トップ > 県政情報・統計 > 知事 > 開の国やまなし こんにちは。知事の長崎です。 > 施政方針 > 平成30年度の知事発言集(2月16日まで) > 平成30年6月定例県議会知事説明要旨
ページID:86034更新日:2018年6月19日
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平成30年6月定例県議会の開会に当たり、提出致しました案件のうち、主なるものにつきまして、その概要を御説明申し上げますとともに、私の所信の一端を申し述べ、議員各位並びに県民の皆様の御理解と御協力をお願い申し上げたいと存じます。
先ず、昨日発生した大阪府北部の地震により亡くなられた方々に対して、心から御冥福をお祈り申し上げますとともに、御遺族の皆様にお悔やみを申し上げます。また、被災された方々に対しまして、衷心よりお見舞いを申し上げます。
さて、平成の時代も残り1年を切ることとなり、一つの時代の節目を迎えようとしております。経済の低迷とそこからの回復、地震など大災害の発生、そして情報通信技術の発展など、振り返ると、平成は激動の時代でありました。
将来に目を転じると、時代の潮流も、様々な場面で大きな変革を遂げつつあります。
先ず、産業分野における変革であります。IoTやAIなどの技術革新を軸に、第四次産業革命と言われる大きな流れが生じつつあります。こうした動きは、産業構造に大きな変化をもたらすだけでなく、我々の日々の生活や働き方などにも、大きな影響を与えるものであります。
また、国際情勢も大きく変革しております。本年に入り、特に北朝鮮情勢は、日々、目まぐるしく状況が変化しており、また、TPPや関税の設定、保護主義の台頭など、アメリカを中心とした通商・貿易政策を巡る動向にも目が離せません。こうした動きは、外交・安全保障といった問題にとどまらず、インバウンド観光や県産品の輸出など、本県経済にも大きな影響を与えるものであります。
このように時代は大きな変革の最中にあり、これらは否応なく本県にも影響をもたらし、対応を迫るものでもありますが、私は、知事就任以来、本県の直面する様々な変化を、ネガティブに捉えるのではなく、むしろ県民一丸となって地域の力を引き出す好機と捉え、本県の飛躍の大きなきっかけとすることの重要性を、一貫して訴えて参りました。
また、本県の未来に目を転じますと、中部横断自動車道の開通や東京オリンピック・パラリンピック大会の開催、そしてリニア中央新幹線の開業など、山梨の可能性は大きな広がりを見せます。今後も、この変革の時代において、社会の変化や時代の潮流を見定め、山梨のポテンシャルを最大限生かしながら、本県の未来を切り開いて参ります。
次に、当面する県政の課題についてであります。
先ず、東京オリンピック・パラリンピックへの対応であります。県ではこれまで、スポーツを通じた交流の促進を図り、本県の魅力を世界に発信する好機として、市町村や競技団体などと連携し、東京オリンピック・パラリンピック大会の事前合宿の誘致を積極的に推進して参りました。この結果、現在、10の市町村において9競技の事前合宿の実施が決定しております。
特に、県内9市町村、合計八つの競技で事前合宿が決定しているフランスについては、昨年のトップセールスを皮切りに、本県との交流が活発化しております。本年2月には、在日フランス商工会議所と日本の自治体では初めて覚書を締結し、フランスとの経済交流の推進を図ることと致しました。また、4月には、フランスオリンピック委員会のアムサレム副会長をはじめとする各競技団体の強化責任者等が多数来県され、本県の立地環境や観光資源、文化、県産酒など、本県の様々な魅力をお伝えしながら交流を深めたところであります。このようにして築き上げてきた関係を基礎に、本年度はフランスの旅行会社と連携した誘客促進や、10月にパリで開催される「日本博(ジャポニスム2018)」への参加などを通じて、観光面での取り組みを強化して参ります。
また、これまでラグビーや陸上競技の事前合宿の誘致を見据え、富士北麓公園内のスポーツ施設の大規模な改修を進め、トップアスリートにふさわしい練習環境の整備を図って参りました。こうした取り組みなどが評価され、昨年8月には、同施設が全国で初めて、ラグビー競技のJOC認定競技別強化センターに認定されるとともに、本年4月には、明年に開催されるラグビーワールドカップのフランスチームの公認キャンプ地に富士吉田市と富士河口湖町が内定したところであります。
また、富士北麓公園の練習環境が脚光を浴びる中、屋内練習走路については、現在、県産材を活用したCLT工法による整備を進めており、全国有数の規模であるこの施設の魅力をより効果的に発信して参ります。東京オリンピック・パラリンピック大会後におきましても、ラグビーや陸上競技の日本代表合宿の継続的な実施に加え、新たに国内トップレベルのチームの合宿誘致を進めるなど、富士北麓公園を最大限に活用し、本県の競技力向上やスポーツを通じた交流の促進など、スポーツによる地域振興を図って参ります。
このように、東京オリンピック・パラリンピック大会に向け、これまで着実に準備を進めて参りましたが、同大会の開催が2年後に迫る中、今後は、県民全体の機運醸成やレガシー創出に向けた取り組みを積極的に推進していく必要があります。そこで、県民・関係団体・行政などが一丸となり、オール山梨で機運醸成等の取り組みを進めるための体制を整備するとともに、オリンピックフラッグ・パラリンピックフラッグの巡回展示等を行うフラッグツアーを開催して参ります。
更に、聖火リレーに関しては、本年4月、大会組織委員会から、本県を2日間通過することが示されたところであり、県民の皆様に御協力いただく中で、盛り上げて参りたいと考えており、今後は、県内のルート案やランナーの選定方法などを協議するため、検討会の開催やルート調査などを実施して参ります。
次に、産業の振興についてであります。
本県の景気は、全体として緩やかな拡大傾向にあり、特に有効求人倍率は7ヶ月連続で1.4倍を超える高水準で推移している一方、旺盛な労働需要を背景に、県内企業からは、人手不足を懸念する声が高まってきております。県としては、これまで、安定的な労働力の確保のため、新卒者等への就職支援やU・Iターン就職の促進、更には女性や高齢者などの潜在的な労働力の掘り起こし等に取り組んで参りましたが、このような現下の県内企業の経営環境を踏まえ、新卒者の県内企業への就職を加速するため、県外からインターンシップに参加する大学生などに交通費を支給する企業を対象とした助成を行うとともに、IoTの導入により、生産性の向上を目指す企業を支援して参ります。
こうした対策に加え、県の人材育成機関における中長期的な視点での人材育成の方向性を検討するため、学識経験者や産業界・労働界の代表者、教育関係者などで構成する「山梨の未来を担う人材育成検討委員会」を設置したところであり、先日、第1回の検討会を開催致しました。今後、第四次産業革命への対応や、産業界の求める即戦力となる人材の育成など、様々な観点から議論を深め、本年度中を目途に、報告書を取りまとめていただく予定となっております。
また、甲府工業高校の専攻科の設置については、平成32年4月の開設に向け、先般、新校舎の実施設計が完了したところであります。本年度は、新校舎の建設地となる弓道場・テニスコートの移転整備や校舎建設工事のほか、地元企業と連携したカリキュラム編成などを進め、県内企業において即戦力となる人材が輩出できるよう、着実に準備を進めて参ります。
更に、今後の産業振興の羅針盤となる新たな方針については、産業界や商工団体、学識経験者など、様々な分野の方々から、幅広く御意見をいただきながら、現在、策定を進めており、これからの産業振興の在り方について、ヒト・モノ・情報のクロスポイントとしての本県の優位性の活用や、「連携」を共通理念としたイノベーションの創出などの方向性を取りまとめていくこととしております。今後、パブリックコメントを実施し、県民の皆様からも御意見をいただいた上で、本年8月を目途に策定、公表したいと考えております。
次に、公共事業についてであります。
昨年度の12月補正予算においては、河川内の支障木の除去や道路の修繕など、地域住民などからの要望にきめ細かく対応し、県単独公共事業費12億円を計上致しました。また、本年度当初予算における、公共事業費及び県単独公共事業費は、昨年度を上回る631億円余を計上しており、昨年度の2月補正予算の175億円余と合わせると、本年度の実質的な公共事業費等は、昨年度を大きく上回る806億円余を計上致しました。
このような中、本年度の公共事業費の確保に向けては、様々な機会を通じて国に働きかけてきたところ、昨年度に続き、当初予算の額を大きく上回る規模の内示を得ることができました。今回、内示増となった事業は、本県の骨格道路網を形成する新山梨環状道路東部区間の新たな工事箇所の着工をはじめとして、早期執行が可能な事業が多く、当初予算と一体的に執行することにより、供用の前倒しなどの効果が期待できることから、今定例県議会に、所要の経費を計上致しております。
今後も、県民生活の向上や地域経済の発展を支えるため、社会資本の整備を積極的に進めるとともに、公共事業予算の総額確保について、国などに力強く働きかけて参ります。
次に、出産・子育て環境の充実についてであります。
県では、「日本一健やかに子どもを育む山梨」を掲げ、妊娠・出産から子育てに至る、切れ目のないきめ細かな支援に努めてきたところであります。先ず、安心して出産できる環境を構築するため、これまで県内の産科医療の体制強化に取り組んで参りました。具体的には、全国的に産科医が不足している中、本県においては、山梨大学と連携し寄附講座を設置するとともに、産科の専門研修を受ける研修医に対し、研修資金を貸与するなど、産科医の確保を進めて参りました。
こうした取り組みにより、山梨大学では着実に産科医の確保が図られており、地域への派遣の見通しが立ったことから、平成20年度に分娩取扱を休止した都留市立病院において、分娩取扱を再開することとし、これまで県、都留市、大学の三者で、派遣医師数や再開時期等について調整を進めて参りました。その結果、明年1月より3名の産科医を派遣し、2月より分娩取扱を再開することとし、本年8月から分娩予約を受け付けることとなりました。これまで分娩取扱医療機関の無かった東部地域において、身近な場所で出産ができる環境が整備されたことについて、今後も、都留市等と連携し、県民の皆様への周知に取り組んで参ります。
また、病児・病後児保育については、市町村における合意形成を経て、本年4月から、全国初となる県全域での広域利用を開始し、県内のどこに住んでいても、市町村の区域を越えて病児・病後児保育施設を利用できることとなりました。保護者の皆様からは、「子どもが病気になったときに利用できる施設の範囲が広がったことにより、仕事と育児の両立がしやすくなり、とても助かっている」との声をいただいております。本年度は、更に、保護者の方々の利便性の向上を図るため、スマートフォンなどから施設の空き状況等が確認できるよう県の子育てネットを改修するとともに、病児・病後児保育を実施する医療機関等に対する施設整備への助成を行うこととしており、子育て環境の一層の充実を進めて参ります。
次に、観光の振興についてであります。
今月公表致しました山梨県観光入込客統計調査の結果によると、平成29年に本県を訪れた観光客数は3216万人、また、観光庁が実施する宿泊旅行統計調査の速報値では、本県の外国人延べ宿泊者数は153万人と、いずれも過去最高を記録したところであります。このうち、外国人の宿泊者数は、都道府県別でも第10位となり、これも過去最高を記録しました。今後も、観光立県としての魅力を更に高めていくためには、本県ならではの地域資源を活用し、地域としての魅力を広く国内外にアピールすることが重要であります。
こうした中、先月、峡東地域の「葡萄畑が織りなす風景」と、長野県と共同で申請した「星降る中部高地の縄文世界」の2件が、新たに日本遺産に認定されました。日本遺産は、地域の歴史的魅力や特色を通じて我が国の文化・伝統を伝える取り組みであり、本県で認定された2件は、いずれも風光明媚な風景や歴史的価値が高く評価されたものであります。今後は、歴史、伝統などを軸に地域資源を再構成し、本県の魅力として国内外に積極的に発信することで、新たな観光振興策として活用できるよう、関係市町村、関係団体と密接に連携を図り、取り組んで参ります。
また、峡東地域の果樹農業の世界農業遺産認定に向けた取り組みについては、これまで、生物多様性の追加調査の実施や有識者からの意見などを踏まえ、申請内容の一層の充実を図ってきたところであり、明日、農林水産省に申請書を提出する予定であります。今後、秋に予定されている現地調査などの国の審査に向け、地元三市や関係団体と連携し、万全の準備を進め、世界農業遺産の認定が受けられるよう、最大限努力して参ります。
また、地域資源の掘り起こしという観点から、本年度は、山梨の「食」に光を当てることとし、食の専門家等を委員とする「やまなしの食育み会議」を開催し、昨年度実施した郷土食等実態調査を踏まえ、次世代へ継承すべき「やまなしの食」を認定して参ります。
こうした取り組みを通じて、本県の食文化の魅力を再発見することにより、県全体で継承していく動きにつなげるとともに、広く全国に発信することで、観光振興や地域活性化につなげて参ります。
更に、本年度は、多様化する国内外の旅行者のニーズに対応した、本県ならではの新たな観光推進計画を策定することとしており、中部横断自動車道の開通や、リニア中央新幹線の開業などを視野に入れた広域的な誘客促進の取り組みや、日々進展するICTを活用した観光振興など、これからの時代にふさわしい計画となるよう検討を進めて参ります。
次に、農業の振興についてであります。
県ではこれまで、果実など県産農産物のブランド力や果樹産地の競争力を強化するため、消費者の嗜好にマッチしたぶどうの優良品種である「シャインマスカット」への改植など高品質化を推進するとともに、新たな販路として期待される東南アジアなど海外への輸出については、トップセールスに加え、マレーシア、シンガポールに海外販売・情報発信拠点を設置するなど、販売力の強化に取り組んで参りました。この結果、平成29年の農業生産額全体については、17年ぶりに大台の1000億円を超え、昨年より45億円多い1003億円、また、平成29年度の県産果実の輸出額についても、初めて7億円を超え、7億5200万円となったところであります。
こうした成果の更なる向上を図るため、本年度は、東京オリンピック・パラリンピック大会における食材供給の実現を目指し、農産物の安全・安心を証明する重要な手段である「やまなしGAP」認証の拡大を図るとともに、本格的な輸出実績がないインドネシアへのテスト輸出の実施に取り組むなど、県産農産物の高品質化と販路拡大を推進して参ります。
今後も、本県の主力産業である農業が、地域の魅力発信の原動力となるよう、「新・やまなし農業大綱」に基づいた施策を積極的に展開し、本県農業の更なる発展につなげて参ります。
次に、人口減少対策についてであります。
近年、ライフスタイルや働き方が多様化するとともに、居住地以外の地域と関わる機会が増加するなど、都市部の住民の地域との関わり方が変化しております。
こうした近年の社会の変化を見据え、本県の地域力の向上を図るためには、定住人口に加え、本県を訪れる人々を増加させ、その活動や交流を活発化することが重要だと考え、3年前に「山梨県まち・ひと・しごと創生人口ビジョン」を策定する際、リンケージ人口という考え方をお示ししたところであります。このリンケージ人口については、これまでアンケート調査などによって数値の精査を進めてきたところであり、過日発表した最新の観光統計データも活用し、2018年における暫定値6.5万人と発表させていただきました。国においても「関係人口」という概念を提示し、地域とつながりを持つ方々に着目しているように、リンケージ人口を構成する方々は、本県経済に活力をもたらす重要な存在であることから、今後も、こうした方々の増加に向け、市町村や企業などとも連携を図りながら、二地域居住や滞在型周遊観光の促進などの取り組みを、積極的に進めて参ります。
次に、文化芸術の振興についてであります。
本年は、県立美術館が開館して40年の節目を迎えます。そこで、40周年を記念した絵画の購入について、これまで調査・検討を進めてきたところでありますが、県内外に改めてミレーの美術館としての魅力を力強く発信する観点から、ミレーの作品の中でも豊かな色彩表現が特徴的な「角笛を吹く牛飼い」を、美術資料取得基金を活用して購入することとし、過日、仮契約を行ったところであります。本作品の購入により、県立美術館で収蔵するミレーの作品は70点となることから、ミレーの美術館としての価値をより一層高め、本年9月11日からの一般公開により、県立美術館の更なる魅力の拡大を図るとともに、観光や芸術文化の発展につなげて参ります。
また、本県は、こうした芸術的な価値を有する県立美術館のみならず、信仰の対象と芸術の源泉としての文化的価値を持つ世界遺産富士山をはじめ、魅力ある伝統産業や食文化など、豊かで多様な文化資源を有しており、本年度は、このような本県独自の資源を地域の活性化につなげていくことを目的とし、文化芸術基本条例(仮称)の制定に向け、取り組んで参ります。先般、学識経験者等による検討会議を設置したところであり、今後、条例の内容について議論を深めていただくとともに、関係団体や県民の皆様から幅広い御意見をいただきながら、年内の条例制定を目指して参ります。
次に、提出案件の内容につきまして御説明申し上げます。
今回提出致しました案件は、条例案3件、予算案3件、その他の案件2件となっております。
条例案のうち、主なるものにつきまして申し上げます。山梨県県税条例等の改正についてであります。地方税法等の一部改正に伴う個人の県民税等についての改正とともに、納税者の利便性の向上を図るため、徴収金の収納等についての見直しを行おうとするものであります。
次に、予算案のうち主なるものにつきまして申し上げます。農畜産物の産地競争力の強化を図るため、農業者等が行う施設整備等に対し助成する経費を計上致しております。また、山の恩恵に感謝するとともに、本県の山や森林の魅力を県内外に発信するため、明年度本県で開催する「山の日」記念全国大会の開催準備に要する経費を計上致しております。このほか、既に申し上げました、東京オリンピック・パラリンピック大会の開催に伴う機運の醸成やレガシーの創出等の推進、県内中小企業の深刻化する人手不足への対応、公共事業の一層の事業進捗などに要する経費を計上致しております。
以上の内容をもって編成しました結果、一般会計の補正額は、83億円余、当初予算と合わせますと4,639億円余となります。この財源と致しましては、国庫支出金42億円余、県債22億円余、地方交付税14億円余などとなっております。
その他の案件につきましては、いずれも、その末尾に提案理由を付記しておりますので、それによりまして御了承をお願い致します。なにとぞ、よろしく御審議の上、御議決あらんことをお願い申し上げます。
平成30年6月19日
山梨県知事後藤斎