ページID:128003更新日:2026年11月6日
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山梨県の富士山保全は、世界文化遺産・富士山の自然環境と文化的価値、登山者の安全を守り、観光利用との両立を図る取組である。
登山道の混雑や弾丸登山への対策に加え、五合目の受入環境、麓から続く信仰・文化、地域交通までを一体として捉え、持続可能な管理へと政策を広げてきた。(出典:県議会知事説明要旨)
2024年には吉田ルートで登山時間と人数に関する管理を導入し、2025年には通行料や登山者指導の仕組みを見直した。
2026年9月議会では、行政と民間が共同で課題を扱う体制や、閉山期間中の無謀登山を抑止する新たな制度が示されている。
| 項目 | 内容 |
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政策の 目的 |
世界文化遺産の価値を守り、保全と観光利用、安全を両立させる。 (原典:2024-02-15所信・2026-06-19所信) |
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主な 対象 |
五合目以上の登下山道、五合目の空間、麓からの伝統的登山、周辺地域。 (原典:2024-02-15所信・2026-06-19所信) |
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登山 規制 |
2024年度に導入。時間帯と人数によるゲート管理、指導員の配置、通行料の徴収。 (原典:2024-02-15所信・2024-09-26所信) |
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料金の 見直し |
2025年から通行料を4,000円に見直し。 |
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検討中 の施策 |
2026年9月議会では、富士山官民共創コンソーシアム、富士登山届出制度(仮称)、 |
富士山の保全を巡る知事の問題認識は、来訪者の増加に対し、世界遺産の文化的価値と登山者の安全をどう維持するかという点にある。
2023年9月の所信では、富士スバルライン五合目の来訪者数が2012年の231万人から2019年には506万人へ増加したと説明し、イコモスの指摘を踏まえ、来訪者管理を「待ったなしに解決が必要な最重要課題」と位置付けた。五合目への来訪者には観光客を含み、山頂を目指す登山者数とは異なる。
(出典:2023-09-26所信)
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富士山の八合目付近を通過した登山者数
資料:環境省関東環境局「2026年夏期の富士山登山者数について」(2026年9月30日)。
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2023年は、新型コロナウイルス感染症の5類移行後に登山者が回復し、夜通しで山頂を目指す弾丸登山の増加が懸念された。
県はスバルラインの営業時間短縮、巡回指導員の増員、七合目救護所の拡充、混雑時の雑踏管理を実施した。
知事は、これらを現行法制度の下で可能な対策と説明する一方、抜本的な管理には限界があるとして、翌年の開山に向けて条例化の検討を表明した。(出典:2023-09-26所信)
2024年2月には、登山規制、下山道の噴石・落石対策、麓からの登山の復興という三つの対策が示された。
登山道の一部を道路法上の道路から条例に基づく県施設へ切り替え、下山道とともに管理することで、登山を規制する仕組みを設けると説明された。(出典:2024-02-15所信)
導入時の方針は、五合目のゲートを午後4時から午前3時まで閉鎖し、登山者数が1日4,000人に達した場合にも閉鎖するというものであった。
指導権限を持つ富士登山適正化指導員を配置し、下山道へのシェルター設置を進めるため、従来の保全協力金とは別に2,000円を負担してもらうとされた。
これらは2024年の制度導入時の条件である。(出典:2024-02-15所信)
同年9月には、吉田ルートの登山者数が12万5,287人で前年より18%減少し、弾丸登山が疑われる夜間の登山者数は708人で95%減少したと報告された。
知事は規制による改善と評価した一方、閉鎖直前に登り始める「駆け込み登山」や軽装登山を課題に挙げ、アンケートや携帯電話の人流データを用いて検証するとした。(出典:2024-09-26所信)
2025年2月には、2025年度から保全協力金を廃止し、通行料を4,000円へ引き上げる方針が示された。
安全対策として、シェルターの設置や七合目救護所の開設期間延長を進めるとした。
また、ゲートの閉鎖時刻を2時間前倒しし、予約システムに装備確認と遵守事項の誓約機能を追加して、誓約を守れない場合には県有登下山道の利用を制限する考えが説明された。(出典:2025-02-13所信)
2026年2月の所信では、登山者管理の一定の成果を認めながら、富士山全体の価値向上には改善が必要とされた。
富士トラムは来訪者の動線を管理する基盤と位置付けられた。
同年6月には、五合目の再整備、周辺県有地の活用、環境負荷の少ないアクセスを併せて検討し、県民・民間事業者・行政が将来像をともに描く「共創」へ取り組みを広げる方針が示された。
(出典:2026-02-17所信、2026-06-19所信)
登山規制は時間と人数の管理、安全設備は事故時の避難、指導と装備確認は登山前後の行動の改善という役割を担う。
通行料は、こうした安全対策の費用に充てるものとして説明されている。
人数の抑制だけに依存せず、ゲート管理、救護所、シェルター、レンジャー等による指導を組み合わせる点に施策の特徴がある。(出典:2024-02-15所信、2025-02-13所信)
富士山の保全は登山道や環境への対応だけに限らない。
県は富士講や御師の文化、麓からの伝統的な登山に着目し、歴史的な登山道の価値を伝える取組を進めている。
こうした文化的な意義の理解と、地域との連携による保全・活用が一体となっている。
(出典:山梨県・知事説明要旨)
五合目は、登山や観光の拠点であるとともに信仰の玄関口であり、そのたたずまいが富士山全体の価値に影響するという認識が示されている。
再整備は質の高い滞在空間をつくる取り組みであり、周辺県有地の活用は山麓を含む地域の価値を高める取り組みである。
知事は「富士山の保全と利活用をいかに両立させるか。」と問い、環境・観光・安全・産業にまたがる課題を一体的に扱う方向を示した。(出典:2026-06-19所信)
2026年9月議会で、県は「富士山官民共創コンソーシアム」を設立する方針を示し、4,200万円余を補正予算に計上した。
来訪者コントロール、火山防災、次世代モビリティ、受入環境、投資などについて官民が検討し、富士北麓地域の将来像をグランドデザインとしてまとめる構想である。
設立総会は2026年11月に予定されている。 (出典:令和8年9月県議会知事説明要旨)
閉山期の無謀登山対策としては、登山計画と装備の届出を受け、必要な安全対策について助言する「富士登山届出制度(仮称)」の創設が提案された。
閉鎖された登下山道への侵入防止を強化し、閉山期に消防防災ヘリコプターで救助された場合の費用負担制度も、2027年の閉山期からの実施を目指すと説明している。 (出典:令和8年9月県議会知事説明要旨)
山梨県は、登山道だけでなく五合目とその周辺を含めて来訪者の流れを管理するため、富士トラム構想の基本計画も検討している。
富士山の保全と地域への経済的な波及を併せて考える政策として位置付けられている。
(出典:令和8年9月県議会知事説明要旨)
第一に、制度の導入と成果の評価を区別する必要がある。
2024年の登山者数の変化は知事が議会で報告した実績であり、改善との評価も知事の説明である。
その一方、軽装や駆け込み登山のように、規制の運用後に明確になった問題が次の制度見直しにつながっている。
知事自身も、実態の検証と改善の継続を課題としている。(出典:2024-09-26所信、2026-02-17所信)
第二に、利用の分散と信仰・安全との調整がある。
知事は夏季への集中を緩和する観光の通年化に言及する一方、冬季観光には安全性や信仰を理由とする反対意見があることも認め、対話を重ねる方針を示した。
2026年6月には閉山期間中の遭難事故を取り上げ、防災ヘリコプターによる救助費用の一定負担を求めることも含め、無謀登山の抑止策を検討するとした。(出典:2024-09-26所信、2026-06-19所信)
第三に、施策ごとの進捗の違いがある。
登山規制や通行料の徴収が実施段階にある一方、2026年6月時点の五合目再整備、富士トラム、閉山期対策は検討を進める段階として説明されている。
既存の規制による管理と、将来の空間・交通・安全対策を組み合わせ、地域や関係者との理解を形成していくことが、継続する論点である。(出典:2024-09-26所信、2026-02-17所信、2026-06-19所信)
弾丸登山:十分な休息や山小屋での宿泊を取らず、夜通しで山頂を目指す登山形態。
来訪者コントロール:来訪者の人数、時間帯、移動の集中などを把握・管理する取組。
世界文化遺産:文化的価値をもつ遺産として世界遺産一覧表に登録された資産。
・山梨県「令和8年9月県議会知事説明要旨」(2026年9月25日)
・2023-09-26 令和5年9月定例県議会 知事説明要旨
・2024-02-15 令和6年2月定例県議会 知事説明要旨
・2024-09-26 令和6年9月定例県議会 知事説明要旨
・2025-02-13 令和7年2月定例県議会 知事説明要旨
・2026-02-17 令和8年2月定例県議会 知事説明要旨