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小松一仁

自分ができるのであれば、父親のものづくりに対する情熱をすべて受け継ぎたい。

高度なダイヤモンド加工技術で世界的に有名な会社が山梨県甲府市にある。
小松ダイヤモンド工業所だ。今回は「華真珠」を承継し、進化・普及させた2代目の小松一仁氏に迫った。

小松さんは2代目ですが、小さい頃はどんな子供でした?

子供のときから工房が家の中にあって、研磨している親父の後ろ姿を見て育ちました。カットするための回ってる円盤(平面研磨機)ありますよね。親父が作業しているところを真似て、レコードプレーヤーに水かけて壊しちゃって(笑)。まあ、親も怒るに怒れなかったって言ってます。

家業を継ごうと思ったきっかけは?

僕が高校の時、一般的な研磨機にちょっとした工夫を加えることで誰にも真似できない製品が作れることを親父が教えてくれて。これにすごい感動したんです!その時、改めて親父に対して尊敬の念を抱きました。親父のものづくりに対する情熱を全て受け継ぎたいって、そう思ったんです。

先代の小松一男さんはどのような方?

根っからの職人!アイデアマンです。世界的に有名な華真珠も、親父が得意のダイヤモンド研磨技術を生かして開発したものなんです。完成するまで10年以上かかっていて。この技術は門外不出で、親戚でさえ工房に入れたことはありません。

まさに一子相伝の技術を継承されたわけですね。やっぱり当初から大好評だった?

そうでもないんです。華真珠見て「気持ち悪い」って言う人もいましたから(笑)。初めて展示会に出したときは大勢の人が見に来て注目を集めたんですが、賛否両論あってなかなか売り上げにはならなくて。日本では「真珠はツルっとした丸いもの」という既成概念があったので。

その後は?

たまたま甲府に来ていたアメリカの大手業者に華真珠を見せたら、「これはすごい!」ってビックリしちゃって。すぐにアメリカで販売されることになりました。あと、ヨーロッパでメディアに華真珠が特集されて、「このスネークスキンが最高」って(笑)。海外では単純にツルっとしたものより、カットが施してある方が高い評価を受けるんですよ。

スネークスキンとは面白い例えですね!

確かにヘビ柄みたいでしょ?日本じゃほとんど評価されなかったのに、欧米だと一転して最高だって。その時に海外で売っていこうと思ったんです。今ではイタリアのジュエリーブランド「スカヴィア」などで多くの商品に華真珠を使ってもらっているんですよ。

コンテストへの出品については?

ずっと出さなかったんです。真珠にカットするっていうインパクトが強すぎて、パターンを変えたぐらいじゃ多分、賞をもらえないんだろうと思ってたんで。2009年にアメリカ宝石カットコンテスト「Gemmys」に出品したのは試そうと思って。従来の華真珠がある程度認知されているアメリカで新しいカットパターンが評価されることは、真珠へのカットが当たり前になっているということ。結果、一位になって、それが分かったのでとても嬉しかった。

温めているアイデアって華真珠以外にもあるのでは?

眠っているアイデアいっぱいありますよ。例えば華ゴールド。これは親父が30年くらい前に18金の無垢板にカットする方法を考えたんですが、当時は誰も見向きもしなくて。鋳造とかプレスで簡単にできるってみんな言ってたんです。実際にはできないんですけどね。そのアイデアをベースに僕が18金のミラーボールを作ったりして。親父は職人だから作るまでが楽しくてそのままっていうのがいっぱいあって。華真珠も危なくそうなりかけたんですけど(笑)。僕がこうやって親父が残したアイデアをカットして実現させているんです。全てヒントは工場の中にあるんですよ。

今後、新しくチャレンジしていきたいことは?

現在も海外の業者との取引が多いんですが、より一層、海外に力を入れていこうと思います。海外を目指すことは日本を捨てるわけでもなくて、世界の中に日本の市場が一つあると考える。アメリカの市場も日本の市場も世界の中の一つの市場です。ただ、自分が住んで、ものづくりをしているのが日本であるだけ。拠点は日本だけれども360度視野を拡げれば難しくありません。ものづくりをしていて、海外に出さないのは意味が無いと思いますので。

これからも世界を舞台に頑張ってください。今日はありがとうございました。

2010年9月17日 インタビュー掲載

企業情報

名称:株式会社小松ダイヤモンド工業所

住所:山梨県甲府市宝1-11-20

E-mail:mail@facetedpearl.com

HP:http://www.hanashinju.tokyo/

事業内容:ダイヤモンド研磨

            宝石研磨(ストリームカット)

            真珠研磨(華真珠)

            セラミック研磨(工業用)

自社の強み:ダイヤモンド研磨の全工程を自社工場で行うことができます。ダイヤモンド研磨の高度な技術を有していることから、多くの国内大手業者から注文を受けています。 豊富な海外取引の経験があります。

 

お知らせ

経済産業省の「ものづくり日本大賞」のホームページに小松さんのインタビューが掲載されました。

コチラからご覧ください。

 

 

 

 

 

米・宝石カットコンテスト「Gemmys」でカット部門1位を獲得

 

18金のミラーボール

 

様々なカットが施された宝石

小松一仁

●1971年生まれ。●大学卒業後、小松ダイヤモンド工業所に入社。2006年、代表取締役に就任。●華真珠をより進化させ、2009年、アメリカの宝石カットコンテスト「ジェミーズ2009」でカット部門1位、アーティスト新人部門2位のダブル受賞を果たす。同年、「ものづくり日本大賞」内閣総理大臣賞受賞。●2009年4月~2011年3月、Koo-fuプロジェクト委員会委員、Koo-fu Yprojectリーダーを務める。

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