更新日:2026年2月13日
TOP > 子豚から出荷まで、ずっと放牧!「ぶぅふぅうぅ農園」のおいしい豚(後編)
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韮崎市穂坂町には、国内でもめずらしい“完全放牧”で安全・安心な豚を育てる「ぶぅふぅうぅ農園」があります。 自然豊かな環境でのびのび育った豚は、その品質の高さから多くの料理人たちの注目を集めています。
後編では、「ぶぅふぅうぅ農園」の放牧豚のおいしさに魅了されたフリーアナウンサー・田中千尋さんが生産現場を訪ね、農園主・中嶋千里さんが半世紀近く守り続けてきた、「自然に寄り添い、命にまっすぐ向き合いたい」という揺るぎない想いに迫ります。
外で自由に走り回り、土を掘り、泥に浸かり、風の匂いを嗅ぎながら生きる「ぶぅふぅうぅ農園」の豚たち。一般的な豚舎とは、まるで違う世界を目撃した田中アナ。飼育のこだわりについて中嶋さんにあれこれ尋ねます。

まず、エサについて。豚たちが群れで暮らす中嶋さんの放牧場では、「不断給餌(ふだんきゅうじ)」という方法がとられているそう。エサはいつでも食べられるようになっているため、空腹で豚同士が争うこともありません。

「いつもあると思えば、そんなに食べすぎないの。人間と同じだね」と中嶋さん。そう言いながら群れを見るまなざしは、どこか家族を見守るようです。
加えて、そのエサ作りもまた独自の工夫を凝らした取り組みです。
このような食品製造副産物等を利用して製造された飼料をエコフィードといいます 。その取り組みを始める背景には、輸入したエサに頼りたくないという中嶋さんの熱い想いがありました。
「飼料を輸入トウモロコシに頼る畜産は、世界のどこかで飢餓が起こって食べ物がない人がいる一方で肉を生産するために飼料用穀物を作るというねじれともつながっている。だから、少しでも輸入飼料を減らして、国内で循環させたいと思いました。豚にとっても安全・安心。フードロスを削減できて環境にもやさしいからね」
中嶋さんの言葉には、地球環境への思いが静かに息づいています。
エサのこだわりに加えて、中嶋さんの飼育の大きな違いは豚の飼育期間。日本の一般的な豚舎では肉豚になるまでの期間は約6ヶ月ですが、中嶋さんのところでは7ヶ月。それは、離乳までの期間が長いからだそう。

「一般的な離乳は23日ほど。回転率を上げるため、できるだけ早く母豚と離します。けれどうちは45日。薬を使いたくなかったんだよね。母乳でしっかり育った子豚は免疫力が高く、薬に頼らずともすくすく育つ。だから母乳で育った豚を育てたかった。」
その思いは強く、離乳時期を伸ばしては失敗し、また試して、気づけば約20年の歳月が流れていたそうです。
「僕自身の方向性を大事にしたかった。コンセプトとしては、ともかく自然な食べ物を作ること。だから抗生物質には頼りたくなかったんです」

食の安全や環境問題、そして『アニマルウェルフェア』にも目を向けた「ぶぅふぅうぅ農園」ならではの取り組みなのです。
放牧、エコフィードの利用、不断給餌と長期授乳。それは中嶋さんが積み重ねてきた47年の時間で見つけた、豚に余計なストレスを与えず、自然な形での飼育方法。田中アナは初めてこれほど近くで豚の放牧を目にしたといいます。

「アニマルウェルフェアの豚肉がどうやって作られているのか、そして『キュイエット』でいただいた豚肉のお料理がどうしてあんなにおいしかったのか、中嶋さんのお話を聞いてとても納得しました。さらには、おいしだけじゃなく、安全安心でもある。その裏付けとなるものを、この『ぶぅふぅうぅ農園』でしっかりと見ることができて、とても勉強になりました」(田中アナ)

「昔はただ変わり者扱いをされていたんだけどね。日本でも動物にストレスを与えず飼育するアニマルウェルフェアが広がると、徐々に注目されるようになりました。マニュアルも前例もなかったのでずっと試行錯誤してきましたが、まだやり切れてはいません。牧場を継いでいくことも考えないといけませんしね」(中嶋さん)

豚の方に視線を送りながら、笑って聴かせてくれる中嶋さん。「豚はいいよ。見ていて飽きない。そして目が優しいから」。中嶋さんがふと呟いたその言葉は、中嶋さんの豚への愛情の深さを伝えてくれるものでした。