更新日:2025年2月14日

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食べる人の笑顔を想像しながら育てる極上の富士の介【前編】

横瀬 明義氏

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三頭山荘では、昭和50年に横瀬明義さんのお父様がヤマメ・イワナ・ニジマスといった淡水魚の養殖を始めました。平成5年に横瀬さんが後を継がれ、令和3年からは山梨県が開発したブランド魚「富士の介」を中心に養殖をしています。「食べる人の笑顔を想像しながら、美味しくて安全・安心な、極上の山梨県産淡水魚を目指しています」という横瀬さんに「富士の介」の魅力や養殖にかける思いなどを伺いました。

豊かな自然環境の中、清らかな水の中でのびのび育つ富士の介

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三頭山荘は日本三百名山・山梨百名山のひとつに数えられる三頭山(みとうやま標高1,528m)のふもと、標高600mの豊かな自然の真ん中にあります。このあたりは西原(さいはら)郷と呼ばれ、縄文時代中期末から後期前半のものといわれる集落址が発見されている歴史ある地域です。また鶴川渓谷の清らかな水に恵まれた地域であり、三頭山荘では鶴川の支流の一つである方屋川(ほうやがわ)の河川水と湧水の二つの水源を利用して養殖を行っています。「富士の介」は山梨県水産技術センターがマス類の中で最高級とされる「キングサーモン」と、養殖に適した「ニジマス」を交配して約10年の歳月をかけて開発した山梨県オリジナルの魚です。全国には多くのご当地サーモンがありますが、キングサーモンの血を引くのは「富士の介」だけ。日本で唯一(世界初)の魚です。
「平成5年に養殖業を引き継いだ当初は、ニジマスやイワナなどを育てていましたが、私どもの養殖場を訪れた山梨県水産技術センターの研究員の方が「ここで育てたら美味しい富士の介が育つでしょうね」と言ってくれたことがきっかけとなり、令和3年に富士の介の養殖を始めました。このあたりは昼と夜の寒暖差が大きいことから味の濃い美味しい野菜が収穫されているなど、自然環境に恵まれた地域であり、水温は夏場でも19 ℃位までしか上がらないので、暑いのが苦手な冷水魚である富士の介の養殖にとても適しています」と横瀬さん。大自然の恵みと、横瀬さんのきめ細やかな養殖の技により「富士の介」は大切に育てられています。

富士の介の様子を見ながら、愛情をこめて丁寧に世話をする日々

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富士の介はとてもデリケートな魚と言われています。健やかに育てるためには、まず水が重要になると横瀬さんは言います。「養殖池(以下・池)の水はこの地域で飲料水として使用しているほどきれいな水をかけ流しで使っていますが、水質、環境管理は欠かせません。河川水を引いているので池の底に泥が溜まったり、藻がついたりしないように、デッキブラシでこまめに掃除をしています。水の匂いは魚の身に移ってしまいますし、富士の介は酸素を多く必要とする魚なので、水質の管理は非常に重要になります」。もう一つ重要なのはエサと、エサのやり方にあると横瀬さんは続けます。「エサはSDGsの取り組みの一環として、ブドウ果皮粉末入りの加熱加工された国産の良質な配合飼料を与えています。ブドウ果皮粉末には山梨の特産品、ワイン醸造の際に出る県産赤ワイン用ぶどうの果皮を乾燥させたものが使われていて、ポリフェノールという機能性成分が含まれており、魚が健康に育つようです。エサを食べる時に口先が擦れてキズがつくのを防ぐため、エサが浮かんでいる状態で食べられるように少しずつエサを与えるなど、富士の介のエサやりには工夫が必要です」と常に富士の介の様子を見ながら丁寧な世話が続けられています。

健康な富士の介を育てるために

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横瀬さんは富士の介が健康に育つように、水の管理やブドウの果皮のエサを与える他にも実践していることがあります。「私どもでは大きな池で少ない個体数を飼う『薄飼い』をしています。もっと多い数を飼うことも可能ですが、薄飼いすることによって、魚へのストレスが少ない環境で育てることで健康に育ち、病気になるリスクが減るため、「無投薬」で育てることが強みです。四季の環境が水温に影響を及ぼす河川水を利用して天然魚に近い状態で育てている為ゆっくり成長しますがその分ほど良い脂がのり、身の引き締まった魚に育つので、豊かな自然の恵みをたくさん受けて育つ環境はやはり健康的ですね。富士の介の出荷基準では出荷する大きさは1.5kg以上と定められています。稚魚から飼い始めて2年ほどで1.5kgくらいになりますが、2kg以上になるまでには3年はかかります。色の基準も定められていますが、ブドウの果皮のおかげで美しく鮮やかなサーモンピンクカラーの肉色をしています。エサに使用しているブドウの果皮はすべて山梨県産のものです。ワイン生産量日本一の山梨ならではと言えると思います」。冬場は水温が0℃にもなる池に入り、秋は絶え間なく池に落ちてくる枯葉をすくいあげるなど、一年を通して富士の介にとってより良い水質管理をするため、清掃などの作業を欠かさない横瀬さん。養殖業を始めた当初は全身筋肉痛になったこともあるそうですが、「もう習慣ですから、大変と思ったことはないですね」と笑顔で話してくれました。

【後編】では、富士の介の味わいの魅力や美味しい食べ方などを紹介します。お楽しみに!

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