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山梨県には、風土と歴史のなかで生まれた国指定の伝統工芸品である「甲州水晶貴石細工」がある。
伝統工芸士であり、ジュエリーマスターの長岡良雄は、長年「甲州貴石細工」の制作に力を入れている。
24歳の時、水晶彫刻新作展で、四天王像で知事賞を受賞してからこれまで、活躍し続ける長岡良雄に迫った。
兄貴がこの業界で仕事をしていたからね。その仕事を見ていたということと、自分も、もともと絵を描くことや何かをつくることが好きで、彫刻をやってみようと思っていたから。18歳の頃からこの業界で働いているよ。最初は、先輩の品物を磨いていたね。当時は、全部手で磨いていたから、今の倍の時間がかかったよ。でも半年で飽きてしまって(笑)。親方に頼みこんで、兎とか基本的なものから作りはじめたんだ。
そうだよ。24歳の時にね。山梨県水晶美術彫刻協同組合主催の水晶彫刻新作展で、知事賞を獲ったんだ。確か、四天王像を作ってね。1年に1回だけど、その時だけは、親方の指示ではなくて、自分のつくりたいものが作れるからうれしくて夢中で作ったよ。
龍神で最高賞を受賞したんだ。制作には、1カ月半かかったよ。毎日作品と向き合いながら、龍の顔の強さを意識して作ったんだ!久しぶりに最高賞を受賞して嬉しかったよ!
昔、親方には、「いつまでも絵なんて描いているじゃないよ」とよく怒られたけど、宝石の塊から、削って立体造形を作り出すために、頭の中にしっかりとしたイメージを持たないと全体のバランスが崩れてしまう。しっかりとしたイメージを持つために、デッサンは大切だと思っているよ。作品の仕上がりも、絵を描いて頭に入れた方が確実に早いと思うよ。だから、俺は、龍でもなんでも作るたびにデッサンしているよ。
作品の大きさや造形の複雑さによってかな。でも、昔よりは、かなり早く作れるようになったよ。腕が上がったのはもちろんだけど、今は、いろいろ機械で切れるようになったから。昔は、便利な機械が無かったからね。あと今は、貼り付けが出来るようになった。昔は、材料の水晶は、みんな1本モノの結晶だったんだ。だから、結晶の大きさのモノしか作れなかったんだよね。でも、貼り付けが出来るようになって大きい作品が作れるようになったんだ。表現できる幅が広がった分、デザイン性がこれまで以上に問われるようになってね。今、自分の作っている作品を見ると、我ながら以前よりデザイン的に洗練されてきたなと思うよ。
なんでも作るっちゃ作るんだけど、そうだな、一番珍しいのは、さらし首とお岩さんかな(笑)。メノウで作ったんだけどね。その時は、見本もないし誰も作ったことないし。これまで世に出ている画像をヒントに作ったね。その時は、祟りがあっちゃ困るからと思って、東京に、お祓いに行ったあと作り始めたんだ(笑)。 それが一番珍しいかな。組合の中でも誰も作っていないと思うよ。
それから、セラミックでトロフィーも作ったかな。あれは、1ヶ月くらいかかった。硬いから、いくら削っても減らないんだよ。もうやりたくないかな(笑)。
一番得意なのは、四天王とか不動明王とか力強い表情の金剛力士像とかかな。形的にも面白いし、動きがあるからね。観音像は、大体左右対称でないといけないから、あまり動きがないでしょう。でも、顔は観音さまが一番難しいけどね。
指先の勘だね!見えなくても音と削り具合で大体分かるよ。あと、経験かな。
細工台のコマの使い方や研磨剤の粗さは、それぞれ微妙に違ってくるんだよね。
今は、手があいた時に自分のオリジナル作品を作っているよ。龍が多いかな。同じモノは2つは作らないのがこだわりだよ。
若者には、絵をたくさん描いてもらいたいね。しっかりとデッサンして、もっともっと新しいものを作る挑戦をしてほしいね。あと、この仕事は、本人のやる気がなくてはダメ。やる気がなければ腕は上がらないしある程度で止まっちゃう。最初は、誰だってうまくいかないよ。みんな個人差があって全部作れるわけじゃない。自分の得意分野をつくって、もっと技術を身につけたい、良いものを作りたいという気持ちを持ち続けることが大切だよと伝えたいね。
名 称:長岡水晶工芸
住 所:山梨県甲斐市西八幡2066-8
電 話:055-276-6586
F A X :055-276-6586
事業内容 : 宝石、貴石の彫刻
自社の強み:写真や映像があれば、デッサンして何でもつくることができます。
最高賞を受賞した龍神 力強い顔が表現され迫力がある
金剛力士像
長岡が描いたデッサンの一部
●1949年生まれ。●長岡水晶工芸 水晶貴石美術彫刻家。●山梨県知事認定宝石加工ジュエリーマスター、伝統工芸士。
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