ページID:116298更新日:2024年6月26日

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令和6年6月県議会知事説明要旨

令和6年6月定例県議会の開会に当たり、提出いたしました案件のうち、主なるものにつきまして、その概要を御説明申し上げますとともに、私の所信の一端を申し述べ、議員各位並びに県民の皆様の御理解と御協力をお願い申し上げたいと存じます。

先ず、当面する県政の課題について、御説明申し上げます。

人口減少に歯止めがかからない今日、人口増を前提につくり上げた社会システムが、様々な局面において、我々の現実の生活を支えきれなくなってきていると認識しております。

人口減少が、労働力不足につながり、結果として公的サービスを含む社会全体の機能低下を招きつつあります。

これまで多くの人が、この事態を「他人事」のように捉え、結果として、漫然と従前の取り組みが継続されてきました。

日常の至るところに潜み、緩やかに進行するこの病理に対し、もはや対症療法を行うだけでは、現在の当たり前の日常でさえ、享受できない日が来るやもしれません。

2月議会において、本県は、あらゆる社会課題や社会変動の兆候を日本の他の地域のどこよりも早く察知し、県民生活における希望と期待を個々人にあって最大にすべく、必要施策を展開させる決意をお示しし、本年を「県民生活強靱化元年」と位置付けました。

無論、我々山梨県の取り組みだけでは解決しえぬ諸課題ではありますが、本県も「自分事」として、いわば、日本社会の「構造的な歪み」に向き合い、是正を図るため、停滞することなく、積極的に施策を講じて参ります。

はじめに、人口減少危機対策の取り組みについてです。

人口減少危機対策については、これまでの取り組みを土台に、本年度はいよいよ本格的な実行フェーズに移行して参ります。

昨年度来、若者が結婚をためらう理由や、子どもを産まない、あるいは産めない要因などについて、経済面や住環境など、様々な観点から調査を行って参りました。

調査結果を踏まえ、「人」に着目してアプローチの方向性を検討し、経済的負担の軽減と妊孕性の担保という2つに整理いたしました。

このうち、妊孕性の担保については、プレコンセプションケアの推進や、卵子凍結に対する助成など、当初予算までに取り組みを一定程度充実させております。

そのため今般は、経済的負担の軽減、経済的自立の促進を中心に施策を講じることとしております。

先ず、経済要因の調査によると、奨学金返還の負担が、就職先の選択や婚姻、出産等に相当程度影響を与えていることが明らかになりました。

これまで、本県の基幹産業である機械電子産業への就職者を対象に、奨学金の返還支援に取り組んで参りましたが、この度、幅広い業種を対象とした新たな制度を構築することとし、基金を設置の上、県内中小企業とともに若者の奨学金返還を支援することと致します。

また、最終的には、若者を経済的な「自立」に導くべく、スキルアップを促し、より良質な雇用につなげていくことが、持続可能な人口減少危機対策であり、人材確保対策であるといえます。

働き方改革等の実態調査において、非正規で働く理由として、家事や育児、介護に時間が必要との回答が多く、特に女性でこの傾向が顕著でありました。

一方、デジタルに関わる産業分野では、人材不足が課題である反面、テレワークなど柔軟な働き方が浸透しており、時間的制約が多い女性のライフスタイルとも親和性があります。

そこで、先ずは、女性をデジタル人材として育成し、正規雇用化に向けて支援を行うモデル事業を実施することとし、得られた知見を今後のキャリアアップ・ユニバーシティなどの施策の展開に生かして参ります。

このほか、男性の育児休業取得の支援や、子育て世帯等の住まい選びをトータルサポートする相談窓口の設置などを行って参ります。

これらの対策の推進に当たっては、県民の皆様と危機感を共有することが重要であり、パブリックコミュニケーションの高度化が必要となります。

そこで、新たな試みとして、県内各分野で活躍されている皆様にアンバサダーとして御協力いただき、当事者目線でのコミュニケーションの強化を図って参ります。

また、県民それぞれのライフステージに応じて、切れ目のない支援を実現していくためには、住民に最も身近な行政機関である市町村の主体的な取り組みが不可欠であり、県としてもこれを強力に後押しする所存です。

このため、新たな助成制度を設け、結婚や子育てなどに関する市町村の先進的な取り組みを支援することとし、優良な事例については、課題を同じくする他の市町村への横展開を図って参ります。

次に、物流の2024年問題への対応についてです。

労働力が減少する今日、各業界での働き方改革の推進は、地域経済基盤の強靱化の観点から極めて重要であり、県としても積極的に取り組んでいるところであります。

物流業界においては、本年4月に適用されたドライバーの時間外労働の上限規制により、今後、輸送能力の不足が懸念されております。

物流の停滞は、日常生活の利便性を大きく毀損させるとともに、企業の経済活動にも多大な影響を与えることとなります。

今般、山梨県物流基盤の強化に関する条例案を提出しておりますが、物流機能が将来にわたって十分に発揮されるよう、行政や事業者、県民の主体的な取り組みを促すべく、施策の基本的理念等を規定しております。

また、物流業界においては、永らく放置され続けてきた多重下請け構造に起因する安価な料金設定が問題となっておりますが、その抜本的是正を目指し、県外から立地する企業に対し、県内の物流事業者との契約を促すべく、企業誘致に係る補助金の要件を改めるなど、県が持つリソースを最大限活用した取り組みを行って参ります。

このため、物流業界の課題について、県内物流事業者の実態やニーズの調査を行うこととし、年度内を目途に、より効果的な対策を策定するよう取り組んで参ります。

併せまして、消費者としての県民の皆様に対しましては、再配達削減に向けた行動変容を促すため、市町村と連携し、宅配ボックスの購入に対する助成を行って参ります。

次に、新たなケアラー支援についてです。

2025年に、団塊の世代全てが75歳以上の後期高齢者となるため、介護を必要とする人の割合は、今後急速に大きくなると見込まれています。

これまで本県は、介護待機者ゼロを目指して、特別養護老人ホームの整備や、介護人材の確保・定着に積極的に取り組んで参りました。

一方、家族介護の担い手は、人口増を前提とした時代に比して、より少ない人数で、仕事と介護を両立していかなければなりません。

更に、近年は、晩婚化等の影響から、子育てと介護の時期が重なる「ダブルケア」の問題も生じており、ケアラー本人や家族の生活への影響が大変懸念されるところであります。

これまで本県が先進的に取り組んできたヤングケアラーや男性ケアラーの問題も含め、家族ケアの在り方は多様で複雑になっておりますが、これらが負担になって、県民一人ひとりの活躍が阻害される社会であってはなりません。

県民の自由な選択を妨げる要因をできる限り取り除くことこそ、「豊かさ」の追求において行政が果たすべき役割に他なりません。
 
そこで、県民誰もがケアラーとなり得るという前提に立ち、最終的には介護離職ゼロ社会を目指し、今後の取り組みを検討するべく、9月議会には、本格的な実態調査が実施できるよう準備を進めて参ります。

次に、喫緊の課題となっている、富士登山安全対策等についてです。

この夏の富士山も、他の観光地の例に漏れず、来訪者の更なる増加が見込まれておりますが、世界遺産登録時にイコモスから指摘されたオーバーツーリズムの解消に向け、富士登山や富士山観光の大きな転換を図って参ります。

先ず、五合目から上の対策として、登山者の規制と安全対策について申し上げます。

2月議会で承認いただいた条例に基づき、来る7月から五合目において登山規制を開始いたしますが、万難を排すべく、目下、対策強化に取り組んでおります。

規制によるトラブルを未然に防ぎ、登山者の利便性向上を図るため、先月には事前決済機能を備えた通行予約システムを導入いたしました。

また、地元市町村や関係事業者の意見も踏まえ、富士山パーキングや鉄道駅における周知、巡回指導の拡充、五合目の通信環境の改善などを行ったところです。

円滑な実施に向け、盤石の準備を進めるとともに、本年の規制状況を検証し、来年以降の改善につなげて参ります。

次に、五合目から下の対策として、いにしえの登山道の再興を図って参ります。

麓から登る伝統的登山の振興は、世界文化遺産・富士山の本旨でもある「文化的意義」の理解促進を通じて、登山者の分散化も期待できるものです。

本年度は、吉田口登山道や富士講、御師文化について調査研究を行うこととしておりますが、これに加え、山中口、船津口、精進口についても調査を行い、いにしえの登山道や巡礼路の特定を進めて参ります。

調査結果に基づき、地元市町村や恩賜林組合などの関係者と連携し、御師料理などの文化的側面も含めて、いにしえの登山道の再興を図るとともに、多彩で魅力ある新たな富士登山を発信して参ります。
 
次に、五合目の来訪者のコントロールについては、富士スバルラインでの抑制が肝要であり、それを可能とする解決策として富士山登山鉄道構想を提案しているところです。

先月までに、構想に係る地元説明会を全市町村で開催したところであり、多くの県民の皆様と、富士山の抱える課題についての認識を共有できたと考えております。

我々の提案を起点に、様々な観点から議論が高まっていることは、大いに歓迎すべきことであり、まさに「集合知」の形成に向けた歩みを感じております。

重要なことは、鉄道か電気バスかといった表層的な二者択一的議論ではなく、富士山を世界の宝として後世に残していくため、その価値や自然環境をいかに持続的に守っていくのかについて、様々な視点から多様な意見を交わすことであります。

100年先を見据え、富士北麓を、いかに豊かで世界に開かれた唯一無二の場所としていくのかが議論の本質的課題であり、こうした将来像を地域住民とつくり上げていく過程で、富士北麓にふさわしい将来の交通システムは何か、最適解はおのずと導き出されるはずであります。

本年度、富士北麓に人や企業が集まり、観光を核とした産業や、文化・芸術などの新たな価値が絶えず創造され続ける仕組み、すなわち「富士山観光エコシステム」のグランド・ビジョンを策定することとしております。

このグランド・ビジョンの策定に向けた検討の進展に併せて、最新の知見もしっかりと踏まえて、様々な選択肢を幅広く視野に入れ、検討を行って参ります。

これらにより富士北麓を世界からの憧憬を集める国際的な観光地として、多くの価値が生み出される地域とすべく、鋭意取り組んで参ります。

次に、補正予算案に計上した主な事業について御説明申し上げます。

外部環境の変動に対しても、可能な限り平常を維持できる社会をつくる「ふるさと強靱化」と、県民全ての可能性に道を拓き、豊かさの元となる価値を創出する「『開の国』づくり」という2つの大きな政策の柱のもと、「豊かさ共創社会」の実現に向け、充実した予算案を編成いたしました。

先ず、公約の第一の柱、「ふるさと強靱化」に関する取り組みについてです。

県民誰もが安心して暮らすためには、ソフト・ハード両面から社会基盤の厚みを着実に積み重ね、幸せと豊かさへの道を選択する土台を強固にしていく必要があります。

ソフト面での県民生活の強靱化に向けては、先ほど申し上げた「ケアラー支援」を軸に、今後大きな議論を行って参ります。

ハード面では、県土の強靱化に向け、国の内示増に伴い、公共事業費163億円余を本予算案に計上しております。

また、新山梨環状道路の北部区間については、本年4月、甲府市桜井町から塚原町までの約5.5キロメートル区間が新規事業化されました。

これにより、骨格となる道路ネットワークの構築が進み、甲府都市圏における慢性的な渋滞解消や、観光面におけるポテンシャルの具現化の加速など、様々な効果の発現が大いに期待されます。

これまで、沿線自治体や地元関係者と力を合わせ、早期事業化を要望してきたところであり、今後も、関係者と連携を図りながら、新山梨環状道路の一日も早い全線開通を目指し、全力で取り組んで参ります。

次に、公約の第二の柱、「『開の国』づくり」に関する取り組みについてです。

道路ネットワークのような有形の開化に加え、多様な人々が集い、交わる無形の開化を図り、この山梨をあらゆる可能性に開かれた「開の国」とするべく、これまで、コロナ禍であっても、数多くの施策の種を撒き続けて参りました。

この「開の国」の潜在的な可能性から、繚乱たる花を大いに「開」かせ、そして豊かさとして結実させるべく、常に新たな一歩を踏み出して参ります。

はじめに、県内全域の高付加価値化についてです。

先ず、富士北麓地域においては、「富士五湖自然首都圏構想」を推進し、教育・文化・芸術の中心となる21世紀の自然首都圏の創出を図っているところです。

4月には、100カ国以上の学生とともに、アートを共通言語に、世界の様々な社会課題に向き合うイベントを実施したほか、7月には公益社団法人「日展」と富士河口湖町との共催で、展覧会が開催されるなど、国際・文化・芸術の取り組みが充実してきております。

他方、富士五湖自然首都圏は、様々な社会実験を行う場でもあります。

今般、新たな社会実験として、社会起業家やソーシャルビジネスと連携した新たな公的サービスを創出するためのコンソーシアムを立ち上げ、地域が抱える様々な課題がビジネスチャンスとなる仕組みを構築して参ります。

更に、このコンソーシアムの立ち上げと併せ、アドバイザリーボードを設置し、専門家の助言・提案に基づき、各コンソーシアムにおいて効果的な取り組みを創出して参ります。

次に、峡北地域においては、昨年12月、北杜市や関係団体の皆様から、小淵沢エリアの振興について御要望をいただきました。

豊かな自然に恵まれたこのエリアは、魅力的な宿泊施設に加え、乗馬クラブやキャンプ場などのアクティビティ施設が立地し、国内有数の観光リゾート地となるポテンシャルがあります。

2月に検討委員会を立ち上げ、議論を重ねているところでありますが、地元とも「目指すべき姿」を共有しながら取り組むべく、国内外に訴求する将来ビジョンを策定して参ります。

このほか、峡南地域の道の駅富士川、甲府地域の武田の杜についても、それぞれ今後の取り組みの検討を進めているところであり、今後、順次、対象を県内各地域に拡大していくことにより、各地域が持つ独自の歴史や文化、風景などを最大限活用し、県内全域に魅力あふれる「上質な空間」を拡げて参ります。

次に、新事業の創出についてです。

この開かれた「開の国」においては、スタートアップや「ものづくり」といった枠組みにとらわれず、あらゆる「新たな挑戦」と、その実現を支援することとしております。

今般、「新事業共創プラットフォーム」を構築し、県が実施する支援策はもとより、外部の様々な支援機関とも有機的に連携し、組織の枠を超えて新たな事業が成長できるよう、伴走支援を行って参ります。

次に、やまなしカーボンフリー農業モデル事業についてです。

本県では、農業分野における地球温暖化の抑制対策として、これまでも全国に先駆け、4パーミル・イニシアチブなどの取り組みを推進して参りました。

将来のカーボンフリー農業の実現に向け、機械や施設の電動化や水素利用を進めるべく、県の試験研究機関において、太陽光により生み出された電力をもとに、電動軽トラックの導入や、更にはこの電力を用いて生産された水素によるハウスの加温システムなどの導入による農業生産プロセスにおけるカーボンフリーを実現するエコシステムの形成に向けた課題を検証して参ります。

この検証に当たっては、富士五湖自然首都圏フォーラムの「富士グリーン水素コミュニティコンソーシアム」において、機器メーカーや関係者と連携し、建設的な議論を深めて参ります。

次に、県立美術館附属デザインセンターの設置についてです。

本県は、多くの人や組織がデザインの力を生かして身近な課題の解決に取り組み、豊かな地域社会を形成する「デザイン先進県」の構築を目指しております。

今般、その拠点となるデザインセンターを、本年11月に県庁防災新館に開設することと致しました。

県立美術館や、包括連携協定を締結している多摩美術大学と密接に連携するとともに、日本を代表するデザイナーをセンターに招へいし、その知見も生かしつつ、各産業の高付加価値化を推進して参ります。

また、工業デザインにとどまらず、地域デザインや政策デザインにも取り組むこととし、デザイン思考を活用した政策形成により、地域の活性化や社会課題の解決を図って参ります。

以上の内容をもって編成いたしました結果、一般会計の補正額は、193億円余、既定予算と合わせますと5338億円余となります。

次に、条例案のうち主なるものにつきまして御説明申し上げます。

先ず、山梨県旅館業法施行条例及び山梨県公衆浴場法施行条例の改正についてです。

近年、アウトドアサウナなど、入浴施設の形態が多様化している一方、現行条例では一律の基準が適用され、また時代に即していない規定もあり、事業者に過剰な負担を強いる場合がありました。

このため、公衆衛生上及び風紀上特に支障がないと認められる場合には、外部からの目隠しを不要とすることができるなど、規制を実情に合わせて見直すものであります。

次に、山梨県ゴルフ場等造成事業の適正化に関する条例の改正についてです。

本県におけるゴルフ場の開発については、昭和48年に条例を制定し、造成事業の適正化を図って参りました。

その後、バブル景気下での過剰な開発が懸念される中、市町村面積に占めるゴルフ場面積を、2パーセントまでと定め、ゴルフ場の開発を実質的に凍結する運用を行って参りました。

この点、県議会からは、県土の強靱化と高付加価値化を推進するためには、良好な地域環境を確保しつつ、民間による適切な投資・開発を取り込んでいくべきとの提言をいただいております。

提言や昨今の社会情勢を踏まえ、ゴルフ場の開発について、地域の意向を十分尊重するとともに、自然環境との調和が図られる場合には、市町村面積の6パーセントまでの開発も可能とする運用の弾力化を図ります。

これに併せ、条例に定める造成事業の設計基準について、より合理的な設計が可能となるよう見直しを行います。

その他の案件につきましては、いずれも、その末尾に提案理由を付記しておりますので、それによりまして御了承をお願い致します。

以上、今回の提出案件は、条例案12件、予算案4件、その他の案件1件となっております。

なにとぞ、よろしく御審議の上、御議決あらんことをお願い申し上げます。

さて本所信を締めくくるに当たり、今一度、本県が取り組むべき喫緊の課題について申し述べます。

今月、厚生労働省が2023年の人口動態統計を公表いたしました。

それが示すところは、日本全体が一層に深刻な状況に直面しているという現実でありました。

本県では昨年6月に人口減少危機突破宣言を発出し、次いで同7月には、官民一体となっての危機突破共同宣言を行ったところです。
 
そして、「それぞれのライフステージにおいて切れ目のない支援」を具体化させるべく関連政策を集束させ、パッケージとして展開して参りました。

しかし、最新の統計によれば、日本全体の婚姻数、出生数はなおも減少し続けております。

言わずもがな、人口の流出以前に、人口の継続的な減少は、家庭や地域社会のあり方にとどまらず、人間が営む社会を機能不全に陥らせかねない、根本的な致命性を孕んでおります。

この人口減少という大きな潮流のもと、昨年までのコロナ禍の荒波、そして、来年以降は、介護需要が爆発的に増加することが予想される2025年問題という大波に向き合わなければなりません。

少子化対策は、自分とは異なる他の世代の課題にとどまりません。

それは地域の今後を決める、自分自身の老後や介護といった将来の選択にかかわる、世代を超えた課題に他なりません。

ケアラー支援問題は、その端的な表れともいえます。

この現状ではネガティブな潮の流れと覆いかぶさってくる荒波を如何に乗りこなし、むしろ将来希望への推進力と転化していくか、そのために今、何をなしうるのか。

先に述べましたように、本議会でご検討いただくべき予算と施策の数々は、今なしうることを可能な限り、即、実行し、明日の山梨にもたらされるべき効果を最大にする。

その決意でお諮りするものです。

そして、その諸施策のいずれもが、将来の不安を解消することによる生活基盤の強靱化に結びつくものであります。

同時に、ぜひ本議会の皆様、そして県民の皆様と分かち合いたく思いますのは、あらゆる議論の出発点となすべきは、「現実を直視する」ことそのものであります。

結婚、家庭、育児、教育への道のりが希望に満ち、期待が膨らむものとしていくためには、私たちは、今、目の前にある社会の現実が、目を背けたくなるようなものであったとしても、また、目に入っても見なかったことにしたいようなものであったとしても、堂々これを直視し、今ある現実の上に議論を打ち立てていかなければなりません。

そこにおいては、「問題のすり替え」はもとより、本質を回避し、表層だけをなぞる対応、根拠の薄い楽観に糊塗された想定に基づいた将来見通しや、その上に積み上げられた対症療法とは、断固として決別する覚悟をもって臨まなければなりません。

婚姻数、出生数が減少し続ける現実とはすなわち、そうした「覚悟」を行政も、その実行する施策も欠いていたことを将来世代が冷徹に見極め、期待と希望を喪失している現実でもあるとも言えるのではないでしょうか。

もし人口減少という時代状況が象徴するものが、人々による期待の減退であり、希望の後退であるとするならば、その社会的障がいは何であるのか。

そこにおける不安の種は何であるのか。

生活、家庭それぞれの局面に、行政として覚悟をもって向き合っていく。

それが本県行政の臨むべき姿勢ではないでしょうか。

もちろん、本県がもてるリソースには限りがあります。

国はもとより、周辺都県と比べようもなく小さなものであることもまた「現実」であります。

しかしながら、私は、常にこう自問するものであります。

果たして、私たちは、県の規模が小さいことを言い訳にしていないだろうか。

私たちは、私たちの持てる資源を100パーセント活用しきっているのだろうか。

局所に配慮するあまり、全体の将来を犠牲にしていないだろうか。
 
その上で、私は、あえて強い確信をもってこう申し上げたいのです。

希望と期待ある生活が成立しない状況は、断固として改められなければならず、そして、山梨県はこれを改めることができる、と。

私は、県民各位、そして県民を代表される議会の皆様と、山梨県がおかれた現実のもと、期待と希望を奪っている社会的障がいと如何に対峙し、県民の心の底にくすぶる不安の種を如何に取り除いていくか、議論を尽くし、知恵を出し合うことで、解を見出だしてまいりたいと思います。

社会的不安に対して常に敏感に反応し、社会的損失をいかにして未然に防ぐのか。

県民生活の現実を直視するところから出発し、そこへの共鳴という想像力を大いに発揮し、生活基盤強靱化を推進して参ります。

さらに、県民個々がそれぞれの希望を育むために、あらゆる生活環境が負の条件と化すことのない、常に前向きな希望が代謝され続ける社会基盤の構築を目指して参ります。

それはまさに、ライフステージの変化において誰一人取り残されることのない、安心のバスケットとして、本県に関わる方々をしっかりと底支えするものです。

私はこう決意しております。

笑顔はひとつではなく、多彩であるべきです。

多くの笑顔、その人だけの笑顔が咲き誇る山梨、そんな、ふるさと山梨であるべきです。

すべての人に光が当たる県政のために。

すべての希望に光を当てる県政のために。

ぜひ、局所・局地のためのみならず、ふるさと山梨という全県のため、全県民のために、更には、本議会こそが山梨という矩を踰え、いずれ日本を代表する集合知の最前線となるべく、暑気を凌ぐ、熱意溢れるご議論を賜りますようお願い申し上げる次第です。

令和6年6月25日

山梨県知事 長崎 幸太郎

このページに関するお問い合わせ先

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