更新日:2024年11月6日

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自分の桃だと胸を張れる桃だけをつくる【後編】

小林直樹氏

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家業である桃農家を継ぎ、一から桃の栽培に挑んだ小林さん。令和5年度山梨県果樹・野菜共進会において農林水産大臣賞を受賞するまでの道のりは決して平坦ではなく、そこには地道な努力と豊かな発想力で自ら道を切り拓いていった長い時間がありました。後編となる今回は受賞した「夢みずき」の魅力や小林さんが極めた技などについて紹介します。

夢のようにみずみずしい食味
山梨県オリジナル品種「夢みずき」

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小林さんの農園は甲府盆地の東に位置する山梨市の加納岩地区にあります。この地域は、桃の生産量日本一を誇る山梨を代表する産地のひとつで、土壌が肥沃で水はけも良く、日照時間が長い上に昼夜の気温差が大きいという気象条件にも恵まれた果樹栽培の最適地です。加納岩地区を含むJAフルーツ山梨管内では、「日川白鳳」「加納岩白桃」「白鳳」「浅間白桃」「なつっこ」「川中島白桃」を中心にたくさんの品種が栽培されています。今回小林さんが受賞した「夢みずき」は山梨県が開発した早生の県オリジナル品種で、大玉で糖度が高く、肉質も良く食味が優れています。また、色味もきれいで、見た目も味も楽しめることから、フルーツ王国やまなしの期待の品種として注目されています。「昔は新品種をつくるためには、偶発的な枝変わりを見逃さずに、それをついで増やしていく農家の目と技術だけが頼りでしたが、山梨県ではずいぶん前から県が新品種の開発をしてくれています。これも産地山梨ならではの強みだと思っています」と小林さん。

収量よりも質を重視することが私のプライド

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「良い桃をつくるには、剪定が決め手になります」と小林さん。桃づくりの作業は人の手を借りる部分も多いですが、剪定だけは全部自分ひとりでやっているといいます。「良い剪定をすれば、日が良く入り、風通しもいい、そして作業もしやすい木ができます。そうすれは良い桃ができるし、木も長持ちしますから、私は剪定だけは人任せにしません。剪定の技術は誰にも負けない自信があります」といいます。小林さんは木の骨格となる枝数を、一般的な生産者より少なくしています。こうすることで木の懐が広くなって空間ができ、日当たりが良くなるといいます。「たとえ収量が減っても質を重視するというのが私の基本的な考え方です。それに健康な太い枝が長く伸びれば、枝の本数は少なくても結果として収量も確保できるんですよ」と笑顔で語る小林さん。剪定をはじめとする、細部に至るまでのこだわりと磨き上げてきた技こそが小林さんの誇りです。

品種を知ることで、さらに広がる桃の魅力

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JAフルーツ山梨には厳しい選果基準があり、共選所では糖度・着色・重さなどの検査が機械センサーにより行われ、優れた品質のものが出荷されていきます。「JAの共選所ができる前は自分の目と手、そして長年の経験で桃を見極めて箱づめをしていました。その力は今でも健在で、見る目が違うという自負はあります」と語る小林さんにおいしい桃の楽しみ方を教えていただきました。「桃は冷やし過ぎない方が味も香りも楽しめるので、食べる1時間ほど前に冷蔵庫に入れてください。皮に近い部分の方が甘みが強いので皮を薄くむくのもポイントです。表面に出てくる白い斑点は果点といって熟した目安になります。桃はブドウと違い見た目に大差はないですが、実はいろいろな品種があり味や食感が違います。次々に登場する旬の桃を是非食べてみてください。品種を知ると桃の魅力がさらに広がると思います」と語る小林さんのまなざしは桃と産地への愛情にあふれていました。

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