更新日:2022年2月18日
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佐野真規氏(有限会社忍沢養殖場)
南アルプスの山々が連なり、大小48もの滝が見られることで有名な戸川渓谷。四季折々、表情豊かな山梨の自然を楽しむことができるその場所で、忍沢養殖場は営まれています。
ミネラルウォーターの出荷量が日本一の山梨県は、良質な水に恵まれ、淡水魚の養殖にとても適した場所です。その自然の恵を受けながら、山梨のブランド魚「富士の介」は、生き生きと育っています。今回は山梨県内で富士の介の養殖に励む、忍沢養殖場の佐野さんにお話をお伺いしました。
富士の介の一番の特徴は、キングサーモンとニジマスとを掛け合わせた魚ということです。この掛け合わせは全国でも前例がなく、山梨県水産技術センター忍野支所で、10年以上に渡る研究を経て富士の介は誕生しました。『キングサーモンはとても大型になり、脂もとても多くて美味しい魚ですが、養殖をするのはとても難しいのです。淡水だと全く餌を食べず、大きくなりません。そこで養殖に適していて、おいしいニジマスを掛け合わせて作られたと聞いています』と佐野さん。まさに両者の長所を兼ね備えた、味も大きさも万能な魚が誕生したのです。しかし、一方で新しく誕生した種類の魚を育てることは簡単ではありません。『富士の介自体が新しい魚ですので、どの季節にどのくらい餌を食べるのかなど、まだまだわからない部分が多いです。今も試行錯誤しながら養殖をしています』。
明るく笑顔で語る佐野さんでしたが、県が開発した「富士の介」誕生までの道のりや養殖が簡単ではないことが、その言葉から伝わってきました。
名水溢れる山梨で育った富士の介は、大型で臭みがないのが特徴。『きめ細やかな脂が入っていて、その脂もしつこくなく、さっぱりしています。生でももちろんとても美味しく食べられますが、火を入れてもとても美味しい魚です』と佐野さんは自信たっぷりに話してくれました。富士の介の身の色は鮮やかなサーモンピンクをしていて、ニジマスと比較してうま味系アミノ酸が豊富に含まれており、くせのない上品な味が特徴です。育て方が難しく、まだまだ希少な存在とも言える富士の介ですが、忍沢養殖場では年間2,000〜3,000匹の富士の介を養殖しています。新規参入する養殖業者も増えてきており、県内の飲食店や宿泊施設などでも取り扱いが増えてきています。山梨県と養殖業者が一体となった取り組みの成果が表れ、新鮮な富士の介を楽しむことができるようになったのです。
『キングサーモンもニジマスも冷たい水、標高の高い地域を好む魚です。少し水が冷たくて、水が豊富にあるところが養殖する環境としてはとても良いです』と話す佐野さん。実際に山梨は、富士山や八ヶ岳、そして南アルプスの山々に囲まれた盆地です。県内の約8割が森林になっており、多くの川が流れています。この最高の環境が富士の介の開発や生産の実現を可能にしました。『山梨の自然がきれいで豊かに保たれているからこそ、おいしい農産物、水産物ができています。そこをしっかりとアピールできれば、様々な人たちが興味をもってくれるはずです。そして、もっと富士の介を通して、山梨の自然の素晴らしさを感じてもらいたいです』と、佐野さんは熱く語ってくれました。この佐野さんの生産者としての熱い想いが源となり、多くの人に「富士の介」の魅力が伝わることで、同時に「富士の介」が育つ山梨の豊かな自然の魅力も伝わっていくのではないでしょうか。
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