更新日:2022年3月25日
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箭本孝徳氏
やまなしでは、冬から春の晴天率の高さを活かしたイチゴの促成栽培が行われており、生産者の皆さんの卓越した栽培技術やこだわりによって、最高の逸品が生み出されています。
甲斐市のヤモト農園の箭本さんもそのおひとりです。箭本さんは、県立農業大学校を卒業後、民間会社での勤務を経た後、家業を継ぐ形で就農しました。当初はリンゴやブドウ、カキなどの品目を主力に栽培していましたが、観光と合わせて高収益が見込めるサクランボの栽培に徐々に力を入れるようになったそうです。
そんな中、農閑期となる冬から春に何か栽培できないかと考えた箭本さんは、イチゴの促成栽培について取り組み始めたとのことです。先進地に通い知識を得るほか、独自の研究を重ねることで、栽培技術の腕を磨き、今ではイチゴが主力品目となっているそうです。今回は箭本さんに、どのようにして高品質なイチゴが生み出されるのか、お話を伺いました。
箭本さんの作る主なイチゴ品種は、一般的な品種よりもビタミンCが豊富に含まれるという“おいCベリー”。箭本さんはこの品種について、「栽培が難しい品種で、収量が多くはないので、最初は違う品種に替えようかとも思いました。しかし、“おいCベリー”を食べた人が皆とても美味しいと喜んでくれるので、頑張って作り続けてみようと思いました。」と教えてくれました。その栽培の難しさゆえに、県内でも栽培する人があまりいないとのことです。案内していただいたイチゴ農園では、赤い宝石のように輝くイチゴが鈴なりに実をつけていました。
観光摘み取りをしていた時には、その赤い宝石を求め、県内外から多くのお客さんが訪れたということです。「特に宣伝はしていませんでしたが、口コミで徐々にリピーターが増えていきました。新型コロナウイルス感染症の影響で今は観光摘み取りはお休みしていますが、直売所には今も多くのお客さんに来ていただいています。」とおっしゃっていました。その言葉どおり、取材の合間にもお客さんが絶えず訪れてきました。箭本さんのイチゴは、今も変わらず、多くの人を魅了し続けています。
イチゴ栽培は、土で栽培する土耕栽培と、ベンチ式で栽培する養液栽培に大きく分けられますが、箭本さんは土耕栽培にこだわりを持っています。「土で育てた方がイチゴ本来のおいしさが出ると思います。また、肥料については過剰に与えないように気を付けています。人間もそうですが、腹八分目が健康的に育つと言いますので」とおっしゃっています。
また、イチゴの栽培では病害虫の発生が問題となることがありますが、箭本さんはそれらを防ぐ農薬を極力使用しないことを心がけています。特に土壌消毒については、イチゴ栽培を始めてから一切していません。「土づくりをしっかりしているので、もしかしたら、土壌中の微生物のバランスが良く、害を及ぼす病原菌の発生が抑えられているのではないでしょうか。」と箭本さんは考えています。
長年の経験の積み重ねがあったからこそ、イチゴが健全に育ち、かつ、おいしいイチゴを生み出すことに成功しているのではないでしょうか。
箭本さんのイチゴ農園では、大手百貨店の主催によるイチゴ狩りツアーが行われたり、栽培するイチゴは様々なメディアに紹介されるなど、非常に高品質で人気があります。「コロナ禍となる以前は、大変多くの方にご来園いただきました。皆さんに非常に喜んでいただいたようで、帰るときは一様に笑顔でした。」と、その時を思い浮かべながら、語ってくれました。
また、箭本さんの栽培するイチゴは、日本農業賞やYBS農業賞も受賞するなど、とても高い評価を受けています。「審査員の方から、『こんな素晴らしい農業者がいたのか』というお言葉を頂きましたが、それが一番感激しましたね。」と話す箭本さんは、とても嬉しそうでした。
「これからも皆さんにおいしいと言ってもらえるようなイチゴを作っていきたいですね。努力して美味しいイチゴを栽培していけば、大きな宣伝などしなくても、消費者はしっかりとついてきてくれます。」と語る箭本さんは、“おいCベリー”以外にも、食味の良いとされる品種や、新しい品種の栽培に積極的にチャレンジしています。
また、箭本さんはイチゴ栽培のノウハウを地域の後継者に伝えようと考えています。「イチゴ栽培について教えてほしいという人には、どんどん来てもらいたいです。特に若い人には、夢をもって積極的に取り組んでほしいですね。イチゴ栽培をする人が増えれば、地域も活性化していくと思います。」と目を輝かせながら、この地域の未来に対する想いも語ってくれました。これからも、箭本さんの挑戦はまだまだ続いていきます。
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