道を進むにおいて、妥協なく、躊躇なく。
山梨を二度と、停滞と苦しみの暗い時代に戻してはなりません。
全ての県民の心に寄り添い、心は一つであるべきです。
前進あるのみ。
そのためには、妥協なく、躊躇なく。
県議会の皆様、県民の皆様とともに、心を統べて、取り組んで参る所存です。
山梨県各地を代表される議会の皆様、私は、改めて皆様に申し上げます。
後世「コロナと人口減少を超克し、今日の山梨の繁栄の礎を築いた」と評価されるに足る最善の県政をともに築き上げるべく、再び「豊かさ共創」の旗印のもと、ともに力強い一歩を踏み出そうではありませんか。
令和4年12月1日
山梨県知事 長崎 幸太郎