更新日:2024年1月16日
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渡辺三夫氏
「私は80歳になりますが、肉牛への熱い思いは畜産を始めた頃からずっと変わっていませんよ」と大らかに語る渡辺さんは、今も精力的に畜産業に携わり、未来を見据えた活躍をしています。山梨のブランド牛肉「甲州牛」の創成期から尽力してきた渡辺さんに、肉牛に懸ける情熱や、山梨の畜産に対する思いなどを伺いました。
渡辺さんは「第50回山梨県肉畜鶏卵共進会(肉牛の部)」において、最高賞である金賞(山梨県知事賞)を受賞した山梨を代表する畜産の匠です。
そんな渡辺さんが畜産業を営むようになったのは今から50年ほど前のことだといいます。「当時私は長野県の団体職員として畜産に関わる業務にあたっていました。その中で『牛はいいなぁ』と感じ、自分の力でやってみようと決意して畜産の世界に飛び込んだのです。縁あって清里の畜舎を使わせてもらえることになり、最初は2頭から始めました。八ヶ岳南麓の豊かな自然と綺麗な水に恵まれた環境が畜産に適していたこともあり、今では清里と白州町の2つの畜舎で合計120頭ほどの肉牛を育てています」。
「ここまでやってこれたのは、やはり『牛が好き』だからですね」と語る渡辺さん。それだけ牛に魅力を感じるのは、甲州牛の素晴らしさにあると言います。
「甲州牛」は「甲州牛・甲州ワインビーフ推進協議会」会員の卓越した飼育技術のもと、丹念に育てられた黒毛和種肥育牛で、最長飼育地が山梨県であり、日本食肉格付協会が定める品質(肉質)ランクが4等級または5等級に格付けされた牛です。優良な血統の牛を山梨県の豊かな自然環境の中で、生産者が素材や配合を工夫した餌を適切に与えるなど、経験と研究の積み重ねにより確立された飼育技術によって生み出されています。
「私は毎日、一頭一頭を良く見ながら育てることを大切にしています。また私たち『甲州牛・甲州ワインビーフ推進協議会』のメンバーは、お互いに情報交換をしたり、時には県外の畜産農場を視察したりしながら、課題に向き合い、研究を重ね、常に飼育技術向上に努めています。業界が一丸となって取り組んでいるからこそ『甲州牛』という山梨ブランドは成長し続けているのだと思います。この団結力と向上心が私たちの強みだと言えるでしょう」。
渡辺さんの牛に懸ける情熱は山梨の畜産業にも良い影響を与えました。「私は飼育の仕事だけでなく売買の仕事も手掛けています。商人としての目利きの力を牛の飼育に反映させ、流通まで一貫して携わりながら、良い牛を育て、適正な価格で販売していく体制を作っていきました。しっかり利益を出せる仕組みができれば、安心して安定的な畜産が実現できますから、若手も頑張ってくれます。そうやって後継者を導いてきました。この地域の酪農家は現在では3代目が中心になって活躍しています。時代と共に働き方も変化して、しっかり技術を習得したヘルパーさんを農協の事務局から呼ぶこともできるようになり、畜産業のワーク・ライフ・バランスも整ってきました。これも、初代から時代が変わる中で、畜産業もどう変化して、継続していくべきかを常に仲間と共に考え行動してきたからこその成果だと思っています」。
【後編】では、甲州牛のおいしさや山梨の畜産業の可能性などをご紹介します。お楽しみに!
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