更新日:2025年2月17日
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横瀬 明義氏
鶴川渓谷の清らかな流れと豊かな自然環境の中で、先代であるお父様が築き上げた養殖業を受け継ぎ、現在は山梨県のオリジナルブランド魚「富士の介」の養殖に力を注ぐ横瀬さん。後編となる今回は、丁寧に妥協なく横瀬さんが育てた日本で唯一キングサーモンの血を引く魚、富士の介の味わいの魅力や美味しい食べ方などを紹介します。
「富士の介は栄養価もとても高いんですよ」と横瀬さん。山梨県水産技術センターの研究によると、富士の介はアスパラギン酸、グルタミン酸などのうま味成分がニジマスに比べて約1.6倍もあることがわかっています。また、脂ののりが程よく、他の海面養殖サーモンと比べて高タンパク、低カロリーでとてもヘルシー。さらにビタミンDが多いという結果も出ており、富士の介は栄養面からも優れた食材であると言えます。「高い栄養価はもちろん、その美味しさも格別です。マス類で最高級とされるキングサーモンの美味しさを受け継ぐ濃厚な味わいと旨みはまさに唯一無二!上品な脂とスッキリした後味も魅力です」。そんな富士の介の味の魅力を引き出す秘訣は締め方にあるといいます。「締める前の富士の介のストレス度合い(疲労具合)が鮮度変化に強く影響しますので、水揚げしてすぐ元気な状態から速やかに山梨県水産技術センターで調べられた富士の介の鮮度保持に有効な締め方で締めることにより、鮮度の維持とともに富士の介が本来持っている旨みを引き出すことができるのです。締めてから熟成させた富士の介の刺身は最高に美味しいですよ」と、締めるところまでしっかりこだわりを持って仕上げています。
三頭山荘に伺い、富士の介を使ったお料理をいただきました。目にも鮮やかな肉色の美しさ、そして、寿司、お造り、焼き物、揚げ物、炊き込みご飯などバラエティ豊かなメニューそれぞれに富士の介の味がしっかり活きていることは驚きでした。お刺身の美味しさもさることながら、炙りや、中がレアの状態に仕上げた揚げ物など、すこし火を通した富士の介の美味しさは富士の介という魚の奥深い魅力を感じさせてくれました。「富士の介は脂が溶ける温度が低いので、お刺身でも上品な脂の味を十分に楽しめますが、ちょっと火を通すことで脂の美味しさがにじみ出てくるので、脂の甘みや旨みが感じやすくなるんです。味がしっかりしているので和風でも洋風でも、さまざまな料理によく合います。皮も栄養が豊富で美味しいですよ。香ばしく焼き上げるポアレにしてもいいですが、半生で身がふわとろになるミキュイにしていただくのもおすすめです。フランスからいらしたお客様にも『魔法のようなサーモン』と言っていただきました」と語る横瀬さんの表情からは富士の介に対する自信が感じられました。
「最初は民宿のお食事として提供したいと思って富士の介の養殖を始めました。ですが今はそれだけでなく、この地域の魅力を知ってもらいたいという思いもあります。美味しい食材は地域の魅力につながるものですよね。同時にサステナブルな未来ということも考え、ブドウの果皮の利用など、なるべく地元のものを活用した養殖をしていきたいと思っています。地酒やワインとのマリアージュも提案していきたいですね。日本酒や白ワインと相性が良いのはもちろんですが、清水と地元産のブドウの果皮のエサで育てた富士の介は、なんといっても地元のワインとの相性が抜群です。名水の地である山梨だからこそ楽しめる富士の介とお酒とのマリアージュも是非楽しんでいただきたいです。これからも固定観念にとらわれず、どんな時でも思いこんだものと違うやり方があると思いながら創意工夫し改善して、品質の向上に努めていきたいと思います。そして、食べてくださった方が幸せになれるような美味しい感動をお届けできるよう、がんばっていきたいです」と語る横瀬さん。見渡す池には立派な富士の介が元気いっぱいに泳いでいました。