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ページID:4363更新日:2017年6月16日

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埋蔵文化財センター_遺跡トピックスNo.0088甲府城下町遺跡(甲府駅北口)

甲府城下町の遺跡

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JR甲府駅の北口を出てすぐのところにある甲府城下町遺跡からは、江戸時代このあたりに広がっていた武家屋敷の跡の他、戦国時代(今から450年くらい前)のお墓も見つかっています。

詳しくは発掘調査情報甲府城下町遺跡(甲府駅北口)

今回はこのお墓に注目してみましょう。

調査風景

調査風景:調査地東側の北口駐車場からのぞむ。画面左奥が甲府駅。


所在地:山梨県甲府市北口2丁目

時代:中世・近世・近代

調査機関:山梨県教育委員会・山梨県埋蔵文化財センター

中世のお墓

お墓は全部で8つ、お墓に関わると思われるものが2つ見つかっています。ここではまずお墓と断定できるものから紹介していきましょう。

26号墓

これはこぶし大の石がたくさんのせられている墓ですが、石をとりのぞくと・・・

26号墓完掘

こんな具合です。


中からは「かわらけ」とよばれる素焼きの皿3枚、歯、銭6枚が見つかりました。また漆の膜が残っている部分があったので、漆器もおさめられていたようです。歯の位置から考えると北枕で顔は西を向けて埋葬されたようです。銭6枚はきちんと重なった状態で見つかり、銭穴の中からは稲籾が1粒でてきました。銭の近くからは藁の束の一部も見つかっていることから、稲穂などが一緒におさめられていたのかも知れません。古くから米には呪術的な力があると考えられていたことからまわりを清める「散米」(さんまい:米を振りまくこと)などが行われていた可能性もあります。

 

香炉形土器墓

ここからは「かわらけ」2枚と銭6枚が見つかりました。「かわらけ」のうち写真でみて上にのっているものは、裏に小さな脚が3つ付いていて香炉のような形をしています。

板敷墓

この墓は底に板が敷かれています。銭4枚が見つかりました。

骨入り墓

この墓にも板が敷かれています。骨と銭1枚が見つかりました。

骨については大腿骨(太もも部分の骨)と思われます。


お墓から見つかった「かわらけ」によれば、これらのお墓は16世紀の中頃のものだと思われますが、まさに時は戦国時代、武田信玄らが活躍していた時代です。調査地周辺は武田城下町の南端にあたる場所ですが、近くには一蓮寺(現甲府城跡周辺に所在か?)や長延寺(現光沢寺)があったと考えられることから、これらに関わる門前町が広がっていたのかも知れません。

お墓に関わるもの

次にお墓に関わると考えられるものも紹介します。

焼石土坑

これは一抱えほどの大きさの焼けた石がかたまって見つかった様子です。

これを半分だけ掘ってみたところ・・・

焼石土坑セクション

このようになりました。

石のまわりからは焼けた骨片や炭が、また穴の底からは焼けた土や炭が見つかりました。

さらにこの石をどけてみると・・・

焼石土坑五輪塔

こんな具合に五輪塔の頭の部分(空風輪:くうふうりん)が逆さになった状態で見つかりました。

 

ここからは「かわらけ」や銭貨は見つかっていませんが、焼けた骨片が見つかっていることや五輪塔の頭が意図的におさめられていることからお墓にかかわる役目をもった土坑だと思われます。

五輪塔土坑

これは割石を重ねた上に五輪塔の笠の部分(火輪:かりん)がそっとのせられたような状態で見つかった土坑です。このまわりではこのような石は全く見つかっていないので、人為的にこのように置かれたものだと考えられます。

銭6枚、六道銭

このように中世のお墓には銭が入れられていることが多く、しかもそれが6枚であることがよくあります。これはなぜなのでしょうか?

この銭は「六道銭(ろくどうせん)」と呼ばれます。

六道銭6枚

上で紹介した「かわらけ」3枚が入れられていたお墓から見つかった六道銭

 

生きる者は死後、生前の行いの如何によって「地獄」「餓鬼」「畜生」「人間」「天上」の六道を輪廻転生する宿命だという思想があります。よく道ばたで見かける‘お地蔵さま'はこの六道の中に身を置いて苦しむ者の救済を願っている仏さまです。この六道それぞれのお地蔵さまに1枚づつ託す賽銭(さいせん)がこの「六道銭」だといわれます。


またみなさんは「死者は三途の川を渡ってあの世に行く・・・」という話を聞いたことがあるでしょうか?その‘三途の川の渡し賃'だともいわれます。

真田家家紋

真田氏の家紋(六連銭紋)銭6枚で「六道銭」をあらわしています

 

戦国時代、信州の上田城を拠点に活躍した真田氏の旗印はこの「六道銭」ですが、これは‘棺に六道銭をおさめる'という風習にならい、「命を惜しまず戦に臨む」という武士の覚悟をあらわしているといえます。戦場においてこの旗印をひるがえして敵に向かうことはそれ自体が強烈なメッセージだったと思われます。

 

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