トップ > 県政情報・統計 > 知事 > 開の国やまなし こんにちは。知事の長崎です。 > 施政方針 > 令和3年9月定例県議会知事説明要旨
ページID:101399更新日:2021年9月21日
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令和3年9月定例県議会の開会に当たり、提出いたしました案件のうち、主なるものにつきまして、その概要を御説明申し上げますとともに、私の所信の一端を申し述べ、議員各位並びに県民の皆様の御理解と御協力をお願い申し上げたいと存じます。
この夏は、全国各地で大雨による被害が相次ぎ、特に、7月に静岡県熱海市で発生した大規模な土石流では、26名もの尊い命が失われました。
亡くなられた方々の御冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された方々に衷心よりお見舞いを申し上げます。
これを受けて、本県では速やかに盛り土の緊急点検を実施し、8月はじめまでには、土砂災害警戒区域の上流部に位置する盛り土や太陽光発電施設など、113の緊急性の高い箇所において、安全性を確認したところです。
災害は、いつどこで発生してもおかしくない、そうした強い危機感を持って、災害に強い強靱な県土づくりを進めて参ります。
さて、今月5日、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会が閉幕しました。
新型コロナウイルス感染症の拡大が続く中、無観客での極めて異例の開催となりましたが、画面越しでも伝わってくる緊張感や熱気に、改めてスポーツの力を感じました。
今大会には、本県にゆかりのある8名の選手が出場し、素晴らしい活躍をされました。
レスリング競技に出場した乙黒拓斗選手は、決勝戦残り15秒での逆転勝利で金メダルを掴み取り、同じくレスリングで銀メダルを獲得した文田健一郎選手、そして、卓球女子団体で日本を銀メダルに導いた平野美宇選手の活躍は、多くの県民の皆様に感動と勇気を与えてくれました。
また、パラリンピックでは、陸上競技走り高跳びに出場した鈴木徹選手が、2000年のシドニー大会から6大会連続入賞という偉業を達成しました。
この4人の選手には、そのたぐいまれな活躍を讃え、県民栄誉賞を贈呈したいと考えております。
大会の1年延期を乗り越え、大舞台で最後まで諦めずに挑戦し続け、多くの感動を与えてくれた全てのアスリートの皆様に、心から敬意を表します。
今大会は、本県が初めてオリンピックの開催地となった大会でもありました。
本県がコースとなった自転車競技ロードレースでは、道志渓谷や山中湖畔といった美しい景観をバックに熱戦が繰り広げられ、その映像が世界中に届けられました。
今後は、大会を通じて得られたレガシーを受け継いでいくことが重要であり、素晴らしい自然環境や競技施設、首都圏に隣接するアクセスの良さなどを最大限活用し、観光客の呼び込みやスポーツを通じた地域活性化の取り組みを加速して参ります。
先ず、当面する県政の課題について、御説明申し上げます。
はじめに、新型コロナウイルス感染症対策についてであります。
本県では、感染拡大の防止に向け、昨年度からグリーン・ゾーン認証制度をはじめとした様々な防御措置を講じてきましたが、デルタ株の猛威は、その壁すら乗り越え、襲いかかってきました。
多くの県民の皆様の御努力により、先月下旬をピークに県内の新規感染者数が減少したことや、本県における医療提供体制の拡充により、3週間以上続いた「まん延防止等重点措置」は、今月12日に終了となりましたが、引き続き、警戒感を持って対応していく必要があります。
その中にあっても、本県では、医療へのアクセスがないまま自宅療養となる患者は、これまで一人も出しておりません。
県外では、都市部を中心に、入院や宿泊療養施設への入所ができない患者が多数発生し、自宅療養中に死亡する事例が発生していますが、私は、こうした医療崩壊とも言える最悪の事態は絶対に引き起こしてはならないという強い覚悟のもと、「医療提供体制の増強」に全力で取り組んで参りました。
先ず、病床については、重点医療機関の御協力をいただき、先月下旬に62床を追加し、既存の病床と併せ、人口比において全国9位という高い水準となる367床を確保したところです。
また、これと並行して、宿泊療養施設についても、先月31日から、中央市の「ホテルルートイン山梨中央」が稼働を始めており、明日からは、甲府市の「ホテル内藤甲府昭和」が新たに稼働する予定です。
開設に御協力いただいたホテルの関係者や、御理解を賜った近隣の住民の皆様には、心から感謝を申し上げます。
更に、現在、6箇所目となる施設を近日中に開設すべく準備を進めており、合わせて966室が確保できる見通しであります。
これらによりまして、病床と宿泊療養施設を合わせた確保数は、人口10万人当たり164と全国1位の水準となります。
また、本県の医療提供体制の拡充は、量だけではなく、提供できる医療の質においても、県民の皆様に安心して療養に専念していただける体制を確保しております。
療養者に対してより手厚いケアを行うため、医師が常駐し、点滴や酸素吸入などの治療や処方薬の投与を行う「医療強化型の宿泊療養施設」の運用を開始いたしました。
これは、巷間、「野戦病院」などと俗称されているものと同じ臨時的医療施設でありますが、体育館等に開設するよりも、プライバシーに配慮した個室で医療を提供できる点ではるかに優れています。
現在、山梨大学の全面的な御協力のもと、「東横イン富士河口湖大橋」と「ホテルルートイン山梨中央」の二つの施設、合計479室をこれに充てており、従来病院でしか行えなかった抗体カクテル療法についても既に必要とする患者へ行われております。
こうした取り組みにより、重点医療機関の負担を軽減するとともに、患者が重症化する前に適切な治療につなげて参ります。
更に、本県では、医師が可能と判断し、かつ、御本人と御家族の同意がある方については、早めに自宅に戻って療養されることも可となっておりますが、このような方が自宅に戻った後も24時間体制で万全のサポートを行うべく、「退所後ケア」の仕組みも構築しているところです。
この仕組みにより、感染者が急増する場合でも、医療提供体制を守り、かつ、一人ひとりに十分な医療的ケアを提供して参ります。
県として、この「必要とする県民に、必要な医療を届けられる」状況を堅持すべく、これからも、これまで同様、いや、これまで以上に「医療提供体制の増強」にエネルギーを傾注し、万全を期して参ります。
感染の収束に向けては、これら医療提供体制の確保に加えて、感染者の減少につながる感染防止対策を進めていくことが重要です。
感染抑止のために重視すべきは、ワクチン接種であります。
現在、県内の高齢者は9割以上、その他の年代を含めると接種対象者の6割以上の方が、1回目の接種を完了されています。
県では、接種の加速化に向け、市町村や職域接種への支援を行うとともに、県内3会場に大規模接種センターを設置し、教員や警察職員を中心に、約2万5000人に対して接種を行って参りました。
現在、市町村などの御協力のもと、全県をあげて接種スピードを加速させており、特に、リスクの高い妊婦や寮生、不安を抱える受験生などには優先的な接種を進めております。
来月までには、接種対象者の8割に相当する量のワクチンが国から配分される予定であり、現在のペースで順調に進めば、11月には希望する県民の皆様への接種が概ね完了する見込みであります。
県内では約9割の高齢者が接種を終えていますが、デルタ株のブレイクスルー感染が明らかになったことを踏まえ、集団免疫の獲得に過度な期待をすることなく、重症化しやすい高齢者の命をワクチンにより直接守るため、限りなく100パーセントに近い接種率を目指して参ります。
その上で、次なる一手として、感染者の割合が高い「若年層」へのアプローチが必要だと考えております。
そこで、県において、今月27日から「若者ワクチン接種センター」を設置し、39歳以下の県民約3300人を対象とした接種を実施することと致します。
また、11月までに2回の接種を終えた18歳から39歳までの県民の皆様を対象に、抽選で食事券などを贈呈することとし、若年層の積極的な接種につながるインセンティブを付与して参ります。
感染拡大を防ぐためには、こうしたワクチン接種の加速化と併せて、感染の早期発見につながる検査体制の強化が必要であります。
このため、医療機関への全自動PCR検査装置の配備を進めるとともに、変異株の流行状況を早期に把握できるゲノム解析を県内で着実に行って参ります。
次に、県民生活の再建に向けた取り組みについてであります。
コロナ禍の長期化は、様々な側面で社会の歪みを生じさせていることから、生活に苦しむ県民の皆様の声に丁寧に耳を傾け、これまで以上に寄り添った支援を行います。
先ず、休業や失業などで収入が減り、生活が苦しい方に対しては、これまでも県社会福祉協議会を通じた生活福祉資金の特例貸付により生活を支えて参りましたが、コロナ禍の長期化に伴い更なる支援の必要があることから、貸付原資を増額して参ります。
次に、「DV被害者」への支援についてであります。
コロナ禍においてストレスを抱える人が増え、そのしわ寄せが立場の弱い方に及んでいる状況であり、在宅時間が長くなったことも影響して、DVの相談件数が大きく増加しています。
DVは、被害者の心身を傷つけ、犯罪ともなりうる決して許されない行為であり、このような被害を受けた方々を守るため、無料法律相談の実施や、その後の調停や訴訟などで必要となる弁護士費用の一部を助成して参ります。
次に、「働く障害者の方々」の工賃向上を実現するための「産福連携」の推進についてであります。
新型コロナウイルスの影響により工賃が大きく落ち込んでおり、障害者就労支援施設やそこで働く障害者の方々に大きな打撃となっています。
本県では、障害のある方の就労機会の確保と工賃の向上を図るため、農福連携により取り組みを積極的に進めて参りましたが、障害のある方の経済的自立を一層促進するためには、企業と障害者の方々がともに活動できる部分をこれまで以上に増やしていくことが重要だと考えます。
このため、農福連携に加え、障害者就労支援施設の経営改善や、県内企業とのマッチングを推進するための取り組みなど、産業と障害者福祉の連携、いわゆる「産福連携」を推進していくことにより、障害のある方々が誇りを持って社会参画できる機会を最大限確保して参ります。
次に、「産後間もない母親」への支援についてであります。
産後間もないお母さんは、感染を恐れて外出の機会が減り、孤立するケースが増えており、育児の不安から「産後うつ」につながることが懸念されています。
そこで、産前産後ケアセンターの宿泊型産後ケアを活用した丁寧なサポートを行うこととし、利用料の助成を行って参ります。
また、「安定した雇用の維持」に向けては、国の雇用調整助成金の特例措置が本年12月に終了することを見据え、企業間で労働力の調整を可能とする「在籍型出向」の活用を進める考えであり、企業に対してプッシュ型の支援を行って参ります。
このほか、言葉の壁や情報不足により生活に不安を抱える「外国人」、地域社会とのつながりが薄く、孤立しがちな「男性介護者」、休校やオンライン授業など環境の変化により学校生活に不安を抱える「子どもたち」、こうした苦しい立場に置かれた方々にも、きめ細かな支援を行って参ります。
次に、県内経済の再生と反転攻勢についてであります。
県内の経済情勢は、全体の基調としては持ち直しているものの、7月以降の感染拡大の影響で先行きが不透明な状況が続いています。
特に、飲食や宿泊など対面型のサービス業は、大変厳しい状況であり、中でも、休業や営業時間短縮の要請に御協力いただいた飲食店や大規模施設には、大きな負担・痛みが生じました。
私は、こうした尊い御協力に報いるため、秋以降感染が落ち着いた折に、今般のマイナスを取り戻すだけでなく、更なる跳躍を可能とする「リカバリー・メニュー」を策定するとお約束して参りました。
これに基づき、今回の補正予算では、先ずは、生活と経済の大きく傷ついた部分を埋め戻し、均していくため、需要喚起策を柱とした施策を総動員し、総額20億円余を計上しております。
これら施策は、いわば将来の跳躍に向けた基礎体力づくりと考えます。
第一の柱は、飲食業とその関連産業の再生であります。
先ずは、「飲食店」の消費拡大に向けて、休業などの要請に御協力いただいた県内全域のグリーン・ゾーン認証店を対象に、5箇月にわたり、実質20パーセント割引となるキャンペーンを実施し、飲食店だけではなく関連する事業者にもその効果を波及させて参ります。
これには総額10億円の予算を確保し、5箇月で50億円、ひと月で10億円の消費を喚起するものであり、コロナ前の飲食店の売上の約15パーセントに相当する規模であることから、強力な支援策となると考えております。
可能な限り早期に実施できるよう、12月から来年1月の第一弾では、キャッシュレス決済を活用する方式とし、来年2月から4月の第二弾では、幅広い世代の方々が、多様な店舗で御利用いただけるよう、プレミアム付き食事券を販売する方式と致します。
これと併せて、より多くの県民の皆様が安心して外食できる環境を整えるため、運転代行事業者が行う感染症対策に対し助成いたします。
また、まん延防止等重点措置の期間中、政府の求める酒類提供の制限により売上が落ち込んだ「酒類販売事業者」に対しては、国の月次支援金の支給額に上乗せ、あるいは対象を拡大して、支援金を給付して参ります。
第二の柱は、冬に向けた観光需要の創出であります。
観光産業は、首都圏の緊急事態宣言や8月上旬から続く外出自粛要請により、夏のハイシーズンに大きな打撃を受けましたが、全国でワクチン接種が進めば、いわゆるリベンジ消費と呼ばれる旅行需要の回復が期待されます。
こうした需要を取り込むため、「冬」をテーマに据えて新たな観光資源を創出することとし、新たな「冬アクティビティ」の開発や、季節の県産食材による「冬メニュー」の開発を進め県内飲食店にて提供するようにして参ります。
また、コロナ禍において広まった家族や友人などとの少人数・高付加価値の旅行スタイルは、コロナ収束後においても人気が続くと想定されることから、この新しい旅行スタイルに対応した魅力あるプランづくりを進めて参ります。
具体的には、グリーン・ゾーン認証施設の利用や、先ほどの「冬アクティビティ」「冬メニュー」あるいは本県ならではの体験型コンテンツを取り入れるなど、県の認定基準を満たした「プレミアムツアー」を販売する旅行業者に対し支援を行って参ります。
本県における観光コンテンツは、これまで季節的には「冬」が比較的手薄でありましたが、これらにより、この冬の需要喚起だけではなく、将来において「冬も楽しめる山梨」として長期的な観光の底上げにもつなげていきたいと考えております。
第三の柱は、文化芸術活動や地域の賑わいの復興であります。
新型コロナウイルスの影響は、県民の心の豊かさの源である文化芸術活動にも及び、多くの県民は、外出自粛やイベント制限により、活動や発表の機会を奪われることとなりました。
また、それに併せて、県民の文化芸術活動を支えてきた地域拠点の存続にも暗い影を投げかけています。
今こそ、本県の文化芸術活動を新しい形で再び活性化していくための取り組みを進めていかなければなりません。
そこで、ライブハウスなど地域の小規模な文化活動拠点が行う、感染対策が講じられた場所や、オンライン、野外などでの新しい生活様式に対応したイベント開催に対し、支援を行って参ります。
これは、取り組みの第一歩であり、今後、文化芸術による地域活性化の研究に着手し、更なる施策の展開を検討して参ります。
このほか、地域の賑わいの場を徐々に取り戻していくため、ワイナリーの新酒イベントや朝市など、商店街や事業者団体などが、販売促進や消費拡大につながる新たなキャンペーンやイベントを実施する場合、1団体につき300万円を上限に助成を行って参ります。
これら三本の柱により、冷え切った消費マインドを回復させ、県内経済の再生を目指して参ります。
次に、中部横断自動車道の山梨・静岡間の全線開通についてであります。
先月29日、中部横断自動車道の山梨・静岡間のうち、唯一未開通だった南部・下部温泉早川間が供用開始となり、ついに全線が開通しました。
これにより、清水港や富士山静岡空港、羽田空港へのアクセスが向上し、本県が物流や人流のクロスポイントとして、海と空に拓かれた場所・開かれた国と書いて「開の国」へ進化するものと考えております。
既に、一部開通でも、企業誘致の促進や農産物の販路拡大、観光客の増加といった整備効果が現れていますが、全線開通により更なる効果が期待されます。
特に、観光面では、静岡県や中京方面からの誘客が見込まれますが、峡南地域では、道の駅などを活用した沿線地域の文化や、伝統、観光資源などの情報発信を行うほか、ワイン県やまなし名古屋情報館におけるPRの強化などにより、更なる観光客の呼び込みにつなげて参ります。
また、一昨年の台風19号により、首都圏方面の交通網が寸断された際に、中部横断自動車道は広域的な迂回路として活用されましたが、全線開通によりその役割が更に重要性を増すと考えております。
今後、残る長坂・八千穂間についても、都市計画の手続きを着実に進め、一日も早い事業化と完成を目指して取り組んで参ります。
次に、男女共同参画の推進に向けた取り組みについてであります。
男女共同参画の推進は、県政における最重要課題の一つであり、私も熟慮を重ねて参りました。
本年7月には、男女共同参画先進県の実現に向けた「取り組み断行宣言」を行い、当面の重点施策をお示ししたところです。
具体的には、男女共同参画に対する意識の改革につながる「若年層への意識啓発」、幅広い分野で女性リーダーを増やしていくための「人材育成」、困難な問題を抱える女性に対する「相談機能の充実強化」の三本柱で取り組みを強化することと致しました。
このような課題に重点的に取り組んでいくため、庁内に男女共同参画を専門に扱う責任者を配置したところですが、来年度に向けては、更なる組織強化の検討も進めて参ります。
一方で、山梨という社会全体において、真の意味で男女共同参画を進めていく上では、行政はその先頭に立つべきことは当然ではありますが、他方において、行政だけの取り組みでは力不足であることは明らかです。
男女共同参画社会の実現を目指し行動される志ある方々の主体的参画と連帯が不可欠です。
このため、各地域において、ジェンダーギャップの解消など男女共同参画の促進に精力的に取り組む団体に対し、県として、しっかりと連帯をしていくべく、団体の活動を物心両面においてサポートして参ります。
また、峡南地域における新たな活動拠点については、南部町との協議の結果、旧富河中学校内に設置することで調整がついたことから、来年度のできる限り早い時期の開設を目指し、整備を進めて参ります。
この拠点には、各団体がいつでも自由に使用できる活動室や、講演や勉強会に活用できる交流室を確保するとともに、DVをはじめ様々な相談に対応する専用室や体験型展示ルームを整備することとしており、全体として約180平米の広さを確保いたします。
性別に関わりなく、個性と能力が十分に発揮される社会の実現を目指し、山梨の未来を切り拓く。
関係団体をはじめとした県民の皆様の思いと、私の思いは一つであります。
ただいま御説明した施策は、今年度先行して実施する取り組みであり、今後は、指定管理者と県との役割分担の見直しを含め、更なる施策の充実を図って参りたいと考えております。
次に、モモせん孔細菌病防除対策についてであります。
昨年、一昨年と、県下全域でモモせん孔細菌病が発生し、生産量日本一を誇る本県のモモの生産に甚大な影響を与えました。
県では、令和元年度以降継続して、薬剤防除に要する経費の助成や、独自のマニュアルに基づく防除の徹底を進めた結果、本年度は果実への被害はほとんど見られない状況となりました。
しかし、未だに葉の病斑が確認されており、台風の襲来など、今後の天候次第では再度のまん延も懸念されるところです。
そこで、昨年度に引き続き、秋の一斉防除を実施するための経費を助成し、徹底的に封じ込めを行うことで、来年春の終息宣言を目指して取り組んで参ります。
次に、ヤングケアラーへの支援についてであります。
子どもたちの生育環境は、その将来性を守り育むために、全ての大人が深慮すべき、最も重い責任です。
私は、山梨県は、子どもたちが大いに将来への希望や期待を抱き、また、その実現に向けて挑戦できるような地であるべきだと考えます。
それは、「子どもの希望・期待を最大化」することこそ、いずれは山梨全体の礎となり、家庭から地域全体までを支える「人心豊かな社会」を築く活力になる、と信ずるからであります。
今月16日には、県で実施した実態調査の結果が判明し、「世話をしている家族がいる」と回答した子どもが、小学6年生では17人に1人、中学生では12人に1人、高校生では27人に1人いることが明らかになりました。
子どもが家族の世話をすること自体は、とても尊いことです。
従って、この数字そのものが、即、社会的な介入を要する子どもたちの人数であるとまでは言えません。
しかしながら、その数字には、少なくとも行政として向き合うべき課題が本県においても存在しうることを示唆しています。
すなわち、この中にもし、自らが担う家族の世話により、自分自身の希望や期待を諦めざるを得ない子が一人でも含まれているとしたら、あるいは、家族の世話の負担がゆえに日常の家庭生活に辛さを覚えるような子が一人でも含まれているとしたら、山梨県としては看過できないのであります。
「ヤングケアラー」の問題は、地域における働き方や家族の在り方にも密接に関連することはもとより、個々それぞれのケース毎によってあるべき対応は異なるであろうことは想像に難しくありません。
これもあって、本県のみならず全国的にも、行政として、未だこれに向き合う知見が十分に蓄積されているとは言えません。
しかし、私は、少なくともここ山梨県において、こと子どもに関する問題にあっては、全国的な議論の成熟を待つなどという受け身の姿勢はあり得ないものと考えます。
その子どもは、日々、かけがえのない成長の時間を過ごしているからです。
子どもたちが限界に達してSOSを発信するまで、あるいは本人に自覚がなくとも誰の目から見ても最悪の状況になるまで放置するようなことは、本県のあるべき姿ではなく、最大限の積極対応に努めて参ります。
明らかな虐待や保護責任が問われる状況や環境を救済するのはもちろんのこと、子どもの健やかな日常や家庭生活、精神かん養に害が及びかねない状況や環境に対しても、県として、きめ細かな対応をしていかなければなりません。
そのための教育や介護、福祉、医療等の関係者の連携を構築し、事案認知から支援に至る包括的な仕組みの構築を進めて参ります。
このため、先ずは、喫緊の対策として、学校現場で支援に当たるソーシャルワーカーの相談体制の強化を行うとともに、子ども向けの啓発動画を配信するなどヤングケアラーに対する理解の促進に取り組んで参ります。
次に、教員の人材確保に向けた取り組みについてであります。
少人数教育の推進は、私の重要公約の一つであります。
この4月から、全国初となる小学校1年生への25人学級の導入が実現したことにより、児童一人ひとりに向き合った、きめ細かな質の高い教育が可能となりました。
来年度は、小学校2年生にも25人学級を導入し、その効果の検証や教育関係者の意見を踏まえて、小学校3年生以降への導入も検討する予定です。
少人数学級を更に進めていくためには、質の高い優れた教員の確保が極めて重要になりますが、ここ数年、教員志望者は減少傾向であり、その対策が急務となっています。
そこで、新たに奨学金の返還の一部を支援する制度を創設することとし、本年度から募集を開始いたします。
具体的には、日本学生支援機構の奨学金を利用した学生が、県内の公立小学校の教員として採用された場合、一定期間勤務することを条件に、卒業前2年分の奨学金の返還に対して助成することとしております。
大学在学時に本県の教員を目指す強いインセンティブを与えることで、優秀な教員の確保につなげ、本県の次代を担う子どもたちの教育の充実を図って参ります。
次に、富士川の水環境の保全についてであります。
本年5月、富士川の堆積物から、凝集剤として用いられるアクリルアミドポリマーが検出されたとの報道を受け、事実関係を確認するための調査の準備を進めて参りました。
7月28日には、山梨県・静岡県が合同で、河川水の濃度検査を実施し、これに併せて、国土交通省も、河川水と堆積物の調査を実施しました。
その結果、国土交通省の調査において、河川水と堆積物の両方から、アクリルアミドポリマーが変化すると指摘されている有害物質・アクリルアミドモノマーが検出されました。
河川水の有害物質の濃度が、水道水の目標値の100分の1であることなどから、この限りにおいて問題はないものと考えておりますが、静岡県、国土交通省と連携し、河川水量が変化する10月及び来年1月に追加の調査を行って参ります。
また、堆積物への調査については、現在、調査計画の策定を進めており、準備が整い次第、調査に着手して参ります。
次に、森林環境税についてであります。
県土の約8割を占める森林は、災害の防止や水源のかん養、地球温暖化防止など県民に多くの恵みをもたらしており、こうした森林を次世代に継承するための財源を確保するため、平成24年度から県独自の森林環境税を導入いたしました。
以来、県では、この財源を活用して、荒廃森林の整備をはじめ、里山の再生、県民参加の森づくりなど森林保全に向けた幅広い事業を展開して参りました。
本年度は、森林環境税導入から10年目を迎え、森林環境保全基金事業の第二期計画の最終年度となることから、来年度以降の事業の在り方について、有識者などで構成される協議会を開催し、意見を伺いました。
各委員からは、依然として数多く残る荒廃森林の整備や、里山の景観保全などを進めるため、森林環境税を活用した事業の継続が必要であるとの意見が多く出されたところであります。
これを踏まえ、県としては、公益的機能を有する森林を、世代を超え、県民全体で守り育てていくため、来年度以降も森林環境税を継続して参りたいと考えております。
今後は、県民の皆様からの御意見も伺いながら、年内を目途に、来年度以降5年間の第三期計画を策定して参ります。
次に、P2Gシステムの更なる展開についてであります。
本県では、平成28年度から、新エネルギー・産業技術総合開発機構、いわゆるNEDOの委託事業として、太陽光発電などの再生可能エネルギーの電力を活用し、水の電気分解からグリーン水素を製造する「P2Gシステム」の技術開発に取り組んで参りました。
本年6月には、甲府市の米倉山で製造した水素を、県内の工場やスーパーマーケットで利用する実証試験を全国に先駆けて開始したところです。
現在、世界では猛烈な勢いで経済のカーボンフリー化が進んでおり、製造過程で二酸化炭素を排出しないグリーン水素に対する期待が急速に高まっています。
このような中、本県が民間企業7社と構成するコンソーシアムにおいて実施する事業が、国のグリーンイノベーション基金事業の第1号案件として採択されました。
具体的には、本年度から令和7年度までの5年間をかけ、P2Gシステムの大型化・低コスト化を推進するとともに、発電施設はもとより、工場等での導入を視野に入れた技術開発、実証試験を行う予定であります。
これに要する総事業費は、民間を含めて5年間で約140億円、このうち、県は21億円規模の事業を実施することとしております。
これにより、世界の水素利用の動きをリードするとともに、本県における水素・燃料電池産業の主力産業化に向けた第一歩となることを期待しております。
次に、提出案件の内容につきまして御説明申し上げます。
今回提出いたしました案件は、条例案2件、予算案4件となっております。
予算案のうち先ほど御説明した以外の主なるものにつきまして申し上げます。
医療的ケアを必要とする障害児や障害者の方々に対する医療型短期入所サービスについては、事業所の地域偏在が課題であったことから、空白圏域の解消に向けた新たな事業者の参入を働きかけて参りました。
この結果、4事業所が新規参入に意欲を示していることから、県としてもこれを後押しするため、必要なシステム整備に要する費用を助成するとともに、基礎知識や実技を習得するための研修を行うこととし、所要の経費を計上いたしております。
今まで遠距離の移動や送迎で大変な思いをされていた富士・東部地域の障害児や障害者、その御家族の方々が、より身近な地域で短期入所のサービスを受けられるようになり、障害者や御家族の負担を大いに軽減できることとなります。
このほか、豚熱の発生に伴い、飼育している豚全頭をやむなく殺処分した農家の早期の経営再建を図るために要する経費、市町村等による計画的な森林整備を促進するために、森林施業の履歴情報の電子化等に要する経費、県産農畜水産物のロゴマーク等の海外商標登録に要する経費、青洲高等学校のグラウンド等の整備に要する経費などを計上いたしております。
以上の内容をもって編成しました結果、一般会計の補正額は、187億円余、既定予算と合わせますと5864億円余となります。
なにとぞ、よろしく御審議の上、御議決あらんことをお願い申し上げます。
結びになりますが、ここに改めまして、今後の施政に向かう決意を申し述べます。
「山梨から超感染症社会への扉を開く。」
それが、新型コロナ感染症の拡大によって、昨年、日本が史上初めての緊急事態宣言を経験したときからの私の覚悟でございました。
以来、今日まで、「県民一人たりとも置き去りしない」、「皆でともに跳躍する。」その日を目指して参りました。
「コロナ禍にあって、なお収束が見えない。」
コロナ禍が始まって以来、既に1年以上が経過し、世情をそのように評価する声もございます。
しかし、ここ山梨県にあっては、この度の災害とも称される国難の中にあっても、一度として収束を諦めたことはありません。
更には、ともに跳躍する瞬間を目指し、そのために議会の皆様とともに、県民の皆様のお力添えとともに、ただひたすらに歩みを進めて参りました。
目指すべきところはただ一つ、「収束を待つのではなく、新しい地平に向かう。」ことであります。
すなわち、新型コロナウイルスの発生という危機を、決して今回限りではない将来性のある仕組みを創るための機会とすること、コロナ耐性のある社会というにとどまることなく、これから先の未知の感染症発生でも前進し続けられる社会を築くことであります。
多くの御批判もいただきました。
その御批判のいずれもが、それぞれのお立場から、現下の厳しい状況を真剣に捉え、そこから抜け出すための真摯な御議論であるものと敬意を持って受け止めてきた次第であります。
しかしながら、私は、私の信念として、
「その瞬間・局面のみを手当てし、限られた財政余力と経済資源が霧消してしまうような、あるいは、未来への可能性を閉ざし、県民の将来展望が隘路に迷い込むような施策展開だけは絶対に避ける。」
べきものと信じるものであります。
私と議会の皆様はともに、県民の皆様の今日この日だけではなく、明日への、未来への、尽きることない責任を負うものであります。
今日が保てても明日を持ち崩せば、私たちは、歴史という法廷において、未来からの厳しい裁きを受けることを覚悟しなければなりません。
先ほども申し上げました通り、本年8月、変異株による全国的感染爆発という、昨年来からの最大の危機に飲み込まれました。
しかしながら県内医療関係者、関係機関、大学、自治体の皆様の御尽力、また何よりも県民各位の強い決意と覚悟、お支えによって、山梨県では決して医療崩壊という最悪の事態を回避し、持ちこたえることができました。
そして、この変異株の猛威は、当面の感染症拡大防止はもちろん、
「必要とされる方に必要な医療を届ける。」
「感染などの様々な状況の変転に対して即時即応で安心の社会を補強し、そして生命と経済を守り抜く。」
という新たな決意と目標を山梨にもたらしました。
「あらゆる場所と地域が、必要な医療ケアに均く迅速にアクセスできる山梨でありたい。」
それこそ、山梨が目指す超感染症社会の明確な社会像であり、新たな感染症に対してさえ、県民誰一人として命と生活に不安なく、一人ひとりの希望を育む「次のやまなし」のあるべき姿ではないでしょうか。
我々は、全県民とともに、山梨の新時代を目指すべきと考えます。
その一歩を今、議会の皆様とともに、県民の皆様とともに、ここに踏み出したく、強く願う次第であります。
そして、来るべき段階では、傷んだ生活と経済を復活させ、復興させ、そして跳躍させる。
この間、その同じ目標に向かって歩みをともにしてくださいました県民の方々とともに、この先も戦い抜く覚悟でございます。
「日常を取り戻し、希望に満ちた毎日を取り戻す。」
「山梨再生の基盤を固め、その先に強い、新しい山梨を目指す。」
その決意で臨んで参ります。
剛い山梨を皆でつくる。
剛い山梨を県民全てで築く。
そして、新しい山梨へ向かう上で、議会の皆様、県民の皆様にお約束申し上げたい。
生活再建、経済再生、その先の新しい山梨にあっては、
―弱者を生み出さない。
―困窮を見逃さない。
―ひとりとして置き去りにしない。
これすなわち、県民全てで絆を深く、県民全てで共に幸せに、県民全てで共に豊かになること、そのことを目指していくことであります。
私は、本議会を是非とも、県民を代表される議員各位とともに、その新しい山梨に向けての生活再生・経済再生・地域再生へのスタートと致したく、改めましてここに御理解・御協力をお願い申し上げる次第です。
令和3年9月21日
山梨県知事 長崎 幸太郎