トップ > 県政情報・統計 > 知事 > 開の国やまなし こんにちは。知事の長崎です。 > 施政方針 > 令和4年6月定例県議会知事説明要旨
ページID:104627更新日:2022年6月2日
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令和4年6月定例県議会の開会に当たり、提出いたしました案件のうち、主なるものにつきまして、その概要を御説明申し上げますとともに、私の所信の一端を申し述べ、議員各位並びに県民の皆様の御理解と御協力をお願い申し上げたいと存じます。
今年のゴールデンウィークは、県内各地で観光客が増え、賑わいを取り戻しました。
コロナ禍において、全国的に行動制限のない初めてのゴールデンウィークであり、期間中に県内の観光施設やイベントを訪れた観光客は、3年ぶりに100万人を突破しました。
一方で、連休後も感染の急拡大には至っておりません。
「感染防止対策と経済活動との両立を目指す。」
本県は、超感染症社会への進化、すなわち、感染症に強い強靱な社会づくりに向けて、着実に取り組みを進めてきました。
そして、そのための県民の皆様・事業者の皆様の努力は、いま着実に実を結びつつあります。
今回の連休に本県を訪れていただいた多くの国内観光客の皆様には、この県を挙げた努力の成果を大いに実感していただいたものと確信いたします。
そして、次なる狙いは、超感染症社会へと進化する姿をグローバルに発信していくことであります。
今月には、いよいよインバウンド観光が再開されます。
国では、受入体制を検証するため、アメリカ、オーストラリアなど4箇国を対象に、実証ツアーを開始しました。
本県は、「グリーン・ゾーン認証制度の高度な普及により、ハイレベルな安全・安心が確立されている」ものとして、この実証ツアーの実施県として選ばれ、その行程の一部に、本県の宿泊施設や観光地が組み込まれました。
グリーン・ゾーン認証が普及し、日本一安心・安全な観光地。
このブランド価値が世界中に認知され、外国からの御客様に選んでいただける地となるよう、更なる攻めの姿勢で取り組んで参ります。
先ず、当面する県政の課題について、御説明申し上げます。
はじめに、新型コロナウイルス感染症対策のうち、感染拡大防止と医療提供体制の整備について申し上げます。
県内の感染者数は、1月下旬にピークを迎えて以降、緩やかに減少を続けていますが、依然として一日当たり100名以上の新規感染者が発生しています。
本県では、感染拡大期にあっても、入院、宿泊療養、退所後ケア、ホームケアの四つの療養方法を組み合わせ、県民の皆様に必要な医療を提供して参りました。
ホームケアは、かかりつけ医などの健康観察を受けながら、住み慣れた我が家で療養できる仕組みであり、1月の運用開始以降、1万4000人を超える方に活用いただきました。
これは、当初の想定を上回るペースとなっていることから、運営費を増額することとし、感染拡大時においても適切に療養ができる体制を確保して参ります。
また、検査体制については、医療機関への機器配備に加え、3月から衛生環境研究所の新たな検査室を稼働させたことにより、一日当たりの検査可能件数は約2600件まで増強されております。
次なる感染症への対応も見据え、衛生環境研究所にウイルス検査棟を新設すべく準備を進めてきました。
この度、その整備方針が固まったことから、設計や一部施設の解体に着手して参ります。
ワクチン接種については、市町村の取り組みや、県における大規模接種センターの設置により、高齢者の89パーセント、全対象者の66パーセントが3回目の接種を終えております。
先日開催されたグローバル・アドバイザリー・ボードにおいて、オミクロン株の重症化率が低いのはワクチンの効果でもあり、引き続きワクチン接種が重要との見解が示されました。
この点、特に40歳代以下の接種率が低迷していることから、働く世代や若い世代を対象に、更なる接種促進策を講じる必要があります。
このため、今月10日から、県内2箇所の会場で予約不要の大規模接種センターを設置するとともに、接種者への特典付与やユーチューブ広告の配信などの広報を行い、人の流れが活発化する夏休みシーズンまでに集中的に取り組みを行って参ります。
先月末からは、高齢者や重症化リスクが高い方を対象とした4回目の接種が開始されております。
接種対象となる方々に迅速かつ確実にワクチンをお届けできるよう、引き続き、国や医療機関などと連携し、接種主体である市町村への支援を強力に進めて参ります。
次に、県内経済の再生に向けた反転攻勢策についてです。
現在、病床使用率は10パーセント台で推移しており、医療への負荷を注視しながら、経済の回復に向けた歩みを着実に進めていくべき状況にあると認識しています。
先ず、「飲食店の需要喚起策」として、本年2月からプレミアム食事券によるキャンペーンを実施しておりますが、既に予定数の8割以上が販売済みであり、20億円を超える需要創出効果を生んでいます。
先月からは、飲食店向けの換金回数を月1回から2回に増やし、資金繰りを支援しておりますが、利用期間を8月末まで2箇月間延長し、夏休みや納涼会シーズンにおける利用促進を図って参ります。
また、「観光業の反転攻勢」に向けては、先ずは、回復基調にある国内の需要の確実な取り込みを図ります。
既に予算を確保しているグリーン・ゾーン宿泊割り、プレミアムツアーの造成、JRと連携した夏の特別観光キャンペーンなどの取り組みを進め、誘客を加速させて参ります。
インバウンド観光の再開に向けては、国において先月末から実証実験が行われていますが、県としても再開時にスタートダッシュを切り、県内全体でその恩恵を享受することができるよう先手対応で準備を進めて参ります。
また、「県産品のブランド力強化」に向けては、当初予算において国内外へのプロモーション経費を計上しておりますが、国内の外食需要の回復を見据え、追加的な対策を講じて参ります。
具体的には、首都圏の富裕層をターゲットとした「日本酒・ワイン」のプロモーション、フランスレストランウィークと連携した本県の「美食」のPRなどを行って参ります。
これらに加え、本年10月に、若い女性の皆さんに大きな影響力を持つファッションショー「東京ガールズコレクション」を県内で開催することとし、人気モデルの発信力を活用した地場産品や観光資源のプロモーションを行って参ります。
続いて、「農業」分野においては、県産果実の輸出競争力を更に強化して参ります。
令和3年の県産果実の輸出実績は、17億円を超え、初めて10億円を突破した令和2年と比べ6割以上増加いたしました。
これは、生産者や輸出関係事業者の努力の賜であるとともに、県によるブランド力強化の取り組みやデジタルを活用した積極的なプロモーション戦略が功を奏したものと考えております。
米国産スモモの輸入解禁の動きなどを受け、県では、7月から9月にかけて米国での実態調査を行いますが、この調査は、単に輸入解禁を迎え撃つための生産体制の強化だけではなく、新たな販路開拓や更なる輸出拡大につなげることも企図しております。
なお、令和元年から2年連続で大きな被害をもたらしたモモせん孔細菌病については、関係市町やJAと連携して徹底した防除を行ってきた結果、被害がほぼ確認されなくなったことから、先月27日に終息を宣言いたしました。
モモせん孔細菌病の克服により、高品質なモモの安定生産維持の環境が確保できることから、高付加価値な生産体制強化と更なる輸出拡大努力を通じて、農家の皆さんの所得向上への寄与を図って参ります。
次に、自殺リスクの低い社会の実現について申し上げます。
本県の自殺死亡率は、全国の都道府県と比較して、中位から上位で推移しています。
弱者を生み出さず、困窮を見逃さず、誰一人として置き去りにしない「包摂的な社会」を目指す本県において、その県民をして「生きることさえ諦めざるを得ない」状況に至らしめてしまうことは、是が非でも解消するため全力を尽くすべき事態であります。
コロナ禍においては、経済的な困窮や孤独・孤立の深まりなど、自殺リスクの高まりが懸念されます。
現に、令和3年の本県の自殺者数は、コロナ前の令和元年を4パーセント以上上回ってしまっています。
こうした自殺死亡率の高止まりは何としても解消すべき重要課題であり、我が県社会における自殺リスクを低減させていく必要があります。
そこで、全国でも先進的な取り組みとして、本県独自に、自殺の社会的・経済的要因の調査・分析を行ったところであり、本年4月、その結果を公表いたしました。
本県のみならず全国的にも、これまでの「自殺対策」は、最初から「自殺は個人の特別な事情によるものであるが故、対処困難」との先入観のもと、水際対策を中心とする取り組みに留まっておりました。
しかしながら、本県は、今回の調査結果を踏まえ、「そもそも自殺を決意せざるを得ない状況にならないよう」より上流での対策・社会政策的なアプローチに取り組むことといたします。
その方向性として、第一に「ささえる」視点として、自殺リスクのある方を支える仕組みづくりを進めて参ります。
先ず、自殺の危険を示すサインに気付き、声かけや見守りを行う「ゲートキーパー」の裾野を広げます。
中学生・高校生を対象にユースゲートキーパーを養成するほか、教員や地域住民への研修会などで理解を促して参ります。
また、「社会的に孤立している方は自殺につながる可能性がある」ことから、抱えている問題に応じた支援を行って参ります。
先ず、「ひきこもり」問題については、民間の支援団体に対する助成制度を新たに創設し、今後の継続的な支援につなげて参ります。
「いじめ・不登校等の悩みを抱える児童生徒」や「DV被害者」の方々には、身近な相談窓口の利用を促すべく必要な措置を講じます。
「ヤングケアラー」問題は、家庭内のデリケートな問題であることから、表面化しづらく、相談できずに強い孤独感を抱えるケースもあります。
支援する側の体制を強化するため、関係機関との連携を支援するアドバイザーを配置するとともに、元ヤングケアラーの方々による学校訪問の機会を設け、更なる理解促進を目指して参ります。
「虐待、いじめなどの権利侵害を受けている子ども」に対しては、2月定例県議会で成立した「やまなし子ども条例」において、「山梨県子ども支援委員会」を新たに設置し、救済に向けた調査審議を行うとされていることから、その設立準備を進めることと致します。
第二に、「つながる」視点として、人と人とのゆるやかなつながりの形成を進めて参ります。
社会とのつながりが希薄な「男性介護者」の孤立防止に向けて、介護者と支援者の集いや、ケアマネジャーによる企業訪問を行うことと致します。
また、スポーツの実施率と自殺死亡率には負の相関があるとの調査結果を踏まえ、新たに、「スポーツ」の力を活用した自殺リスクの低減の取り組みにも着手いたします。
具体的には、複数人で集まり継続してスポーツを行う、いわば「スポーツ無尽」を推進することにより、新たな運動習慣の定着につなげます。
また、孤独感や悩みを抱える児童生徒たちに対しては、観客と共にプロスポーツの迫力に触れ、共に高揚感を体験する機会を提供することにより、孤独感などの解消につなげて参ります。
第三に、「うるおう」視点として、良質で安定的な雇用の確保を進めて参ります。
雇用状況の悪化は、経済的な不安定さをもたらし、地域社会での地位も奪うといった理由から、自殺リスクを高める要因と考えられます。
後で述べますように、県では、先般、労使双方を始めとする幅広い関係者が集う「豊かさ共創会議」を立ち上げ、労使がともに「共益関係」を育むことを通じて「成長と分配の好循環」を実現するため、時代環境に即した人材育成などの具体策を講じていくこととしております。
これら三つの視点での対策に加え、更なる効果的な施策の立案に向け、個々の事例に着目した自殺の要因分析などの継続的な調査研究に取り組むこととしており、様々な知見を集めながら、自殺を考えないですむような地域社会への体質改善を図って参ります。
次に、共生社会の実現について申し上げます。
アフターコロナの社会は、大きな変革の渦の中にあります。
ウクライナ情勢をめぐる世界経済や国際関係の変化。
世界における中国の台頭と、それと反比例するように低下している我が国の国際的な影響力。
あるいは、AI、ウェブスリーといった想像を超える技術革新。
もはや過去からの延長線上では物事が考えられない時代が到来しています。
これは、本県においても当然逃れられない事態であり、私たちは、過去と非連続の社会状況に直面しつつあります。
このような状況下で、県民一人ひとりが豊かさを実感できる社会を実現するためには、ここ山梨に多様な人材が集い、衆知を結集することで、地域全体で成長を続けていく必要があると考えます。
様々な可能性や素養を持った方々が融合し、イノベーションを起こす。
こうした環境を実現することにより、将来にわたって山梨が存在し続けることができるかどうか、今、瀬戸際に立っているのではないかと考える次第です。
したがって、多様性の確保、すなわち年齢や性別、国籍、障害の有無等に関わらず、全ての方をコミュニティーの一員として受け入れ、活躍していただく社会の実現は、本県の将来を左右する極めて重要な課題であります。
こうした思いから、今年度新たに「男女共同参画・共生社会推進統括官」を設置し、組織体制を強化したところであります。
先ずは、その第一歩として、私を本部長とする「山梨県男女共同参画・共生社会推進本部」を設置し、全庁横断的な推進体制のもと、共生社会の実現に向けた指針を策定することと致しました。
ジェンダーギャップを解消し、男女が互いにその人権を尊重しつつ責任を分かち合うことで、その個性と能力を十分に発揮する。
これは、本年3月に策定した「第五次山梨県男女共同参画計画」の基礎となる考え方であります。
特に、ジェンダーギャップの問題については、固定的な役割分担意識が根強く、管理的職業従事者に占める女性の割合が低いなど、その解消が進んでいない現状があります。
更に、昨年度の県民意識調査の結果、労働や余暇などの項目で女性の満足度が低いことが明らかになりました。
これを受け、女性の抱える課題について掘り下げた調査を行い、更にきめ細かな施策の展開につなげて参ります。
また、コロナ禍にありながらも、県内で働く外国人は増加を続けていることから、「多文化共生社会」の重要性は一層高まっています。
先月、「やまなし多文化共生社会実現構想委員会」を設置し、本県のあるべき姿について議論を開始したところであり、市町村とも連携しながら、外国人に「第二のふるさと」と思ってもらえるような県を目指し、取り組みを進めて参ります。
次に、豊かさ共創基盤の構築について申し上げます。
現在、国が取り組んでいる「成長と分配の好循環」は、本県においては、労使がともに「共益関係」を育んだ先にこそ実現するものと考えます。
働き手がスキルアップする。
それにより企業が収益を上げる。
そして、その収益が賃金として働き手に還元される。
こうした生産性向上と就労環境改善の持続的な好循環を構築することは、極めて重要であります。
他方で、デジタル化の進展は経済社会に幅広く影響を及ぼしており、新たな産業分野の成長も著しいものがあります。
新たな時代に求められる人材やスキルを見極め、育成する環境を整備していくこと、これには労使のみならず、行政も一体となって取り組んでいく必要があると考えております。
そして、この取り組みは、年齢や性別、国籍、障害の有無等に関わらず、働いている方、あるいは働く意欲のある方全てを対象にすべきものです。
こうした認識のもと、本県の豊かさを共創する基盤の構築に向け、労働団体、経済団体、教育機関等の代表者からなる「豊かさ共創会議」を設置し、先月12日に第一回の会議を開催いたしました。
会議において、人材育成への投資が必要との声が多く上がったことを受け、先ずは、企業が求める人材や、労働者のスキルアップの取り組みなど、産業人材の育成に関する実態調査を行って参ります。
更に、働き手の能力開発を積極的に行えるような環境整備や、全ての県民を対象にそれぞれの属性や希望に応じながらITリテラシーやDXマインドの向上を図っていくための方策についても検討して参ります。
遅くとも年内には、人材育成や教育の在り方についての方向性を取りまとめたいと考えておりますが、それ以前においても具体策について成案を得次第、実行に移して参ります。
次に、提出案件の内容につきまして御説明申し上げます。
今回提出いたしました案件は、条例案12件、予算案3件、その他の案件2件となっております。
先ず、条例案のうち、山梨県立国際交流センター設置及び管理条例の改正についてです。
多文化共生施策を一層推進するため、施設名を「山梨県立国際交流・多文化共生センター」に改称するとともに、「ぴゅあ総合」への移転に伴い宿泊施設を廃止するなどの改正を行うものです。
次に、予算案のうち主なるものにつきまして申し上げます。
不妊治療を希望する誰もが安心して治療を受けられる環境を整備するため、保険適用後の受診動向や負担感、医療機関の状況などを把握することとし、調査に要する経費を計上しております。
このほか、データ医療の推進に要する経費、県立高校における情報教育の推進に要する経費、地震発生時に崩落の恐れがある道路法面等の対策に要する経費、国の内示の増に伴う公共事業費などを計上しております。
以上の内容をもって編成しました結果、一般会計の補正額は、112億円余、既定予算と合わせますと5663億円余となります。
なお、原油価格や物価の高騰への対策については、国の交付金を活用した施策を鋭意検討しているところであり、今定例県議会において予算案を追加提出し、御審議いただきたいと考えております。
その他の案件につきましては、いずれも、その末尾に提案理由を付記しておりますので、それによりまして御了承をお願いいたします。
なにとぞ、よろしく御審議の上、御議決あらんことをお願い申し上げます。
最後に、これからの山梨が向かうべき方向性についての希望を、申し添えることをお許しいただきたいと存じます。
「生活はもちろん、一人ひとりの心に日常を取り戻したい。」
今年こそ、2022年こそは、2020年に始まったコロナ禍からの「3年目」ではなく、日常を取り戻す回復の年にしなければなりません。
県民の皆様、医療関係者の皆様が耐えに耐えてこられた過去2年間の延長に、山梨の見通せない「これから」が続くことがあってはなりません。
コロナ禍が始まった当初から今日まで、私は一貫して、コロナ対策のあらゆる施策を「未来」、すなわち「コロナ禍後を見据えて築き上げる」ために腐心し、徹底して参りました。
感染症が発生するたびに、生活と経済が疲弊し切ってしまうことのない、強く、かつ発展性のある地域社会を構想し、議会と県民の皆様のお力添えと御理解の下、多くの施策を実行して参りました。
それが、2020年のコロナ禍発生当初から申し上げ続けておりました、「超感染症社会」への揺るぎない決意と道のりであります。
経済活動の継続、生活と家庭の支え、命と経済の両立に、どこよりも早く、どこよりも強い山梨にあっては、どこよりも先に日常化を取り戻す。
そのための社会の強化であり、築き上げてきた今現在でありました。
「山梨にはすでに、その力が備わっている。」
私はそう信じております。
人間が生きる社会にあって、経済活動・社会活動の中で感染症が皆無となる状況はありえない。
であるからこそ、感染症が致命的とはならない状況を社会全体で構築しなければならない。
そして、山梨はそれを着実に前進させてきた。
県民の皆様、医療関係者の皆様とともに前進させてきたのです。
そして、それが、現在の、山梨という社会の強さにつながっております。
過去2年間の忍耐と辛抱が、これから先の更なる苦悩を予感させるものであってはなりません。
本県における感染症対策は、すべて跳躍のための積み上げであり、社会環境の、いわば体質改善でありました。
今一度、そのことに立ち返るとき、重症化未満に抑え込む検査・医療提供体制、ワクチンの接種環境、社会的な感染拡大防止体制が揃った山梨にあっては、どこよりも、誰よりも先に日常化を取り戻す、その先例をつくる資格がある。
そのように考えますが、いかがでしょうか。
繰り返しになりますが、それはすべて、医療関係者を含めたあらゆる現場での、施策の積み重ねへの御理解と、社会の機能回復を目指した施策展開への御理解の上に成り立つものです。
もちろん、これから先も感染症に対する警戒感と対処を怠ることがあってはなりません。
しかし、コロナ禍にあってやむなく生まれた、人間との距離、社会との距離、その広がりがもたらしたものは、決して心の距離や断絶ではなく、他者や家族、仲間といった、価値と希望への、社会生活への渇望ではなかったでしょうか。
人も地域も社会も胸こがし膨らむ、触れ合うことへの期待に応えるために、日常化を取り戻すための第一歩を、いよいよ山梨県から踏み出すべき時ではないでしょうか。
生活も経済も、成長軌道へと力強く回復させていく。
コロナ禍の2年間とは、決して忍び耐えるに任せるだけではなく、跳躍のための種を撒く時代であったこと、そのための時間であったことを、議会の皆様とともに、県民の皆様にお示ししていかなければなりません。
コロナ禍にあっても、山梨県では、多くの、新しい芽が生まれ、力強く育っております。
産業振興から家庭、地域への支援まで、議会の皆様とともに施策を練り上げてきたものは、すべて山梨という場所で芽生えを迎えつつあります。
これからも、その芽に向き合う心、そのひとつひとつを大切にし、行政として漏れなく目を配り、漏れなく心を砕き、支えていく。
そして、その先にこそ、私は「県民一人ひとりが豊かさを実感できる山梨」があるはずである、と信じる次第です。
その瞬間に向けて、日常を取り戻す。
そして、後世に歴史を振り返った時、今日、この瞬間、そして、この山梨県議会の場においてこそ、その転換のスタートがあったものと思い返されるべく、議会の皆様と共に、山梨県をして、この歴史的な転換への第一歩を踏み出させしめようではありませんか。
議員各位の格別な御理解・御協力をお願いする次第です。
令和4年6月2日
山梨県知事 長崎 幸太郎