更新日:2024年2月15日
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保坂親司氏
豪華なイメージのものから、野の花を思わせる可憐なものまで、多彩な品種が揃うシクラメン。その魅力を暮らしの中で楽しむために、後編ではご家庭でシクラメンを長く咲かせるポイントや、個性ある新品種などについて紹介します。
保坂さんが令和4年度山梨県花き品評会において農林水産大臣賞を受賞した際に出品したシクラメンの品種は、刷毛目(はけめ)のようなグラデーションの花色が美しい「曙」です。花の色や形の美しさはもとより「鉢と葉と花のバランスも評価していただけたのかもしれません」と謙虚に語る保坂さん。現在は約30品種ほどのシクラメンを栽培しています。
「私がシクラメン栽培を始めた20年ほど前にはまだ品種自体が少なく、最初に手がけたのはパステル系と呼ばれる、真紅の『シュトラウス』や深いピンクの『ベートーヴェン』という品種でした。ですがここ数年で急激に海外でも日本でも新品種が出てきています。これはシクラメンのこれからに大きな可能性が感じられる流れであり、私も期待しているところです」。
近年、時代のニーズに合わせた品種が誕生する中で、若い世代でもシクラメンに興味を持つ方が増えてきました。「以前はシクラメンというと中高年世代の方が好まれる傾向にありました。しかし、シクラメンのイメージとして定着している優雅で豪華なもの以外に、新しい色や、花の形に個性があるシクラメンが出てきたことで、若い世代にも注目されるようになってきました。私も、深い紫色に近い青いシクラメン『SAMURAI』や、白い花びらの縁にグリーンのフリンジが入っている『アイスプリンセス』といった人気上昇中の品種を栽培しています。数ある品種の中で、私自身が好きな品種は『フェアリーピコ』。その名の通りまるで妖精のように愛らしい八重咲きのミニシクラメンです。フェアリーピコは他の品種のように花を中心にまとめるスタイルではなく、ボール状に自然な感じに咲かせるのも素敵です。私は幼い頃から野に咲くスミレなどの花が好きだったこともあり、フェアリーピコの自然な雰囲気にとても魅力を感じています」。
「冬場は室内の窓辺に置くと良いと言われてきましたが、最近増えている紫外線カットのガラスを使用している場合、窓辺に置いても日光の効果を得ることはできません。この場合は、風が強くない穏やかな日に、1日1時間くらい日光に当ててあげると良いと思います。肥料は、鉢の大きさにもよりますが、緩効性肥料を月に1回程度与えると良いでしょう。
水やりは、鉢が底面吸水タイプの場合は水が無くなる前に足すだけで大丈夫です。普通の鉢の場合は、土の表面が乾いたら水を与える程度でいいと思います。しおれた花は取り除くようにしてください。とにかく『日光をしっかり当てる』というポイントを押さえておけば、5月頃まで花を楽しむことができます。消費者の皆さんが育てやすいシクラメンを作ることも私が大事にしている目標です」。
物価の高騰が続き、花き業界も資材等が高騰しているにもかかわらず、市場の単価は上がらないという苦しい状況が続いているといいます。「私は鉢の土にこだわっていますが、その土の値段も上がってしまいました。しかし、絶対に妥協はしたくないので同じ土を使い続けています。コロナ禍では家で過ごす時間を充実させるために花を飾る人が増え、花の需要は伸びていました。ですが5類移行後は人々の興味が外遊びに向かうようになり、花き業界はかなり厳しい状況に陥っています。しかし、コロナ禍で花を楽しんだ人たちは、きっと花のある暮らしの素晴らしさを感じてくれたはずです。その人たちが再び花に目を向けてくれると信じています」。
「植物が家にあるだけで、気持ちが安らぎます。どんな花でもいいので、まず部屋に飾ってみてください。その最初のひと鉢がシクラメンだったら嬉しいです」とメッセージをくれた保坂さん。その目はシクラメンで描く美しい未来を常に見つめています。
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