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ページID:90718更新日:2020年6月9日

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富士山レンジャー通信

 

れんじゃー写真缶 ネット版 秋・冬の振り返り(5)

 2020年4月29日

こんにちは! 富士山レンジャーです。
だいぶ間が空いてしまいましたが、れんじゃー写真缶 秋・冬の振返りの最終回は「秋・冬の風景編」です。新型コロナウィルスの影響で外出自粛が求められる中、なかなか外にお出掛けできない日々が続いてストレスが溜まりがちです。ぜひコーヒーでも飲みながら、レンジャーが業務を通して出会った秋・冬の風景で心を癒してもらえたらと思います。

 

[秋・冬の風景編]
昨年の秋は相次ぐ台風の襲来や前線活動の活発化により降水量が多く、富士五湖の水位も非常に高くなりました。またそれに続く冬は全国的に記録的な暖冬で、日本海側などは記録的な少雪となりましたが、その中にあって富士北麓地域は暖冬ではありましたが、雪は平年並みに降りました。
季節も変わり、すっかり忘れ去られた感がありますが、秋・冬の富士北麓の景色を一緒に振り返ってみましょう。

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紅葉の精進口登山道 11月上旬 精進口登山道二合目にて
カサッカサッと落ち葉を踏みしめながら歩く登山道。野鳥たちの囀りが黄色く色付いた葉の向こうから聞こえてきます。秋の柔らかい日差しの差し込む、彩り豊かな富士北麓の秋です。

 

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秋の精進湖と富士山 11月中旬 三方分山にて
秋本番。精進湖と青木ヶ原樹海、その向こうに富士の頂がその秀麗な姿を見せています。この美しい自然を後世に引き継いでいかなくては。この場所に来るといつもそういう気持ちにさせられます。

 

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雪化粧 11月下旬 高座山中腹にて
日本海側では雪が全然降らない中、ここ富士北麓には例年同様に雪が降り、雪化粧をした富士山が朝日を浴びて凛と輝いていました。白いベールを被った富士北麓に冬の訪れを感じます。

 

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希望の光 12月中旬 大室洞穴付近にて
樹海の中に差し込む朝の光。まるで今の暗く冷え込む日本に差し込む「希望の光」のよう。美しい森の自然は静寂の中で暖かい春の訪れをじっと待ち続けています。

 

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厳冬期 1月下旬 鳴沢より望む
厳冬期の富士山は凍てついた山肌が強風に吹きさらされ、来る者を阻みます。確かな山の知識・技術・経験を持った者にしか許されない神の領域です。(※山梨県条例により今シーズンより12~3月の厳冬期の富士登山は登山届の提出が義務化されています)

 

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一歩ずつ前へ 1月下旬 鉄砲木ノ頭にて
冬の晴れたある日。頂上から山中湖と富士山が望める鉄砲木ノ頭へ巡回に出掛けました。澄んだ青空を仰ぎながら、一歩ずつ前へ前へと進みます。

 

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春よ来い 3月下旬 本栖東海自然歩道にて
春の訪れを告げるミツマタの花。今年の春は残念ながら外出自粛を余儀なくされている方も大勢いますが、皆で力を合わせて難局を乗り切り、次の春にはみんなでおもいっきり春を満喫しましょう。そのためにも今は感染拡大防止に努めていきましょう!!

 

いかがでしたか。れんじゃー写真缶「秋・冬の振返り」今号で終了です。今は世界中が新型コロナウィルスの猛威と闘い、大変な日々か続いていますが、一日も早く事態が終息して、再び皆さんの顔に笑顔が戻り、多くの方たちに富士北麓の自然に触れて親しんでいただける日が来ることを願っています。 


富士山レンジャー一同

 

れんじゃー写真缶 ネット版 秋・冬の振り返り(4)

 2020年4月9日
改訂 2020年5月2日

こんにちは! 富士山レンジャーです。
れんじゃー写真缶として、4回目は「麓の不法投棄・清掃活動編」です。

 

[麓の不法投棄・清掃活動編]
まずは今年度の巡回で撮影した2枚の写真を見てください。

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剣丸尾近くを通る産業道路脇に不法投棄されたエアコンの室外機や電灯などの家財一式(10月下旬)

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精進湖畔に投げ捨てられた冷蔵庫やポット、電子レンジなどの家電一式。(12月上旬)

 

本当は綺麗で美しい森や湖のはずなのに、心ないわずかな人たちの行いによって、美しい景観が損なわれるばかりでなく、自然環境へも悪影響を与えていて、私たちレンジャーは不法投棄を見つける度に、とても悲しい気持ちになります。

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本栖チェーン脱着所に散乱するポイ捨てゴミ(9月中旬)

また捨てられているのは、家財や家電などの大きなものばかりではありません。上の写真のように駐車スペースや道路脇などにポイ捨てゴミが散乱する惨状には本当に心が痛みます。ちなみに上記写真のチェーン脱着所については、あまりにも不法投棄やポイ捨てが絶えない為、所管する国土交通省の方で、冬のチェーン装着が必要な時期以外は当面の間、閉鎖となりました。一度は閉鎖によりゴミは無くなりましたが、冬になり開放となると、また元の状態に。悲しい限りです。

 

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※令和元年度は’19年4月1日~’20年3月31日 の期間の実績
(最新実績に差替えました('20年5月1日))

上記グラフは、富士山レンジャーが関係機関に報告した不法投棄の実績で、上の棒グラフは「各年度毎の発見件数」、下の円グラフは「今年度発見分の不法投棄内訳」を示します。なお、これらの報告実績には、広範囲に次から次へと捨てられるポイ捨てごみはカウントが難しく、際立った事案しか含まれていません。
この実績を見ると、その年のレンジャーの活動状況や雪の降り始め・残雪の残り具合などによって発見件数は左右されますが、おおむね100件前後の不法投棄が毎年発見されています。不法投棄の内訳は、以前は大量な古タイヤなどに代表される産業廃棄物が主流でしたが、近年は家電や家庭用品など一般家庭から出るゴミが8割近くを占めることなどが読み取れます。何か私たちでできることはないでしょうか?

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11月上旬 富士山世界遺産センター周辺にて

上の写真は今秋、富士山ボランティアセンター主催で実施した富士山エコトレッキングのプログラム内で参加者の皆さんと一緒にゴミ拾いをした時の様子です。

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12月上旬 富士北麓某所にて

また、各種NPO法人や行政機関と連携して、清掃ボランティア活動に参加して環境美化に努めています。このような活動を通じて、「ゴミがゴミを呼ぶ」悪循環をリセットし、環境美化の意識が全体として高まり、ゆくゆくは新たなゴミを出す人も減って欲しいというのが、レンジャー全員の切なる願いです。

 

次回は、れんじゃー写真缶 秋・冬の振返り(最終回)「秋・冬の風景編」をお送りします。お楽しみに。

 

れんじゃー写真缶 ネット版 秋・冬の振り返り(3)

 2020年3月25日
訂正 2020年5月2日

こんにちは! 富士山レンジャーです。
れんじゃー写真缶として、3回目は「秋・冬の生きもの編」です。

 

[秋・冬の生きもの編]
富士山が閉山となっている時期、レンジャーは富士五湖周辺の山や東海自然歩道などを巡回していますが、歩いていると、様々な生き物に出会ったり、動物たちの痕跡(フィールドサイン)を目にしたりします。あらためて富士山麓の豊かな自然を感じるひとときです。
今回は、秋から冬にかけてレンジャーが出会った生きものたちをご紹介しましょう。

 

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ヤマアカガエル(Montane Brown Frog) 9月中旬 本栖東海自然歩道にて 
日本の固有種で、山林やその周辺の水の多い所に棲んでいます。土にもぐって冬眠するカエルも多いですが、ヤマアカガエルは水の底で冬眠します。水辺に一度に千個以上の卵を産み、冬でも水を張っている水田が多かった昔は日本各地で普通に見られましたが、今では大都市周辺の都府県では絶滅危惧のレッドリストの指定を受けています。

※当初、種類の同定に誤りがあり、誤った内容を記載しておりました。
お詫びと共に訂正致します。(‘20年5月2日)

 

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マルハナバチ(Bumblebee) 7月中旬 中ノ茶屋にて
白い尾っぽのような花はサラシナショウマ。花の甘い香りに誘われてマルハナバチが来たようです。蜂というとスズメバチ等、獰猛な蜂を想像して怖がる人もいるかも知れませんが、マルハナバチはおとなしく、よほどの事がない限り、人を襲うことはありません。それにマルハナバチは花粉を運ぶ重要な担い手。丸くて可愛らしい働き者です。

 

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ホシガラス(Spotted Nutcracker) 12月上旬 大室山にて 
夏の開山期は五合目付近で暮らすホシガラス。冬はどうしているのかなと思ったら、麓の樹海にいました。樹海の森は、五合目以上に棲む動物たちにとっても、厳しい冬から身を守り森の恵みを得る大切な場所になっているのですね。

 

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ニホンジカ(Sika deer) 12月中旬 山中湖周辺にて
とても愛らしいシカですが、一方で個体数が増え過ぎたことで、樹木の樹皮を食べてしまったり、畑の農作物を食べ荒らしたりする食害も深刻になっています。生態系のバランスを保つことの大切さと難しさを考えさせられます。シカは私たち人間を見つめ、何を語りかけているのでしょうか。

 

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リスの足跡(Footprints of Squirrel) 1月上旬 平尾山にて
冬の巡回の大きな楽しみの一つは雪に残る動物たちの足跡などのフィールドサイン。これは何の動物の足跡だろう? ここで何をしていたんだろう? 走っているのかな、歩いているのかな? そうやって動物の生活を思い描くことで、自然を身近に感じ、大切さ・尊さを学ぶことで出来ます。さて、このリスはどっちに向かって行ったのかな?

 

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ヒドリガモの群れ(Flock of Eurasian Wigeon) 1月初旬 山中湖にて 
富士五湖で見られる水鳥の多くは冬鳥で、夏はユーラシア大陸北部などで繁殖し、越冬のため日本に渡って来ます。ヒドリガモもそんな渡り鳥の仲間。春を待ち遠しく思いながら、日本での冬を過ごします。せっかく日本を訪れているのですから、きれいな水辺で過ごしてもらえるよう、環境に配慮したいですね。これも”おもてなし”です。

 

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イノシシ(Wild Boar) 1月下旬 忍野にて
忍野で出会ったイノシシ。なんだか悲しげです。よく見るとお腹周りの毛が抜け落ちています。これは疥癬(かいせん)というダニを媒介とする皮膚病です。脱水や衰弱、細菌の二次感染などで命を落としてしまうこともあります。何とか元気になって欲しいものです。
※動物由来の疥癬と人由来の疥癬は別で、動物由来の疥癬はヒトにも感染するものの致命的な症状に至ることはありません。 
(出典: Wildlife Service Japan 「身近な野生動物の感染症: 疥癬」ホームページより)

 

いかがでしたか。ここにご紹介したのはほんの一部です。少しでも富士北麓の自然を感じ、この自然環境を守って行く意識が芽生えてもらえたらというのが、富士山レンジャーの願いです。

次回は、れんじゃー写真缶 秋・冬の振返り(4)「麓の不法投棄・清掃活動編」をお送りします。お楽しみに。

 

れんじゃー写真缶 ネット版 秋・冬の振り返り(2)

 2020年3月20日

こんにちは! 富士山レンジャーです。
れんじゃー写真缶として、2回目は「閉山期の活動編」です。

 

[閉山期の活動編]
「富士山が閉山している間は、レンジャーはどんなことをしているのですか?」。よくそんな質問を受けます。富士山が閉山している間もレンジャーは麓の不法投棄をチェックして廻ったり、東海自然歩道や富士山周辺の山を巡回したり、地元の学校などで環境学習会を開くなど色々と活動をしています。
今回はそんな麓でのレンジャーの活動の一部をご紹介しましょう。

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富士五湖周辺の登山巡回@竜ヶ岳(11月中旬)
私たちレンジャーは富士山が閉山している時期も富士五湖周辺の山々や東海自然歩道などを歩いて巡回しています。歩道上や周囲の自然に異状がないか、利用者の皆さんがルール・マナーを守って楽しんでいるか、見守っています。

 

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車両による巡回@富士北麓(10月上旬)
麓での大事な業務の一つは車両での富士北麓の不法投棄のチェックです。なぜこんな自然の美しい場所にゴミを捨てていくのか、見つける度に心が痛くなります。不法投棄は発見の度に、管轄市町村や関係機関に報告をします。不法投棄の実態については、秋・冬の振り返り(4)でご紹介します。

 

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氷筍の定点調査@富士風穴(11月下旬)
天然記念物に指定されている富士風穴では夏の開山期を除いて定期的に氷筍や氷床の定点調査を実施しています。洞穴内は地表と比べて2~3ヶ月季節が遅れていると言われますが、今年度は例年になく氷が融け続け、1月に入ってようやくつららや氷筍が成長し始めました。

 

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冬山登山啓発@中ノ茶屋(2月中旬)
山梨県では、条例により今冬から富士山や南アルプスにおける厳冬期の登山について登山届の提出が義務化されました。これに合わせ、山梨県は警察や関係行政機関と連携して吉田口登山道/馬返し(もしくは中ノ茶屋)にて冬山登山啓発を実施しており、レンジャーも一員として啓発に参加しています。
冬の富士登山の登山届義務化については、富士山憲章/News Letter No.130の中でも紹介しています。ぜひご一読下さい。
https://www.yamanashi-kankou.jp/volunteer/newsletter/documents/nl130.pdf

 

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環境学習会@富士山世界遺産センター(12月上旬)
麓でのレンジャーの活動の中で巡回と並んで大事なのが、環境学習会。地元の学校や社会人など、時には世界遺産センターで、時には学校等に出向いて行って、富士北麓の自然の成り立ちや環境問題などについて分かりやすくお話しています。

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エコトレッキング@中ノ茶屋(11月上旬)
富士山ボランティアセンター主催で、富士北麓の自然や歴史・文化を感じながら富士山の大切さを学ぶ体験学習/エコトレッキング。今年度は11月2日に河口湖フィールドセンター~吉田御胎内~中ノ茶屋のコースを参加者の皆さんと一緒に歩きました。レンジャーは簡単な環境学習会も行いました。


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レンジャー写真展@富士山世界遺産センター(2月中旬)
富士山レンジャーの情報発信として年間を通じて行っているのが、「富士山レンジャー写真展」の巡回展示です。今年度は富士山世界遺産センターをはじめとして県内外の様々な場所で展示し、多くの方々に見て頂きました。富士山の自然や環境問題の現状など伝わればと思っています。

 

いかがでしたか。ここにご紹介したのは一部です。富士山レンジャーの仕事は自然に触れ合う機会も多く楽しい反面、不法投棄など環境問題の現状とも向き合わなければならない面もあります。これからもレンジャーならではの視点で情報発信して、富士北麓の自然を守っていきたいと思います。
これからも、どうぞご理解・ご協力を宜しくお願いします。

 

次回は、れんじゃー写真缶 秋・冬の振返り(3)「秋・冬の生きもの編」をお送りします。お楽しみに。

 

れんじゃー写真缶 ネット版 秋・冬の振り返り(1)

 2020年3月15日

こんにちは! 富士山レンジャーです。
富士山が閉山している秋・冬の間でも、レンジャーは山麓や富士山周辺の山々の巡回や地元学校などへの環境学習、ボランティアと連携した清掃活動、写真展の開催など精力的に活動しています。私たちの撮った写真を通して、秋から冬に掛けての北麓での活動や自然を5回に分けてご紹介します。

 

[秋・冬の植物編]
紅葉で木々が色付く秋、北麓も美しく染まります。そんな色鮮やかな北麓の森を訪れると、様々な自然に出会うことができます。
冬。花もなくなり紅葉も終わると、植物の魅力が感じられないかも知れませんが、注意深く探すと様々な植物の冬の姿を見つけることが出来ます。秋から冬にかけてレンジャーが出会った北麓の自然の一部を一緒に見てみましょう。

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ホウキタケ(箒茸)の仲間
まるで海の中のサンゴ礁のような鮮やかなキノコはホウキタケの仲間です。とても綺麗ですが、ご用心。動物たちに食べられないよう、毒を持っています。
(9月中旬 西湖樹海にて)

 

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ブナ(橅)の大木
大室山の通称「ブナ広場」は、「やまなしの森林100選」に選ばれ、大切に守られています。中には胴回りが数mの大木も立派に立っています。百年以上もの長い間、この森を見守り続けているんでしょうね。私たちもこの美しい森を大切に守り続けなければと改めて感じさせられます。
(10月上旬 大室にて)

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ヤマラッキョウ(山辣韭)
皆さんはラッキョウの花を見たことがありますか?ヤマラッキョウはラッキョウとは別種ですが、ラッキョウとよく似たピンクと紫の中間のような色の愛らしい花を付け、近縁種です。残念ながら、鱗茎(りんけい)がラッキョウより小さく食用には適さないそうです。
(10月下旬 石割山にて)

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ホオノキ(朴ノ木)の葉
顔が隠れるくらいの大きな落ち葉。ホオノキです。ホオノキは花も実も大きくてユニークな形をしています。何でもビッグサイズな面白い木です。またホオノキは落ち葉や根から他の植物の発芽や成育を抑制する物質を分泌するため、ホオノキの根元には他の植物が生えにくくなります。こういう生存戦略もあるのですね。
(11月中旬 竜ヶ岳にて)

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タカノツメ(鷹ノ爪)の落ち葉
この鮮やかな黄色い落ち葉。何枚に見えますか。3枚の落ち葉のように見えるかも知れませんが、これは複葉と言ってこれで1枚の落ち葉です。その名の通り、形が鷹の爪のようですね。葉っぱは焼き芋のような甘い匂いがします。
(11月中旬 赤池東海自然歩道にて)

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ウバユリ(姥百合)
夏と冬とで全く姿を変えるウバユリ。冬のこの姿から姥(うば)を連想したと思う人がいるかも知れませんが、夏に大きなラッパ状の白い花を付ける時に葉(歯)が全て抜け落ちてしまうのが名前の由来です。冬に見られるのは実と平べったくて周りに羽のついた種です。
(12月上旬 育樹祭広場にて)

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シモバシラ(霜柱)の霜華
「”霜柱”が植物なんて変じゃない?」と思った人もいるでしょう。白い氷の部分は確かに植物ではありませんが、この氷の芸術を作っているのが、植物のシモバシラなんです。冬になって花が落ちても茎が水分を上げ続けるのでこのような氷の花ができるのです。不思議な芸術作品です。
(12月上旬 吉田口登山道一合目にて)

いかがでしたか。ここにご紹介したのはほんの一部で、他にもたくさんの植物が、ここ富士北麓の地域に息づいています。

でも、ここで一つお願いです。
富士山の植物に関心を持って頂き、写真を撮るのはOKですが、植物を採ったりするのはNGです(自然公園法違反)。また、写真を撮るのに夢中になるあまり、遊歩道等から外れたり、足元の植物を踏み荒らしたりしないようにしましょう。

次回は、れんじゃー写真缶 秋・冬の振返り(2)「閉山期の活動編」をお送りします。お楽しみに。 

 

れんじゃー写真缶 ネット版 夏の振り返り(6)

 2019年11月27日

こんにちは! 富士山レンジャーです。
れんじゃー写真缶の最終回は「風景編」です。

 

[風景編]
最終回の「風景編」では、夏の富士山で出会った様々な絶景や気象現象をご紹介。富士山の様々な顔をお届けします。
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ハロ(Halo, 暈(かさ))
絹層雲のような薄い氷晶雲を通して太陽を見たときに、太陽を中心とする光の輪が見える現象。7月下旬、五合目を出発する時に出逢えました。

 

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雨の登山道
夏の富士山。山の天気は晴れの日ばかりではありません。時には雨で登山道がえぐられてしまうことも。雨の時はより一層の慎重さが登山者に求められます。

 

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麓の夜景
八合目。夜間巡回の途中で麓の夜景を捉えました。遠く都心の灯りも見えています。未明の登山に向けて山小屋でしっかり休息を取ります。

 

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御来光
今年のお盆時期は晴天に恵まれず、ほとんど御来光を拝めませんでしたが、この日は美しい御来光が上がり、辺りは感動に包まれました。

 

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8月の富士山頂につららが。
知っていましたか? 8月下旬になると山頂付近は最低気温が氷点下となり、つららが出来ます。夏でも防寒対策は必須です。

 

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御鉢巡り
8月下旬、調査のために廻った山頂の御鉢巡り。登頂した者のみに許される、日本一の高さに広がる日本一の絶景のご褒美です。

 

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空飛ぶ円盤の襲来か?!
富士山東側に現れた巨大な雲の塊。UFO?! いいえ、吊るし雲です。西から湿った空気が強い風にのって来ている証拠で、天気が下り坂となる予兆です。

 

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雲海より高く
9月上旬。七合目辺りに広がる雲を抜け八合目へ。ふと振り返ると素晴らしい雲海が広がっていました。美しい雲海を目に焼き付けます。

 

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近づく麓の景色
山は山頂に着いて終わりではありません。無事に下山して家に帰るまでが一つの山旅。下山者を迎える麓の風景が「おかえりなさい」と言っているようです。

 

6回に渡り、この夏の富士山と富士山レンジャーの活動をご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか? 富士山の魅力や自然への接し方、レンジャーの取り組んでいる活動が一部でも皆さんの心に残れば幸いです。
この美しい富士山をみんなの力で後世に受け継いでいくことが富士山レンジャー一同の切なる願いです。

10月下旬には初冠雪が観測され、今は五合目より上が雪と氷に閉ざされた富士山。冬の間の富士山レンジャーの活動については、機会があればご紹介したいと思います。

富士登山を予定している人は、来年の夏、しっかりと山の準備をして、また元気な姿でお会いしましょう!!

 

れんじゃー写真缶 ネット版 夏の振り返り(5)

 2019年11月23日

こんにちは! 富士山レンジャーです。
れんじゃー写真缶として、5回目は「麓での活動編」です。

 

[麓での活動編]
富士山が開山している間は、ほぼ毎日交替で五合目以上へ巡回に行きます。それに加え学習会やイベントなどに合わせ麓でも活動をしています。その中から一部をご紹介しましょう。

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富士山レンジャー写真展の開催1
この夏、多くの旅行客が訪れる談合坂SAで写真展を開催しました。
多くの方にレンジャーの活動を知ってもらうために開催しています。

 

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富士山世界遺産センターでの安全登山啓発パネルの掲示
安全登山のためには”山に登る前”に登山の注意点を知ることが大切です。センターに訪れる方々に向けて、日本語・英語版の啓発パネルを作りました。

 

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ゴミ拾い体験
7月上旬。民間企業の環境学習会と併せて、ゴミ拾い体験を実施しました。拾ったゴミの重量を計測。皆さん真剣な目つきです。

 

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環境学習会
県内の高校生向けに環境学習会を開催しました。皆さん富士山周辺の環境問題について、とても真剣に耳を傾けてくれました。

 

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なぜ登山道に冷蔵庫が…
7月下旬。吉田口登山道で不法投棄された冷蔵庫を発見。悲しくなります。山はごみ捨て場ではありません!!

 

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アレチウリ駆除活動への参加
7月下旬。河口湖湖畔にて、アレチウリやオオブタクサ等、環境省で指定された特定外来生物(植物)の駆除活動を関係機関と協力して実施しました。炎天下の中、皆で頑張りました。

 

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東海自然歩道の施設点検
東京~大阪を結ぶ東海自然歩道のうち、山梨県内については富士山レンジャーが巡回し、施設の異状等がないか確認しています。

 

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富士山レンジャー写真展の搬入2
8月末、甲府にある山梨県立図書館で開催しました。図書館で勉強する学生の他、幅広い年齢層の多くの方に見ていただきました。

 

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特別保護地区で昆虫採集はできません!
9月初旬。大室のブナ広場で大きな捕虫網を持った数人の方に会いました。ここは国立公園の特別保護地区であり、昆虫採集は出来ません。

 

夏は富士山五合目以上の巡回・啓発が注目されがちですが、実は麓でも一年を通して色々と活動をしています。ここでご紹介したのはレンジャーの活動の一端ですが、これらを通じて少しでも多くの方々に環境保全に関心を持っていただけたらと願っています。

次回は、れんじゃー写真缶 夏の振返り(最終回)「風景編」をお送りします。お楽しみに。

 

富士山レンジャー写真展のスケジュール
https://www.yamanashi-kankou.jp/volunteer/topics/fujisanranger-syashinten2019.html

 

れんじゃー写真缶 ネット版 夏の振り返り(4)

 2019年11月19日

こんにちは! 富士山レンジャーです。
れんじゃー写真缶として、4回目は「生きもの編」です。

 

[生きもの編]

夏。麓の虫たちも高山の鳥たちも最も輝く季節。富士山とその周辺でこの夏レンジャーが巡回中に出会った生きものたちをほんの少しだけご紹介します。

 

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ビンズイ(Olive-backed Pipit) 7月初旬 五合目登山道脇にて
セキレイの仲間で木のてっぺんや岩上で囀りながら、自分の縄張りを一生懸命守っています。鳴き声もビンビン、ツィーツィーと賑やかです。

 

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ハナアブ(Hoverfly) 7月初旬 五合目登山道脇にて
一見するとハチに似ているし、和名は花虻ですが、アブの仲間ではなく、ハエの仲間です。高山では植物の受粉を促す重要な担い手です。

 

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メボソムシクイ(Japanese Leaf Warbler) 7月中旬 泉ヶ滝付近にて
“虫喰い”と恐ろしい名前ですが、鈴虫のような美しいさえずりで登山者を癒してくれます。冬は台湾やフィリピンなどで越冬します。

 

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シオカラトンボ(Common Skimmer) 8月上旬 明見湖にて
最も馴染み深いトンボの一種。シオカラトンボとは成熟して水色になったオスに付けられた名前で、茶色いメスは俗にムギワラトンボと呼ばれます。

 

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センチコガネ(Earth-boring dung beetle) 8月中旬 本栖風穴付近にて
甲虫類の仲間で動物の糞を主な餌とする光沢のある糞虫です。メスは獣糞を巣穴に引込んで育児球を作り産卵します。糞虫が自然界の物質循環において果たす役割は大きいです。

 

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アサギマダラ(Chestnut Tiger) 8月下旬 六合目登山道脇にて
美しいだけでなく、遠く沖縄・台湾まで渡りをするタフな蝶です。この小さな体のどこにそんな力があるのか不思議です。

 

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イワヒバリ(Alpine Accentor) 8月下旬 八合目下山道付近にて
高山帯の岩場などに生息します。警戒心が低く、人の近くに寄って来ることもある山のアイドル。でも、そっとしておいてあげましょう。

 

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ゴマダラカミキリ(whitespotted longicorn beetle) 9月中旬 本栖湖畔にて
最も知られたカミキリムシの一種。成虫は果樹や様々な木の葉を食べ、幼虫は木の内部を食べる害虫として農家さんを悩ませます。

 

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アズマヒキガエル(Japanese Common Toad) 9月中旬 林道にて
体内に毒を持っている為、悠然と歩きます。まるで大親分みたい。
毒があるから、もし見つけても素手で触らないようにしましょう。

 

ここで改めて富士山レンジャーからお願い。富士山とその周辺は、国立公園内であり、特に富士山五合目以上と青木ヶ原樹海は特別保護地区であり、特に大切に自然を保護しなければならない場所です。生き物を捕ったり、植物を採ったりしてはいけません。写真に撮るだけにして、そっとしておいてあげて下さいね。
もちろん、その他の地域でも動植物は大切に守りましょう。

次回は、れんじゃー写真缶 夏の振返り(5)「麓での活動編」をお送りします。お楽しみに。

 

れんじゃー写真缶 ネット版 夏の振り返り(3)

 2019年11月15日

こんにちは! 富士山レンジャーです。
れんじゃー写真缶として、3回目は「五合目以上での問題編」です。

 

[五合目以上での問題編]

開山期の富士山では様々な人に出逢います。そんな中には一部ですが、このまま登って大丈夫かなと心配になる人や、自然公園法違反をしてしまっている人などもいます。この夏を振り返り、富士登山で起きていることの現状を一緒に見てみましょう。

「外国人観光客、どこまで登る?」
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六合目登山道にて。ちゃんと山の準備をしていれば良いのですが、悪天候の日は心配になります。声を掛けて注意を促します。

 

「溶岩の持ち出しはできません」
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五合目にて外国人観光客が旅の記念に溶岩を拾っています。五合目以上は特別保護地区で、溶岩は持ち帰れない旨を説明し、返して貰いました。

「富士山五合目以上は幕営禁止です」
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八合目の山小屋脇にて。富士山五合目以上は特別保護地区でテント設営禁止です。それだけでなく落石等とても危険なのでやめましょう。

 

「シートによる場所取りはご遠慮下さい」
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富士山頂にて。ご来光待ちで大勢の人が山頂にいますが、シートで場所を占有する行為はマナー違反です。説明して片付けてもらいます。

 

「ゴミは各自できちんと持ち帰ろう!」
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お盆の夜間巡回。たった一晩なのに8合目~山頂間だけで、大袋4つ分のゴミがありました。ほとんどが弾丸登山によるものです。

 

「靴底剝れにご注意を!」
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たとえ使っていなくても、靴底の接着剤は経年劣化で数年でダメになります。結束バンドで応急措置しましたが、皆さん登山前に必ず確認を。

 

「そこはコース外ですよ!」
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登山者に迷惑が掛からないようにと思ってか、ロープの外で横になっている人たち。コース外は落石の危険もあり、非常に危険です。

 

「草花を折らないで!!」
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スバルライン五合目付近の歩道脇。興味本位でもぎ取られ、捨てられてしまったオンタデとアキノキリンソウ。とても悲しげです。

 

「この輪が広まるといいな」
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地道な啓発活動が徐々に伝わっているのか、外国人登山者の方も自分の出したゴミを持ち帰る人が少しずつ増えています。

 

ここに紹介した問題はレンジャーが目にしたほんの一部です。きちんとルールを守って登山を楽しまれている方も沢山いらっしゃいますし、中にはゴミ拾いをしながら登っている方もいらっしゃいます。
ぜひ、富士山を訪れるすべての人が、正しくルールを守って安全に山を楽しんでもらえるようになることが富士山レンジャーの願いです。

次回は、れんじゃー写真缶 夏の振返り(4)「生きもの編」をお送りします。お楽しみに。 

 

れんじゃー写真缶 ネット版 夏の振り返り(2)

 2019年11月12日

こんにちは! 富士山レンジャーです。
れんじゃー写真缶として、2回目は「五合目以上での活動編」です。

 

[五合目以上での活動編]

夏、開山期の富士山。私たち富士山レンジャーは、皆さんが安全にルールを守って登山を楽しんでもらえるよう、登山道を巡回したり、行き交う登山者に啓発活動を行ったりしています。 

今回はそんな夏の富士山五合目以上での活動の一部を振り返ってご紹介しましょう。

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開山初日
7月1日の開山日。今年から保全協力金の徴収ブースが六合目安全指導センター手前に設けられました。ご挨拶しながら廻ります。

 

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濃霧の登山道
今年は梅雨明けが遅く、7月前半は濃霧の日が多かったです。こんな日は道間違いが起こりやすいので、登下山道の分岐に立って啓発します。 

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御中道にて注意案内の設置
昔の御中道は富士山の周りを一周出来たのですが、今は大沢崩れが危険な為、御庭より先は立入禁止です。雨の中、案内を取り付けます。

 

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メディアの取材対応
夏はTVや雑誌等がレンジャーの活動を取り上げてくれて、時には海外メディアの取材も。外国の方にも登山のマナーを知ってもらいたいと思います。

 

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光の行列
お盆の富士山は最も登山者が多く、山頂での御来光を目指して、深夜から長い行列ができます。この時期はレンジャーも関係機関と協力しながら夜間巡回を実施します。

 

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六合目での安全啓発活動
吉田ルート六合目にある登下山道分岐点。これから出発する登山者に登山のアドバイスをしたり、下山者にお疲れ様と声を掛けたりします。

 

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憧れの鉄人に声を掛けられる!
巡回をしていると、なんとグレートトラバースに挑戦中の田中陽希さんに声を掛けられました。TVに映らない所でもゴミ拾いをしてくれていた陽希さん、やっぱりナイスガイです。
(※写真はグレートトラバース事務局様に掲載許可を頂いています)

 

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雨の中の啓発
8月は午前中、天気が良くても、午後になると急に雲が湧いて天気が崩れたりするのが夏の天気。注意を促しながら巡回します。

 

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五合目総合管理センターにて
台風等の影響で登山道の巡回に出られない時、五合目総合管理センターで登山者の質問・相談に答えたり、安全啓発をしたりします。

 

ここにご紹介したのはレンジャーの五合目以上での活動のほんの一部です。私たちレンジャーは巡回や啓発活動を通して、富士山を訪れる皆さんが、安全に、ルールを守って、富士山の自然を満喫して頂けたらと願っています。

次回は、れんじゃー写真缶 夏の振返り(3)「問題編」をお送りします。

お楽しみに。

 

れんじゃー写真缶 ネット版 夏の振り返り(1)

2019年11月8日

こんにちは! 富士山レンジャーです。

今年の夏も私たちレンジャーは皆さんの安全登山のため、国立公園でのルール啓発のため、ほぼ毎日、富士山五合目以上で巡回しました。また山麓でも樹海の巡回や写真展の開催など様々な活動に取り組みました。私たちの撮った写真を通して振り返った今年の夏を、6回に分けてご紹介します。

 

[高山植物編]

今年、富士登山をされた方、どうでしたか? 神々しい御来光を見られた人、荒天でさんざんだった人、高山病にかかってしまった人、色々だと思います。中には「御来光は良かったけれど、登下山の途中は砂礫ばかりで全然自然が無くて単調だった」という声を耳にすることもあります。

でも本当は、そんなことはありません。開山期間中、富士山の五合目以上でも様々な動植物を見つけることが出来ます。特に今年はとても綺麗な花々に出会えましたよ。

今回はそんな富士山の自然の一部を振り返ってご紹介しましょう。

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フジハタザオ(富士旗竿)
六合目から山小屋が見え始める七合目へ登るジグザグの登山道。
壁の隙間から白く可愛い花が登山者を優しく迎えてくれます。
(7月上旬 吉田ルート七合目に向かう登山道脇にて)

 

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ミヤマハンショウヅル(深山半鐘蔓)
最近は火の見櫓(やぐら)を殆ど見なくなりましたが、花が半鐘に似ていることが名前の由来。安全登山のため、登山者に警鐘を鳴らしているようです。 (7月中旬 吉田ルート七合目にて)

 

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コケモモ(苔桃)
「登山はちょっと」と言う方でも五合目付近を水平に伸びる遊歩道、”御中道”を歩けば、出会うことのできるピンク色の可愛らしい花です。(7月中旬 御中道にて)

 

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ハクサンシャクナゲ(白山石楠花)
今年も綺麗に咲いてくれました。開花期だけ注目されがちですが、冬は葉を丸め、傘のように折り畳んで風雪を耐え忍ぶ、戦略家なのです。(7月下旬 奥庭にて)

 

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ベニバナイチヤクソウ(紅花一薬草)
漢字名から分かる通り、昔は傷や虫刺されに効く薬草として使用されました。五合目付近に生育していますが、今年は特に多く見掛けました。(7月下旬 御中道にて)

 

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オンタデ(御蓼)の根
下山道脇で雨風の浸食で露わになったオンタデの根。草花の根にしては太いでしょう? この根で水分を確保し、風に耐えているのです。(9月上旬 吉田ルート七合目に向かう登山道脇にて)

 

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フジアザミ(富士薊)
六合目登下山道分岐に咲くフジアザミ。吉田ルートで最も標高の高い所に咲くフジアザミでしょう。登山者が無事に帰るのを待っています。(9月上旬 六合目登下山道分岐にて)

 

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アキノキリンソウ(秋ノ麒麟草)
春に黄色い花が咲くキリンソウと対比して秋に咲くからアキノキリンソウ。でもこちらの方が首が長くて、よりキリンっぽく見えますね。(9月上旬 吉田ルート六合目上り)

 

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トモエシオガマ(巴塩釜)
吉田ルートだと七合目トモエ館近くにも咲きます。今年は当たり年なのか、特徴的なピンクの花弁が沢山見られ、登山者を癒してました。(9月上旬 御中道にて)

 

いかがでしたか。ここにご紹介したのはほんの一部で、他にもたくさんの植物が、富士山の過酷な環境の中で、頑張って花を咲かせていました。来年夏に初チャレンジする人、リベンジする人などいるかと思いますが、富士山でも花々を注意して探すと結構あるものです。ぜひ富士山の自然にも目を向けて歩いてみて下さい。

でも、ここで一つお願いです。
富士山の花々に関心を持って頂き、写真を撮るのはOKですが、植物を採るのはNGです(自然公園法違反)。また、花の写真を撮るのに夢中になるあまり、ルートから外れたり、足元の植物を踏み荒らしたりしないようにしましょう。事故や危険を招いたり、場所によっては、他の登山者の通行の妨げになる場合もあります。周りに気を配って、ゆとりをもって臨んで下さい。

次回は、れんじゃー写真缶 夏の振返り(2)「活動編」をお送りします。
お楽しみに。

 

夏本番!安全で楽しい富士登山を!!3.マナー&ルール・緊急対応編

2019年07月23日

こんにちは!富士山レンジャーです。

安全で楽しい富士登山をしてもらうため、数回にわたって夏の富士登山で注意したいポイントをお伝えして来ましたが、最後はマナー&ルール・緊急対応編です。実際に登山に臨まれる際に、ぜひ頭の片隅に入れておいて頂きたいと思います。

 

[マナー&ルール・緊急対応編]

1.必ず山行計画をメンバー全員で共有しよう

富士山登山ルート

https://www.camp-outdoor.com/tozan/fujisan/fujisanmap.pdf

 

富士山の4つの登山道はガイドラインで色が決められており、案内地図や標識等では、吉田ルート(黄)、須走ルート(赤)、御殿場ルート(緑)、富士宮ルート(青)となっています。必ず登山に参加するメンバー全員が何色のルートを登り、どこに泊まり、どのような行程で行くのか理解しているようにして下さい。

時々、パーティの中で登山の企画者だけがルートや行程を把握し、同行者はただ「あの人にくっついて歩いて行けば良い」と思っている人たちに会うことがあります。行きの車で寝ていて何処の登山口から登ったのかも覚束ないというケースもあります。出発前に必ず山行計画をメンバー全員で共有しましょう。

 

2.富士山5合目以上は「特別保護地区」です

富士山に足を踏み入れる前にぜひ認識しておいて欲しいことがあります。富士箱根伊豆国立公園に属する富士山は、自然公園法で5合目以上と青木ヶ原樹海が「特別保護地区」に定められ、ここでは動植物の採取・捕獲はもちろんのこと、落ちている熔岩などの岩石や枝なども環境大臣の許可がないと持ち出すことは出来ません。

よく「生きている動植物を取るわけじゃない。落ちている石ころ一つ取って何が悪い」と言う人がいますが、富士山は開山期間中の吉田ルート8合目以上への登山者だけでも、年間15万人もの人が訪れます。5合目までの観光者も含めたらもっと多いでしょう。想像してみて下さい。これだけの人が「自分一人くらい、石ころ一つくらい」とみんなが好き勝手に石や枝を持ち去ったら…。それが何年もずっと続いたら…。たった一人にとっては「これくらい」のことでも大勢の人が同じことをしたら、あっという間に富士山の環境は変えられてしまいます。だからルールがあるのです。

ぜひ、富士山の自然環境を守る意識を持って臨んで下さい。

 

3.登山道(吉田ルート)での注意点

吉田ルートは、6合目穴小屋の登下山道分岐から上は上りと下りとでルートが違います。上りは7合目より上には山小屋が点在し、水の購入やトイレに行くことが可能ですが、下山道は本8合目/下江戸屋の分岐から7合目公衆トイレまで、トイレは無く、また水の購入に至っては、5合目スバルラインに帰り着くまでできません。♪行きはよいよい帰りは…とならないように必ず下山前にトイレを済ませておくこと、下り分の水を確保しておくことを第1に覚えておいて下さい。

 

2点目ですが、下りルートでは一箇所、絶対に間違えてはいけない分岐があります。それは先述の本8合目/下江戸屋にある、須走口と吉田口との分岐です。吉田口(スバルライン)に下りたいなら、左に曲がり下江戸屋の前を通過して下さい。須走口(ふじあざみライン)に下りたいなら、右に曲がってそのまま下って下さい。もし何人かで登っているなら、必ずここで一度全員集合して、確実に全員が同じルートで下りられるようにすることを強くお奨めします。

R04-01ShimoEdoya

 

ルートに関してもう1点。8合目太子館や白雲荘、本8合目トモエ館等の付近には、ブル道である下山道から山小屋への物資供給のための連絡道があり、下山道とのアクセスが可能です。途中で登山を断念する際、また下山中にアクシデントがあり救護所に行く必要がある時等に使えます。
但し、全てのブル道が通行可能という訳ではありません。人とのすれ違いに十分な道幅が確保できない等の理由から立入禁止になっているブル道もあります。心配な場合には山小屋に確認するようにしましょう。
また、連絡道や下山道でクローラー(運搬車)とすれ違うことが稀にあります。その場合は、クローラーが一旦停車して山側を通り抜けるのが基本ですが、道の状況等もあるので、運転者の指示に必ず従うようにして下さい。

 

4点目はヘルメット着用の推奨です。上りでは7合目花小屋以降岩場が連続します。また頂上のお鉢巡りおよび下山道では落石や転倒の危険があります。「噴火時のためのヘルメット」と思われがちですが、現実的に起こりうるリスクへ対応するため着用をお奨めします。(最低でも即座に出せるようにしておきましょう)
装備編でも書きましたが、6合目安全指導センターにてヘルメットの貸出しもあります。合わせてご検討下さい。

 

5点目は上りでの岩場についてです。7合目以降岩場が連続しますが、その両脇にはロープが張られています。これは登るのを補助するために付いているのではなく、登山道の内と外の境界を示すためのものであり、体重を掛けると抜けてしまう危険があります。岩場を登る際にはロープに頼るのではなく、しっかりした岩を選んで、掴んで進むようにしましょう。
また、基本的に登下山道は分かれているので、下山者とすれ違うことは少ないですが、8合目より手前で断念して引き返す人たち等、たまに下山者と岩場ですれ違うことがあります。そんな場合は、互いに譲り合って上手に行き来しましょう。

 

最後も重要な点ですが、夜間の懐電歩行です。御来光前に山頂を目指す際にヘッドランプを点灯させるのは当然ですが、シーズン中は混み合い、9合目付近では渋滞が発生します。はやる気持ちは分かりますが、吉田ルートではどこからでも御来光を拝めるので、「最悪、山頂で御来光が見れなくてもいい」という心のゆとりを持ちましょう。焦るあまり、無理な追い越しをしたり、ましてやルートを外れて斜面を直登するのは大変危険な行為なので絶対にしないで下さい。

 

4.山小屋(吉田ルート)での注意点

まず冒頭2に記したとおり、富士山5合目以上は「特別保護地区」であり、自然公園法で厳格に保護されています。そのため、幕営禁止(テント設営禁止)となっています。御来光を見るために9合目や山頂でテントを張る登山者が時折いますが、違法行為です。きちんと山小屋に宿泊して下さい。

 

沢の無い富士山の山小屋では、水は非常に貴重です。また同様に”スペース”も非常に貴重です。そのため7合目以上の山小屋では程度の差はありますが、殆どの場合、寝床は非常に狭く、寝袋分のスペース(布団の縦半分位)しか自分のスペースはありません。山小屋に着いたらまず自分の荷物を整理して、夜中にガサゴソしないで済むようにしましょう。
また、疲れたからといって山小屋に着くなり寝てしまうという人もいますが、高山病予防の観点からあまりお奨めしません。寝ると呼吸が浅くなってしまうため、まだその標高に体が順応していないうちに寝てしまうとかえって高山病になり易くなってしまいます。体は休めますが、荷物整理をしたり、景色を楽しんだりしながら、(深呼吸するなど)呼吸を意識して過ごすのが高山での過ごし方のコツです。

 

夜中はなかなか眠れないことが多いです。特に富士山が初めての人はドキドキしているし、狭くて鼾(いびき)がうるさく、また位置によっては小屋の電球が夜中じゅう点けっ放しで眩しかったり、慣れた布団の環境とはほど遠いので睡眠不足となり、それが原因で翌日高山病になってしまうことがよくあります。不安な人は耳栓やアイマスクを用意すると良いかもしれません。

 

富士山では御来光を山頂で見たいという人が圧倒的に多いので、山小屋の標高にもよりますが、大体深夜の2時頃にはみんな起きだして準備をし始めます。でも、「みんな起きているのだから、多少うるさくても問題無いだろう」と大きな音を立てるのはマナー違反。特に耳障りなのが、レジ袋のシャカシャカ音。富士山以外の山小屋でもそうですが、注意をしましょう。山小屋でゆっくり御来光を見て、それから登頂を目指す人もいます。先述のとおり睡眠不足は高山病の元。ご注意下さい。

 

5.トイレチップについて

富士山の5合目以上にあるトイレは、山小屋も、山頂や登山道の公衆トイレも全て「環境配慮型」です。牡蠣殻などを用いた細菌分解型や燃焼型など様々なタイプがありますが、どれも維持管理費がとても掛かるため有料です。(200~300円(山小屋宿泊者の場合はその山小屋のルールに従って下さい))小銭を準備しておきましょう。
なお、富士山の保全協力金はトイレの新設・修繕に使われますが、日常の維持管理には使われません。トイレチップが維持管理には欠かせませんので、ご理解とご協力をお願いします。

 

6.高山病に掛かってしまったら

高山病の予防の観点では既に書いていますが、もし高山病に掛かってしまったらどうするか?

高山病になるとめまいや頭痛、吐き気がします。無理せず、一旦登るのを中断して深呼吸をしたり、水分を補給するなどして高度順応を図って下さい。特に女性の方でトイレが近くなると嫌だからと水分を摂らないで頑張る人がいますが、高山病対策には水分補給は不可欠です。

もし暫く経っても一向に症状が改善しないようなら、一旦高度を下げ、必要なら下山も覚悟して下さい。高度を下げれば血中酸素濃度は上がり、大抵の場合は治ります。とにかく無理は禁物です。山は逃げませんから、登頂に固執せず、またの機会にチャレンジしましょう。

 

7.突然の雷雨あるいは噴火に見舞われたら

上りの登山道ならとにかく近くの山小屋に避難して下さい。下りの下山道には山小屋はありません。連絡道を使って上りの登山道側に行くか、もしくは8合目と7合目の中間地点にある緊急避難所に避難して下さい。7合目よりも下の場合は登山道上にあるシェルターに避難して下さい。7合目より上の下山道で緊急避難所等への避難も困難な場合、下山道でも谷側ではなく山側でなるべく背を低くして身を隠して下さい。

慌てず、携帯ラジオ等で情報収集しながら慎重に行動して下さい。

R04-02KinkyuHinanjo

 

8.傷病者が発生したら、仲間とはぐれてしまったら

安全対策現地連絡本部(5合目総合管理センター内)に連絡下さい。

0555-72-1477(開山期間中24h対応)

その際、現在地をスムースに伝えられるよう、山小屋の名前や近くにある標識のナンバーを確認しておくと良いでしょう。

傷病者の場合、5,7,8合目にある救護所(開設期間に注意)で対応可能であれば、そこでの処置となりますが、無理な場合、クローラー(運搬車)で5合目まで下ろし、そこから救急車で搬送となります。富士山は気流が安定しない為、ヘリ搬送は基本的にできません。また、クローラーでの搬送も台風や大雨の場合には出動できない場合もあります。クローラー搬送は有料です。予めご承知おき下さい。

R04-03Crawler

 

どうでしたか。後半はもしもの話だったので、少し不安に思ったかも知れませんが、もしもの時はどうすれば良いかも含めて理解しておくと、より安全に山を楽しめると思います。

 

最後に是非しっかりと事前準備をし、安全かつマナー&ルールを守って、富士登山に臨んで下さい。思い出に残る素敵な山旅となることを富士山レンジャー一同願っています。

 

 

夏到来!安全で楽しい富士登山を!!2.装備・服装編

2019年7月19日

こんにちは!富士山レンジャーです。

多くの学校は夏休みに入り、夏本番!この夏、富士登山を計画されている方もいらっしゃるかと思います。ぜひ、しっかりと準備を整えて、安全に夏の富士登山を満喫して欲しいと思います。今回は服装・装備について気を付けておきたいポイントをまとめてみました。参考にしてみて下さい。

 

[服装・装備編]

1.服装「夏の富士山、暑いの?寒いの?」

一般的に標高が100m上がると気温は0.6℃下がると言われています。そのため、平地(海抜0m)で35℃の猛暑であっても七合目(標高2,700m)辺りでは19℃、山頂では12℃と11月の東京の平均気温並みです。また朝晩は冷え込むのでもっと寒くなります。山頂の最低気温が5℃以下になることはよくあり、7月上旬や8月末以降だと氷点下になることもあります。

R03-01Temperature

出典:気象庁データベースより

 

では、五合目の登り口辺りでも避暑地のような涼しさがあるかと言うとそうでもなく、猛暑で脱水症状や熱中症にかかってしまう人もいます。従って、暑さ寒さに臨機応変に対応できる服装の準備が必要です。上手に防寒するためにも重ね着や組合せを上手にすると良いでしょう。

 

2.日焼け・紫外線対策

紫外線量は標高が1,000m高くなる毎に10~20%増します。富士山六合目以上には森林が無く、晴れていれば陽射しを直接浴びることになります。長時間日焼けをすると肌は真っ赤になり、火傷のように痛くなります。たまに上半身裸でザックを背負っている登山者を見掛けますが、肩を日焼けするとザックが背負えなくなり、後悔することになるので、服装はよく考えましょう。

また、日焼け以上に気を付けて欲しいのが、帽子とサングラスによる紫外線対策です。特に富士山では、日中登っている間、陽射しを背後から浴びることになるので、後頭部を保護するようにした方が良いです。帽子は風で飛ばされないように流れ止めを付けましょう。サングラスは黒いかどうかではなく、UVカットの表示を確認しましょう。隙間から光の入らないスポーツタイプがお奨めです。

 

3.雨具の用意は確実に!

夏山の天気は変わり易く、朝の登り始めが良い天気でも、午後には積乱雲に覆われて突然の雷雨に見舞われるということも良くあります。雨具は必ず準備すべきものですが、時折「折畳み傘を持っているから大丈夫」と言う人がいます。山での傘は強風で役に立たないばかりでなく、風で飛ばされると他の人に当たって怪我をさせてしまうおそれがあるのでNGです。レインウェアを準備しましょう。雨具は風よけにもなるので、すぐに取り出せる所にパッキングしておきましょう。

 

4.吸湿速乾性のアンダーウェア

下着はとても重要です。日中歩いて汗を沢山かきますが、下着が濡れて乾かないと、夜あるいは雨で冷え込んだ際に急激に体温を奪い、酷い場合には低体温症の原因にもなります。綿100%のものは安価で汗もよく吸ってくれますが、乾きにくいので、ポリエステルなど吸湿速乾性の高い素材のものがお奨めです。

また、山小屋は非常に混み合うので、下着を交換するのを諦める人もいますが、山小屋に到着したら早めに交換して汗もきちんと拭くことが大切です。濡れたままの状態にならないようにして下さい。

 

5.登山靴

運動靴は、バランスを崩すと足首を痛めるので、踝(くるぶし)まで隠れるハイカットのトレッキングシューズがお奨めです。なお、暫く履いていない靴で登ったら、靴底が剥がれたというケースもあります。必ず事前にチェックしましょう。

 

6.ヘッドライト

夜、小屋で過ごす時、また御来光登山で日の出前に行動する時、各自のライトが必要です。その際、ライトは必ずヘッドライトを用意し、両手がフリーになるようにして下さい。手持ちの懐中電灯だと、岩場などで両手が使えず、また落としてしまう危険もあります。

「新しく買う」という方は、LEDライトがお奨めです。電球タイプより明るくて消費電力が少なく、玉切れの心配もありません。

たまにですが、「本体だけを持って来て電池を入れるのを忘れた!」という人がいるので、替えの予備電池も必ず準備し、自宅の準備段階で点灯チェックをしておきましょう。

 

7.水

富士山には沢が無く、水は貴重です。一方で脱水症状や高山病の対策として水分補給は不可欠です。一人当たり1.5~2ℓは準備して臨みましょう。吉田口登山道の場合、登りは山小屋でも水の購入が可能ですが、下山道には山小屋が無いので、山頂を出発する前に必ず下山に必要な水を確保するようにして下さい。

 

8.ヘルメットについて

富士山は活火山であり、噴火のリスクを無視することは出来ません。噴火警戒レベルが引き上げられ、直ちに下山するという事態を想定しなければなりません。

特に吉田口登山道では、他の登山道よりも大勢の登山者がおり、これらの人が一斉に下山を余儀なくされます。登りルートを下りれば岩場ですし、下山専用路は砂利道で落石や転倒の危険が高いです。噴石も勿論危険ですが、こちらの方がより現実的に怖い話です。

また、噴火に関係なく、登下山道や御鉢巡りのルート等、落石の危険があるので、ヘルメットを着用するようにしましょう。吉田口登山道の場合、六合目安全指導センターにて、2千円のデポジットを支払えば、ヘルメットを借りれます。ぜひご検討下さい。

 

9.防塵マスク、スパッツ

意外と大変なのが下りです。大勢が歩くので砂埃が舞いますし、靴に小石が入ったりしますので、防塵マスクと足回りのスパッツがあると安心です。マスクは万が一の噴火による火山灰対策の為にも有用です。

 

10.モバイルバッテリー

携帯・スマホやデジカメなど、今や登山にも電子機器が欠かせません。この時に心配なのが電池切れです。山小屋泊りでも大勢の人がいるので、充電はほぼ出来ない(出来たらラッキー)と考えた方が良いです。緊急で外部と連絡を取りたい時などの為に予備電池やモバイルバッテリーがあると心強いでしょう。

但し、モバイルバッテリーは注意が必要です。持ち運びや充電の際には、熱がこもらないように注意し、雨やペットボトルの水滴でショートしないようにし、衝撃も当たらないように注意する事が必要です。

 

次回、ルール&マナー・緊急対応編をお送りします。

 

夏到来!安全で楽しい富士登山を!!1.計画・アプローチ編

2019年7月16日

こんにちは!富士山レンジャーです。

山梨県側は7月1日から、静岡県側は7月10日から富士山が開山し、いよいよ夏山シーズン到来です。今年は新元号「令和」最初の年。この夏、富士登山を計画されている方もいらっしゃるかと思います。

特別な登攀(とうはん)技術が無くても登れる富士山ですが、日本一の標高であり、麓の方ではうだるような暑さでも山頂付近では肌寒く、さらに夜間は冷え込みます。また、山の天気は変わりやすく、登り始めは良く晴れた天気でも、午後には雷雨になることもしはしばあります。ぜひしっかりと準備をして無理のない計画で、安全に、そしてマナーを守って富士登山を楽しんで頂けたらと思います。

あらためて、富士登山で注意したい幾つかの点をご紹介したいと思います。まずは計画・アプローチ編から。

 

[計画・アプローチ編]

1.マイカー規制について

7月10日~9月10日の期間、マイカーでは富士スバルラインは通行できません。麓の富士北麓駐車場(\1,000/回)に停めてシャトルバス(有料)等をご利用下さい。渋滞緩和と排気ガス抑制のため、ご理解とご協力をお願いします。

詳しくはこちらでご確認下さい。

http://subaruline.jp/eigyou/my_car.html

 

2.STOP弾丸登山!

『弾丸登山』とは、五合目を夜間に出発し、山小屋に泊まらず夜通しで一気に富士山頂を目指す登山形態です。十分な休息を取らずに高峰を目指す為、体調を崩す登山者が後を絶ちません。疲労している状態での夜間登山は、事故を起こす危険性も高まります。

ぜひ安全な登山行程を計画するようにお願いします。

 

3.登山者数の平準化へのご理解とご協力を

世界文化遺産・富士山の登山者混雑を回避するため、特に混み合う吉田口と富士宮口の2登山道に、1日当たりの登山者数を4,000人と2,000人とする指標を設けています。入山規制はありませんが、指標を目安に平準化を図っています。

富士登山の混雑予想カレンダーなども出ていますので、参考にして渋滞・集中を避けた快適な山旅を楽しんで下さい。

http://www.fujisan-climb.jp/info/congestion_info.html

 

4.自分の体力を考えて1日の行動時間は余裕をもって

昔山登りの経験があって暫く山から離れていた人が、「久々に古い山友と富士山に登ろうと思って…」と富士山に登る方をよく見掛けます。最近のご自身の体力をよく見直して時間に余裕のある計画を立てているのなら良いのですが、中には昔の感覚で「これくらい行ける」と過信して無理な計画で行こうとする方もいます。

ぜひ今の自分の体力をよく見直して、無理のない計画を立てましょう。少なくとも計画段階では、夕方4時前には目的地の山小屋に着いているのが望ましいです。

 

5.山小屋の予約はお早めに

日程計画が立ったら、早目にした方が良いのが、山小屋の予約。たった2ヶ月ちょっとの開山期間に吉田ルートだけでも15万人以上(平成30年度実績)の登山者が訪れるので、山小屋の予約もすぐにいっぱいになります。弾丸登山の理由も「山小屋の予約が結局取れなかったから」というケースが少なくありません。早めに山小屋を予約し、どこもいっぱいだったら弾丸登山を強行するのではなく、別の日程で調整するゆとりを持ちましょう。

 

6.登山計画の提出を

富士山の5合目には観光客が大勢いるので、何となく「登山」に対する意識レベルが下がりがちです。登山届を出さずに登る人も少なくありませんが、富士山は日本一の高山であることを忘れてはいけません。

登山届を紙で作成し、スバルライン5合目の総合管理センター内の警察詰所に提出するか、Compassなどの登山計画作成・提出アプリを使って提出するようにしましょう。

参考)Compass(コンパス)https://www.mt-compass.com/

 

7.天気予報をしっかりチェック

出発前日には必ず天気予報をチェックし、危ないと判断したら、山行を中止する勇気を持ちましょう。特に旅行日程の中に登山を組み込んでいる人や仕事の関係で他の休みが取れない人などで天気が悪くても強行してしまう人がいますが、富士山は5合目以上では基本的に吹きさらしで逃げ場が無くとても危険です。

天候を客観的に見極めて判断しましょう。

 

参考)吉田ルート山頂付近の石積み崩れに関して

昨年秋の台風の影響により吉田ルートの山頂狛犬付近の石積みが崩れて登山道が塞がれていましたが、復旧工事が完了し、7月9日より通行が可能となりました。

また7月10日より山頂周回歩道(通称:お鉢めぐり)が全線開通しました。但し7月前半だと一部登山道に残雪がありますので、通行には十分ご注意下さい。

 

吉田ルート開通に関して
https://www.pref.yamanashi.jp/ysd-kensetsu/doroiji/fujisan_heisa2010-10-1.html

お鉢巡りの全線開通に関して
http://www.fujisan-climb.jp/info/20190703_ohachi.html

 

次回、装備・服装編をお送りします。

 

富士山レンジャー写真展各所にて開催中!

2019年7月11日

こんにちは!

富士山レンジャーよりお知らせです。

今年は、令和元年。この夏、富士登山を計画したり、富士山の見える観光スポットを訪れる予定の方もいらっしゃるかと思いますが、そんな方にオススメなのが、現在下記の各所にて絶賛開催中の『富士山レンジャー写真展2019』です。

レンジャーの活動や富士山の自然、環境問題など、実際に目にしたシーンをパネルにて紹介しています。

ぜひお立ち寄り頂き、今の富士山を感じて頂ければと思います。

 

■甲府/エルク

展示期間:6月28日(金曜日)~7月30日(火曜日)

R01-01ELK

開催地情報:
http://www.elkinc.co.jp/

 

■中央自動車道/談合坂SA(下り)

展示期間:6月29日(土曜日)~8月29日(木曜日)

R01-02DangouzakaSA

開催地情報:
https://sapa.c-nexco.co.jp/sapa?sapainfoid=97

 

■甲府/県立図書館

展示期間:9月1日(日曜日)~9月15日(日曜日)

R01-03Kentosho

(写真は一昨年の様子)

開催地情報:
https://www.lib.pref.yamanashi.jp/index.html

 

■富士吉田/市立図書館

展示期間:9月13日(金曜日)~10月10日(木曜日)

開催地情報:
http://flib.fujinet.ed.jp/forms/top/top.aspx

 

 

富士山レンジャー写真展2019の年間開催予定はコチラ。

https://www.yamanashi-kankou.jp/volunteer/topics/fujisanranger-syashinten2019.html

このページに関するお問い合わせ先

山梨県知事政策局富士山世界遺産センター 
住所:〒401-0301 山梨県南都留郡富士河口湖町船津6663-1
電話番号:0555(72)2314   ファクス番号:0555(72)2337

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