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ページID:78192更新日:2017年4月3日
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トチの実って?稲作が主流になる以前の縄文時代の主食はクリ・ドングリ・トチの実などの木の実でした。木の実からデンプンをとってクッキー状やパン状にしたり、おかゆ状にして食べていたと考えられています。 この中で今回取り上げるトチの実は、トチノキ科トチノキ属の落葉樹です。渓流の近くなどの湿潤地を好み、日本全国に分布しています。山梨では、実の収穫は8月下旬から9月にできます。果皮の中に2個くらいの実が入っています。お米と同程度のカロリーがあり、カリウム・カルシウム・ナトリウム・食物繊維が豊富に含まれています。 トチの実には、サポニンが持つ、肌の調子を整える効果やコレステロール・中性脂肪を抑える効果、タンニンによる抗酸化作用、また多く含まれるカリウムによる血圧を安定させる働きなど、さまざまな効果があります。 トチの実は、縄文時代全般をつうじて、利用が確認されていますが、とくに寒冷化が進む後晩期になると、全国的に利用が多くなります。その後も、山間地などののお米がとれない地域では、不作の時期などの食料として、近代まで利用がされてきました。現在では、お土産で栃せんべいなどがあります。 トチの実とその果皮 上の平遺跡上の平遺跡は、甲府市の風土記の丘公園内にあります。7回にわたって調査がされ、縄文時代中期の集落跡、弥生~古墳時代の方形周溝墓群が見つかった遺跡です。縄文時代の集落跡からは、全国でも珍しい形の装飾品や多数の土偶が見つかっており、地域の拠点的な集落であったと考えられています。この縄文の集落を構成していた住居跡のうち、2軒から炭化した木の実が発掘されました。 これらの木の実の中にトチの皮(の可能性が高いもの)があることが、その後の分析でわかりました。 特にトチの皮は、これら木の実のうち、各住居跡で35パーセント~70パーセントと高い比率を占めていて、寒冷化が始まる前の縄文時代中期においても、この地域ではトチの実が重要な食材であったと考えられます。
所在地:甲府市下向山字上ノ平1069-1外 時代:旧石器~平安時代 報告書:末木健・村石眞澄_山梨県埋蔵文化財センター調査報告書第94集_『上の平遺跡第6次調査・東山北遺跡第4次調査・銚子塚古墳南東部』1994 調査機関:山梨県埋蔵文化財センター 山梨県内のトチの実を利用した痕跡山梨県内では、上の平遺跡のほか、北杜市、韮崎市、上野原市など数か所の遺跡からトチの実の皮の炭化物など、トチの実を利用した痕跡が見つかっています。 木の実は粉状にして食材利用をしていることから、寺所第2遺跡(北杜市)や釈迦堂遺跡(甲州市)などから見つかったパン状もしくはクッキー状炭化物も関連が推測できます。 また姥神遺跡(北杜市)など数遺跡からは土製スプーンが発掘されており、おかゆ状食品との関連が想定できます。 トチの実のアク抜きを実験するこのように、さまざまな食材利用がされていたと考えられるトチの実ですが、サポニンやタンニン、さらにはアロインなどの有毒成分を多く含んでおり、苦みや渋みが強くアク抜きをしないと食べることができません。 縄文時代の人たちは、どのようにしてこのアクを抜き、食材利用していたか、当時あった材料を利用して実験するこころみを現在行っています。 この実験によってわかることは、トチの実が食べられるようになるまでにどのくらいの手間や期間がかかるのか、といったことや、トチの実をアク抜きした時にどの程度の量が残るのかといったことなどです。 こうしたことから、当時の生活におけるトチの実の利用にかかわる行動や時間を推定し、縄文時代の人々がどのような技術で身の回りの資源を利用していたのかを知ることができます。それにより、考古資料の活用がさらに有意義なものになるのではないでしょうか。 アク抜きしたトチの実を使用したトチ餅を試食するイベント参加者のみなさん |