ページID:97490更新日:2020年11月30日

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令和2年11月定例県議会知事説明要旨

令和2年11月定例県議会の開会に当たり、提出致しました案件のうち、主なるものにつきまして、その概要を御説明申し上げますとともに、私の所信の一端を申し述べ、議員各位並びに県民の皆様の御理解と御協力をお願い申し上げたいと存じます。

はじめに、新型コロナウイルスとの共存を余儀なくされる困難な状況下で、感染防止対策をはじめ、懸命に御努力くださっております全ての県民の皆様に、そして、県民の生活と生命を守るために、昼夜問わず御尽力いただいております医療関係者の方々に、この場をお借りして感謝を申し上げます。

「日本を、取り戻す。」。

このスローガンのもと、東日本大震災からの復興や、三本の矢からなる成長戦略、いわゆるアベノミクスにより、日本経済の再生などに取り組まれた安倍政権は、歴代最長となる3188日の在任期間を終え、静かに幕を下ろしました。

そして、新たに発足した菅政権は、「国民のために働く内閣」として、新型コロナウイルス対策と経済の両立、デジタル社会や脱炭素社会の実現、地方の活性化などを推進するとともに、全力で規制改革に取り組む姿勢を打ち出しました。

現在、国においては、第三次補正予算の検討を進めておりますが、補正予算成立後は、県としても、これに迅速に対応し、景気や雇用に十分配慮した施策を実施して参ります。

さて、世界的規模で俯瞰してみますと、新型コロナウイルスの猛威は、収束に向かうどころか、その勢いは、第一波をはるかに上回る規模で拡大を続けております。

スペインでは、再び非常事態宣言が発令されました。

フランスでは、全土を対象に再度のロックダウンに踏み切るなど、新型コロナウイルスは、欧米を中心に、再び、市民生活や経済活動などに大きな制約をもたらしております。

一方で、国内に目を向けると、隣接する東京都などの大都市圏では、第三波ともいえる大規模な感染者の発生が続いており、本県においても、11月に入ってから、感染者が連続的に発生するなど、予断を許さない状況が継続しているものと認識しております。

しかしながら、本県では、県民の皆様の命を感染症から守るために、先手対応・事前主義の基本姿勢のもと、スピード感を持って、感染拡大防止と医療提供体制の整備に取り組んで参りました。

また、「超感染症社会」への移行戦略である「やまなしグリーン・ゾーン構想」を策定し、全国に先駆けて、感染拡大防止と経済活動を両立させるための取り組みに着手しました。

県民・事業者の皆様におかれましては、感染症を恐れるのではなく、その存在を前提として、感染防止対策を徹底していただいた上で、私とともに山梨県を前進させて参りましょう。

先ず、当面する県政の課題について、主に新型コロナウイルスへの対応を中心に、御説明申し上げます。

はじめに、総合計画の改定についてであります。

新型コロナウイルス感染症の拡大により、国は国民に対して、密閉・密集・密接、いわゆる3密の回避を要請し、これまで当然とされてきた人々の行動様式に対して、大きな転換を求めました。

そして、その要請は、買い物など公の場でのソーシャルディスタンスの確保、日常生活におけるキャッシュレス決済の急速な普及、学校での遠隔教育の実施、企業におけるテレワークやオンライン会議の導入促進など、極めて短期間で、日本社会に大きな変革をもたらしました。

また、新型コロナウイルスは、東京都や大阪府、愛知県など大都市圏の感染症に対する脆弱さを露呈し、これまで当然のことと看過されてきた、大都市圏への一極集中を見直す動きを加速させております。

新型コロナウイルス感染症による影響は、個人から国家に至るまで計り知れず、社会の変容のみならず個人の価値観までも変化させ、もはやコロナ前の社会に戻ることはないと考えます。

しかし、これまでの常識が変わっても、県としての全ての施策の根幹は、「県民一人ひとりの幸せの実感」の実現であり、これを根本に据えて、社会のニーズに合わせ、行政需要に対応する必要があります。

このため、新型コロナウイルスがもたらした社会の変容の徴を本県にとっての「前進の機会」として捉えて活かしていくべく、単なる受け身の対応ではなく、より望ましい社会の実現に向けて能動的に提案し、働きかけ、そして自ら行動する、すなわち、社会の変革を断行する姿勢で総合計画を見直すことと致しました。

見直しに当たっては、感染症に対する強靭な社会という視点も加え、聖域やタブーをつくることなく、前例やこれまでの制約にとらわれず、あらゆる取り組みを検討して参ります。

また、スピード感を持って取り組むこととし、2月定例県議会には、議員各位に素案をお示しし、御意見をいただいた上で、令和3年6月定例県議会を目途に、計画を改定して参ります。

更に、現在、県では、事務事業の総点検を実施し、効果が薄くなった事業・優先度が低くなった事業などについて、徹底した見直しを行っております。

県が有する限られた財源・人的資源を、新型コロナウイルス感染症への対応に注力するとともに、ウィズコロナ・ポストコロナ時代の新たな行政需要に対し、機動的に、質の高い行政サービスを提供できるよう、取り組んで参ります。

次に、「山梨版CDC(仮称)」の設立についてであります。

「山梨版CDC(仮称)」の設立に向けて、これまでの新型コロナウイルス感染症への対応について検証を進めつつ、県の入院調整専門家会議の先生方をはじめとする、有識者の方々から御助言をいただきながら、組織設計などについて、検討を重ねて参りました。

その結果、「山梨版CDC(仮称)」については、これまでの検討状況を踏まえるとともに、検証により明らかになった課題等に対処するため、感染症に特化した組織として設立することとし、国内外の専門家から知見の提供を受けながら、感染症対策の中核を担う組織として参ります。

具体的には、平時においては、対策の立案や体制の整備、訓練の実施など、新たな感染症への備えを行うほか、結核・肝炎などの本県の感染症対策全般を担うとともに、今般のような有事に際しては、感染症対策の司令塔機能や、情報の分析・発信機能を担うことを想定しております。

更に、対策の実効性を高めるため、山梨大学・県立中央病院・県医師会など、関係する機関と緊密に連携・協働していくとともに、国内外の公衆衛生機関や東京iCDCなど、県外の組織ともしっかりと連携して参ります。

なお、県民の皆様の安全・安心な生活の確保を、より確実なものとするため、来年4月に設立して参る考えであります。

次に、コロナ禍における本県の経済情勢及び雇用情勢と、その対応についてであります。

県内経済は、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、引き続き、厳しい状況にありますが、経済活動が徐々に再開される中で、企業における生産・個人消費の両面において、持ち直しに転じる動きが出てきております。

こうした中、5月に創設した、利子や保証料に係る負担を大幅に軽減した「新型コロナウイルス感染症対策関係融資」制度につきましては、10月までの申し込みが7900件余、融資額も1248億円余となるなど、現状においても、非常に多くの皆様に活用していただいております。

今後も、資金需要の動向を注視しながら、県内経済を支える、中小・小規模事業者の資金繰りを強力に支援して参ります。

一方、県内の有効求人倍率は本年9月時点で0.91倍と、6月から4箇月連続で1倍台を下回るなど、雇用情勢は厳しさを増しており、11月20日時点で、新型コロナウイルス感染症に起因した県内の解雇等見込み労働者数は、469人に達しております。

これまで、国の雇用調整助成金や休業支援金などに関する相談対応や、社会保険労務士による申請サポートを実施してきたところであり、更に、異業種間の在籍出向制度を活用した人材シェアマッチング事業も推進しております。

加えて、新型コロナウイルス感染症の影響による離職者等の一刻も早い再就職を支援するため、合同就職説明会を、年内と年明け1月に追加開催することとし、現在、予備費を活用して準備を進めているところであります。

今後もあらゆる施策を展開して、産業全体の底上げを図り、県民生活と雇用の維持に全力で取り組んで参ります。

次に、グリーン・ゾーン構想の推進についてであります。

グリーン・ゾーン認証制度につきましては、本年6月に宿泊施設・飲食施設を対象にスタートして以来、先月には新たに、ワイン県やまなしを代表する観光スポットであるワイナリーを対象に加えるなど、制度の充実を図ってきたところであります。

これまでに認証を受けた施設数は、県下全市町村にわたり2300件を超え、事業者の皆様の高い意識にも支えられ、本県が名実ともに感染症の安全地帯へとなる動きが、着実に進行しております。

また、新しい生活様式に対応するための設備改修や、機器購入などをサポートする事業については、非常に多くの申請をいただいており、事業者の皆様の経済活動維持のためには、今後も継続した支援が必要であると考えております。

このため、今回の補正予算において、予算額を増額するとともに、新たに認証対象となった民泊事業者やワイナリー、酒蔵の設備改修も支援して参ります。

加えて、県内では、先月から認証を取得した事業者等を対象に、Go To Eat キャンペーンを展開しているところであり、引き続き、こうした取り組みを通じて、県民の皆様の安全・安心な生活と、経済活動の両立を推進して参ります。

次に、「バイ・ふじのくに」の取り組みについてであります。

本県と静岡県が経済交流圏を形成し、地域経済の活性化を促進する取り組みである「バイ・ふじのくに」については、これまで様々な施策を展開して参りました。

川勝知事と私が、お互いの県を訪問し開催したキックオフイベントを皮切りに、静岡県民を対象としたサクランボ狩りや、県立文化施設の観覧料等の割引の実施、両県の百貨店等において物産市等を開催したところ、非常に多くの両県民の皆様に御来場いただき、改めてこの取り組みに対する関心の高さを実感したところであります。

現在は、両県の特産品の詰め合わせを宅配で提供する「ふじのくに愛情パック」を販売するとともに、10月からは、静岡県下の13の小中学校において、給食を通じ、次代の山梨ファンを育成する「やまなしデイ」を実施し、シャインマスカットなど、本県特産の農産物を提供しているところであります。

また、宿泊事業者と小売事業者の方々の御協力により、両県産の厳選こだわり食材を取り入れた、2種類の特選おせち料理が予約販売されたところ、好評を博しております。

更に、両県経済の更なる活性化を図るため、富士山静岡空港旅客ターミナルビルへの協働施設の設置に向けた、協定締結の準備を進めているところであります。

この協働施設において、国内外の利用者に本県の特産品や観光スポットなど、本県の魅力を情報発信して参ります。

今後も、「バイ・ふじのくに」の取り組みを契機に、両県の交流を深め、一体となって、地域経済の活性化を促進し、より豊かな地域づくりを進めて参ります。

次に、太陽光発電施設に対する規制についてであります。

太陽光発電施設については、本年8月、これまでの対策の効果や課題の検証を行うとともに、より実効性のある事業者指導の在り方について検討するため、有識者による検討会議を立ち上げ、議論を重ねて参りました。

これまでの3回にわたる検討会議では、委員の多くから、施設の設置を規制する区域を設けるべきである、あるいは、既に稼働している施設も含め、維持管理について規制を強化すべきであるなど、条例化を強く求める意見が出されたところであります。

また、大規模な施設のある地区や設置が予定されている地区の周辺住民からは、森林伐採に伴う災害の発生や地下水への影響、景観の悪化など環境への影響を訴える声が数多く寄せられております。

私自身、9月には、甲斐市菖蒲沢地区で稼働中の施設や、工事中の現場を、今月4日には、北杜市大泉町の開発予定地の視察を行いましたが、本来であれば、環境を守るための再生可能エネルギーが、森林伐採や景観の悪化など環境を破壊している現状を目の当たりにし、条例による規制の必要性について、思いを強くしたところであります。

こうした中、今月19日には、太陽光発電設備の適正化に関する議員連盟から、太陽光発電施設の適正な導入と維持管理を行わせるための条例を制定するとともに、環境影響評価条例によるアセスメントの強化を求める御提言をいただいたところであります。

こうしたことを踏まえ、今後、検討会議において、設置を規制する区域や規制方法などについて、具体的な検討を進め、できるだけ早期に条例案を提出することと致します。

併せて、太陽光発電施設に対する環境アセスメントについては、周辺住民の意見を反映した環境対策が講じられるよう、対象となる施設の範囲を拡大して参ります。

次に、県立障害者施設の民間譲渡についてであります。

県立障害者施設については、民間事業者による安定した事業運営が可能であること、民間ノウハウの活用により、利用者に一層良質なサービスを提供することが期待できることなどから、民間事業者へ譲渡することとし、事業者の公募など、譲渡先の選定作業を進めて参りました。

今般、あさひワークホーム及び梨の実寮について、それぞれ現在の指定管理者であります、社会福祉法人山梨県障害者援護協会及び社会福祉法人山梨県手をつなぐ親の会から譲渡を受けたいとの申し出があり、有識者等からなる選定委員会においても、良好な施設運営や障害者支援が見込めるとの評価をいただいたことから、来年4月に、両法人にそれぞれ譲渡することと致しました。

今後も、利用者の皆様に丁寧に説明を行いながら、円滑な移行に向け、準備を進めて参ります。

次に、少人数教育の推進と、介護待機者ゼロ社会の実現に向けた、新たな基金の設置の検討についてであります。

私の重要公約の1つである少人数教育の推進は、未来の山梨を支える子どもたちが、その可能性を最大限発揮できるための教育環境の整備であり、地方再生の原点と考えております。

このため、教員が、一人ひとりの児童生徒にじっくり向き合い、きめ細かな教育を行えるよう、1クラス25人を基本とする少人数教育を計画的、段階的に導入するべく、検討を進めているところでありますが、これを実現するためには、教員の更なる増員が不可欠であり、1学年当たり、約3億円の人件費が必要となります。

また、本県の高齢化率は全国より高く、今後も、一人暮らしの高齢者や高齢者夫婦世帯の増加が見込まれる中、在宅サービスの活用だけでは支えきれなくなった高齢者の方々を受け入れる施設は必要であり、特に、現役世代の方々が、御家族を介護するために、自らが離職せざるを得ない事態、いわゆる介護離職という状況を生んではなりません。

本年4月1日現在の本県の特別養護老人ホームの入所申込者数は4820人でありますが、このうち入所の必要性が高い約1800人の方々を受け入れるための施設を早急に確保する必要があります。

そこで、市町村の御理解を得る中で、地域密着型サービスの整備を基本としながらも、ショートステイの特別養護老人ホームへの転換を促すなど、施設整備を今以上に進め、介護待機者ゼロ社会を実現して参りたいと考えております。

これらの整備にあたっては、建設費に対する約13億円の補助金支出をはじめ、介護保険給付費など将来にわたって年間約6億円の県費の負担が生じることとなります。

このように、2つの構想の実現には、多額の財源が必要となりますが、現下の地方財政の状況を見ると、新型コロナウイルス感染症の影響により、来年度は、かつて経験したことがないほど悪化することが予想されます。

また、本県は、世界有数の経済都市である東京に隣接しながらも、首都圏内でも極めて自主財源に乏しい状況にありますが、これを理由に、現状に甘んじていることは、決して許されることではありません。

このため、県の有する全ての財産を最大限に生かして、その収益力を高められるよう見直しを行うとともに、これによって増加する収入の全額と企業局電気事業会計からの繰入金を、新たに積み立てるための「やまなし教育環境・介護基盤整備基金(仮称)」の創設を検討して参ります。

子どもたちは、未来の本県を支える「人財」であり、また、これまでの山梨を支えてこられた高齢者や、ハンディキャップを有する皆様の生活を守ることは、働く世代の安心にもつながる、県民生活の「基礎条件」であることから、その施策の充実と財源の確保に全力を尽くして参ります。

次に、提出案件の内容につきまして御説明申し上げます。

今回提出致しました案件は、条例案10件、予算案4件、その他の案件14件となっております。

条例案のうち、主なるものにつきまして御説明申し上げます。

先ず、山梨県立やまなし地域づくり交流センター設置及び管理条例の制定についてであります。

県民に交流及び連携を図るための機会と場を提供することにより、地域課題の解決及び地域経済の活性化に向けた、県民の主体的な取り組みを促し、もって地域の活性化を図るため、やまなし地域づくり交流センターを来年、夏を目処に設置しようとするものであります。

次に、県職員等の給与に係る条例の改正についてであります。

県職員、学校職員並びに警察職員に係る給与につきましては、去る10月21日、人事委員会から期末手当の引き下げを内容とする勧告がありました。

これを踏まえて、勧告に沿った対応を行うこととし、必要な条例改正案を提出したところであります。
また、特別職につきましても、一般職の期末手当の改定等に鑑み、必要な措置を講ずることと致しております。

次に、予算案のうち主なるものにつきまして御説明申し上げます。

先ず、新型コロナウイルス感染症対策についてであります。

多数の発熱患者の発生が見込まれるインフルエンザの流行期に備え、かかりつけ医を中心とした新たな相談・診療・検査体制の整備を進め、今月1日から運用を開始したところであります。

県医師会をはじめ、多くの関係者の御理解と御協力をいただき、これまでに、診療や検査が可能な医療機関として、200以上の医療機関を指定することができました。

今後、インフルエンザが流行した場合には、こうした医療機関で検査を実施する件数が、大幅に増加すると見込まれることから、増加分の検査費用を計上致しました。

また、患者の受け入れ体制を確保するため、県からの要請に基づき、専用病床を確保する医療機関に対しましては、病床確保料を助成することとし、年度内に必要な予算については、9月補正予算に所要額を計上したところでありますが、先般、国が予備費を活用して、重点医療機関の補助単価の引き上げを行ったことから、所要の経費を計上致しました。

更に、休業や失業などにより収入が減少し、生活が困難となった方を支援するため、生活に必要な資金を貸し付ける事業については、3月に開始されてから、これまでに約1万1000件、35億円余と、非常に多くの方に利用されていることから、引き続き、十分な貸し付けができるよう、県社会福祉協議会に追加の貸付原資を助成することとし、所要の経費を計上致しました。

また、新型コロナウイルス感染症の影響による自殺の増加が懸念される中、来年2月に青木ヶ原樹海を舞台にしたホラー映画「樹海村」が公開されます。

本県では、これを機に、映画会社とタイアップし、樹海の豊かな自然を「生きる喜び」の象徴として発信することにより、自殺の名所という汚名を払拭して、イメージアップを図ることとし、所要の経費を計上致しました。

加えて、二拠点居住やワーケーションなど、大都市圏から地方への分散の流れが加速する中、県内での起業・創業を強力に後押しするために、登記など会社設立費用に対する助成制度を新たに創設することとし、所要の経費を計上致しました。

次に、その他の事業についてであります。

医療的ケアを必要とする障害児や障害者の方々が増加する中、在宅支援の柱となる医療型短期入所サービスのニーズが高まってきております。

しかしながら、本県において、このサービスを提供できる医療機関は、4事業所と十分な数が確保できておらず、加えて、そのいずれの事業所も中北圏域に所在しており、空白圏域の方々がサービスを利用したくても、容易に利用することができない状況が生じております。

このため、空白圏域である峡東、峡南、富士・東部圏域に医療型短期入所サービスを提供できる事業所が増えるよう、サービスの導入を検討する医療機関等を支援することとし、所要の経費を計上致しました。

また、本県では、太陽光発電などの再生可能エネルギーの安定利用を図り、脱炭素社会を構築するため、甲府市米倉山において、次世代エネルギーシステムの研究開発に取り組んでおり、現在、水素を製造し、貯蔵・運搬を行い、エネルギーとして活用するP2Gシステムの実証研究を、他県に先駆けて進めているところであります。

今後、研究の実用化に向けては、先般、移転に関する合意書を締結した水素・燃料電池の研究・評価機関であるFC-Cubicをはじめ、国内外の研究機関の研究者・技術者が集い、多方面から研究を重ねて、技術を高めていくことが重要となります。

このため、こうした研究開発・技術集積・人材育成などを行う研究拠点として、米倉山に新たに「山梨県次世代エネルギーシステム研究開発ビレッジ(仮称)」を整備することとし、継続費を計上致しました。

以上の内容をもって編成致しました結果、一般会計の補正額は、60億円余、既定予算と合わせますと6413億円余となります。

次に、住民訴訟の和解に関する議案についてであります。

住民訴訟制度は、地方公共団体の財務会計上の違法な行為又は怠る事実が究極的には、その地方公共団体の住民全体の利益を害するものであることから、これを防止するため、地方自治の本旨に基づく住民参政の一環として、住民に対し、その是正を裁判所に請求する権能を与え、地方財務行政の適正な運営を確保することを目的としたものであります。

平成29年10月に提起されました県有林の貸付に係る住民訴訟に関し、私は、この住民訴訟制度の意義に真摯に向き合い、当該訴訟の勝敗に拘泥することなく、住民全体の利益につながる積極的な真実発見に努めることとし、原告と法律論を戦わせて参りました。

訴訟を追行していく過程で、これまでの県有林の貸付料の算定に当たり、現況地目の宅地で評価すべきところを開発前の山林で評価するという重大な誤りがあり、その結果、現行賃料が県が負担すべき適正な県有資産所在市町村交付金相当額と同程度の水準の金額になってしまっており、地方自治法に定める「適正な対価」を大きく下回っていることが明らかとなり、県の貸付料の算定が違法でないことの正当性を主張し続けることができない状況となりました。

訴訟代理人の弁護士からは、このまま訴訟を継続した場合、敗訴し、判決に基づき、県議会の議決を経ることなく、歴代知事や賃借人への損害賠償等を行わなければならなくなる可能性が高い旨の助言があり、県として受け入れられる妥当な結論に導けるよう、甲府地方裁判所に和解の意向をお伝えした上で、甲府地方裁判所の関与のもと、原告との和解交渉を行って参りました。

幸い、去る11月24日に原告から議案でお示しした条項なら和解を受容れ可能との回答があり、これを受け、前述の事態を防止し、当該訴訟の早期終結のため、原告と合意可能な和解案を認めていただきたく、速やかに議案として提出したところであります。

県としては、今回の住民訴訟を踏まえ、弁護士等を構成員とする「住民訴訟対象県有地貸付業務検証委員会(仮称)」を設け、県有地貸付手続の適正性をはじめ、住民訴訟で損害賠償請求を行うよう求められた対象者の責任の有無、県有資産所在市町村交付金の適正な額等について詳らかに検証し、改めるべきところは改め、県民共通の財産である県有地の更なる適正化を図って参る所存であります。

その他の案件につきましては、いずれも、その末尾に提案理由を付記しておりますので、それによりまして御了承をお願い致します。

なにとぞ、よろしく御審議の上、御議決あらんことをお願い申し上げます。

最後に、本年も残すところ、残りわずかひと月ほどとなりました。

文字通り、感染症対策に向き合った1年になる見通しです。

収束が見通せないのは山梨県のみならず、日本全国、世界全体の同じ課題であります。

かような状況のなかで、年が明けますと、早いもので知事に就任致しましてから2年目の節目も参ります。

議会の皆様、県民の皆様の御協力・お力添えを励みに、山梨県を前進させる力を得て参りました。

任期の折り返しを目前に、議会の皆様、県民の皆様を前に、ここに強くお誓い申し上げたい決意がございます。

山梨にかかわるすべての命と生活を救い、さらにその先の成長と跳躍をはかる―

私はこの先も、議会の皆様からのお知恵をお借りし、職員すべての情熱を結集して参ります。

山梨県に生まれてよかった。山梨県で育ってよかった。山梨県で学んでよかった。

そして、生涯に亘り、夢を育める仕事と職場と仲間、家族に恵まれる。お孫さんからお年寄りまで、三世代が日々の喜びをともに分かち合える山梨であって欲しい。

一人ひとりが山梨らしい豊かさを実現できる環境づくりは、コロナ禍にあっても、着実に前進させなければなりません。

そのためにこそ、遠い過去から今日に至る県民の皆様が営々と築き上げ、育み、私たちの世代が引き継いでいる資源のすべてを、「これからの山梨」のために最大限の活用に取り組んで参ります。

少人数教育は、すべての若者、生まれくる未来の開拓者の道を拓くものです。

介護待機者ゼロ社会は、これまで山梨を築いてこられた方々の御苦労をねぎらい、老後に報い、働き盛りの世代の方々による負担を減らし、介護離職を防ぐことになります。

山梨らしい、新しい豊かさをぜひ、議会の皆様の手でその幕を上げていただきたく、本議会が山梨新時代に向けた希望発信の場となることを切に願ってやみません。

知事就任2年を見据えた今、志をあらたに致しますのは次のような想いでございます。

山梨で生活することを誇れるあしたを創る。

施策のすべては「これからの山梨のために」こそあります。

議会の皆様、県民の皆様とともに、この同じ目標に向かって、何ら怯むことなく、終わらぬコロナ禍にあっても、不惜身命の覚悟をもって取り組んで参ります。

すべては、これからの山梨のために。

すべては、明日の山梨のために。

この決意をあらたに、困難の季節を全県民とともに歩んで参ります。

感染症を乗り越え挑戦し続ける。前進し続ける山梨県は決して立ち止まることはありません。

たとえ一歩でも。たとえ半歩でも。

それが必ず、山梨における新しい豊かさにつながると信じてやみません。

令和2年11月30日

山梨県知事 長崎 幸太郎

このページに関するお問い合わせ先

山梨県知事政策局広聴広報グループ 
住所:〒400-8501 甲府市丸の内1-6-1
電話番号:055(223)1336   ファクス番号:055(223)1525

山梨県総務部財政課 
住所:〒400-8501 甲府市丸の内1-6-1
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