更新日:2024年2月20日
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みずみずしく豊潤な果実は、
ひと粒ひと粒が、まるで宝石のような美しさ
山梨県は、ぶどうの栽培面積・生産量ともに日本一を誇ります。その歴史は古く、日本固有の品種である「甲州」の栽培の歴史は、1300年とも800年ともいわれています。長い歴史の中で、良質なぶどう生産に向けた生産者のたゆまぬ努力により栽培技術は研鑽され、その伝統は受け継がれていきました。また、消費者ニーズに対応した新品種の開発や品質や収量を高める生産技術の向上などの最先端の研究成果は、ぶどうに熱い思いを持つ県内生産者に導入され、今も山梨県のぶどう生産は進化し続けています。
歴史ある品種から、県オリジナルの新品種まで、山梨県で栽培されている多彩なぶどうの中から代表的な品種を収穫時期の早いものから順番に紹介します。
※収穫時期はその年の気候や産地によって前後します。
デラウェア
収穫時期:7月中旬から8月中旬
米国デラウェア州で育成されその名がつきました。小粒ではありますが、その食味は今でも日本人に好まれています。極早生品種で7月中旬頃から収穫されます。
巨峰(きょほう)
収穫時期:8月上旬から9月下旬
静岡県の育種家大井上氏の育成品種です。黒色大粒種の主力品種となっています。種なし栽培とこだわりの種あり栽培があり、房の大きさも出荷形態により300~700gと様々ですが、果粒は12~13g程度になります。
サンシャインレッド(山梨県オリジナル品種)
収穫時期:8月中旬から9月中旬
山梨県果樹試験場が育成した県オリジナル品種で産地化を進めています。山梨県育成品種の「サニードルチェ」と「シャインマスカット」を掛け合わせて生まれました。鮮やかな赤い大粒の実が美しく、華やかな香りと際立つ甘さ、皮ごと食べられ、弾力のある食感が特徴です。
甲斐キング(山梨県オリジナル品種)
収穫時期:8月中旬から9月中旬
山梨県果樹試験場が育成した県オリジナル品種で産地化を進めています。着色がよく、果汁が多く食味が良好で、非常に大粒となることが特徴の期待のぶどうです。
藤稔(ふじみのり)
収穫時期:8月中旬から9月中旬
神奈川県の育種家青木氏の育成品種です。果粒が大きく、一粒重が25gを越える大粒のものもあります。果肉はやや柔らかいですが、酸味が少なくジューシーな食味が特徴です。
悟紅玉(ごこうぎょく)
収穫時期:8月中旬から9月中旬
山梨県の育種家植原氏の育成品種です。鮮やかな赤色の大粒種で、糖度も高く食味は良好です。
シャインマスカット
収穫時期:8月中旬から10月下旬
農研機構果樹研究所が育成した皮ごと食べられるマスカット香を有した品種です。非常に食味に優れ、現在、山梨県で最も生産量が多いぶどうで、ハウス栽培も盛んです。
ピオーネ
収穫時期:8月下旬から9月下旬
静岡県の育種家井川氏の育成品種です。「巨峰」に比べ、果粒が一回り大きく18g前後とボリューム感があり、上品な食味から高級感が漂います。ほとんどが種なし栽培です。
クイーンニーナ
収穫時期:8月下旬から9月下旬
農研機構果樹研究所が育成した鮮やかな赤色の大粒品種です。糖度が高く硬めの食感で食味が優れています。食べ頃は巨峰よりもやや遅い時期になります。
ロザリオビアンコ
収穫時期:8月下旬から9月下旬
山梨県の育種家植原氏の育成品種です。世界的に食味評価が高い2品種を親とすることから、外観・食味とも極めて優れています。糖度は18度以上と高いです。
甲斐路(かいじ)
収穫時期:9月上旬から10月中旬
山梨県の育種家植原氏の育成品種です。名前のとおり山梨県を代表する赤色の晩生種です。糖度が高く食味は優れ、枝変わり種の「赤嶺」も早生甲斐路として多く栽培されています。
甲州(こうしゅう)
収穫時期:9月中旬から10月下旬
1300年の歴史を持つ日本固有の品種といわれ、生食およびワイン原料に利用されます。山梨県の露地ぶどうを締めくくる品種です。
ぶどうは、本来すべての品種に種があります。「種なし化」の研究はこのデラウェアから始まりました。
デラウェアの果粒が密着して裂果するのを改善するために植物ホルモンの一種「ジベレリン」により処理したところ、種がなくなったことから研究が本格化し、山梨県において昭和34年にデラウェアの「種なし化」技術が確立されました。これは世界初のことです!昭和50年代後半には、巨峰の種なし栽培が始まり、その技術は広く普及していきました。
当初は裂果防止を目的として行われていた「ジベレリン処理」により、「種なし化」することを見逃さず、画期的な「種なし化」技術が確立できたのは、当時の研究員たちの熱意の賜物です。山梨県果樹試験場では現在でも、熱い探求心をもった研究員たちが新品種の開発や栽培技術の向上を目指して、さまざまな研究を行っています。
ぶどう畑をご覧になったことはありますか?高さ2mぐらいに組まれた棚でぶどうが生産されています。この棚は、最近では多くのタイプが開発されていますが、ベースとなっているのは400年以上前に山梨県で開発されたといわれる「甲州式ぶどう棚」です。
多雨で湿度が高い日本の気候の中でも安定したぶどう生産を行うために生み出されたこの独創的な技術は、1615年に永田徳本により考案されたとされ、現在でも日本のぶどう生産のスタンダートとなっています。
この栽培方法は一般的には「棚栽培」と呼ばれます。近年、ワイン用ぶどうの栽培では、ヨーロッパで多く導入されている「垣根栽培」も導入されています。
令和5年8月に名称が公開された赤系ぶどうの新品種「サンシャインレッド」は、青リンゴのようなさわやかな風味を持つ「サニードルチェ」と近年大人気の「シャインマスカット」を親に持つ、まさにぶどう界のサラブレッド!山梨県果樹試験場が開発した山梨県オリジナル品種です。華やかなマスカットの香りとなめらかな食感、強烈な甘みがあり一度食べたら忘れられないおいしさ。まだ誕生したばかりの「サンシャインレッド」、普及するのが待ち遠しいですね。
皆さんがイメージするぶどうは、どんな姿ですか?
市販されているぶどうは、だいたい30~40粒になっています。実は、ぶどうの房はもともと約500粒の果粒がついています。糖度が高くぷりぷりした品質の良いぶどうを作るために「房づくり」と「摘粒(てきりゅう)」という作業を通じて、粒数を調整していきます。
このうち摘粒作業は特に技術が必要で、大きくなったぶどうの姿を想像して、不要な果粒を抜き、バランスよく果粒を配置します。この摘粒作業は、ぶどうの管理作業の中でも最も労力がかかる作業であり、熟練の技術とスピードが求められます。
摘粒作業がピークとなる6月のぶどう産地では、おやてっと(※)を頼むことが多く、摘粒作業に熟練した方は引っ張りだこです。
(※)甲州弁で、農繁期に一時的に雇用するアルバイト等のこと。
山梨県のぶどう栽培の発祥には、いくつかの説があります。
中でも約1300年前の718年奈良時代の高僧・行基(ぎょうき)が、夢枕に立ったぶどうを手にした薬師如来の姿を木彫りにして勝沼の大善寺にまつり、ぶどうの栽培を広めたとされる説と、約800年前の1186年鎌倉時代に雨宮勘解由(あめみや かげゆ)という人が勝沼の山の中で発見したぶどうを自宅の庭に植えたのが甲州ぶどうの始まりとされる説が知られています。
1695年に刊行された「本朝食鑑」にぶどうの産地として「甲州を第一」と記述されるなど、ぶどうは江戸時代にはすでに山梨県の特産品として全国に知られていました。
明治時代になり、デラウェアやナイアガラなど外国のぶどう品種やボルドー液などの防除技術が入ってくると山梨県内でぶどう栽培が広がっていきました。食糧が不足した第二次世界大戦中もワインの酒石酸が潜水艦のソナーの材料になることからぶどう畑の生産は維持されたといいます。
山梨県でぶどうの生産が飛躍的に伸び、果樹王国と呼ばれるようになったのは昭和30年代のことです。動力噴霧器による防除やX字型整枝長梢剪定の導入、ハウス栽培などの導入でぶどうの生産は伸び、昭和34年に山梨県果樹試験場がジベレリン処理によるデラウェアの「種なし化」に成功したことでぶどうの生産は安定化していきました。
さらに、この画期的な技術は巨峰やピオーネなど大粒の品種にも応用され生産者に広く普及したことで、山梨県は日本のぶどう栽培をリードしていきました。国の記録が残る昭和25年から現在まで山梨県はぶどうの収穫量日本一を誇り、「サンシャインレッド」など、次の時代を見据えた新品種の開発も積極的に行われています。
令和4年7月18日、山梨県の峡東地域(山梨市、笛吹市、甲州市)は、「峡東地域の扇状地に適応した果樹農業システム」として、世界農業遺産に選ばれました。
山梨県峡東地域は、日本のぶどう栽培発祥の地とされ、ぶどう「甲州」は、一説によると平安時代にはすでに栽培されていたとも言われています。また、もも、すもも、かきなども古くから栽培され、江戸時代にはすでに果樹の産地として知られていました。
扇状地の傾斜地において、それぞれの土地に適応するために、多様な果樹を栽培するとともに、独自の技術が考案されてきました。中でも約400年前に考案されたぶどうの甲州式棚と疎植・大木仕立てを組み合わせた栽培は、降水量の多い日本の気候に適応するために開発された技術で、現在日本各地に普及しています。
また、果樹園に自生する植物を利用した草生栽培は、土壌の流亡防止や有機物の補給だけでなく、多様な生物の生息に大きく貢献しています。
果樹農業は、枯露柿やワイン醸造などの果実加工、約120年前に始まったとされる観光果実園などとともに発展し、多様な文化・祭事とともに世界に誇る特色ある地域を形成しています。
山梨県の特色ある取り組みを紹介します。
4パーミル・イニシアチブ
4パーミル・イニシアチブとは、世界の土壌表層の炭素量を年間4パーミル(0.4%)増加させることができれば、人間の経済活動などによって増加する大気中の二酸化炭素を実質ゼロにすることができるという考え方で、農業分野から脱炭素社会の実現を目指す取り組みです。
2015年のCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)においてフランス政府が主導で提唱し、2022年12月現在で、日本を含む744の国や国際機関などが参画しています。
山梨県は2020年4月に、国内の地方自治体として初めて参加しました。
山梨県は、果樹王国の特徴を生かして農業分野からの脱炭素社会の実現に向けた取り組みとして、4パーミル・イニシアチブを全国に先駆けて取り組んでいます。