更新日:2025年4月22日
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長らく出生数が低下している日本。少子化に影響を与える要因として、未婚化・晩婚化及び結婚している女性の出生率低下などが考えられる。山梨県も例外ではない。今回は社会全体で結婚を希望する人を応援する山梨県の結婚支援の取り組み「やまなし縁結び応援ネットワーク」を紹介する。
山梨県民への意識調査を実施したところ、未婚者の6~7割は婚活をしていないことが明らかになった。理由は「自然な出会いを待っている」が最多。そうした状況を受け、山梨県では出会いの機会を提供し、社会全体で結婚を応援する機運を高めようと「やまなし縁結び応援ネットワーク事業」を2023年度からスタートしている。
この事業は、県や市町村、民間結婚相談所、企業、ボランティアなどが連携し、公的機関の中立性・信用性と民間のノウハウ・アイデアを掛け合わせて結婚支援をしていこうという官民一体の取り組みだ。
事務局となる「やまなし縁結び応援センター」は、参加している約100の団体や個人をつなぎ、定期的に全体会議も開催しながら情報共有を行うほか、未婚者やその親からの結婚相談にも応じている。また専門家が「やまなし結婚支援コーディネーター」として市町村や企業を訪れ、イベントの企画やアドバイスを実施。ほかにも、街コンなど出会いイベントを企画する「やまなし縁結びサポーター」や、地域で支援情報を広める「婚活応援隊」がボランティアとして活動している。
「やまなし縁結び応援ネットワーク」の構成図。県や市町村、民間結婚相談所、企業、ボランティアなどが連携して、出会いの機会を創出する体制を整えた
結婚支援のための官民一体のネットワークは全国的にも珍しい。「行政の職員は数年で異動してしまいますが、民間の方々と組むことでノウハウを蓄積できます」と山梨県子育て支援局子育て政策課の㓛刀智之さんは話す。
ネットワークを構築するメリットは、お互いを知るきっかけができること。「イベント企画会社が農業関係者から後継者不足の話を聞き、新しい出会いの企画の話が持ち上がったこともあります。また、ある企業グループでは、男性が多い職場と女性が多い職場をうまくつなげて社内交流会を開きました。今後は企業間の連携を強化し、異業種交流など自然な出会いの機会を増やせたらと考えています」と同課の高山慎之介さん。
山梨県が主催する出会いイベントもあり、行政の安心感と民間のノウハウや視点を取り入れた楽しい企画が好評。一般的な婚活イベントは敷居が高いという人でも、行政の大規模イベントは比較的参加しやすいようだ。2023年度のイベントには200名以上が参加し、30組弱のマッチングが成立。県外からの参加者もいた。
山梨県子育て支援局子育て政策課 総務経理・企画担当の主任 高山慎之介さん(左)、課長補佐 㓛刀智之さん(右)
「Max200名!大規模出会いイベント」について
・日時:2025年3月20日(祝)13時00分~17時00分
・場所:ベルクラシック甲府
・参加費:2000円
・参加条件:20代、30代、40代くらいの独身男女(県内外問わず参加可能)
・締切:女性は先着順、男性は抽選制(3月7日締切、3月14日発表)
・申込:専用フォーム(https://forms.gle/HVQecoVJ2oM4U7HWA)またはメール(yamanashienmusubi@gmail.com)
Max200名!大規模出会いイベント
・URL:https://www.pref.yamanashi.jp/kekkon-portal/event/kaisai/20250320-1688-1.html
今後については、「多くの企業が従業員の結婚支援に関心はあるものの、ハラスメントを懸念して声がけをためらう傾向もあります。県としては、従業員の仕事や生活といったワークライフバランスの観点からも企業が積極的にかかわっていただけるように支援をしていきたいと考えています。また、取り組みの周知は、現状ウェブサイト(婚活やまなし)がメインですが、県外在住者も含め、さらに多くの若い人に知ってもらえるよう、SNSなど新しい発信方法も検討していきます」(㓛刀さん)とのことだ。
2025年3月20日(祝)に開催の「大規模出会いイベント」チラシ。
2025年3月20日に行われた「Max200名!大規模出会いイベント」は、山梨県の広報媒体と地元ラジオ番組での告知により、応募者は400名を超え、当日は女性83名、男性109名が参加する大盛況のイベントとなった。
会場は地元ラジオ局のパーソナリティが司会を務め、参加者の緊張をほぐしながら、賑やかな雰囲気の中スタート。冒頭、やまなし縁結び応援センターの髙野センター長が「先日、2023年の同イベントで出会ったカップルから今年2月に入籍したという報告をいただきました。改めてこのイベントの意義を実感し、とてもうれしく感じました」と述べ、会場の期待感は一層高まった。
参加者を4グループに分け、15分ごとに男性メンバーが入れ替わる方式で行われたメインの「共通点探し」のゲームは、各自が趣味や興味を語り合い、共通点を探して盛り上がりをみせた。
イベントは共通点探しゲーム、ケーキブッフェ、そしてカップリングシートへの記入という流れ。Weddingケーキ担当のパティシエが手がけたケーキは参加者に大好評
参加者の合間を縫って12名のサポーターが会場内を巡回し、参加者に積極的に声を掛けて自然な出会いのきっかけ作りをサポートした。
ネットで検索してイベントを知ったという参加者Kさんは、「サポーターに声を掛けてもらえたことで大変助かった。共通点を探すゲームでは、参加者の世代が広いこともあり、話題が難しいと感じる部分もあったが、15名以上の方と話すうちに自然と交流できた」。
また参加者のSさんは「同僚からの紹介で参加したが、ケーキをいただく段階で皆が椅子に座り動かなくなってしまったのが少し残念。もっと多くの人と最後まで会話ができたら良かった」。
一方、友人と参加したというTさんは「友人と別行動ながらも、それぞれ約10名ずつと連絡先を交換できた。今度それぞれ知り合ったグループ同士で飲み会を開催する話が出ており、今後の展開も非常に楽しみ」と語った。
サポーターの一人は「リアルの場で初対面の方と話すのは、普通でも勇気がいること。最初の糸口を掴む部分だけお手伝いすれば、次からは自然に話せるようになる方がほとんどです。ぜひ何度も参加して自分に自信をつけてほしいですね」と話した。
県内の民間結婚相談所や婚活応援隊などのボランティアの方々がサポーターとなり、会場内を回って参加者に声を掛けた
また、独自でイベントを主催している企業もある。やまなし婚活応援企業として登録している社会福祉法人ゆうゆうの矢巻行祥理事長に話を聞いた。登録のきっかけは、結婚を機に地元を離れてしまう社員が多い一方で「いい人と出会えれば、結婚して親元に住みたい」という声も多々あり、それなら会社が出会いの場を作ろうと決意したという。
「婚活イベントもいいけど、自然な形の出会いもあってもいいのでは」と、自身の大好きな車ジムニーをテーマにしたイベントを企画。賛同してくれた南アルプス市を舞台に、自然や文化を巡る体験型イベントを夏から冬にかけて5回開催し、自社の職員を運営スタッフとして募った。
協賛・協力してくれる地元企業やその社員も増え、イベントを通して人の輪が自然と広がっていったという。「運営に関わった社員からは『理事長の趣味に付き合っていたら、いろんな人に出会えてよかった、視野が広がった』と言ってもらえてうれしかったですね」。自社の社員ではないがイベントで知り合い、成婚したカップルも誕生したそうだ。
「弊社は多様な価値観を尊重しているので、結婚が一番とは思っていないが、結婚が仕事にいい影響を及ぼすことも多い。これからも若い人たちの出会いの場を積極的に創っていきたい」と力を込めた。
行政から民間までの県内で開催される様々なイベントが、多くの出会いを創出する絶好の機会となり、山梨県が推進する結婚支援の取り組みとして着実に成果を収めている。今後もこうしたイベントを通じて、県内における新たな出会いや交流が促進され、地域の未来がさらに明るく拓かれることを期待したい。
社会福祉法人ゆうゆうの矢巻行祥理事長。山梨県と東京都に保育園やこども園、保育サービスを提供する同社は、社員200名のうち9割は女性
山梨県では大規模な出会いイベントの開催や婚活情報の発信、結婚相談など、様々な支援を行っている。
山梨県が出会いイベントの開催情報やレポート、イベント企画者である「縁結びサポーター」の情報などを発信する婚活応援サイト。
山梨県が出会いイベントの開催情報やレポート、イベント企画者である「縁結びサポーター」の情報などを発信する婚活応援サイト。
行政の安心感と民間のノウハウを融合させた出会いイベントは、山梨県ならではのユニークな取り組みだろう。また、婚活応援企業が増えれば、県全体に結婚を応援する温かな雰囲気が広がっていく。山梨県では今後さらに多くの出会いの機会が生まれ、結婚の希望を叶えやすい環境が整っていきそうだ。
取材・文:古屋江美子(山梨県甲府市出身・やまなし大使)
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