トップ > 組織案内 > 観光文化・スポーツ部 > 山梨県立考古博物館 > 資料・展示紹介 > おうちde土器のものがたり9「土器の文様の中に隠れる動物3─カエル」
ページID:96951更新日:2024年5月21日
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県立考古博物館では、秋季企画展「縄文土器のものがたり」をご自宅でもお楽しみいただけるよう、「おうちde土器のものがたり」と題して、展示の内容をご紹介してまいります。第9回のテーマは「土器の文様の中に隠れる動物3─カエル」です。
カエルはいままでリアルに表現されるものが多かったのですが、実は簡略化されたカエル文様も意外とたくさんあることがわかってきました。
中期中頃の勝坂式土器に限ってカエル文様が出現します。勝坂式土器の前半期にはリアルなカエルが表現されますが、後半期には簡略化します。
リアルなカエル(常設展示)
上の平遺跡出土・深鉢形土器
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カエル文様の特徴は、円形の胴体に頭が三角形となり、頭と胴体のあいだにクビがなくて連続します。ヘビの頭も三角形ですが、クビのあるなしがカエルとヘビの違いです。さらにカエルには手と脚がつきます。うではバンザイをするように上にあげ、三本指の手がつきます。脚はややがにまたに広がって下につきます。また三角形の頭の上にはめがね状の突起がつくこともあります。手脚がつくことからよく人物文様に見えるので、半人半蛙とも呼ばれます。
形骸化してきたカエル・人物にもみえる(常設展示)
向井遺跡出土・深鉢形土器
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リアルなカエルから簡略化されても、この三角頭、円形胴体、手脚という文様部品の構成は変わりません。この文様の組み合わせを土器に探すと意外とあちこちにみられることがわかります。
土器の縁につくカエル
一の沢遺跡出土・深鉢形土器
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まるいかたちの突起が土器のフチについています。頭が三角形でヘビのように思いますし、太い胴体なのでイノシシのようにも思えます。手脚もありません。ところが三角頭に太い胴体ですが、クビがありません。こうした差からこれはカエルと見なしてよいでしょう。三角頭はヘビと間違えやすいですが、クビがあるかどうかの差でカエルになります。
これはどうでしょう。土器のフチにつく三角頭がもちあがってみえます。(画像はいずれも、一の沢遺跡出土・深鉢形土器)
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三角頭なのでヘビがかま首あげているようにみえます。しかしクビがありません。背面には丸い穴があり、カエルの胴体の円文をあらわしています。内側の三角文とめがね状突起はカエルの頭につく特徴的な文様なのです。ヘビの要素はなく、手脚もありませんが、やはりカエルとみなすのが妥当でしょう。対岸にはイノシシが口を開けています。イノシシとカエルの対決ですね。
カエルの上にイノシシが載っている文様があります。土器の胴体のまんなかにイノシシ文様が立体的についています。上端が平らになっていて下がとがったかたちの胴体をしていることからイノシシになります。イノシシの上にひもがかかったように刻まれた立体の線が左右にひろがり、上を向いた先に手があります。イノシシの下には円文があります。三角の頭と足はありませんが、カエルの文様がいっしょに見られます。
イノシシとカエルの合体です。(常設展示)
原町農業高校前遺跡出土・深鉢形土器
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このように土器の文様にはイノシシとカエルが対立したり、融合したりしています。これはヘビとイノシシという対立と融合もあったり、ヘビとカエルの組み合わせもあります。ちがう生き物どうしが向かい合ったり、いっしょになったり、そこには動物寓話が隠されているのでしょうね、きっと。動物の物語を想像してみてはいかがでしょうか。
県立考古博物館・学芸課
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