ページID:66841更新日:2017年5月11日

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遺跡トピックスNo.0418甲府城跡と石垣

県指定史跡甲府城跡一覧

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〔写真〕甲府城跡の野面積み石垣

戦国時代末期の1590年代初頭に完成したと考えられる甲府城。
甲府城跡は、全国的にみても特に古い時期の石垣が残っているとても貴重なお城です。
ところで上の写真の石垣には、「石垣の切れ目」がみられます。
どこに切れ目があるか、わかりますか??

 

県指定史跡甲府城跡と石垣

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〔写真1〕舞鶴陸橋からみた野面積み石垣

県指定史跡甲府城跡は、甲府駅から徒歩10分以内の、甲府中心市街地にある城跡です。武田家滅亡後、豊臣秀吉の時代に浅野氏が完成させたと考えられています。

城内には築城期の石垣が良好に残っています。これらの石垣は、石をほとんど加工せずに積んでいく「野面積み(のづらづみ)」とよばれる技術でつくられました。この種類の石垣は、お城の石垣づくりの歴史の中でも特に古い時期のもので、城内全域にこの野面積み石垣が残っていることは全国的にみても珍しく、貴重な文化財です。

 

所在地:山梨県甲府市丸の内

時代:中世末期・近世

報告書:山梨県埋蔵文化財センター調査報告書第303集等

調査機関:山梨県教育委員会

 

巨石をほとんど加工せず、豪快に積んでいく甲府城跡の石垣。荒々しくも堅牢に積み上げられた立派な石垣をみていると…上の写真の矢印の部分に、石垣の切れ目があるのに気づきます。

実は、これまでの石垣構築技術の研究から、この切れ目のラインより左側に先に作られた石垣に、後から右側の石垣を継ぎ足したこと(石垣の拡張)がわかります(写真2)。

今回は、この部分で石垣が拡張されていることが、どのような研究の成果からわかるのかをご紹介します。

 

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〔写真2〕先に作られた石垣と、継ぎ足された石垣

 

石積みの技術についての研究

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〔写真3〕甲府城跡天守台にみられる「算木積み」

調査研究によって様々なことがわかってきた甲府城跡の石積みの技術…今回は、特に石垣の角の部分の石積みに注目します。

写真3は、甲府城跡にのこる天守台の石垣です。ちょうど角の部分にあたります。

甲府城跡の石垣の角の部分には、細長い巨石が長短長短…に積まれていった「算木積み(さんぎづみ)」とよばれる石の積み方がみられます。

算木積みは、写真3のように石を横長に据えるもが一般的ですが、甲府城跡では縦長になるように詰まれることがあります。また、1つ1つの石は形も大きさも不ぞろいで、長短長短…の順番も、乱れることがあります。

甲府城跡の石垣や他のお城の石垣を比較検討することで、上に挙げた特徴は、いずれも特に古い時期の算木積みの特徴であることが分かってきています。

 

石垣の切れ目に浮かび上がる算木積み

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〔写真4〕石垣の切れ目にみられる「算木積み」

さて、改めて最初の石垣をみて見ましょう。

石垣の切れ目の部分をよくみると、切れ目よりも左側に長さの短い石と長い石が交互に積まれていることがわかります(写真4)。しかも、短い石は、縦長に積まれていますね。

そう。これは、甲府城跡に典型的な算木積みの特徴です。

このことから、もともと切れ目ラインよりも左側にあった石垣に、右側部分が付け足されたことがわかります。

先につくられた石垣も、後から付け足された石垣も、どちらも石材をほとんど加工することなく積んでいく「野面積み(のづらづみ)」と呼ばれる技術でつくられていて、よく似ています。そのため分かりにくくなっていますが、これまでの研究成果を踏まえて注意深くみることで、ここに石垣の拡張の痕跡があることがわかるのです。

昔の甲府城のようすを描いた絵図はたくさん見つかっていますが、今のところ、どの絵図も今回ご紹介した石垣の部分は拡張された後の状態で描かれています。

いったい、いつ石垣の拡張がなされたのか、なぜ石垣を拡張する必要があったのか…これまでの調査研究によって明らかになった石垣拡張の痕跡が、この石垣の文化財としての正しい価値付けに向けた新たな調査研究の必要性を投げかけます。

 

 

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