トップ > 組織案内 > 県教育委員会の組織(課室等) > 遺跡トピックスNo.0252大木戸遺跡
ページID:33090更新日:2017年6月7日
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笛吹市の遺跡
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大木戸遺跡(おおきどいせき)について〈写真〉大木戸遺跡全景
大木戸遺跡は、甲府盆地の東を流れる重川(おもかわ)右岸の河岸段丘上(かがんだんきゅうじょう)、標高約390m地点に位置しています。塩山東バイパス建設工事のため、平成10~11・14(1998~1999・2003)年度に発掘調査が行われ、縄文時代(約6,000~4,500年前)のムラの跡や平安時代(約1,000年前)の集落跡が発見されました。大木戸遺跡については過去のトピックスでも何度か紹介されています。→一覧はコチラ 所在地:甲州市塩山熊野 時代:縄文時代前期・中期・平安時代 報告書:山梨県埋蔵文化財センター調査報告書第205集2003(平成17)年刊行 調査機関:山梨県教育委員会・山梨県埋蔵文化財センター
女性らしさの究極の姿〈写真〉大木戸遺跡中期土偶:左より正面、斜め、後方斜め
〈図〉大木戸遺跡出土土偶実測図
土偶の多くは女性を形どったものであると言われています。女性らしい形と聞いて多くの人が思い浮かべるのは、乳房であったり、くびれたウエストであったり、はたまたしっかりと張ったお尻であったり、さまざまであると思いますが、大木戸遺跡のこの土偶からわかる女性らしさとは何でしょうか。 はい、このくびれていないウエスト、プックリとふくらんだお腹なのです。あらこの土偶はメタボリックな中年かしら?いえいえ、そうではありません。プックリふくらんだお腹は出産を間近にひかえているということが表現されています。そう、この土偶は妊婦さんなのです。大木戸遺跡の発掘調査報告書の記述を見てみましょう。 報告書によると、この土偶は振るとかすかにシャラシャラとした音が感じられるため、鳴子タイプの土偶と考えられる、とあります。このような鳴子タイプの土偶の鳴子は胎児を表しているのではないかという研究者もいます。また、報告書にはこんな記述もあります。両腕が前方にまわるタイプの土偶で腹部中央に剥離(はくり)がみられることから壷(つぼ)などを抱えている土偶の可能性がある、と。 壷を抱えた縄文中期の土偶は、この中部地方ではしばしば出土するようですが、壷が何を意味しているのかは、よくわかっていません。しかし、研究者の中には、土偶が抱える壷は、生まれてきた赤ちゃんの胎盤(たいばん)をおさめる胞衣壷(えなつぼ)で、こういった土偶は、赤ちゃんが丈夫に育つことを願う、出産儀礼と関係があるのではないか、と考える人もいます。また、胎盤を入れるのではなく、産湯(うぶゆ)や出産時に使用する水を入れるのではないだろうかと考える研究者もいます。そういったことから、こういった妊婦さんの姿をする土偶は出産をつかさどる女神ではないか、という考えもあるようです。 胎内に子供を宿すということ…。男性にはできない、女性らしさの究極と言ってもよいのではないでしょうか。また、現代のように医学は発達していない縄文時代において、出産後、母子ともに無事であるということは、今よりもずっと重みがありました。女性にとって、出産は命がけの仕事だったのです。縄文時代の祈りの象徴である土偶。この土偶を女性らしさの究極の姿である妊婦さんにすることで、縄文人は子孫繁栄(しそんはんえい)や家族への思いをこめたのでしょう。 *今回トピックスで紹介した大木戸遺跡の土偶は山梨県立考古博物館で常設展示されています。 学校で、児童・生徒に本物の土偶を触らせてみませんか?
〈写真〉武川中学校1年生の歴史の授業、土偶に触わっている中学生
当センターが行っている出前支援事業では、土偶をはじめとする出土品を学校で教材として実際に児童・生徒に触れてもらうことができます。7月には北杜市の武川中学校で北杜市出土の土偶や土器、石器を実際に生徒に触ってもらうという授業を行いました。授業の詳細はコチラへ 身近な地域の出土品を実際に児童・生徒にふれさせ、魅力的な授業を展開してみませんか?出前支援事業のお申し込み等、詳しくはコチラへ
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