更新日:2025年2月21日

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父と息子が心ひとつに、「甲州地どり」に注ぐ惜しみない愛情【前編】

加藤 政彦氏

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学と大学院で畜産を専攻し、鶏の育種等を学んだ後に、1969年に先代であるお父様が経営する養鶏業を継承した加藤政彦さん。その後、山梨県畜産試験場(現・山梨県畜産酪農技術センター)において計画が立ち上がった銘柄鶏の開発に、計画段階から協力して「甲州地どり」誕生に尽力しました。また生産から販売までを行う「甲州地どり生産組合」を設立し、甲州地どりの普及に努めています。「甲州地どり人生です。これまでも、これからも」と笑顔で話す加藤さんに甲州地どりに寄せる思いなどを伺いました。

安全・安心で健康な鶏を目指し、苦難を乗り越え歩み続けた日々

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緑に囲まれた豊かな自然環境の中で、太陽の光を浴びながら、広い運動場で元気に動きまわる鶏たち。昔、農家の庭先で飼われていた時代の風景が思い起こされるような、生命力あふれる鶏の姿が見られる加藤さんの養鶏場を訪ねました。

「甲州地どり」は、山梨県畜産試験場(現・山梨県畜産酪農技術センター)と甲州地どり生産組合とで開発した、「山梨県産シャモ」(父親)と「白色プリマスロック」(母親)の交配により生まれた鶏で、平成元年に販売が開始されました。甲州地どりの開発につながった要因には、日本の養鶏産業の変化があったと加藤さんは言います。「昭和40年代頃から外国から鶏が入ってきて、大規模な養鶏業を展開する事業者が増えていき、昔から日本で飼育されていた鶏はおそらく99%以上淘汰されました。日本の養鶏業が様変わりしていく状況をなんとかしたいと、少ない飼育羽数でも、ある程度の収入が見込める付加価値がついた鶏をつくろうと考えたのです。その頃山梨県は養蚕が衰退して桑畑の遊休農地が増えていましたので、その広い土地を使い、放し飼いをして、健康で安全・安心な鶏を育てることを目指しました」。このような背景で開発が進められた鶏は「甲州地どり」と名付けられ、平成元年から販売が開始されました。しかし「販売を始めてから15年間くらいはまったく売れなかった」と加藤さんは言います。「協力してくれている県内のスーパーが一定量を引き受けてくれていましたので年間5000羽から6000羽の生産を維持することはできましたが、それ以上増やすことはできず、私はアルバイトをしながら子どもたちを育て、なんとか15年の月日を過ごしていました」と当時を振り返ります。

昔は当たり前にあった、農家の庭先で鶏が遊んでいる光景を生産現場で再現したかった

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周知が進まず厳しい状況が続く中で、転機が訪れます。「山梨県の広報誌で取り上げられ、その記事を見た県内の飲食店さんが農場を訪ねて来てくれたんです。それから口づてに広がっていき、さらにグルメ系の漫画や全国区のメディア等でも紹介されたことがきっかけとなり甲州地どりの高い品質と美味しさがようやく広まっていきました」と加藤さん。
健康的で食味がいい鶏肉にするために、甲州地どりは手間とコストをかけて育てています。一般的な国産若鶏の飼育期間が約50日であるのに対し、甲州地どりは約120日間かけてゆっくり育てます。飼料も遺伝子組み換えなしの植物性蛋白のみで、抗生物質、成長促進剤、抗菌剤などの薬は一切使っていません。鶏の法定伝染病に対応するワクチンを雛の時に接種するだけです。また加藤さんの養鶏場は鶏舎の隣に広い土の運動場があり、鶏たちが太陽の光を浴びながら元気に走ったり、のびのびと過ごすことができる環境が整っています。「よく動けば肉質も味もよくなりますし、小石をついばむことで内臓も丈夫になり健康に育ちます。砂肝の大きさも普通の鶏の2倍以上ありますよ。飼育環境が評価され、近年注目されている『アニマルウェルフェア(家畜の快適性に配慮した飼養管理)』の認証も取得しました」。多くの手間や鶏舎の温度管理など、飼育にはさまざまな工夫や苦労が伴いますが、加藤さんは「苦労はないですよ。鶏の生命力を信じて、健康的な成長を見守っているだけですから」と笑います。

「甲州地どり」の品質を守り育む誇りと、親子で創る美味しい未来

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味にこだわる飲食店経営者の間で口づてに広がり、今では全国から高い評価を受けるまでになった甲州地どりですが、「肉を増やすための経済的な効率化は一切考えていない」と加藤さん。「一般なブロイラーは約50日で3kgになり、そこまで育つのに約5.7kgの餌を食べます。それに対して甲州地どりは120日かけて3kgになるので餌は14kgから15kg必要になります。それだけ効率が悪いんです。ですから大きな利益は出ていませんが、私は経済的な効率を上げて肉を増やすというのは考えていません。ただ味だけは絶対に落とさないための育種交配はやっていくつもりです」と言います。「せっかくつくった甲州地どりに消えてほしくないですから。それに息子が大学を卒業した後「父ちゃんの仕事を半分くれ」と言って帰ってきてくれたので、やめるわけにいきませんよ。私は美味しい鶏を育てることで精一杯ですが、息子が販路の開拓や加工品の開発をやってくれるようになり、いろいろな人が繋がって可能性が広がっているのを感じています。私もまだまだがんばりますよ」と語る加藤さんは、とても優しく、そして力強い意志に満ちた表情をしていました。

【後編】では、加藤さんの息子である加藤健さんに伺った家業への思いや甲州地どりの味の魅力などを紹介します。お楽しみに!

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