トップ > 組織案内 > 観光文化・スポーツ部 > 山梨県埋蔵文化財センター > 埋蔵文化財センター_遺跡トピックス一覧 > 埋蔵文化財センター_遺跡トピックスNo.0297県指定史跡甲府城跡
ページID:38382更新日:2016年2月25日
ここから本文です。
県指定史跡甲府城跡一覧
|
石垣の中から石工道具が出土
写真の道具は平成21年度に稲荷曲輪の東面石垣の補修工事において、詰石をはずして流出した土砂を清掃しているときに発見されました。これは石材を加工する際に使われるゲンノウに類するものと考えられます。柄のホゾ穴は長方形、全長13.7cm、柄穴部分の幅は6.7cm、重量は一貫目を切る2.5kgを測ります。柄部が厚く、両頭部は角がとれた不整八角形で、片側頭部は築石に押されて変形していました。写真でもわかるように頭部が潰れており、よく使いこまれていた道具だとわかります。 発見状況いろいろな石工道具 この中のどれかな? 石工の作業場面下の図のような作業工程での石工道具の使用が考えられます。道具が発見された場所は石垣の天端(一番高いところ)から約2m程度下がった地点であり、現地表面からは10m以上高い地点であること、石垣は過去に積み直しなどの工事が行われていないこと、詰石裏側部分の築石に挟まれて発見されたことなどの状況証拠から、築城期である約400年前の道具の可能性が高いことがわかります。 石切場での作業(築城期及び修理改築段階) 石積み作業(築城期及び修理改築段階) 維持管理作業(江戸期全般・現代) なぜ石垣の中から職人さんにとって道具は非常に大切なものですから、焼きを入れ調整したり、柄を交換したりしながら自己管理しています。現代以上にモノが大切にされていた時代にどうして石垣の中に放置されたのでしょう?発見当時作業をしていた職人さんが考えた仮説です。1.石垣の安全を祈るために意図的に安置されたとする説。2.忘れ物説。3.作業中に柄が抜けてそのまま放置説。4.弟子が親方の道具を隠した説。が上がりました。1.は現実的ですが証拠不十分です。2.は鑿(ノミ)などの出土例があるので可能性がありますが、本来柄が付いているものなので石垣の中に忘れていくのは発見状況から無理があるかもしれません。3.は破損したものが放置されるケースはありますが、まだ使える道具をはたして置いていくでしょうか。4.は物語性があって一番ユニークなもので、まるで見てきたかの如くまことしやかに囁かれた仮説です。過去に覚えがあるのか、よっぽど気に入らない親方のもとで作業したことがあるのか・・・。本来秘伝とされてきた石垣普請技術は不明なことが多く、こうした偶然の発見が糸口となっていきます。山梨県教育委員会『県指定史跡甲府城跡平成21年度調査・整備報告書』山梨県埋蔵文化財センター調査報告書第267集(2010)
|