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ページID:92301更新日:2019年11月12日
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甲府市の遺跡(甲府城関連・曽根丘陵公園を除く)
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湯村山古墳群の概要今回ここに取り上げる湯村山古墳群は、甲府市の北西域、湯村地区と緑が丘地区に挟まれた、湯村山に位置しています。湯村山は標高450m程度の山ですが、甲斐市方面から東を見渡すと、甲府盆地に向かってせり出すような恰好をしています。湯村山をはじめ、甲府盆地北部から北東部にかけての甲府市、笛吹市(石和町・春日居町)、山梨市には、古墳時代後期(今から1400年ほど前)を中心とした古墳が多く分布していることが分かっています。 所在地:甲府市湯村地内 時代:古墳時代後期 参考文献:『甲府市史 史料編第1巻 原始・古代・中世』 ハイキング気分で古墳を見学!湯村山自体は、うっそうと木が生い茂っているのですが、湯村山古墳群へは、湯村山の遊歩道を登っていくことで、容易にたどり着くことができます。 湯村山へ登るルートは、緑が丘スポーツ公園からのルートと、湯村温泉郷方面から登るルートがあります。今回は緑が丘スポーツ公園から登ってみます。 緑が丘スポーツ公園(体育館)の脇に遊歩道の入口があります。 遊歩道は舗装整備されており、ハイキングにはもってこいです。鳥のさえずりが聞こえます。 7分ほど歩くと、突如として古墳が現れます。 上の写真は、湯村山古墳群のうちの、湯村山1号墳です。遊歩道のすぐ脇にあるため、誰の目にもとまる場所にあります。さて、この古墳ですが、普通の古墳とは一味違います。 正面から 横から ちょっと写真からでは分かりにくいのですが、この古墳は積石塚(つみいしづか)といって、石だけで造られた古墳となります。 普通の古墳では、石が少し混ざることはあっても、基本的には土を盛って造られていますので、特殊な古墳と言えます。 古墳には、横穴式石室(亡がらを葬るところ)がむき出しの状態になっています。 湯村山古墳群は、正確に言うと、いくつかのグループに分かれています。1号墳のある古墳群は、山腹の南東に6基確認されています。1号墳以外の古墳は、遊歩道から外れて、けもの道を登っていくと出会うことができます。 積石塚って?さて、積石塚について、もう少し深掘りしたいと思います。 積石塚は、その特殊性から、日本では限られた地域でしか見つかっておりません。東日本であれば、群馬県や長野県、静岡県、そして山梨県が主な地域です。逆に言えば、実は山梨県は積石塚古墳の分布する貴重な地域なのです。 山梨県の積石塚は、甲府盆地の北縁部にのみ分布しています。そしてその中心は、甲府市の横根地区や桜井地区にまたがる横根・桜井積石塚古墳群で、140基以上も分布しています。このほか、笛吹市の大蔵経寺山や、春日井地域にも積石塚がまとまって分布していることが分かっています。 ではいったい、どうして積石塚の分布は限られるのでしょうか。実はこの積石塚、元来日本列島に住んでいた人びとの墓ではなく、朝鮮半島にルーツを持つ人々のお墓という説が、現在最も有力になっています。朝鮮半島の一部の地域では、日本の古墳時代に併行する時期、同じような積石塚が造られていました。ちょうどそのころ、朝鮮半島では戦争が多くあり、その影響を受けて日本に渡来してくる人々が多くいました。いわゆる「渡来人(とらいじん)」です。こうした渡来系の一族が、日本でもふるさとのお墓と同じものを造ったのではないか、という説です。 一方、「古墳を造ろうと思ったけれども、石ばかりで土がない!しょうがないから石で造るか」という思考が働いたのではないか、という説もあります。難しい言葉では、「環境自生説」と言っています。 湯村山を散策していると、確かに大きな石がゴロゴロしていて、土を取ってくるより石で古墳を造ったほうが簡単そうです。 しかし、渡来人説をとるならば、「あえて石が簡単に手に入る場所を墓域とした」とも考えることができます。いずれにしても、決定的な根拠はなかなか見つかっていないのが現状ですので、”どちらの説もまだ考えられる”というところかと思います。 容易に見学ができる積石塚として湯村山古墳群は、発掘調査が行われたわけではなく、詳しいことはあまり分かっていません。しかし、先に挙げたような横根・桜井積石塚古墳群は、そのほとんどが民地内(多くは果樹畑の中)にあり、見学することが困難です。また、古墳の残存状況についても、湯村山1号墳などは天井石が一部残存しているなど、横根地区のものに対して比較的良好に保存されています。 積石塚古墳は、謎が多いこともさながら、石だけで古墳を造り上げているので、その”無骨さ”もまた、魅力的と言えます。ぜひ一度見学に向かわれてはいかがでしょうか。 ●積石塚の墳丘の石は踏んで動かしたり、壊したりしないようにご注意ください。
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