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ページID:75006更新日:2016年9月23日
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MB0003 国指定 名勝 |
平成6年6月6日指定 所在地 甲州市塩山上於曽2026 所有者又は管理者 向嶽寺
向嶽寺は、臨済宗向嶽寺派の大本山である。寺史によれば、康暦2年(1380)、抜隊得勝(ばっすいとくしょう)がこの地に草庵「向嶽庵」を開いたことに始まるという。 庭園は、境内最北端、大正15年(1926)に焼失した方丈の裏(北側)に面した山裾(塩ノ山)の斜面に造られた池泉(ちせん)鑑賞式庭園であり、方丈から眺めるように作られたと考えられている。長い間、半ば埋もれ荒廃し、三尊石や滝石組などの頭部が見えている状態であったが、平成2年度に発掘調査が行われ、全貌が明らかになった。続いて平成3年度には、調査結果を基に、修復工事が行われ庭景が整備された。 作庭時期についての史料はないが、伽藍の定形が整備される江戸時代初期に庭園の原形が造られ、被災と復興に合わせてたびたび改修され、江戸時代中期頃に現形に落ち着いたと考えられる。 庭園植栽こそ遺存していないものの、地割や石組は堅固に残され、作庭の意図および技法をよく窺うことができる。庭の中央上部に仏三尊に見立てた、高さ2メートルを越す「三尊石」(さんぞんせき 「遠山石」の役も果たす)を中心に多くの滝を配し、山裾の豪壮な石組でまとめる構図は見事である。特に、上段の池の左右に向かいあうように設けた滝石組(深山幽谷の雰囲気を感じさせる石組みで、自然の滝のように水を落とすようにしたもの)の構成は珍しく、両方の滝が相殺されることなく纏めあげた意匠は巧妙である。また、下段の池の洞窟風護岸石組という洞窟状に石を組むものがあり、恵林寺庭園の場合と同様、山梨県に残る古庭園によくみられる技法であり、この庭園の護岸のうちでも最も注目されるものである。 このように、この庭園は、山梨県に残る古庭園の典型として優秀であり、また、発掘調査による成果を基盤とした、日本の伝統的庭園の歴史を伝える学術資料としても貴重である。
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