ページID:76231更新日:2016年12月8日
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TY0079 国登録 有形文化財(建造物)
全景 1階店の間・居間 |
平成28年11月29日登録 所在地 甲府市御岳町2362 所有者又は管理者 個人
細田家(旧御嶽館)は、金櫻神社の参道脇で元々商店を営んでおり、旧来からの御師宿とは異なり、近代に増加した個人の登山客を宿泊させる旅館として「御嶽館」を開業した。建物は、2階橋廊下で連結された南棟と北棟よりなり、南棟は木造2階建、入母屋造、桟瓦葺、北棟は木造2階建、入母屋造、トタン葺である。 当主の祖父・多郎氏により大正10年(1921)に現在の南棟が建築される。南棟には棟札が現存し、「大正10年6月22日 施主:細田多郎、匠長:佐野実三、棟梁:高野健二郎、脇棟梁:望月代吉、杣職:林定二郎、石工職:佐野茂正、鳶職:武井重清」であったことが判明する。建設を担当した職人達は金櫻神社と関係が深く、建築材料も金櫻神社の普請時に一緒に整えたのではないかと伝えられる。 細田家(旧御嶽館)は、古くから金櫻神社参道の鳥居脇に立地し、昭和36年(1961)の火災で衰退した門前町を代表する旅館である。南棟と北棟を2階橋廊下で連結した全体の外観は、門前町の景観としても貴重である。 建物は、当初の姿を良好にとどめており、とくに南棟については、棟札と設計図面によって建築年代が大正10年(1921)、設計者・施工者も判明する建築遺構として極めて重要である。また、門前の商売屋から旅館経営を始めたといわれるが、南棟1階の店構えは、そうした商売屋の雰囲気をとどめており、江戸時代から宿泊業を営んだ旅籠や御師家とは異なる、近代的な和風旅館の生成過程を示す事例として重要といえよう。
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