トップ > 県政情報・統計 > 知事 > 開の国やまなし こんにちは。知事の長崎です。 > 施政方針 > 令和5年6月県議会知事説明要旨
ページID:109536更新日:2023年6月21日
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令和5年6月定例県議会の開会に当たりまして、提出いたしました案件のうち、主なるものにつきまして、その概要を御説明申し上げますとともに、私の所信の一端を申し述べ、議員各位並びに県民の皆様の御理解と御協力をお願い申し上げたいと存じます。
令和5年5月8日、新型コロナの感染症法上の「5類移行」に伴い、3年以上にも及ぶコロナとの長い戦いも転換点を迎えました。
あらゆるものがゼロから始まったあの日から、山梨県は、県民の皆様、県議会の同志と手を携え、コロナという未曾有の危機に向き合って参りました。
ここ、ふるさと山梨は、ただ、眼前の状況を凌ぐだけでなく、明日を創るための努力を惜しむことなく、コロナ危機にあっても前進し続けてきました。
今こそ、これまで蒔いた全ての「豊かさのタネ」から百花を繚乱せしめる好機であり、この新たな時代にふさわしい山梨の創造に向け、県民の負託を新たに受けた県議会の皆様とともに、全身全霊を傾けていく覚悟であります。
先ず、令和5年度6月補正予算についてであります。
本予算は、公約実現に向けた、2期目初めての本格的政策予算であり、その大要について、御説明申し上げます。
先ず、喫緊の課題である、物価高騰対策についてであります。
物価高騰が長期化しており、国の公定価格で収入が算定される医療機関や福祉施設では、物価高騰分を利用者に転嫁することができず、来年度に控える国の公定価格改定までの間の、早急な支援が必要であります。
また、福祉施設においては、コロナ禍や、物価高騰に伴う相対的賃金格差による離職傾向から、人材不足に拍車がかかっております。
これらの状況を踏まえ、医療機関や福祉施設に対し、光熱費や食費の高騰分に対する支援を行うとともに、介護施設などの職員の賃上げに対して支援を行うことと致しました。
次に、公約に関する予算措置についてであります。
本県が目指すべき姿を「県民一人ひとりが豊かさを実感できるやまなし」とし、「豊かさ」を量、質、面で築いていきます。
人それぞれの幸福感こそが豊かさの尺度であることは言をまちません。
ならばこそ、本県における「豊かさ」とは「人それぞれで異なる幸福を得るため、それぞれの方が自分なりに選び、歩みを進めていけること」を追求した先にあるべきです。
本県らしい「豊かさ」の追求において、行政が果たすべき役割は2点あります。
1点目は、県民の自由な選択を妨げる要因をできる限り取り除いていくことです。
生を受けた環境や生活環境などに左右されず、誰もが「安心」して暮らすことができるようにすることが、幸せと豊かさへの道を選択する土台となるものと考えます。
2点目は、各ライフステージにおいて、「希望」を持って自分らしい道を進むことができるよう、できる限り多くの、そして豊かな選択肢を提供することであります。
そこへの取り組みの方向性では、第一の柱となるのは、「ふるさと強靱化」です。
これは、人々を感染症や自然災害の脅威から守り抜くための取り組みを進めていくことはもちろんのこと、そこに留まるものではなく、生活を取り巻く様々な不安や恐怖から解放されるためのセーフティネットを強く、広く張り巡らせるべき取り組みも包含するものです。
すなわち、第一に、防災・減災、県土強靱化を図るため、国の国土強靱化政策も踏まえながら継続的計画的に社会資本整備を推し進めます。
このため、今般の補正予算においては、防災・減災、県土強靱化に係る公共事業として、70億円を追加計上いたします。
また、富士山火山防災対策については、本県をはじめ活火山を有する全国の自治体で構成される「火山防災強化推進都道県連盟」が国や国会議員連盟に対し、火山防災対策の更なる強化を要望してきたところ、今般、活火山法の改正が実現しました。
法改正を踏まえ、より一層、火山防災対策を強力に進め、国や自治体、関係機関と連携しながら、富士山噴火からの「逃げ遅れゼロ」を目指し、先ずは、住民の皆様に、噴火時の適切な対応を理解していただけるよう広報を強化して参ります。
第二に、新型コロナウイルスを含む感染症対策につきましては、ポスト・コロナにおいても「必要とする人に必要な医療を届ける」感染症対応・医療提供体制の構築を土台としながら、有事においても感染拡大防止と社会経済活動が両立する感染症に強靱な地域づくりを目指して参ります。
先ずは、今般の新型コロナ感染症に関して、本県がこれまで爆発的な感染拡大期においても安定的に医療提供体制を維持することができたのは、医療関係者の皆様と県民の皆様から御理解と御協力をいただいた結果であり、改めて感謝申し上げます。
一方で、感染症法上の扱いが変わっても、ウイルスがなくなったわけではありません。
今後も、県民の生命と健康を守るため、「必要とする人に必要な医療を届ける」という方針を堅持し、特に重症化リスクの高い高齢者の皆様などに重点的に医療資源が行き渡るよう、引き続き万全を期して参ります。
その上で、新型コロナ感染症に係る医療提供体制については、これまでの、行政の関与を前提とした、限られた医療機関による特別な対応から、幅広い医療機関による通常の対応へと移行するべく、受入可能な医療機関の維持・拡大を図るため、新たな医療機関の参画を促す取り組みを進めて参ります。
加えて、新たな変異株や感染症に備え、平時から入院調整の方法や医療提供体制等について議論・協議し、相互連携を図ることができるよう、来月には、県、甲府市、県医師会、医療機関などで構成する「山梨県感染症対策連携協議会」を新たに立ち上げるとともに、協議会での議論も踏まえ、本年度中に新たな感染症対応ビジョンや行動計画を策定いたします。
このほか、県衛生環境研究所の検査体制の強化や、下水を含む重層的なサーベイランスの実施により、感染動向を迅速に把握し、いち早く情報提供ができるよう取り組んで参ります。
また、本県から全国に普及した、適切な感染防止対策を公的に認証するグリーン・ゾーン認証制度についても、5月8日から「平時」の登録制度に移行したところです。
今後、新興感染症の発生時などの「有事」の際には、これまで構築してきた「感染症対応ネットワーク」の財産を生かし、官民共に、より質の高い感染症対策に即応できるよう努めて参ります。
同時に、インバウンドを本県に呼び込む強みとなるよう、「グリーン・ゾーン プレミアム認証制度」は継続し、国際衛生基準との互換性認定を受けるとともに、更なる普及を図って参ります。
「ふるさと強靱化」の第三として、人々が将来の見通しに確信と安心を持てるよう、将来にわたり大きな利益を安定的に得られる経済体質を地域経済に埋め込んで参ります。
このうち、物価高騰、エネルギー価格高騰など地域経済を取り巻く情勢の悪化に対してもしなやかに対応できる経済基盤の強靱化は急務となっています。
特に中小企業の賃上げ支援については、物価高騰の影響を強く受ける生活基盤を下支えするだけでなく、未来に向けて県内経済を支え、企業の成長をもたらす人材を集め、育てるために、極めて重要と考えております。
県では、賃金アップに取り組む中小企業を支援するため、昨年の12月補正予算で、一定の賃上げを実施した事業者が行う設備投資や人材育成などに対する補助制度を創設したところです。
今般、長引く物価高騰により、特に影響を受けている非正規雇用労働者への対応や、人手不足が深刻になっている幅広い業種における賃上げが喫緊の課題となっているため、非正規の方々の正規化などに取り組む事業者に対しては、補助の上限を引き上げるとともに、補助対象となる最低賃金の条件を緩和することと致しました。
こうした取り組みなどにより、県内中小企業による賃金アップを強力に後押しして参ります。
エネルギー価格の高騰に向き合う事業者に対する支援としては、これまで、省エネ・再エネ設備の導入に向けた助成金を2度にわたり予算計上し、多くの事業所等に対し支援してきたところですが、現在も電気料金や原材料価格の高騰が続いており、より多くの事業者や小規模事業者が活用できる制度にしてほしいとの声も寄せられております。
そのため、補助額の下限を引き下げるとともに、私立学校を新たに対象とするなど、助成制度の更なる充実を図りつつ、予算額を拡充いたします。
また、これまで行ってきた太陽光発電設備の購入支援に加え、リース方式等による導入についても支援することとし、光熱費の負担軽減とあわせて、脱炭素化も進めて参ります。
中長期的な産業振興に係る基本的な考え方としては、私は、知事就任以来、人々が将来の見通しに確信と安心を持てる社会を構築するため、地域経済が将来にわたり安定して成長する経済体質の獲得に取り組んで参りました。
今後は、その取り組みを更に進め、山梨経済の各分野が海外からも「グローバル・リーディングプレーヤー」として認知され、存在感を高め、より巨大な市場からより大きな利益を安定的に得られる経済体質の獲得を目指して参ります。
先ず、医療機器関連産業については、メディカル・デバイス・コリドー構想の実現に向け、昨年度までの第1期計画では、企業の状況に応じたきめ細かな支援により、参入企業数は倍増するとともに生産額も大幅に増加しました。
世界的な高齢化の進展や新興国の需要拡大を受け、医療機器市場は拡大傾向にあり、2、30年後に至るまで、本県経済の安定的かつ力強い発展の原動力となる可能性を秘めています。
本年度からは、新たに「メディカル・デバイス・コリドー推進計画2.0」を掲げ、高度化、対象分野の拡大、海外展開の3つの軸から、更なる攻めの姿勢で取り組んで参ります。
また、水素・燃料電池関連産業については、水素社会の早期実現に向け、国において水素基本戦略が改定されるなど、市場拡大に向けた制度設計が進められています。
今後大きな成長が見込まれるサプライチェーンに県内企業が早期に参入し、事業拡大していけるよう、やまなし産業支援機構に支援窓口を新たに設置し、専門的できめ細かな伴走支援を行って参ります。
更に、本県産業の高付加価値化を推進するためには、医療、水素、半導体関連産業など、本県と親和性が高い産業の集積を図る必要があります。
そのため、今般、産業集積促進助成金制度の見直しを行い、本県と親和性の高い分野への支援を拡充するとともに、助成限度額を最大15億円から50億円に引き上げ、高付加価値を創出する企業や大規模投資を行う企業を重点的に誘致して参ります。
また、助成対象に新たに高級宿泊施設を加え、本県観光産業の更なる高付加価値化を図ります。
「ふるさと強靱化」の第四として、人々の生活環境の強靱化を図ります。
結婚から、出産、育児まで寄り添い、「子育て」を孤立させない切れ目のない支援や、誰一人取り残されることのない包摂性のある社会づくりのための措置を講じることとします。
人々の生活環境の強靱化に向けては、先ずは、現在進行形で厳しい環境に苛まれている子どもたちの救済強化に向けた取り組みが求められます。
しかしながら、全国的に児童虐待の相談対応件数が増加の一途をたどっており、その背景にある社会問題も多様化していることから、児童相談所や市町村等の体制強化に加え、子ども家庭福祉に関わる職員の専門性の向上を図ることが急務です。
児童虐待の対応において中心的な役割を担う人材を養成するため、県立大学に子ども家庭福祉大学院を設置することとし、令和6年4月の開学に向け、先般、認可申請を行ったところです。
4月には、こども家庭庁の小倉大臣に面会して、国の取り組みに沿う、全国初となる先駆的な大学院であることを説明し、運営に対する支援を要請して参りました。
この大学院の設置を通じ、山梨県、そして我が国全ての子どもが安らかに、健やかに育つ環境の構築に、本県が大きな役割を果たして参ります。
このほか、保険適用外の不妊治療への助成や、保護者や保育士の負担軽減を図る「手ぶら保育」の導入などを行うこととし、結婚、妊娠、出産から子育てまで「切れ目のない支援」を更に充実させて参ります。
第五として、人材の育成と企業の収益向上、その先にある賃金アップが好循環する「豊かさ共創社会」を実現するため、地域を担う人財づくりに取り組んで参ります。
このため、その基盤となるキャリアアップ・ユニバーシティの設置に向け、リスキリングサービスを一気通貫で提供するプラットフォームの構築を進めて参ります。
次に、第二の柱、「『開の国』づくり」につきましては、道路交通体系の整備など目に見える物理的な「開化」と同時に、多様な背景をもつ様々な人々が集い、それぞれの個性を尊重し、また、尊重されながら、活躍できる社会環境づくりを進めて参ります。
このような有形・無形の「開化」を出発点として、県内外、双方向の交流も深化・拡大させます。
そして、県民の皆様はもちろん、山梨県という「開の国」に意欲と期待をもつすべてのステークホルダーの参画を歓迎し、あらゆる可能性にチャレンジしていきます。
これにより、現在及び将来の県民が多様性と内容に富んだ豊かな選択肢から、それぞれの幸せと豊かさを追求することができるようになるとともに、山梨という地域全体にとっては、多様な個性がともに「山梨の豊かさづくり」に参画することによって発揮される「集合知」により、一層の豊かさにつながっていくことを期待するものであります。
先ず第一に、道路交通ネットワークの整備については、太平洋と日本海を結ぶ中部横断自動車道の長坂・八千穂間や、本県の骨格道路網を形成する新山梨環状道路北部区間全線の早期事業化への取り組み、また、新たな御坂トンネルなど地域間の連携を促進する信頼性の高い道路整備を進めて参ります。
リニア中央新幹線については、山梨県内におけるJR東海による工事は、トンネル区間は9割強が契約となり、明かり区間では釜無川橋梁に続き笛吹川・濁川橋梁が着工するなど、県民の目に見える形で着実に進捗しています。
また、次世代モビリティの活用についても、リニア中央新幹線の開業効果が最大限に発揮されるためにも、新たな交通手段の活用も視野に、利便性の高い交通ネットワークを構築する必要があります。
そのため、リニア開業による新たな空港需要予測を踏まえ、本県への空港整備の可能性と課題について調査を行うとともに、高速道路ネットワークと清水港を活用し、世界につながる可能性について研究して参ります。
次世代モビリティである空飛ぶクルマを活用したビジネスモデルの在り方等についても、検討を進めて参ります。
次に、富士五湖自然首都圏構想についてであります。
この構想は、「自然首都圏」、すなわち、上質な観光地に最先端の首都圏機能を融合し、新たな時代に求められる世界に類を見ない先進的地域の創出を目指すものです。
昨年末に設立した産学官の協働組織体である富士五湖自然首都圏フォーラムには、より具体的な取り組みを議論し、実践していくため、5つのワーキンググループを発足させたところです。
このうち、「アートシティ富士五湖」では、4月に日本最大の美術展覧会の開催団体である日展及び富士河口湖町と協定を締結し、美術館やホテルに若手アーティストの作品を展示する試みなど、富士五湖地域における芸術の振興と若手アーティスト育成などの取り組みを進めております。
同じく4月、県庁内に推進本部を立ち上げたところであり、富士山の世界文化遺産登録10周年を契機として、富士五湖自然首都圏の形成を加速化させて参ります。
自然首都圏構想の一環をなすものとして、「グリーン・モビリティ」へのシフト、富士山登山鉄道構想の推進にも取り組んで参ります。
今季の富士山は、国内外からの多くの来訪が予想され、以前にも増してオーバーツーリズムや自然環境への負荷が懸念されます。
目下、登山者数の適正化も図っておりますが、富士山の普遍的価値を保全しながらその価値を高め、確実に未来へ引き継いでいくことが我々の責務であり、これを確実に実現する具体的解決策としてお示ししているのが、富士山登山鉄道構想であります。
本年度は技術的課題、法制度を中心に専門的な調査・検討を行い、その結果を踏まえ、地元産業団体や住民の皆様ときめ細かに対話し、建設的な議論をする機会を設け、丁寧なコンセンサスの形成、事業化に向けた機運醸成を図って参ります。
デジタルトランスファーを推し進めることも、「開の国」の重要な社会基盤づくりと心得なければなりません。
言うまでもなく、今日において、デジタル技術の活用は、事業活動はもとより日常生活においても、もはや「基礎的な素養」となっております。
県として、全ての県民の皆様にデジタル技術に慣れ親しみ、その活用を通じた恩恵を行き渡らせたいと考えており、このため、本年度を、「山梨県民総DX」の年度と位置付け、中小企業をはじめ、学校や自治会、商工会などを通じ、あらゆる県民を対象にデジタル技術の利用・活用に関する基礎的なリテラシーの向上を図る講座・研修を実施し、地域社会として、デジタルへの適応力を高めて参ります。
具体的には、各業種の課題に応じた研修をカスタマイズして提供するとともに、自ら課題を発見し、デジタルを活用して解決する思考フレームを養う講座を開催いたします。
また、観光産業はじめ個別の産業分野にターゲットを当てて、業務効率化や生産性の向上を従業員の賃上げにつなげていくため、DX導入に対する助成や、専門家の伴走支援を行うことと致します。
更に、関心のある中高生や大学生を対象に、学校教育では難しい実践的なプログラミング学習や、デジタル技術を活用して地域の課題を解決する、いわゆるPBLの実践の機会を提供し、新たな価値を生み出す人材の育成を図って参ります。
次世代を担う子どもたちへの教育の充実につきましては、全国に類を見ない25人学級の実現を通じて、未来の山梨を支える原動力である子どもたちを誰一人取り残すことなく、一人ひとりの可能性を最大限発揮できる環境を創出して参ります。
本年度は小学校3年生に、来年度は小学校4年生に25人学級を導入することとしておりますが、県全体の教育力の底上げを図るため、25人学級導入の影響が及ばない市町村が実施する、本県の課題に対応した教育活動についても後押しして参ります。
具体的には、子どもが自ら勉強方法や時間割を決める、いわゆる自由進度学習の推進や山村留学など、地域の特色を生かした取り組みに対する支援を行って参ります。
また、姉妹県道締結30周年となる韓国忠清北道や新たに姉妹都市提携を進めているベトナムのクアンビン省等からの青少年と、県内高校生と寝食を共にする交流を行うことなどを通じて、県内高校生がグローバルな視野で活躍するための資質・能力を育んで参ります。
加えて、幼少期から、多様な視点や国際的な素養を育むべく、様々な国籍を有した子どもたちが集まる「国際保育」、「多文化共生保育」についても今後研究を進めて参ります。
また、先に述べた「豊かさ共創社会実現」の基盤となるキャリアアップ・ユニバーシティの設置は、学校教育を経た後においても生涯にわたって新たな知識を身につけスキルアップをするための道を開いていくことでしょう。
「開の国」はまた、あらゆる挑戦に対してオープンであり、かつまた、フレンドリーであるべきです。
新たな産業を生み出すスタートアップは、雇用創出や若者の転出抑制、既存企業の新事業展開につながる、地域活性化の起爆剤であります。
本県ではこれまでも、「TRY YAMANASHI」実証実験サポート事業を通じ、最先端技術を有するスタートアップの挑戦をこれに寄り添いながら支援してきたところですが、本県がスタートアップから選ばれ続けるためには、更なる先進的で挑戦的な施策を実施することが必要です。
そこで、スタートアップの創出や誘致・定着に向けた専門的な支援、コミュニティ形成を担い、本県スタートアップ施策の中核となる支援拠点を整備することと致します。
また、資金調達の面では、県内への投資拡大の呼び水となるよう、ベンチャーキャピタル等と連携し、協調してスタートアップに出資する、全国初の取り組みを始めるなど、支援を大幅に充実させます。
これらの強い訴求力のある取り組みにより、意欲ある起業家を本県に呼び込み、国内や世界に羽ばたくスタートアップを生み出して参ります。
次に、農業の振興についてであります。
ブランド価値の更なる向上により、農家の所得向上を図るため、その土台となる生産・流通・販売の一連のプロセスを三位一体で高度化するべく、引き続き全力で取り組んで参ります。
先ず、生産面においては、ブドウのオリジナル品種「甲斐ベリー7」などの普及・生産拡大を加速するべく、県総合農業技術センターに苗木の生産ほ場を整備することとしております。
また、米国産スモモの輸入解禁や、米国産モモの輸入解禁要請を踏まえ、県オリジナルの優良品種への改植を支援することなどにより高品質化を図り、スモモ・モモの産地競争力を更に強化して参ります。
流通面においては、集出荷の効率化と、更なる高品質果実の出荷に向け、南アルプス市のモモ共選施設への高性能光センサーの導入を支援することとしております。
販売面においても、積極的なプロモーション展開や販路拡大を図り、生産から販売までの一連の取り組みを通じて、本県が国内外から選ばれる確固たる産地を確立して参ります。
次に、林業の振興についてであります。
本県は、県土の約8割を森林が占める全国有数の森林県でありますが、森林組合の多くは小規模零細経営に留まっており、木材を伐採・販売し、収益を確保するような事業展開が十分に図られていない状況です。
そこで、本県の豊かな森林資源という「可能性」を最大限有効に活用していくため、組合の財務状況や森林資源量などを分析した上で、組合間の連携や民間事業者との協業など、最適なビジネスモデルへと森林組合を誘導して参ります。
次に、観光、文化・芸術の振興についてであります。
地域に活力を生み、地域経済の牽引役として期待される観光の振興は、「開の国」づくりの重要な要素の一つであり、これまで進めてきた高付加価値化、すなわち「稼げる観光化」を更に推進し、地域の稼ぐ力を強化する必要があります。
先ずは、急速に回復するインバウンド需要を積極的に取り込み、消費額の増加を図るべく、地域の自然・文化等を生かしたアクティビティに、移動手段、宿泊などを組み合わせ、ニーズに応じたツアーの提案・手配を行う拠点を整備し、地域の観光コンシェルジュ機能を創出します。
また、節目となる50回目を迎える秋の信玄公祭りは、史上初の女性信玄公役となる冨永愛さんをお招きし、新たな魅力向上を図り、全県一体となって盛り上がるものとするべく、準備を本格化させて参ります。
文化・芸術の振興に向けては、県立美術館の新たなビジョンを策定し、文化的価値のみならず、社会的・経済的な価値を創出することで、人々が集い、地域に活力を与える創造拠点を目指すことと致しました。
これまでのメタバースを活用した作品の制作・展示に加え、NFT化したデジタルアートをふるさと納税返礼品に活用し、得られた資金により若手アーティストを育成・支援する仕組みづくりを進めて参ります。
関連して、テキスタイルなどの地場産品の高付加価値化に寄与するべく、アートと結びついた洗練されたデザインを生み出す支援として、美術館に附属するデザインセンターの設置に向け、調査検討を進めて参ります。
次に、スポーツの振興についてであります。
スポーツは、「する人」「見る人」の日常生活に活力をもたらすだけでなく、地域づくりから観光振興まで、ヒト・モノ・コト・カネを呼び込む原動力でもあります。
本県は、あらゆる県民がスポーツに親しめる「スポーツに対して開かれた地域」であるべきですし、同時に極めて恵まれたスポーツ環境を最大限活用して「スポーツで稼げる県づくり」を進め県民に還元していくべく取り組みを進めて参ります。
先ず、やまなしパラスポーツセンター(仮称)の整備について申し上げます。
旧青少年センター体育館の改修に際しては、障害のある方でも気軽にスポーツを楽しむことができるよう、障害者団体などの意見も踏まえながら、バリアフリーやユニバーサルデザインの考え方を十分取り入れた設計を行っております。
今般は、改修工事に要する経費を計上し、令和6年度中の供用開始を目指し、整備を進めて参ります。
今後は、パラスポーツセンターを全県の拠点としながら、市町村などと連携し、身近な地域においてもパラスポーツが楽しめる社会づくりに努めて参ります。
関連して、国民スポーツ大会及び全国障害者スポーツ大会についてであります。
令和3年2月の県議会本会議において、令和14年大会の招致を目指すことをお示ししました。
大会を招致するに当たり、山梨県らしい大会の在り方を検討するため、懇話会を設置し、様々な分野の有識者から御意見を伺って参りました。
また、先日、県スポーツ協会並びに県障害者スポーツ協会から招致に向けた要望書をいただき、スポーツ関係者の皆様の大会開催に向けた強い思いを改めて承ったところです。
国民スポーツ大会及び全国障害者スポーツ大会の開催は、スポーツの振興や本県の多彩な魅力の発信だけでなく、未来を担う子どもたちに多くの夢や希望を与え、県民の健康増進や共生社会の実現、地域経済の活性化など、明るく豊かな地域づくりにも大きく寄与することが期待されます。
そこで、県議会からも御賛同をいただく中で、令和14年の第86回国民スポーツ大会並びに第31回全国障害者スポーツ大会を本県に招致したいと考えております。
今後は、市町村や関係団体、県議会議員の皆様の御支援、御協力をいただきながら、懇話会からの提言内容を十分踏まえ、大会運営の簡素化や新たな収入確保策の検討など、従来のやり方にとらわれない持続可能な新しいスタイルの大会を目指し、取り組みを進めて参ります。
次に、海外との友好関係の構築・発展についてであります。
豊かさを育むパートナーである姉妹地域との友好は、本県にとってかけがえのない資源であり、儀礼的な交流に留まらず、実りある価値を創出する関係へと深耕して参る所存です。
先月、ベトナム社会主義共和国の訪問においては、日本のブドウ産地の代表として、ホアン農業担当大臣と会談し、「輸入解禁に向け2国間協議を進めていく」との大変前向きなお言葉をいただきました。
また、クアンビン省とは、農業、産業、再生可能エネルギーの活用など、幅広い分野における実効性のある交流を深めるべく、同省と姉妹友好県省の関係を樹立することで両県・省で合意しました。
今後は、関係部局の高い専門性を持った職員で構成する視察団を派遣し、連携の具体策について協議を行うこととしております。
障害を持つ方や外国人も含め、全ての方々が個人として尊重され、いきいきと活躍できる共生社会化の推進は「開の国づくり」の土台を成すものと考えています。
すなわち、本県の持続的な成長のためには、内包する全ての「可能性」を花開かせるとともに、国内外から様々な「可能性」を携えた人々が集い、集合知が結集されなければなりません。
昨年10月に策定した「やまなし多文化共生社会実現構想」に基づき、これからの山梨を共につくる一員として、外国人が安全に安心して活躍することができる、包摂的な社会づくりを推進して参る所存です。
具体的には、多文化ソーシャルワーカー育成研修の対象を保育士や看護師などの職種にも拡げ、幅広く支援が行き届くよう、環境を整備するとともに、身近な外国人の文化や生活習慣への県民理解を深め、交流を促進いたします。
これらの取り組みを確実に進め、外国人が「第二のふるさと」山梨で自己肯定感を持ち、しっかりと活躍できる環境を構築して参ります。
以上の内容をもって編成しました結果、一般会計の補正額は、肉付け予算としては最大規模となる507億円余、既定予算と合わせますと5504億円余となります。
以上、令和5年度6月補正予算の大要を説明いたしましたが、ここで、今般の取り組みを含む、県政全体のグランドデザインとなる新たな総合計画の策定について申し上げます。
第2期となる新たな総合計画については、県議会をはじめ、山梨政策評議会とその分科会、有識者などからいただいた多くの御意見を踏まえ、現在、策定作業を進めております。
新たな総合計画では「ふるさと強靱化」と「『開の国』づくり」という2つの方向性を基に、県民のみならず、県内外のステークホルダーと共創する「豊かさ」へのロードマップを描き、県民の皆様にお示ししたいと考えているところであり、先ほど県議会に対し、計画素案の概要を報告させていただきました。
今後は、パブリックコメントなどを通じ、幅広く県民の皆様の御意見を伺う中で更に検討を進め、本年10月に策定して参る所存であります。
次に、提出案件の内容につきまして御説明申し上げます。
今回提出致しました案件は、条例案6件、予算案5件、その他の案件2件となっております。
先ず、条例案のうち、山梨県県税条例の改正についてです。
地方税法の一部改正に伴い、自動車税環境性能割の税率区分等について所要の改正を行うとともに、精神・知的障害者に対する自動車税の減免制度の見直しを行うものであります。
次に、予算案につきましては、先ほど申し上げました一般会計のほかに、特別会計の補正額として、恩賜県有財産特別会計などで16億円余となっております。
その他の案件につきましては、いずれも、その末尾に提案理由を付記しておりますので、それによりまして御了承をお願いいたします。
なにとぞ、よろしく御審議の上、御議決あらんことをお願い申し上げます。
さて最後に、本県行政のこれからの決意を申し上げます。
今一度、コロナ禍後の社会の行方に視野を広げております。
本県では、コロナ禍発生当初から、コロナ禍後をにらんだ施策展開を、感染症対策にとどまることなく、あらゆる局面で実行して参りました。
日本のどこよりも早く、強い、超感染症社会を構築する。
そうした気概と目標を、県民の皆様、県議会の同志の皆様とともに共有して取り組んで参りました。
長きにわたる緊張の時間のもと、私たちは、人やモノの移動と往来を前提とした現代社会において、未知のウイルスの侵入を防ぎきることの難しさを経験しました。
更に、滞りなく医療を届けること、もれなく治療をほどこすことの難しさも経験しました。
そして、生活を守り抜くことの厳しさを経験しました。
山梨県は、県民の皆様の御理解とともに、コロナ禍を耐え抜き、そして今、ひとつの節目を迎えることとなりました。
しかしながら、この瞬間において、胸に余るのは、生活が平常に戻りつつあることへの喜びにまさる、この先、本県の未来への悩ましさであります。
政策上の節目をまたいだとしても、果たして、人々の日常に豊かさが戻ってきたと言えるのだろうか。
コロナ禍で傷み切った生活や経済が、十分に回復したと言えるのだろうか。
更には、上昇の機運に向かっていると言い切れるのだろうか。
日夜、自問しております。
社会のあらゆる局面、生活者、そして企業にとって、コロナ禍において傷んだものはなおも回復しきれていない状況のもと、更には、不安定な世界情勢の中でおさまりの見えない物価高騰はもとより、いよいよ本格的な人口減少社会への転落がリアルな姿を現しつつあります。
日々、県庁内外の現実に接する中で、コロナ禍以前にも増して、これら取り組むべき課題の多様さや、対応すべき事案への気付きを重ね、悩ましい想いは募るばかりです。
私は、県議会の同志の皆様とともに、この悩ましい局面に希望をもたらすために先頭に立たなければならないと考えます。
同時に希望とは、あらゆる方にとって具体的なものでなければなりません。
身近なものでなければ心には届かず、生活は向上しません。
そして、その為には、常に日々の変化に対して常に感度を高くすることにより、県民の皆様の「苦悩や心情」に寄り添う県政を実践することが不可欠であると信ずる次第です。
生活者の足元を見つめたい。
今日はもちろん、明日、将来の足元を確かで安心できるものにしたい。
その積み重ねの上に、豊かさや幸せを感じて欲しい。
だからこそ、この先、常に先を見据え、将来を見据えて、「ふるさと強靱化」と「開の国」という2つの推進軸で、社会で暮らす人々、社会を支える人々、社会を築く人々、全ての人々と本県とつながりを持つ方々のために、ためらうことのない施策・政策を実行して参ります。
もちろん、それを言うはたやすいかもしれません。
訴えるだけならば、安易であるやもしれません。
だからこそ、実践するためには強い決意と多くの汗、すなわち「規律」が必要となります。
そして、いよいよここから、コロナ禍が明けたここからが、この「規律」が問われる正念場となって参ります。
加えて更には、日本全体が、コロナ禍から明けてなお、生活を見通しにくい不透明な時代から抜け切れていない中で、本県はいかにして光明ある生活と県土を築いていくべきなのか、「先を見据えた施政」が求められる所以であります。
行政が、当面の対処と眼前の課題に取り組むのは当然のことです。
しかし、そこに追われるばかりであってはなりません。
山梨県が豊かさの実感を一人ひとりに届けるためには、10年後、20年後の「先」を見据えた上での、今の一手であるべきです。
その上で初めて、施策効果として、県民の皆様が希求する豊かさを、量、質、面で育むことができるものと考えます。
そして、将来が常に変化するものであるとするならば、この「先を見据えた施政」とは、予測を超えた社会経済情勢の変化があってもなお、一人ひとりの県民が豊かさへの道を歩み続けられる山梨県たり得ることを旨として、施政自体を謙虚に、柔軟に、大胆に変化させることを躊躇すべきではないことを心掛けなければなりません。
新たな施策の数々はいずれも、豊かさ共創社会を加速させるための取り組みです。
それら、すべての施策において貫かれるべきは、ただ一つの願いに他なりません。
10年先、20年先を見越した「今」を築くこと。
これからの山梨県行政のパートナーシップの心得であり、誓いはそこにあるべきです。
以上、本県行政の未来への決意をここにお示しし、所信の総括とさせていただきます。
ご清聴、誠にありがとうございました。
令和5年6月20日
山梨県知事 長崎 幸太郎