ページID:100201更新日:2021年6月21日

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令和3年6月定例県議会知事説明要旨

令和3年6月定例県議会の開会に当たり、提出いたしました案件のうち、主なるものにつきまして、その概要を御説明申し上げますとともに、私の所信の一端を申し述べ、議員各位並びに県民の皆様の御理解と御協力をお願い申し上げたいと存じます。

はじめに、新型コロナウイルス感染症の影響が続く中、1年以上もの間、現場で御尽力をいただいている医療関係者の方々、そして、日常生活での感染対策を続けていただいている全ての県民の皆様にこの場をお借りして感謝を申し上げます。

我が国では、これまで3度にわたって緊急事態宣言が発令され、ウイルスとの戦いは長期戦となっており、ここ数箇月は、感染力が大幅に増した変異株が猛威を振るい続けています。

本県でも、今月に入ってから、この変異株により、障害者施設、学校、保育所などで複数のクラスターが発生し、これまでにないペースで感染が増加しており、極めて重大な局面を迎えております。

感染の徹底的な封じ込めに向け、今月10日には、緊急事態に準じる最大限の警戒感を持った対応を呼びかけたところであり、私が先頭に立ち、あらゆる手を尽くして、この困難を乗り切る覚悟であります。

一方、長引くコロナ禍で、多くの方々に自粛疲れがまん延し、我慢の限界に達しているとも言われており、行政からの呼びかけだけでは、人々の行動を変えるのは難しくなっています。

感染拡大防止と経済活動の両立を図る。

本県は、一貫してこの基本理念に基づいて、最適解を模索し続けてきました。

「感染防止対策を取った上で、歓送迎会やお花見を是非やってください。」

これは、年度末、年度はじめを迎えるに当たり、私から県民の皆様へ呼びかけたメッセージです。

自粛一辺倒であった国や他県のスタンスとは大きく異なるものであり、賛否両論あったと承知していますが、「やってはいけない」「控えてほしい」の繰り返しだけでは、逆にその効果が弱まってしまいます。

お店の利用時に必ず守ってほしいことを明確にし、感染対策を強く訴えた上で、窮地にあった飲食店が少しでも営業できるようにする。

感染状況を睨みながら、熟慮の末に下した判断は、県民の皆様からの理解を得られたものと確信しております。

さて、新型コロナウイルス感染症の影響により1年延期された「東京オリンピック・パラリンピック競技大会」が、いよいよ来月から開催されることとなり、今週末には、本県でも聖火リレーが行われます。

県内では、聖火リレーに加えて、事前合宿や自転車競技ロードレースが予定されていますが、実施に当たっては、大会組織委員会や関係市町村などと連携して、最大限の感染症対策を講じて参ります。

大会の開催を契機に、スポーツへの関心が高まるだけでなく、富士山や富士五湖など本県が誇る豊かな自然環境を世界に向けて発信できることを期待しております。

先ず、当面する県政の課題について、御説明申し上げます。

はじめに、最重要課題である新型コロナウイルス対策のうち、変異株への対応についてであります。

本県では、本年4月以降、変異株が従来株に置き換わり勢いを増しており、障害者施設や保育所に入り込んでクラスターを発生させるなど、その影響は甚大であります。

変異株には、従来よりも感染力が強く、若年層にも感染しやすい、重症化しやすいという特徴があります。

こうした変異株への対応に当たっては、何よりも先ず、感染を早期に発見し、その連鎖を食い止めることが重要であると考え、4月以降、検査対象の大幅な拡大を行って参りました。

具体的には、変異株検査で陽性となった方については、濃厚接触者だけでなく、その御家族にまで検査を行うとともに、クラスターが発生した場合のリスクが大きい入所系の高齢者施設や障害者施設、更には保育所、幼稚園等において、職員を対象に、週1回の定期検査を実施することといたしました。

これに加え、早期に変異株の特定を行えるよう、県立中央病院と山梨大学医学部附属病院の2病院にゲノム解析を委託し、結果判明までの時間を大幅に短縮させて参ります。

また、飲食店や宿泊施設などでの感染対策のレベルを引き上げるため、4月末には、グリーン・ゾーン認証基準の見直しを行ったところであり、飲食スペースのある施設に対して、利用者の氏名や連絡先の把握と、頭が隠れる高さのパーティション、二酸化炭素濃度測定器やHEPAフィルター付き空気清浄機の設置などを追加で要請いたしました。

各事業者の皆様には、必要な機器整備を行うための補助金を活用して、7月末までに対策を終えていただく予定であり、今後も、最新の知見を収集しながら認証基準の不断の見直しを行って参ります。

次に、ワクチン接種の推進についてであります。

コロナ禍を脱する切り札となるのは、ワクチン接種であります。

人口の半数がワクチン接種を完了したイスラエルでは、ピーク時には1日1万人以上発生していた感染者が一桁まで急激に減少しており、マスク着用は不要、レストランやカフェは集団免疫の獲得により、ワクチン接種の有無にかかわらず自由に利用できるようになっております。

新型コロナウイルス感染症の収束に向けては、このように多くの県民の皆様にワクチンを接種していただき、集団免疫を獲得することが不可欠であり、県では、接種率70パーセントを目指して取り組みを進めております。

県内では、医療従事者については、ほぼ全数となる3万人への接種が完了しており、65歳以上の高齢者については、7月末までに、県内の27市町村全てにおいて、希望する方々への接種が完了する予定であります。

今後は、若者や働く世代など一般の方への接種が本格化しますが、現在の接種ペースを更に加速できるよう、県における特設の接種会場の設置に向けて早急に検討を進めて参ります。

また、接種前の不安や副反応が発生した場合に対応ができるよう「新型コロナワクチン専門相談ダイヤル」を設置しており、今後の接種の拡大を見据えて、相談時間の延長や多言語対応などの体制強化を行って参ります。

これらに加え、県独自の取り組みとして、副反応によって仕事を休業せざるを得なくなった方々に対する休業助成金制度を創設したほか、「あんしんやまなしワクチン接種県民運動」として、ワクチンを接種した方々への特典付与に御協力いただける協賛企業やサポーターの募集などを行っており、あらゆる施策を総動員して、一人でも多くの皆様が安心して、かつ、積極的にワクチンを接種できるよう支援を行って参ります。

次に、コロナ禍により生じた社会問題への対応についてであります。

感染拡大防止やワクチン接種の促進への取り組みと併せて、コロナ禍の長期化が、経済的に弱い立場に置かれている方々に対して及ぼしている深刻な影響に対しても、しっかりと目配りをして参ります。

県内の有効求人倍率は、本年4月時点で1.19倍と、足元ではやや改善の兆しが見られるものの、感染拡大に関連した解雇や雇い止めの人数は、先月までに累計700人を超えており、依然として厳しい雇用情勢が続いております。

県では、4月に離職者などを対象とした合同就職フェアを開催したところであり、雇用情勢を注視しながら、就職面接会の開催など、企業と求職者のマッチング支援を継続して参ります。

更に、このような厳しい環境下で就労を目指す「ひとり親家庭」に対しては、資格取得につながる職業訓練への給付金制度を拡充するとともに、新たに返還免除付きの家賃貸付制度を創設し、手厚い支援を行って参ります。

また、休業や失業などにより収入が減少し、生活が困難となった方に対しては、昨年3月から、生活に必要な資金の貸し付けを行っており、これまでに1万7000件、60億円を超える実績がありますが、引き続き、十分な貸し付けができるよう、県社会福祉協議会に追加の貸付原資を助成して参ります。

一方で、こうした行政の支援が行き届かないところで、苦境にあえぐ方もいます。

感染を恐れて自宅にこもりがちになった高齢者、感染症の情報がリアルタイムに届かない外国人、子ども食堂の休止により地域社会との接点を失った子どもたち。

4月23日に第1回目を開催した「支え合う地域づくり推進会議」では、こうした方々の窮状をNPO団体や民生委員などの委員の皆様から御指摘いただいたところであり、実態に即した支援ができるよう速やかに検討を進めて参ります。

コロナ禍の長期化は、雇用の悪化や生活の困窮だけでなく、福祉の現場での人材確保にも影を落としています。

特に、介護施設や障害福祉施設では、従来から人材確保が厳しい状況ですが、感染症対策のために業務量が増加しており、更に人手不足が深刻化しています。

このため、主に他業種から参入する方をターゲットに、新たに就職に必要な費用の貸付制度を創設し、人材確保を進めて参ります。

また、保育の分野では、保育士を目指す学生が、経済的困窮を理由に退学する事例が出ていることから、新たに修学資金の貸付制度を創設することとし、時期を問わず希望する保育所へ入所できる「新たな次元の待機児童ゼロ」を目指した保育士の確保にもつなげて参ります。

次に、グリーン・ゾーン構想の推進についてであります。

本県のグリーン・ゾーン認証制度は、感染症対策と経済を持続的に両立させる方策として全国から注目されており、高い評価をいただいております。

これは、認証事業者の皆様の御努力もさることながら、利用者の皆様の御協力の賜物であり、改めて感謝を申し上げます。

本年4月には、私が22県の知事を代表し、菅総理大臣に対して、全国的な認証制度の確立に向けた提案を行いました。

その甲斐あって、国から各都道府県に対して、飲食店に関する第三者認証制度を可及的速やかに導入するよう求める通知が発出され、先月末までに、準備中も含めると40以上の都道府県で導入が広がっているところであります。

全国規模での導入に当たっては、制度運営を担う全国的な団体の設立や全国共通の認証基準の設定が望ましいと考えており、その実現に向け、先行モデルとなっている本県の知見やノウハウを積極的に提供していく考えであります。

グリーン・ゾーン認証制度は、更なる飛躍の可能性を秘めています。

インバウンド観光の再開を見据えた取り組みとして、先ずは本県を訪れる外国人観光客の半数を占める中国をターゲットとし、旅行代理店最大手であるCtripのサイト内において、グリーン・ゾーン認証制度の紹介と宿泊施設ごとの認証取得状況について掲載をはじめたところであります。

本年夏頃には、衛生機器などを手がける大手メーカーや国際的なホテルグループと連携し、新たな技術を活用した実証事業を行い、その成果を認証制度に反映させることとしており、国際的にも評価される認証制度へのブラッシュアップを進めて参ります。

次に、県内産業の反転攻勢に向けた戦略についてであります。

県内経済は、新型コロナウイルス感染症の影響により、飲食・宿泊などのサービス業を中心に厳しい状況にあるものの、消費・生産ともにやや持ち直しの動きを見せています。

今後ワクチン接種が進んでいくことを考えれば、長いトンネルの出口を見据え、攻めの姿勢にシフトしていく段階に来ています。

アフターコロナにおける本県経済の目指すべき姿、それは、「高付加価値」であります。

第一に、製造業についてですが、有力な成長産業であり、県内企業の高い技術力も生かすことができる「医療機器関連産業」、そして、カーボンニュートラルの実現に向けて追い風となっている「水素・燃料電池関連産業」に対して、特に重点的に支援を進めて参ります。

また、地場産業では、ワイン・日本酒の2種類のGIを持つ県として、そのブランド力を一層高めていくとともに、本県で初めて開催される国内最大級の展示会「ジャパンジュエリーフェア」の機会などを捉え、国内外への販路拡大を進める考えであります。

第二に、観光業については、訪れる方に上質な環境やサービスを提供する事業者や地域を支援することにより、満足度を上げ、滞在時間を伸ばし、リピーターを増やすという好循環をつくり、観光消費額の増大と収益性の向上につなげていく考えであります。

第三に、農業については、4パーミル・イニシアチブの取り組みなど新たなブランド戦略を展開するとともに、昨年好調だった輸出を更に拡大していくため、生産・流通・販売の三位一体となった取り組みを進めて参ります。

また、生育状況などのデータを解析し、高品質化や収量の増につなげる「データ農業」に本格的に着手し、県内農家の収益力の向上に取り組んで参ります。

ただ今御説明した以外にも、「ハイクオリティやまなし」をキャッチフレーズに、様々な地域資源の「上質さ」をPRし、「やまなし」のブランド価値を高めることで、産業全体の高付加価値化を積極的に進めて参ります。

次に、豚熱の発生についてであります。

先月11日、中央市の養豚場で飼育する豚が、豚熱ウイルスに感染していることが判明いたしました。

県内で初めて感染例が出た令和元年11月以降、県内で飼育されている全ての豚にワクチンを接種するなど防疫体制を講じていましたが、このような事態となったことは誠に残念であり、畜産農家の方々の落胆と不安は、察するに余りあるところであります。

県としては、感染が確認された直後から、全庁を挙げて初動防疫を開始し、県建設業協会や中央市などからも御協力をいただき、5月18日までに、2600頭余りの豚の殺処分と埋却、施設の消毒作業などの全ての防疫措置を完了させました。

こうした感染の抑え込みに加えて、その後の風評被害を防止することも大変重要であります。

このため、県から報道機関等を通じて、豚熱ウイルスは人に感染しないこと、また、感染した豚が市場に出回らないことなど正しい情報の周知に努めたところであります。

今後、専門家による疫学調査を踏まえ、万全の対策を講じていく考えであり、養豚農家の皆様に寄り添いながら、再発防止に取り組んで参ります。

次に、富士川の堆積物についてであります。

過日、富士川に堆積する泥から、凝集剤として用いられるアクリルアミドポリマーが検出されたとの報道がありました。

この報道の内容が事実であれば、誠に由々しき問題でありますが、先ずは、事実関係の確認が必要であることから、静岡県と連携して、水質調査と堆積物に対する調査を行って参ります。

水質調査については、当該報道でアクリルアミドポリマーが変化すると指摘されている有害物質・アクリルアミドモノマーを対象に、河川水中の濃度検査を早急に実施いたします。

一方で、堆積物に対する調査については、汚泥から凝集剤の成分を検出する方法が確立されていないことから、有識者の御意見も伺いながら、秋頃を目途に調査計画を策定し、可能な限り速やかに調査に着手して参ります。

こうして得られた科学的な知見に基づき、静岡県とも協働して、富士川の豊かな水環境を守っていくために必要な取り組みを進めて参ります。

次に、県有地をめぐる訴訟についてであります。

県と富士急行株式会社との間で締結した山中湖畔県有地に係る賃貸借契約については、当該契約が地方自治法第237条第2項にいう「適正な対価」によるものとは言えないことが明らかになったため、別に提起された住民訴訟を通じて違法無効であるとの主張をして参りました。

一方、同社は、本年3月1日付で山梨県を相手に債務不存在等の確認を求める民事訴訟を提起し、現在、甲府地方裁判所において係争中であります。

この訴訟において、単に同社の主張を否定し、棄却判決を求めるだけでは、遅延損害金を除いても363億円に及ぶと考えられる県民の損害は回復されません。

そのため、同社が県に対し適正な賃料の支払いを免れたことについて、不法行為による損害の賠償又は不当利得による利得金の返還を命ずる判決を求めて、反訴を提起することといたしました。

山中湖畔県有地をはじめとした富士山麓地域の振興につきましては、同社が長年にわたる貢献をしてきたことは論を待ちません。

しかし、県有地は、81万県民からお預かりしている、いわば県民全体の貴重な財産であり、同社が不適正な賃料での契約の有効性を主張することにより、適正な賃料による負担を免れ、県有地の利用を継続している状態は、早急に正していかなければなりません。

また、この件は、仮に1日請求が遅れれば、約900万円分の時効が成立し、確認訴訟に勝訴したとしても、その分の県民の損害を回復する術を失ってしまうことから、県有財産を適正に管理する責務を負う県として、早急に対応する必要があります。

県としては、県民の皆様の利益を第一に考え、県の主張が認められるよう、しっかりと訴訟に向き合って参ります。 

次に、男女共同参画の推進と性の多様性への理解促進についてであります。

男女共同参画の推進は、県政における最重要課題の一つであり、女性が生き生きと活躍できる魅力的な県づくりのためにも、積極的に取り組む必要があると考えております。

先の2月定例県議会では、県立男女共同参画推進センターについて、集約化する方針の見直しを求める請願が採択されたことから、改めて市町村や女性団体等の御意見を伺い、検討を進めてきたところであります。

県としては、男女共同参画を更に前進させるため、施策を充実・強化させていく必要があると考えております。

このため、ぴゅあ総合に人的資源や財源を集中させ、機能を強化する方針であり、オンラインでの相談や出張講座など、全県各地でサービスを利用できる仕組みづくりを進めるとともに、リニューアルを行い、利便性を高めて参ります。

その上で、現在、ぴゅあ峡南やぴゅあ富士を利用している団体の活動拠点については、継続的な活動ができるよう対策を講じて参ります。

性別に関わりなく、個人として尊重され、その個性と能力が発揮される、これは男女に限った理念ではありません。

近年、性の多様性については急速に関心が高まっており、性的指向や性自認に関わらず、かけがえのない個人として尊重されるような寛容な社会の実現が求められています。

今後においては、ますます、多様性が認められる場には多様な人材が集まり、ひいては地域の活力の源泉となっていくことから、本県としても力を入れて取り組んでいく必要があると考えております。

そこで、県民一人ひとりの多様性が尊重される県づくりに向け、有識者や当事者などで構成する検討会を設置し、性的マイノリティの方々が抱える課題やその対策について検討を進めて参ります。

次に、八ヶ岳スケートセンターについてであります。

県立八ヶ岳スケートセンターにつきましては、県としては昨年度限りで廃止する方針としておりましたが、施設の存続を求める北杜市から譲り受けの御提案をいただいたことから、来年4月に市へ無償譲渡することとし、去る3月29日に市と基本協定を締結いたしました。

県では、この協定に基づき、市が施設を円滑に運営できるよう、利便性と安全性を確保するための改修を行うこととし、所要の経費を6月補正予算に計上したところであります。

施設自体は市に譲渡することとなりますが、周辺には県馬術競技場や道の駅こぶちさわ、美術館などの集客施設があることから、これらの地域資源と連携することにより、これまで県において検討を進めてきた「スポーツによる地域活性化」のモデルエリアとなるよう、市と協働して積極的に取り組んで参ります。

次に、管理捕獲従事者等研修施設の整備についてであります。

ライフル射撃やわななど狩猟全般にわたる研修拠点となる施設については、管理捕獲を担う県猟友会等の御意見を伺いながら、必要な機能や規模、整備場所等の検討を進めて参りました。

昨年3月には、韮崎市から県に対して、韮崎市穂坂町の県有林内への整備を求める要望書が提出されたことから、昨年度、基礎調査を実施し、この結果を踏まえて県猟友会や市と協議を重ねてきたところであります。

今般、基本的な整備方針について、県猟友会や市の理解が得られ、アクセス道路については市が整備するとの基本的な合意に至ったことから、当該県有林内において管理捕獲従事者等研修施設の整備を行うことといたしました。

具体的には、農林業被害の大きいニホンジカ等の捕獲に必要とされる100メートルの射程と動的標的を備えたライフル射撃の練習施設のほか、狩猟全般に係る講習やわな猟の実技研修等を行う研修棟などを整備する予定であります。

これに要する事業費は、アクセス道路の整備を含めて概ね16億円程度、整備期間は、概ね7年から8年と見込んでおります。

野生鳥獣による農林業被害は依然として深刻な状況が続いていることから、捕獲従事者の確保・育成など管理捕獲体制の一層の充実に向け、県猟友会や韮崎市と連携して着実に取り組みを進めて参ります。

次に、太陽光発電施設の適正管理についてであります。

太陽光発電施設については、県内各地で、森林伐採や景観の悪化など環境破壊につながっている事例や、近隣住民に災害発生の不安を抱かせる事例が多発しており、多くの県民の皆様から、条例による規制強化を求める意見をいただいておりました。

本来、再生可能エネルギーを生み出して環境を守るための施設が、環境破壊を引き起こすことは、あってはなりません。

こうした考えのもと、県議会からの政策提言や有識者による検討会議、更にはパブリックコメントを通じて幅広い御意見を伺いながら、条例化に向けた検討を進めてきたところであります。

本定例県議会に提出いたしました条例案では、県土の約8割を占める森林が、地球温暖化の防止や山地災害の防止など多面的な機能を持つことに鑑み、今後、森林伐採を伴う設置や災害リスクの高い区域への設置は、原則禁止することといたしました。

こうした区域にあえて設置しようとする事業者には、あらかじめ、環境や景観に及ぼす影響を調査した上で、地域住民に対して事業計画を丁寧に説明することを義務付けており、防災上の安全性の確保などにも万全な対策が講じられた施設に限り、設置を許可することとしております。

他県でも同趣旨の条例はありますが、本条例が大きく異なるのは、1万件を超える既存施設に対しても、設置届の提出や適正な維持管理を義務付けた点、そして、正当な理由なく条例に従わない場合には、事業者名の公表を行うとともに、国に対して固定価格買取制度による認定の取り消しを求めると明記している点であります。

この条例を真に実効性のあるものとするためには、条例の主旨や内容を事業者に広く周知し、理解していただくことが不可欠であり、所要の経費を6月補正予算に計上したところであります。

「地域と共生した太陽光発電が広がる。そして、地域環境と上手く調和し、県民の安全・安心につながっていく。」

このような理想的な姿を実現すべく、市町村や関係機関と連携して取り組みを進めて参ります。

次に、富士北麓地域の活性化についてであります。

本年2月、有識者で構成する検討会から「富士山登山鉄道構想」が示されました。

これは、既存の道路を拡幅することなくそのまま利用して架線を張らない路面電車を走らせ、併せて電気などのライフラインを整備するというものであります。

現在、富士山は、多くの来訪者が集中することにより環境負荷が増加している状況ですが、本構想は、こうした問題を解決するだけでなく、豊かな時間と上質なサービスという新たな「おもてなし」を提供することにより、そのための支出を惜しまない客層を呼び込み、周辺地域に誘導するという提案であり、ポストコロナ時代の地域活性化のモデルとなるものです。

本県としては、この構想をたたき台として、地元の皆様と現状や課題を共有しながら、議論を深めて参りたいと考えており、関係省庁にも協力を呼びかけ、富士山の保全と活用を高い次元で調和させていくための具体的な方策の検討を進めて参ります。

「上質さ」というコンセプトは、登山鉄道に限らず、富士北麓地域の経済全体にも広げていくべきだと考えております。

富士北麓地域の主要な産業である観光業について言えば、ポストコロナの時代は、これまでの数に頼る観光ではなく、質を高める努力をしていかなければ、やがて国内外の観光客から敬遠され、地域の活力が失われることになりかねません。

今後は、それぞれの事業者が、安心や上質さといった独自の価値を上乗せすることで、地域全体の高付加価値化を図っていく必要があります。

県としても、富士北麓地域が持つ核心的価値を探求し、地域の活性化と成長に向けて戦略的に取り組んでいけるよう、地元の皆様とともに歩みを進めていく考えであり、県有地の高度活用に向けた議論と並行して検討を進めて参ります。

次に、ヤングケアラーへの支援についてであります。

ヤングケアラーとは、一般的に本来、大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っている子どものことを言います。

ヤングケアラーの問題は、本人にその自覚がない場合も多く、支援が必要であっても表面化しづらいという傾向がありますが、本年4月に公表された全国規模の実態調査では、家族の世話をしているため、勉強の時間や友だちと遊ぶ時間がとれないといった子どもが一定数いることが明らかになりました。

家事や家族のお世話をすること、それ自体は大変尊いことですが、それが故に子ども本人が自らの未来を失ってしまうような事態は、社会として見過ごしてはなりません。

地域社会として、子どもとその御家族に寄り添った支援が必要です。

県では、このような子どもを早期に発見し、支援につなげられるよう、教員やスクールソーシャルワーカー等の学校関係者、子ども食堂などの支援者、福祉・介護の関係者等に対し、ヤングケアラーについての認識を深めるための研修を実施しております。

今月14日には、私自ら、ヤングケアラーと接する機会のある方々から意見を伺ったところであり、こうした声を踏まえて、課題や対策について議論を進め、実効性のある支援につなげて参ります。

次に、少人数教育の推進についてであります。

この4月から全国で初となる小学校1年生への25人学級の導入が実現いたしました。

少人数教育の推進は、私の重要公約の一つであり、子どもたちの学力を向上させるとともに、本県の強みである子どもたちの高い自己肯定感を更に伸ばすことにもつながるものであります。

先般、私も実際に授業を視察しましたが、先生方からは、25人学級の導入により、それぞれの児童に応じた手厚い教育活動ができるようになったとの声を伺い、改めて重要性を強く実感したところであります。

来年度は、小学校2年生にも25人学級を導入することとしており、その効果の検証や教育関係者の御意見を踏まえて、小学校3年生以降への導入を検討して参ります。

また、25人学級の影響が及ばない市町村もありますが、こうした市町村に対しては、小規模校を中心に先進的で特色ある教育活動を支援することにより、教育の質の向上に取り組んで参ります。

少人数学級の導入を進めていくためには、質の高い教員の確保が極めて重要ですが、昨今、教員志望者が減少傾向にあることから、その対策が急務であります。

そこで、他県に先駆けて少人数教育を導入するなど教育環境の充実に向けて積極的に取り組む本県の姿勢を県内外に情報発信するとともに、本県の教員を目指す学生を増やすための具体的な方策を検討して参ります。

次に、データ農業の推進についてであります。

本県の果樹や野菜など主要農産物の生産量は、農業者の高齢化や気候変動などによって年々減少しており、県内農家の生産性や収益力の向上が課題となっております。

一方、園芸先進国であり、世界第2位の農産物輸出大国であるオランダでは、データを駆使した生産性の高い農業が行われており、例えば、トマトの収量は、日本の約5倍にのぼり、10兆円規模と言われるオランダの農産物の輸出を支えております。

この成功の要因は、生育状況や生育環境、栽培技術などのデータを収集・分析し、これに基づく科学的な農業、いわゆる「データ農業」を行っていることにあります。

本県でも、データ農業が県内農家の収益力向上につながる可能性に着目し、本年2月に農政部内にプロジェクトチームを立ち上げ、研究や検討を進めて参りました。

その結果、シャインマスカットなどの主要品目において、生育状況などのデータを集め、解析することで、高品質・多収要因を「見える化」し、生産性の飛躍的な向上を図る技術開発を行うことといたしました。

本年度は、県果樹試験場や総合農業技術センターを拠点としつつ、一般農家にも御協力いただき、必要な機器の設置とデータ解析を行う予定であり、県内農家へ実証結果を広く普及できるように取り組んで参ります。

次に、提出案件の内容につきまして御説明申し上げます。

今回提出いたしました案件は、条例案12件、予算案3件、その他の案件29件となっております。

先ず、総合計画の改定についてであります。

総合計画の見直しについては、複数拠点で生活できるまちづくり、デジタル・トランスフォーメーションの推進、未知なる感染症への対応、コミュニティの強化の四つの視点を追加し、本年2月定例県議会で素案をお示ししたところであります。

その後、県議会をはじめ、やまなし自然首都圏構想研究会、パブリックコメントなどでの御意見を踏まえて、林業の成長産業化の項目にICTの活用を追加するなど、更なる見直しを行いました。

新型コロナウイルス感染症の拡大により、これまで以上に前例が通用しない場面が増えていますが、こうした社会の変革を前進の機会として、あらゆる取り組みを実行し、県民の豊かさの向上を目指して参ります。

次に、予算案のうち主なるものについて御説明申し上げます。

本県が全国に先駆けて取り組みをはじめた予防可能な子どもの死亡を減らす取り組みである「チャイルド・デス・レビュー」の実施状況報告を踏まえ、早期に対応可能な予防策の普及と医療や保育など関係者の理解促進に取り組むこととし、所要の経費を計上いたしております。

また、現在、整備を進めている県立やまなし地域づくり交流センターにつきましては、8月12日の開館を予定しており、指定管理者への委託料を計上いたしております。

更に、YCC県民文化ホールについては、開館から40年が経過し、設備の老朽化が進んでいることから、舞台や音響設備などを更新するため、実施設計に要する経費を計上いたしております。

このほか、先に申し上げた太陽光発電施設の適正な設置及び維持管理に関する条例の県内外への周知に要する経費、本県で初めて開催されることとなった「ジャパンジュエリーフェア2021」に対する助成、性的マイノリティが抱える課題の抽出や対策の検討を行う会議の開催に要する経費、国の内示の増に伴う公共事業費などを計上いたしております。

以上の内容をもって編成しました結果、一般会計の補正額は、194億円余、既定予算と合わせますと5520億円余となります。

その他の案件につきましては、いずれも、その末尾に提案理由を付記しておりますので、それによりまして御了承をお願いいたします。

最後に、ワクチンの接種がはじまりましたが、すでに国民、県民の忍耐も限界に近づいております。

本県において何よりも大切なことは、忍耐のなかにも、新しい歩みを着実に進めることであります。

来るべきコロナ禍終息後を見据え、今最優先に取り組むべきは、県民生活をしっかりと支える、そして確実に守り抜くことであります。

先ずは、変異株の出現という新たな脅威に対し、万全の防御を構築すると同時に、コロナ禍により生じ、あるいは顕在化・悪化した社会のひずみに正面から向き合って参ります。

その上で、これに劣らず重要なのが、生活・経済の跳躍に向けて最初の基礎を固める「プライマリー・メニュー」の提供であります。

私は、山梨県全体の価値を高めるため、あらゆる施策をしがらみやタブーを恐れることなく果断に行っていく考えであります。

ふるさとの森や川や水を在るべき姿に戻すため、環境対策において先頭に立つ。

日本で初めての25人学級の実現など、明日を背負う次世代に対し、大胆な投資を行い山梨の未来の土台を築く。

更に、飛躍的な生産拡大を実現する「データ農業」の推進をはじめ、メディカル・デバイス・コリドーや水素・燃料電池関連産業の加速化、薄利多売の観光から上質な時間の提供を旨とする観光へのシフトなど、本県の産業が生み出す付加価値を更なる高みへと引き上げていく。

そして、全県民の財産である県有地の適正利用と、県有資産から得られる利益の最大化のための枠組みをつくっていく。

こうした跳躍への基礎固めにあっても、ここ山梨が日本のトップランナーとなるべく、躊躇なき前傾姿勢で、県政を推進する覚悟であります。

この基礎固めに最適な時機は、ワクチン接種によってコロナ禍に新しい局面がうかがえはじめた、まさに「今」を逃してはあり得ません。

今定例県議会は、「可能性のためにあらゆることを躊躇しない」、その県民の総意に道を拓き、その道を先導するべき範たる場であるべきと信じます。

すなわち、今定例県議会において、ありうべき心はただひとつ。

ただ専らに県民の生活を思い、県民全体の利益を思い、そして、特定の利益の代表者ではあり得ず、県民本位の公益を求道した政治を実行する。

その心において、行政と議会とに一切の齟齬はあり得ません。

議会の皆様とともに、同じ気持ち、同じ心のもと、一意奮闘して参りたく、ここにその決意を表するものであります。

今定例県議会が、行政と議会とが改めて、心をひとつに統べて臨む「回復加速議会」となるべく、御審議のほどをどうぞよろしくお願い申し上げます。

令和3年6月21日

山梨県知事 長崎 幸太郎

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