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ページID:87110更新日:2020年9月10日
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KGC0066 県指定 有形文化財(工芸品) 表面 |
平成30年9月3日指定 所在地 南巨摩郡身延町八日市場542-2(身延町歴史民俗資料館) 所有者又は管理者 慈照寺
鰐口とは、寺社の堂の軒先に懸吊され、太綱で打ち鳴らす梵音具の一種であり、金口、金鼓とも呼ばれる。鉦鼓をふたつ合わせた形状で、鈴を扁平にしたような形をしている。横から見た様が鰐の口に似ていることから、この名がある。鎌倉時代から室町時代初期に製作されたものは、扁平であるが、それ以後のものは次第に膨らみをもってくる。また、上部には上から吊すための「耳」とよばれる取手がふたつあり、これについても鎌倉時代までに製作されたものは、目立たないほど小さいが、室町以降に製作されたものは、大きく突出しているのが特徴である。同じく、室町以降は、側面の下部にある「口唇」とよばれる口の部分の盛りあがりが大きくなっており、口唇の両端にある「目」については上がる傾向にある。 本鰐口は、面張りは穏やかに盛り上り、耳や口唇の突出が少なく、目は下がり気味であり、南北朝時代から室町時代初期頃の鰐口の特徴を良く示している基準作であるといえる。伝来については、その銘に「甲州古郡長峯長福寺鰐口」とある。「甲州古郡」とは、『倭名類聚抄』の記載によると現上野原市内と考えられ、「長峯長福寺」とは、現上野原市野田尻に存在した長峯山長福寺であると考えられることから、この鰐口は、本寺に寄進されたもので、長峯山長福寺が廃寺になったあと、何らかの経緯で身延町八日市場(旧中富町八日市場)にあった長峯山長源寺に移され、さらに長源寺が昭和15年(1940)に火災にあったあと、本末関係にあった身延町伊沼の慈照寺に併合されたため、慈照寺の所有となったと思われる。伝来については必ずしも明確ではないが、その銘から明徳4年(1393)に製作されて、中世の古郡に所在した長峯山長福寺に当初寄進されたことは明らかである。県内に28件所在する中世に制作された鰐口の中で6番目の古作であり、現在未指定鰐口の中では最古の遺例であること、地域の歴史を知り語る上でも貴重な歴史資料でもあることから、県指定文化財として、その保存活用を図るのが適切であると考えられる。
〈見どころ〉 ・県内に現存する中世の鰐口の中では6番目に古く、その形状は製作された時代の特徴をよくあらわしている。 |