更新日:2022年2月28日
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滝口雅博氏
雄大な富士山、自然豊かな山々の麓で、山梨を代表するジビエハンターとして活動する滝口さん。ジビエ料理店の店主、食肉加工処理施設の所長、さらには山梨県ジビエビジネス戦略会議委員も務めており、まさに山梨のジビエの体現者と言っても過言ではありません。今回、そんな滝口さんに、ジビエを通じて様々な話をお伺いしました。
『地元の人が作物を作ったら全部食べられてしまう、綺麗な花を植えても食べられてしまうため、ボランティアで、人助けのために毎週1回猟をしています』。シカは農作物だけでなく、檜や杉の木の皮を剥いで食べます。その結果、木が枯れ、森林機能が維持できなくなることで、富士山麓の生態系が壊れる可能性もあります。『すごく被害の多い地域は、積極的にシカの個体数を減らすというやり方をしています。そうすることで、世界文化遺産の山梨の自然は守れると思います』。むやみにシカを捕獲したくないが、守らなくてはいけない自然もある、そんな難しさやジレンマを滝口さんの言葉から感じることができました。
『豊かな自然が、最高のジビエを育む環境を作り出しています』と滝口さんは言います。
山梨県の気候の特徴は、昼夜の気温差が大きい、年間の日照時間が日本一長い、といった特徴を持っており、夏と冬の温度差も大きく、四季もはっきりとしています。
これは、シカの食べ物となる植物がおいしく育つために最も適した気候なのです。
しかしそんな恵まれた環境の中でも、のべつまくなしに狩猟を行うことはしません。
滝口さんはシカが食べる植物の育ち具合や、季節によって雄と雌で異なる肉質も理解したうえで山に入ります。自然と向き合い、時には身を任せ、与えられた環境に従って狩猟を行うことが、ジビエハンターとしてのルールなのです。
山梨県では、安全安心なジビエ(シカ肉)を消費者に届けるために、県独自の「やまなしジビエ認証制度」を創設し、やまなしジビエの認証をしています。この認証制度は、県内でシカ肉処理を行っている事業者を対象に、設備面での施設認定と衛生面での認証を行う2段階制となっており、厳格な品質・衛生基準に基づいて審査を行っています。滝口さんが所長を務める富士河口湖町ジビエ食肉加工施設も「やまなしジビエ認証制度」を取得しており、徹底した管理を行っています。自然を守るために、安全安心なジビエ肉を消費者へ届けるために、県とジビエハンターが一体となって取り組んでいる「真に上質なシカ肉を供給する仕組み」が「やまなしジビエ」なのです。
『かわいそうだけど世界文化遺産を守るために、農業被害を減らすために、最高のシカ肉にして、お客様においしいって喜んでもらうからな。皮も何も全部使うから堪忍しろよ、と言って命をいただきます』。滝口さんは獲物への感謝を決して忘れません。そんな大事な命をいただいている自覚があるからこそ、お客様に提供する料理も決して手を抜かないそうです。『料理はお客さんに持っていって必ず説明します。そして低価格で提供できるように努力するし、スモークなどの仕込みも夜中まで頑張っています。わがままな店ですけど、最高のジビエを楽しんでもらえると思います』。滝口さんのシカへの感謝の気持ちと料理へのこだわりが、今こうして多くの人を惹きつけているのかもしれません。
誰しもがシカを捕獲できるわけではありません。シカを捕獲するには狩猟免許が必要となります。
しかし、免許を取得した人が実際にジビエハンターとして活躍できるかどうかは全く別の話なのです。
『僕は、ジビエハンターを志す誰もが、3年で捕獲から解体までできるようにして、4年目に各地区の支部へ返すという活動をやろうと思っています。超英才教育して後進を育成します。3年でできると思います』。ジビエを盛り上げていきながら、今後は若手の育成にも力を入れていきたいと語る滝口さん。『肉質の向上、捕獲技術の向上、それらが実現すれば、山梨県にはワインがあるので、それに合う最高のジビエがあることで、絶対成功すると思います。成功させなきゃいけません』。ジビエハンターとしての誇りや、やまなしジビエの未来への熱い想いが、これからも滝口さんを突き動かしていきます。
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