ページID:124465更新日:2026年2月3日

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令和8年2月臨時県議会知事発言概要

地域枠医師制度めぐる訴訟で控訴へ 

——地域医療の維持を最優先に、制度の在り方に上級審の判断を求める——

 

令和8年2月臨時県議会の開会に当たり、提出いたしました案件につきまして、その概要と、私の考えを申し上げます。

県政運営の究極の目標は、「県民一人ひとりが、確かな豊かさを実感できるやまなし」を実現することにあります。

私はこれまで、「ふるさと強靱化」と「開の国づくり」を二つの柱として、県政運営に全力で取り組んで参りました。

県民の命と暮らしを守ることこそが、県政に課された最も重い責任であります。

そして、その責任の中核を成すものが、全ての県民が、住む場所にかかわらず、安心して必要な医療を受けることができる体制の確保であります。

医療提供体制の土台となる医師の確保は、本県が20年前に医師不足10県の一つに数えられて以来、今日に至るまで、一貫して県政の最重要課題であり続けてきました。

このため県は、医師養成を担う山梨大学と連携しながら、医学部入学定員の増加、医師修学資金の創設、更には医学部地域枠の設置など、息の長い取り組みを着実に積み重ねてきました。

その結果、現在では、県外に所在する北里大学、昭和医科大学にも地域枠を設けるに至っています。

こうした取り組みの積み重ねにより、県内で働く医師は着実に増加し、令和6年12月には、人口10万人当たりの医師数が、初めて全国平均を上回りました。

もっとも、これは決して、医師不足や医師の地域偏在という課題が解消されたことを意味するものではありません。

中山間地域をはじめ、診療科や地域によっては、依然として医師不足が深刻な状況にあり、医療提供体制は今なお不安定さを抱えています。

このような厳しい状況の中にあって、地域枠医師は、本県の地域医療を支える不可欠な存在であり、医師の地域偏在是正においても、極めて重要な役割を果たしています。

地域枠で入学し医師となった方には、知事が指定する県内医療機関において、9年間勤務していただくこととしています。

その具体的な内容については、医師不足地域における医師確保と、医師本人のキャリア形成との両立を図る観点から、「キャリア形成プログラム」において定めています。

しかしながら、これまでの運用の中では、地域枠で入学したにもかかわらず、その就業義務を果たさずに離脱し、中には、一度も山梨県で勤務することなく制度を離れた事例も現実に生じてきました。

医師の離脱は、県内のいずれの地域においても医療提供体制に深刻な影響を及ぼしますが、とりわけ医師不足地域においては、医師一人の不在が直ちに医療体制の維持を困難にし、県民の命に直結する問題となります。

そこで県は、こうした離脱を防止するため、令和2年度、貸与した医師修学資金の返還に加え、違約金の支払いを求める仕組みを導入しました。

その内容については、地域枠への出願時に提出いただく誓約書、並びに医師となってから締結するキャリア形成プログラムの契約書において、明確に位置付けてきたところです。

もっとも、地域枠医師が県内での勤務を継続できなくなる事情は一様ではありません。

このため県としても、勤務形態の柔軟化、就業義務を中断できる事由の拡大、違約金の適用範囲の限定など、必要な見直しについては、その都度、速やかに対応することとしてきたところです。

こうした中、令和5年11月、特定非営利活動法人消費者機構日本から、これらの離脱防止策が消費者契約法に違反し無効であるとして、差止請求訴訟が提起されました。

訴訟において県は、キャリア形成プログラムに基づく契約は、事業者である医師との間で締結されるものであり、消費者契約法の適用対象とはならないことなどを主張して参りました。

しかしながら、誠に遺憾なことながら、先月20日の甲府地方裁判所の判決において、これまで積み重ねてきた県の主張が認められるには至りませんでした。

地域枠制度は、将来、本県において地域医療を担わんとする熱い志を抱く学生に機会を提供し、地域に根ざした医師を計画的に育成するための制度です。

実際に、多くの地域枠医師が、その志を胸に、厳しい医療現場で献身的に勤務しており、その努力と貢献を、私は高く評価しています。

その一方で、当初から県内で勤務する意思を持たないまま、医師免許の取得や将来の経済的利益のみを目的として地域枠制度を利用し、結果として就業義務を果たさない行為については、県民の命を守るという県政の責務の下、地域医療を維持する責任を負う立場として、断じて容認し得るものではありません。

なぜならば、そのような行為が放置されれば、地域医療を志す学生が正当に得るべき機会が不当に奪われるのみならず、地域枠制度の信頼性そのものが根底から損なわれるからです。

そして、その先に待つのは、地域医療の崩壊という現実です。

救急医療や入院医療を含む医療提供体制の維持が困難となり、場合によっては、県民の生命が深刻な危険にさらされる事態すら招きかねません。

したがって、このような帰結を招き得る行為が、今後、制度の運用上、再び生じる余地を残すこと自体、県として断じて認めてはならないのです。

県民を守る。

県民の命を守る。

そのために、地域医療を守り抜く。

私は、どの地域に暮らす県民であっても、必要な医療が確実に提供される体制を維持することは、私が知事としての責務を果たす上で、決して後退させてはならない基本原則であるとの覚悟の下、今回の判決をそのまま確定させることはできないと、地域医療を預かる県政の最終責任者として判断しました。

このため、地域枠制度とキャリア形成プログラムにおける離脱防止策の必要性について、改めて上級審の判断を仰ぎ、社会的な整理を図ることが不可欠であると考え、控訴する決断に至った次第であります。

本件は、県民の命を守り抜くという県政の最も根源的な責務に直結する、極めて重要な判断であります。

何とぞ、私の判断の趣旨を御理解いただき、慎重かつ前向きな御審議の上、御議決を賜りますよう、心からお願い申し上げます。

 

令和8年2月3日

 

山梨県知事 長崎 幸太郎

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