トップ > 県政情報・統計 > 知事 > 開の国やまなし こんにちは。知事の長崎です。 > 施政方針 > 平成30年度の知事発言集(2月16日まで) > 平成30年12月定例県議会知事説明要旨
ページID:88048更新日:2018年12月3日
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平成30年12月定例県議会の開会に当たり、提出致しました案件のうち、主なるものにつきまして、その概要を御説明申し上げますとともに、私の所信の一端を申し述べ、議員各位並びに県民の皆様の御理解と御協力をお願い申し上げたいと存じます。
先ず、当面する県政の課題について申し上げます。
はじめに、台風被害への対応についてであります。
本年の夏は、地震や台風、集中豪雨など大規模な自然災害が相次いで発生し、全国各地に大きな被害をもたらしました。亡くなられた方々に対して、心から御冥福をお祈り申し上げますとともに、御遺族の皆様にお悔やみを申し上げます。また、被災された方々に対しまして、衷心よりお見舞いを申し上げますとともに、一日も早く日常生活を取り戻すことができますよう、心よりお祈り申し上げます。
本県においては、特に、9月に最接近した台風21号及び24号の影響により、深刻な被害が発生致しました。先ず、農業分野においては、野菜や果樹のハウス、ぶどう棚などの農業施設が倒壊するなどの被害が発生し、県としては、被災直後から、台風被害の相談窓口を各農務事務所に設置するとともに、JAと連携した農業者への支援を実施して参りました。これに加え、今回の台風被害は近年に例を見ない甚大さであったことから、農業者の皆様にとって経営の要とも言える農業施設の一刻も早い再建を後押しし、営農継続に向けたサポートを強力に進めるため、被害を受けたハウスやぶどう棚などの施設の撤去や再建・修繕について、国の補助制度を最大限に活用して支援を行うこととし、所要の経費を12月補正予算に計上しております。
一方で、こうした災害復旧の際にも、私の政治信条である「ピンチをチャンスに変える」という発想が重要であり、倒壊した農業施設の再建・復旧にとどまらず、高付加価値化を図り、次世代型農業へと転換する契機として捉えることが必要であります。平成26年に発生した豪雪の際には、農業者の皆様の御努力により、施設の復旧と併せ、シャインマスカット等の優良品種への改植などが進み、現在、1千億円を突破した農業生産額の伸びに大きく寄与しております。こうした優良品種への改植に加え、省エネ・省力化、更にICT・IoTの導入など農業の生産性向上に資する取り組みについて、市町村やJA等と連携して農業者へ積極的に働きかけるとともに、農務事務所における技術的支援や国や県などの支援メニューの活用を強力に推進して参ります。
また、農業施設だけでなく、農業用排水路の破損、河川の護岸損壊、県道及び林道の法面崩落など、インフラ施設にも台風被害が発生致しました。これらの施設の復旧工事については、県民生活への影響を最小限にとどめる観点から、緊急的な措置を必要とする被災箇所に対し、順次、既定予算を活用し、速やかに復旧工事を進めております。これに加え、既に国の支援が決定している事業のほか、国の補助対象にならない小規模な被災箇所の工事などについても、県単独災害復旧事業として12月補正予算に計上し、早期復旧に努めて参ります。
次に、文化芸術の振興についてであります。
山梨県は、世界遺産富士山をはじめとした我が国有数の山々と、恵み豊かな森林を擁し、この特色ある地理的条件に、県民の皆様の独創性が融合し、たぐいまれな文化的景観を創出してきました。また、各地域においては、貴重な文化財や伝統文化などが脈々と引き継がれており、こうした文化資源は、県民生活に潤いを与え、それが山梨県の特徴を更に際立たせてきました。
こうした中、東京オリンピック・パラリンピック大会の開催や、リニア中央新幹線の開業により、本県は一層、世界に開かれ、豊かな文化芸術を国内外に発信する絶好の機会を迎えます。
本定例県議会に提出しております条例案においては、県民の皆様が年齢や障害の有無等にかかわらず等しく文化芸術に親しむことができる環境を整備し、文化芸術を通じた地域活力の向上を図ることなどを基本理念としております。今後、文化芸術の振興等に関する基本計画を策定し、具体的な施策を取りまとめるとともに、新たに11月を文化芸術推進月間と位置付け、県民の皆様がより一層、文化芸術に触れることができる機会の創出等を図って参ります。
次に、世界遺産富士山の保全管理についてであります。
平成25年に富士山が世界文化遺産に登録されて以降、静岡県や地元関係者の皆様と連携し、富士山の保存管理に向けた努力を続け、平成28年1月、ユネスコに提出した保全状況報告書は、世界遺産委員会において、多くの国々から高い評価をいただいたところであります。
今般、最新の保全状況報告書を取りまとめ、11月26日、ユネスコに提出したところであります。今回の報告書では、望ましい富士登山の在り方の実現を目指す来訪者管理戦略において、3年間にわたる調査・研究結果を踏まえ、専門家や地元関係者の皆様と協議を行い、登山者数などの指標及びその目標を設定致しました。また、今回提出する報告書においては、世界遺産富士山の景観配慮に関する条例の制定などの取り組みも位置付けており、前回同様、高い評価をいただけるものと確信しております。
この報告書の提出を一つの契機として、今後も、富士山の保全に向けて、国や静岡県、地元関係者などと連携を図りながら、富士山の価値を末永く引き継いでいけるよう取り組んで参ります。
次に、子どもの心のケアに係る総合拠点の整備についてであります。
近年、発達障害や虐待などにより、心のケアを必要とする子どもが増加する中、県においては、総合的な支援を行う拠点の整備に向けた取り組みを進めてきたところであります。総合拠点は、4つの施設を一体的に整備するものであり、現在、福祉プラザにある中央児童相談所とこころの発達総合支援センターについては、移転が完了する平成32年2月を目途に開設し、新設する児童心理治療施設と特別支援学校については、平成32年4月に開設致します。
こうしたハードの整備と併せて、県内の医療、福祉、教育関係者とともに開設準備委員会等を開催し、総合拠点を中心とした全県での支援ネットワークの構築も進めており、去る10月には、多くの県民の皆様の参加を得て、子どもの心をテーマとしたシンポジウムを開催したところであり、支援に取り組む全県的な機運醸成を進めて参りました。
この総合拠点は、高度で専門的な医療、相談・心理ケアなどの福祉、更に学校教育を三位一体で総合的に提供するという「集中」のアプローチに加え、地域の身近な小児科医等と連携した全県的な支援ネットワークの構築という「連携」のアプローチの両面から、支援の充実を目指すものであり、全国初の先進的な取り組みであります。こうした点が、他の都道府県及び有識者に高く評価され、この度、全国知事会から人口減少対策分野の第1位として優秀政策に選定されたところであります。全国に先駆け、人口減少に対する先進的な施策を展開してきた我が県の取り組みが評価されたことは大変光栄なことであり、今後も、総合拠点の開設に向けて万全を期すとともに、子育て環境の一層の充実を図って参ります。
次に、提出案件の内容につきまして御説明申し上げます。
今回提出致しました案件は、条例案7件、予算案4件、その他の案件36件となっております。
条例案のうち、主なるものにつきまして申し上げます。
先ず、山梨県文化芸術基本条例の制定についてであります。既に申し上げましたように、文化芸術の振興等に関する基本理念等を定めようとするものであります。次に、県職員等の給与に係る条例の改正についてであります。県職員、学校職員並びに警察職員に係る給与につきましては、去る10月18日、人事委員会から給料月額及び期末・勤勉手当の引き上げ等を内容とする勧告がありました。これを踏まえて、勧告に沿った対応を行うこととし、必要な改正案を提出致したところであります。また、特別職等につきましても、一般職の期末・勤勉手当の改定等に鑑み、必要な措置を講ずることと致しております。次に、指定管理者の指定の件につきまして申し上げます。指定管理者制度は、現在、49の県有施設において導入しております。このうち、明年度に更新時期を迎える35施設について、外部の有識者で構成された選定委員会における審査結果を踏まえ、候補者を選定し、指定管理者に指定しようとするものであります。
次に、予算案のうち主なるものにつきまして申し上げます。
先ず、職員の給与費等につきましては、先に御説明申し上げましたとおり、所要の改定を行うこととし、4億円余を計上致しております。このほか、既に申し上げました、台風21号及び24号により被害を受けた農業施設の速やかな復旧を図るための支援、同じく台風により損壊した土木施設等の復旧などに要する経費を計上致しております。
以上の内容をもって編成しました結果、一般会計の補正額は、28億円余、既定予算と合わせますと4千679億円余となります。この財源と致しましては、国庫支出金12億円余、地方交付税9億円余、県債5億円余などとなっております。
その他の案件につきましては、いずれも、その末尾に提案理由を付記しておりますので、それによりまして御了承をお願い致します。なにとぞ、よろしく御審議の上、御議決あらんことをお願い申し上げます。
さて、私の任期も残すところあと2箇月余りであります。平成27年2月、多くの県民の皆様の御支持をいただき、山梨県知事として県政の舵取りを担うこととなりました。以来、県民の皆様の御期待に応えるべく、粉骨砕身、県政運営に力を注いで参りました。魅力にあふれ、未来に向けて可能性に満ちた、ふるさと山梨。私自身、先頭に立ち、このふるさとの魅力を国内外に力強く発信し、そして、未来に向けた可能性を育てて参りました。全ての県民の皆様が明るく希望に満ち、安心して暮らすことのできる「輝きあんしんプラチナ社会」。この新たな地域づくりへのチャレンジを続け、その成果の一部が数字として表れ始めています。
農業生産額は17年ぶりに1千億円の大台を超え、製造品出荷額も直近で全国1位の伸びを示しており、産業振興、経済活性化という面で大きく躍進を遂げました。観光面においても、観光入込客数、外国人宿泊者数など、各種指標で過去最高を記録し、移住人気も全国トップクラスであるなど、山梨は県外、そして海外から、「選ばれる地域」として、磨き上げてきた山梨ブランドの評価が一層高まっています。
また、県内各地をくまなく回り、県内の各界各層、そして県民の皆様のニーズをきめ細かく拾い上げ、本県ならではの特徴的で先進的な施策を立案し、展開して参りました。このうち、産前産後ケアセンター、病児・病後児保育の広域利用、やまなしパワー、育水、そして先ほども述べました子どもの心のケアに係る総合拠点の整備、こうした意欲的な取り組みは、全国知事会から優秀政策として表彰されました。
特に、人口減少対策分野においては、3年連続で第1位に選定されたところであり、全国各地で人口減少の克服に向け、地域の知恵を熾烈に競い合う時代に、我が県独自の取り組みは、他の都道府県からも高い評価をいただいております。
また、国に対しても、本県の実情を丁寧に説明するとともに、積極的に働きかけを行い、経済対策の実施による国の予算を獲得し、公共事業予算は、平成26年度から右肩上がりの状況となっているとともに、富士山火山噴火対策において国直轄方式での砂防事業が実現するなど、多くの成果を引き出すことができました。
更に、各種事業展開の基盤となる財政状況についても、経済活性化による税源のかん養が図られ、自主財源の根幹である税収規模は1千億円の大台を上回る水準を維持し、県債等残高についても、この3年間で610億円の削減を実現しました。
このように、県政の様々な分野において、飛躍に向けた明るい兆しが見えてきており、これもひとえに、日頃よりふるさと山梨のために御尽力いただいております、県民の皆様の県政に対する温かいお力添えの賜に他ならず、厚く御礼申し上げます。
一方で、中部横断自動車道の開通や東京オリンピック・パラリンピック大会が間近に迫っているほか、リニア開業に向けた対応など、本県の将来を左右する取り組みはまだ緒についたばかりであります。こうした課題に、引き続き責任をもって取り組むことこそが、今、私に与えられた使命であると考え、明春、県民の皆様方の信を仰ぐ決意を固めたところであります。
私は、これまで、県民の皆様と対話を重ねる中で、現場で汗をかき、懸命に努力をされている県民の皆様方に多く接して参りました。私は、こうした県民の皆様、一人ひとりの力を、誰よりも強く信じ、それがゆえに、山梨県の明るい未来を、誰よりも強く確信しております。私の生まれ育った愛するふるさと山梨は、面積も、人口規模も、日本の中で決して大きいとは言えません。しかし、ふるさと山梨を想う全ての県民の皆様の力を集め、共に支え合い、知恵を出し、汗をかく。このことこそ、山梨が全国、そして世界の中で、ひときわ輝くために、最も重要なことであると考えております。
土を耕し、種を蒔き、芽が出、花が咲き、果実が実る。
これまでの4年という期間で、多くの花を咲かせることはできましたが、それもまだ一部に過ぎません。これまでの取り組みを、たわわに実る果実として一つでも多く育て上げ、全ての県民の皆様にお届けしたい、その一心で、愚直に取り組む決意であります。
国内外の社会の変化、AIやIoTをはじめとした技術革新など、時代は目まぐるしいスピードで変化しております。これらの変化の動きを的確に捉え、斬新な発想と、果敢な挑戦により、国内外の変化を県民生活の向上に変え、全ての県民の皆様が、夢と希望を持ち、安心安全なふるさと山梨を創る。その強い想いを胸に、ダイナミックやまなし加速の第二ステージに向け、県民の皆様の暮らしを最優先に全身全霊を傾ける覚悟であります。
県議会議員及び県民の皆様方には、一層の御指導を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
以上をもって、私の所信表明と提案理由の説明と致します。
平成30年12月3日
山梨県知事後藤斎