更新日:2024年2月9日

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一株一株に愛情をこめて、心に響く美しきシクラメンを栽培【前編】

保坂親司氏

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南アルプスの山々の雄大な景観が目前に広がる風光明媚な地でシクラメン栽培に情熱を注いでいる保坂さんは、令和4年度山梨県花き品評会において最高賞である農林水産大臣賞を受賞しました。この品評会は生産者の栽培技術向上や生産意欲の高揚を図ると共に、消費者への山梨県産花きのPRを目的に開催されています。卓越した栽培技術を持つ若き生産者として奮闘する保坂さんに、シクラメンに対する想いなどについて伺いました。

南アルプスの麓の町で、父から息子へ受け継がれた「シクラメン」を愛する気持ち

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日本有数の山岳景観が望める南アルプス市では、その豊かな自然環境と首都圏などの大消費地へのアクセスの良さなどの好条件を活かし、花き栽培が盛んに行われています。保坂さんのお父様がこの地でシクラメンの栽培を始めてから約40年、「物心ついた頃から、いつもシクラメンが身近にあり、植物はいいなと感じていました」と振り返る保坂さん。お父様から技術を受け継ぎ、踏まえた上で、ご自身も工夫を重ねながら、美しいシクラメンを咲かせています。

シクラメンは1年かけて大切に栽培していく

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年末年始を彩る花として高い人気を誇るシクラメンは11月に出荷の最盛期を迎えます。そして出荷と同時期に種蒔きが行われ、そこからまた約1年をかけて大切に栽培されていきます。
「例年、11月20日前後に種蒔きをしています。まず種を一粒ずつプラグトレーというプラスチックの播種箱(種を蒔いて苗を育てるときに使用する浅い箱)に蒔き、2月頃から成長に合わせて2回から3回植え替え、6月から7月頃には最終的に鉢のサイズを決めて定植します。ここまでの期間は、病気にならないように気を配り、しっかり根を張らせていくなど、植物の基礎となる部分をしっかり作ってあげることが大事になります」。

花全体の形や花の数は、葉と根をいかにしっかり作るかで決まる

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「7月から8月は、暑さに弱いシクラメンにストレスをかけないように、触る頻度は減らして空調に気を配り、9月に入ってから本格的に手を入れ始めます。シクラメンの品質を決める花全体の形や花の数は、葉と根をいかに作るかで決まります。このために『葉組み(はぐみ)』という作業を行います。葉組みとは、まず株の中心部分が空くように金属のリングをはめて、葉を外側に寄せる作業のことです。これにより、全体の形がよくなるとともに、中心部に日が当たって写真のように花芽が伸びるので、花が中心に集まり、花と葉のバランスのよいシクラメンになります。葉の様子や花芽の動き具合をしっかり見て、日の当たり方や気温、湿度、水やりなどの管理をしながら、出荷まで毎日手入れを続けていきます。現在、27,000鉢のシクラメンを栽培していますが、すべてを手作業です。
一鉢一鉢手をかけていくことで、葉はこんもりと丸く鉢を覆うように育ち、中心部から綺麗な花が咲く、理想的な美しい形のシクラメンが完成するのです」。

生産者ごとに工夫を凝らす肥料は、積み重ねた経験と努力の結晶

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自慢の技は「肥料の管理」だと言う保坂さん。「肥料の配合や与える時期は非常に重要で、ひとつ間違えば理想の形にはなりません。例えば、植え替えのため、鉢を替えるごとに肥料も変えるなど、肥料は何種類も用意して場面ごとに使い分けています。肥料とその使い方は生産者によって違い、その内容が外に明かされることはありません。それほど大切なものなのです。昨今、急激に気象条件が変化することが増え、ハウス内の環境の管理も難しくなってきました。特に夏場の外気温はシクラメンの適温をはるかに超えています。もし管理を間違えれば一瞬でそのハウスの花が全部ダメになってしまう危険性があるため、温度を下げるための換気や日除け、葉に水をかける『葉水(はみず)』などの細やかな管理作業が欠かせません。ハウスの温度管理を適切に行い、肥料でシクラメンの成長をコントロールしていく、その両方を確実に実施することはシクラメンを栽培する難しさであり、技の見せ所でもあります」。


【後編】では、シクラメンの品種の魅力や家庭でのお手入れ方法などを紹介します。お楽しみに!

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