ページID:111469更新日:2023年11月10日
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第15回(令和5年度)やまなし産業大賞は17件の応募があり、その中から優れた製品、技術、サービスを有する6社の受賞が決定いたしました。選考にあたっては、金沢工業大学の影山和郎教授を審査委員長として、県内外の有識者等で構成する「やまなし産業大賞審査委員会」において公平かつ厳正な審査を実施し各賞を決定いたしました。
なお、受賞製品、技術、サービスについては、11月10日(金)~11月11日(土)の期間アイメッセ山梨にて開催される「やまなしテクノICTメッセ2023」において展示いたしますので、ぜひご来場ください。
「亜鉛ニッケル合金鍍金用 箱丸型 隔膜電極」
金属表面に被膜を生成するめっき処理で使用する電解液を劣化させない画期的な電極部品。通常の処理では、めっきを生成するため電解液の中に電極を入れて電気を流すと不純物が発生して電解液の劣化が進み、定期的な電解液の交換が必要となるが、本製品は形状に改良を重ね、電極を膜で筒型に覆うことで、発生する不純物を膜内に隔離し電解液の劣化を防ぐことができる。
高額な電解液の劣化を防ぐことで、液の交換・廃棄コストの大幅削減や環境負荷の低減を実現したことに加え、液の劣化を抑制することで電流を増やさずにめっき処理を続けることができるため、高騰する電気料金の抑制にもつながり、ランニングコストを大幅に削減。
開発にあたっては、様々なめっき工場に対応できるよう改良を重ね、管理上の負荷も少ない設計となっている。地球環境に優しい技術として将来の展開を期待したい。
※亜鉛ニッケル合金めっきの仕組み
めっきとは、物質の表面を金属の薄い被膜で覆う技術。電解液の中に電極(陽極)とめっき素材(陰極)を入れて電流を流すことで、めっき素材の表面に被膜を化学的に生成させる。その際、陽極で不純物が発生することで電解液が劣化し液の交換や廃棄処理が必要になる。
「再生100%リサイクルポリ袋」
梱包資材等で使用された使用済みポリエチレンを100%再生利用した、破れにくいリサイクルポリ袋。一般的にリサイクル材100%を謳う多くのポリ袋は、品質維持のためリサイクル材の添加率が抑えられ、リサイクル材も製造工場から出るロス品や規格外品などが使用されている。本製品は独自の技術で使用済みプラスチックを100%使用している。
「見た目」「臭い」「強度」に問題が出やすいリサイクルポリ袋について、使用済みプラスチックを材料としたリサイクル材を100%使用し、独自の製造方法で一般的なポリ袋を上回る若しくは同等な品質の商品供給に成功しており、その品質の高さを評価した。脱炭素社会を目指す上で晴らしい取り組みであり事業拡大を期待したい。
「地域資源を活用したクラフトビールを軸にした泊まれるブルワリー」
果樹の町である甲州市で採れた果実を使用したクラフトビールの醸造所を併設した、ワイナリーが運営するブルワリーホテル。醸造所が一体となった宿泊施設は唯一であり、果実ができる畑、製造現場、食と宿泊という一連の流れでの滞在スタイルを作ることで、産地の魅力を一体的に提供している。
代表者の素晴らしい理念に基づいた観光の高度化に資する事業であり、そのビジネスモデルの新規性を評価した。ワイナリーが行うブルワリーホテルというだけではなく、宿泊を通じてやまなしのものづくりに触れることができるよう工夫されており、今後も地域の輪を広げながら行う取り組みに期待したい。
「モンブランクリーム絞りロボット」
年間約500万個製造している人気定番商品「イタリア栗のモンブラン」のクリーム絞りロボット。曲線を描く絞りの自動化は初の試みであったが、作業者の負担改善、人員削減によるコスト低減、技術者・人手不足の解消、安定した商品の品質確保のため、独自の絞り設備を開発して導入している。
原材料高騰、技術者・人手不足などに対応した自動化への取り組みを評価する。絞りの完成度も高く、企業の生産性を向上させる優れた技術であると考える。次なる自動化への取り組みとして、フルーツやオーナメントの飾り付けなど手作業で行っている工程のロボット化への取り組みに期待したい。
「レーザー加工による装飾を施したパネル(レーザー装飾パネル)の制作」
木材やアクリル板をレーザー加工機でカットして制作するレーザー装飾パネル。制作したパネルを建具等に取り付けることで装飾とする。アクリル板を組み込むことで和風のデザインでありながら、ステンドグラスの様な彩を持たせることが可能。低コストで自由度が高く、建具装飾の新しい選択肢として提案している。
木造建築や木工の知識・技術を持つ工務店ならではのレーザー加工機の使用方法であり、芸術性と技術が融合した素晴らしい製品である。今後は、広告・販売プラットフォームを拡大させ、知名度を高めながら販路開拓に取り組んでいただき、新しい市場ができることを期待している。
「「ふえふきマスタード」を中心とした総合事業」
笛吹市の特産物である葡萄の未熟果と地域の遊休地を活用して栽培した県産のカラシナの種を使用して開発した「ふえふきマスタード」。国産クラフトマスタードというジャンルを開拓しながら、商品を販売するだけに留まらず、山梨県独自の美食文化の創出や発信に取り組んでいる。
地域おこし協力隊退任後に新たに始めた事業であり、新しい産業を山梨に起こそうという想いを評価する。単なるクラフトマスタードの販促だけではなく、動画やSNSを通じてマスタードの作り方、栽培方法、活用レシピなどを発信することで、山梨で新たなマスタード市場を作っていくことを期待する。