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国内に数多くある宝石鑑別機関の中で唯一、公益法人として認定されている(社)宝石貴金属協会。
今回紹介する笠原氏は当協会で主任研究員を務め、
G.I.A(米国宝石学会)のG.G.(宝石学修了者)の称号を持つベテラン鑑定士だ。
本業以外にも、大月市立大月短期大学で地球科学を教えている氏に宝石鑑別の“いろは”を教わった。
主に宝石鑑別ですね。宝石鑑別というのは宝石の種類とか、どういう処理がされているかを科学的に判断することですね。具体的には、屈折率、比重、硬度、光学的性質などの物理的特徴を色々な機械を使って測定します。取得したデータと、過去にレポートされているデータを照合することで、石の種類などを判別してるんですよ。
ええ。見る者によって鑑別結果が異なるということは許されませんからね。誰が鑑別してもなるべく同じ結論になるように、ここにあるような機械を使って宝石の特徴を定量的に把握して、客観的に判断しているんです。けど、肉眼による質感、色味などの確認や顕微鏡などを使った拡大検査も、原始的な方法ですが今でも有効ですよ。
これは宝石に赤外線を当てて吸収率をデータ化する機械なんです。これによって天然石か合成石かを見分けることができるんですよ。試しに天然水晶と人工水晶で調べてみましょうか!機械の中に入れて赤外線を当てると…モニターに吸収率を表す折れ線グラフが出てきましたね。天然と人工の水晶では吸収率が異なるのでグラフの形状も違います。こうやって見分けるわけです。
たしかに一昔前に比べると機械化が進んでより科学的に判断できるになりました。でも全ての評価が定量的に評価されるわけではありませんよ。例えばダイヤモンドのグレーディング(品質評価)では、鑑定する者の視覚に頼る官能検査が残されてるんです。
ええ。ダイヤモンドのグレーディングは「クラリティ」、「カラー」、「カット」、「カラット」という4つの要素で品質を評価します。その内、「クラリティ」と「カラー」の2つは官能検査で評価してるんです。「クラリティ」はダイヤの透明度を表していて、全部で11等級あります。一般的にはフローレス(無傷)なものが最も高い評価で、顕微鏡を使って、キズとか内包物の有無を調べます。キズなどの数や大きさだけでなく、分布位置も評価に影響してくるので機械化が難しいんですよ。
ダイヤの色を評価するのが「カラー」です。ダイヤは全て無色のように見えますが実はイエローがかっていて、無色が最も高い評価なんです。このとき使うのがマスターストーンっていうカラーグレードを判断するための基準の色合いを揃えたダイヤなんです。マスターストーンとの比較で色合いを判断するんですけど、外部環境以外にも鑑定する者の感覚に頼る部分が大きいんですよ。
ダイヤの「カット」には、屈折率から計算した理想的なファセット面角度と面積のプロポーションがあるんですよ。機械を使ってダイヤを立体的にスキャンして、角度や面積をデータ化して、その理想的なプロポーションと比較することで評価しているんです。最後の「カラット」はダイヤの重量(1カラット=0.2グラム)を表していて、機械で計測しているんですよ。
それが私たちの使命だと思ってます。山梨産ジュエリーから偽物を出すわけにはいかないので私たちが事前に厳しくチェックしているんですよ。例えば、同じ一人でなく複数の鑑定士が関わって評価することでより客観性を高めたり、山梨県水晶宝飾連合会と協力して輸入した金属の成分チェックをしたりしています。でも最近はどんどん新しい加工技術が出てきているから日々の研究や情報入手は欠かせませんよ。これからもこういう取り組みを続けていくことで、山梨産ジュエリーの信頼性アップに貢献していきたいと思っています。
2011年3月28日 インタビュー掲載
名 称:(社)宝石貴金属協会
住 所:山梨県甲府市若松町4-5 山梨県水晶宝飾協同組合内
山梨県甲府市大津町2094 山梨県工業技術センター内
T E L:055-235-7207(若松町:受付窓口)
055-243-6147(大津町:ご質問はこちらへ)
E-mai l: houkikyo@luck.ocn.ne.jp
H P:http://www.houkikyo.sakura.ne.jp/
事業内容:宝石の鑑別/鑑別書・ミニ鑑別書の発行
ダイアモンドの鑑定(グレーディング)
鑑定書・ソーティングの発行
貴金属の定量分析・品位証明
各種研修会、展示会等の開催及び参加
宝石・貴金属に関する啓蒙啓発事業
宝石・貴金属関係の情報収集及び提供
顕微鏡でダイヤの「クラリティ」を判定
ダイヤのマスターストーン
ダイヤを立体的にスキャンし、角度や面積をデータ化
宝石の鑑別書
「赤外分光光度計」
赤外線を当てて吸収率をデータ化し、天然と合成を見分ける
貴金属にX線を当てて成分を調べることができる機材
●1953年生まれ。●大学で鉱物学を学び、G.I.A(米国宝石学会)のG.G.(宝石学修了者)の称号を持つ。●山梨県立宝石美術専門学校の非常勤講師、大月市立大月短期大学非常勤講師などを務める。
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