更新日:2024年10月23日

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自分の桃だと胸を張れる桃だけをつくる【前編】

小林直樹氏

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25歳の時、サラリーマンをやめて家業である桃農家を継いだ小林さん。それから半世紀近く桃栽培に情熱を注いできました。その優れた技と実績が評価され、令和5年度山梨県果樹・野菜共進会において最優秀賞となる農林水産大臣賞を受賞。「自分の桃だと胸を張れる桃だけをつくっています」と力強く語る小林さんに就農からこれまでの歩みについて伺いました。

懸命に美味しい桃をつくり続けた父の姿が、桃づくり挑戦の原点

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25歳の時にお父様が亡くなり、小林さんは会社勤めをやめて家業に入りました。「それまで継ぐつもりはなかった」という小林さんですが「ひとつ言えるのは、うちの父は良い桃をつくっていたということです。当時は今のように甘い品種の桃なんてありませんでしたが、それでも良い桃をつくろうと奮闘していた父を憶えています。その父の姿が家業に入る決意につながったのかもしれません」と振り返ります。右も左もわからない状態で桃栽培を始めた小林さんに、ある困難が待ち受けていました。「当時、何もわからなかったので、いつまでも桃の木があると思い込んでいたんです。父の木が良かったものですから、私がやってもそこそこのものができていました。ところが桃の木はブドウなど他の果樹に比べると寿命が短くて、出荷できるレベルの桃が収穫できるいわゆる経済寿命はせいぜい10年から15年なんです。私はそれを知らなかったので、木が傷んでしまって全然収量が得られなかった時期がありました。あの頃が1番辛かったです」という小林さん。その経験が改植計画を考えるきっかけになったといいます。

改植計画で実現させた安定した経営と、地域への貢献

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木が傷んで収量が減ってしまったことは、ご自身の桃栽培を考えていく上で、大きな契機になったといいます。「今は木の状態が良くても、先を見越して次の苗を植えていこうという改植計画を立てるようになりました。ただし、桃は苗を植えても5年くらい経たないと収穫できません。ですから今収穫できている畑とは別の場所に木を植えて、畑の木がダメになったら新しい木にすぐ植え替えられる体制を整えていきました。いつまでも木があると思わず、自分で計画を立ててやらなければいけないと奮起し、良い木を育てて何年後に植え替えるかを考えて実行していったからこそ、今は安定した経営ができています」という小林さん。「改植の計画の立て方を周囲の方に教えるまでになりました。自分ひとりが良くてもダメですからね」と地域全体の発展も見据えています。

自然が持つ力が生み出す良い循環
いち早く挑戦した草生栽培

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「私が桃栽培を始めたばかりで、何もわからずにいた頃から親切に教えてくれた恩人がいます。『お前の親父さんは俺に教えてくれた。だから俺はお前に教えてやるぞ』と、その人は私のところに来て黙って作業をしてくれて、私はそれを見て、さまざまなことを学び身につけていきました。35年くらい前から草を畑に生やす草生栽培を始めたのもその方がいたからです。当時は清耕栽培と言って、草が一本でもあれば取って畑をきれいにするという時代でした。草に養分を取られてしまうという考えがあったからです。しかし、実際に草生栽培をしてみると懸念していた養分競合はなく、草が最終的に肥料になりどんどん良いサイクルが出来上がりました。また草は土壌の水分をほど良く保つ働きもあります。自然が持つ力の良い循環ができたことがより良い桃の生産につながりました」

【後編】では、農林水産大臣賞を受賞した「夢みずき」の魅力と、小林さんの技などについて紹介します。お楽しみに!

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