トップ > 県政情報・統計 > 知事 > 開の国やまなし こんにちは。知事の長崎です。 > 施政方針 > 令和5年度年度はじめ知事訓示要旨
ページID:108696更新日:2023年4月16日
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令和5年4月3日(月曜日)
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今年度もどうぞよろしくお願いをいたします。
まず初めに、この年度の節目に当たりまして、先週末をもって無事に務めを終えられた168名の退職者の皆様をお送りいたしました。
この方々のキャリアの最後の3年間は、期せずして、新型コロナとの闘いの日々となりました。
長年にわたる御貢献に加えまして、このコロナ禍において、それぞれの行政現場で、県民の皆様の命と健康、さらには生活や経済を守ることに御尽力いただきました皆様に厚く感謝を申し上げる次第でございます。
また本日は、新規採用職員をお迎えいたしました。
心から歓迎をしたいと思います。
コロナ禍の息詰まるような世相の中で学業生活を余儀なくされ、人と会うこともままならず、隠忍の日々を過ごされてきた方も多くいらっしゃるのではないかと推察いたします。
それゆえに、皆様方は、「公務の現場で存分に腕を振るいたい」という思いを強くお持ちなのではないかと思います。
これからは地域に飛び出し、県民の皆様とつながり、そして絆をたくさん築いていっていただきたいと思います。
また上司や先輩職員の皆様方におかれましては、新任職員の皆さんの思いに応えるべく、人材として大切に育て、活躍の場をしっかりと用意をしていただきたいと思います。
その一つひとつが、山梨県政の財産となります。
どうかよろしくお願いいたします。
さて職員の皆様には、この3年間、新型コロナウイルス感染症への対応に大変な御苦労をおかけしてきました。
しかし今、コロナの「5類への引き下げ」を契機に、ウィズコロナの社会への転換と日常の回復が、一気に加速しようとしております。
過渡期ゆえの「先行きの不透明さへの不安感」と、コロナによる閉塞感を打破した先の「成長発展への期待感」が交錯する不安定な状態。
これが今直面している時代状況ではないでしょうか。
そこで思い起こすべきは、私たちの山梨県はすでにウイルスとの共存を前提として、ウィズコロナで経済と生活を回していくという挑戦に先鞭をつけ、そして全国を牽引するポジションをとってきたということであります。
ゆえに今の局面は、「超感染症社会」のビジョンを掲げて強靱化を進めてきた山梨県が、いち早く混沌から抜け出し、そして全国トップクラスの豊かさを誇る地域へと成長を遂げる機会を開いていくと考えるべきであります。
そして、その実現のためにとるべき大戦略は、民意によってすでに明らかになっているところであります。
すなわち、県民の生活基盤を強く、安心なものとしていく「ふるさと強靱化」、そして、国の内外に開かれた「開の国」づくり。
これらを押し進めた先に、「豊かさを一人ひとりにもれなく届けられるふるさと」山梨を創り上げていくこと。
こうした方向性であります。
令和の新時代に入ってからこのかた、職員の皆様とともに築いてきた「豊かさへの土台」が、県民の皆様から高い御評価をいただき、さらにその先の「豊かさの実感」への期待が表明されたこと、これが先の県知事選挙の重大な意義であると考えております。
こうして負託を受けたからには、「豊かさを届けること」を私とそして職員の皆様との共通の「明白な使命」として邁進していかなければならないものと考えます。
県民の「豊かさ・幸せ」の増進。それは、公職にある私はもとよりのこと、全体の奉仕者たる職員の皆様にとりましても、まさに本分とするところであり、私とともに「当事者意識」を強くもって全力で挑戦をしていただくことを強く求めて参りたいと思います。
それでは以下、今年度の取り組みの要点を申し上げます。
まず、県政の第一の柱「ふるさとの強靱化」におきましては、人々を感染症や自然災害の脅威から守り抜き、あるいは、生活を取り巻く様々な不安や恐怖から解放するため、山梨で生き・暮らすことが保障される社会へと、セーフティーネットを張り巡らせ、強めて参りたいと考えます。
その中で「感染症に対する強靱化」につきましては、目前に迫ります「5類への引き下げ」に社会が円滑に順応できるよう、医療提供体制の最適化はもとより、人びとの価値観や行動の変化に至るまで、きめ細かく目配りをし、的確に対応して参ります。
また、山梨県CDC「感染症対策センター」はこれまで、実務対応力という足腰を鍛え、「生きた実例」を知見として蓄積して参りました。
これからは、その知見を体系化して、社会をシステマティックに動かす「司令塔」の機能を高めるいわば「CDCの第二ステージ」に進んで参ります。
「自然災害に対する強靱化」につきましては、大型台風による被災で明らかとなりました本県の脆弱性を克服し、県民生活や産業活動の「生命線」となります交通や電力供給などの生活インフラを一層強いものにして参ります。
また、富士山噴火や水害対策など、本県が内包いたします災害リスクに対しましても正面から向き合い、県民の命を守る実践的な力を備えた「リアルな対策」を、ハード・ソフト両面から構築し、強化していきます。
「地域経済基盤の強靱化」につきましては、感染症の流行や物価高騰といった外的要因に対しましても、しなやかに対応し、県内企業が経営へのダメージを最小化して事業継続できるような経済基盤づくりが必要となって参ります。
その際、私たちが企画し、実行する政策は、一時的な効果にとどまるものではなく、生産コストの削減や業務の効率化など、企業の経営構造の革新や収益性の向上をもたらす機能と影響力を備える必要があります。
老子の格言に「人に授けるに魚を以てするは、人に授けるに漁を以てするに如かず」とありますが、永続的に効果を発揮する施策こそ真に有用であり、納税者への説明としても説得的であろうかと考えます。
ゆえに、引き続きこのような「積み上げ型」の政策思想の下、施策を進めて参りたいと思います。
また、併せまして、強くしなやかな経済基盤には「人」の存在が不可欠であります。
「キャリアアップ・ユニバーシティ構想」のもと、県内経済を支え、その成長をもたらす人材を育てること、
そうした人材が力を発揮することで、県内企業が経営の革新を成し遂げ、時代にキャッチアップをし、さらには時代に先行させるようにすること、
それにより企業の財務体質に大きな余力がもたらされ、賃上げが常のものとなっていくこと、
このような好循環が回り始める「起点」となるべき「人財」の創出に、積極的に関与して参ります。
「生活基盤の強靭化」につきましては、山梨の地に暮らす人であれば誰でも、その人生においていかなる状態にあろうとも、取り残されずに安心の生活を保障される、医療・福祉の社会基盤を整えて参ります。
まず、「介護待機者ゼロ社会」の実現によりまして、長年、社会に御貢献いただいた高齢者の福祉増進とあわせて、介護の負担に直面する人びとの恐怖や「貧困への罠」を解消していきたいと思います。
次に、医療に関しましては、デジタルの力で距離の制約を克服し、医療を必要とする人が、場所を問わず、必要な医療サービスを受けられるデジタル医療の普及を図って参ります。
また障害者福祉に関しましては、県内いかなる地域においても等しく障害のある方が自分らしく安心して暮らし活躍できる社会環境づくりを一層進めて参ります。
当面、農福連携、産福連携などを通じ、工賃の抜本的向上に全庁を挙げた取り組みを進めます。
更に、科学的な知見に基づく自殺対策へのさらなるブラッシュアップで「自殺リスクの低い社会づくり」を進めていくとともに、依存症やひきこもりの状態に陥った方々の再挑戦を温かく応援する包摂的な社会への移行も図って参ります。
「子育て支援の充実」につきましては、政府において大きくクローズアップされていることを追い風に、本県が全国に先駆けて実践してきた様々な先進的な取り組みの成果も力に換え、結婚・妊娠・出産から子育てまでの「切れ目のない支援」をさらに充実させていきたいと思います。
「子育てしやすさ日本一やまなし」が、内外から強く認知され、若い世代が集まる姿を目指して、引き続き意欲的に施策を展開して参ります。
次に県政の第二の柱、「『開の国』づくり」におきましては、まず道路交通体系の整備など、目に見える物理的な「開化」とともに、多様性を受け入れ、歓迎する、意識の上での「開化」も進め、これらを土台に、県の外との交流を深化・拡大させる。
そして、県民の皆様、県外の事業者の皆様も含め、全てのステークホルダーの参画を得て、あらゆる可能性にチャレンジをしていく。
こうした考え方にのっとって進めて参ります。
まず、「交通体系を内外に開く取り組み」につきましては、リニア中央新幹線の開業を見据え、「ヒト」「モノ」「富」を呼び込み循環させる広域道路ネットワークや地域内ネットワークの整備を着実に進めて参ります。
また新たな人流を創り出す交通体系や、「空飛ぶクルマ」など移動・交通におけるテクノロジーの社会実装の可能性を、技術の加速度的な進歩にしっかりキャッチアップしながら追求をして参ります。
さらには、リニア開業効果の向上と全県波及のあらゆる可能性を追求するため、空港開設の可能性につきましても、専門的見地から検討を進めて参ります。
加えて、期成同盟会の活動などを通じまして、リニア事業全体が膠着から進捗に移れるよう、しっかりと貢献をするべく、積極的に汗をかいて参りたいと思います。
「卓越した上質さと機能性を備えた地域空間の創出」につきましては、本県が世界に誇る宝物というべき富士五湖地域におきまして、「国内最高の観光リゾート地」と「最先端の首都機能」を融合させた先進地域「富士五湖自然首都圏」を創出すべく、官民協働のもとに取り組んで参ります。
本件に関しましては、近日中に推進本部を立ち上げ、全庁的な推進体制を構築いたします。
併せて富士山登山鉄道構想につきましても、民意による支えを糧としながら実現に向けた具体的検討を加速いたします。
その際には、富士山という世界の宝をお預かりしている地元自治体の責務として、その保全・活用の在り方についての議論をしっかりと喚起しながら進めて参ります。
「多様性を尊重する共生社会化」につきましては、山梨が豊かな地域であり続けるための「基礎条件」を整えていくため、多様な個性や価値観を持った人材が集まり、互いを尊重し、磨き合うことを通じて集合知を発揮し、イノベーションを起こし続ける場所への進化に挑戦をして参ります。
まず、「男女共同参画先進県」の理想の実現に向けましては、ジェンダーバイアスの解消を進展させるべく県民の意識レベルの向上を強力に進めていきたいと思います。
また、性の多様性の尊重に関しましては、差別偏見の撲滅に向けた啓発とともに、「パートナーシップ宣誓制度」の導入検討の加速化など社会環境の整備も進めて参ります。
さらに、多文化共生の推進に関しましては、外国籍の住民が地域コミュニティの一員としての高い自己肯定感をもって、「第2のふるさと」山梨で安心して暮らし、活躍できる温かい社会への転換を後押しして参ります。
最重要課題の一つとして取り組みます「教育の充実」につきましては、これまで、少人数教育の推進を中核的な施策として取り組んで参りましたが、今後は、これを基軸としながら、さらにきめ細かく教育ニーズへの対応力を強化して参ります。
すなわち、生活困窮世帯の子弟の大学進学率向上を目指す施策や、不登校などの困難を抱える子どもたちのリトライの支援。
さらには、小学校4年生までの導入が決まっている25人学級につきまして、学びの最適化を図る観点から、それより上の学年への導入に関しまして、科学的・専門的な検討を進めて参ります。
併せまして、与える教育ではなく、生徒本位の教育、スチューデントベースドエデュケーションへの大転換を図るべく、取り組みを進めて参りますとともに、教職員の事務負担の抜本的軽減につきましても、大胆な取り組みにチャレンジして参りたいと思います。
「地域経済の安定成長と高付加価値化」につきましては、まず、少なからず成果を上げて参りました「メディカル・デバイス・コリドー構想」は、さらなる攻めの姿勢で、対象分野の拡大や海外展開などによりネクストフェーズへの深化を図って参ります。
また、地場産業に関しましては、「心地よく機能的な山梨ライフ」の価値を体現するものであり、コーポレートブランド「やまなし」に直結する製品群としてブランド力を高め、外への発信を強めて参ります。
農業につきましては、生産者所得向上の大義の旗印のもとに、「県産果実輸出額の飛躍的拡大」などの勢いをさらに加速させるべく、国内外の消費者向けに、農畜水産物の品目ごとの最適な戦略を立てて実行し、若者が将来に希望を持って続々参入する有望産業としての立ち位置を強めて参ります。
林業につきましては、県内の林業を牽引する人材の育成や、県産木材から富を生み出す体制の強化とビジネスモデルの高度化をしっかりと進め、持続可能で成長性豊かな産業への進化を促し、支援して参ります。
観光につきましては、まずはウィズコロナへの転換で本格回復する需要をしっかりと取り込みつつも、一時的な好況に惑わされずにその先を見据えた高付加価値化路線を従来以上に一貫して追求して参ります。
「文化・芸術やスポーツから新たな価値を掘り起こし、地域活性化や経済成長に生かす取り組み」につきましては、まず、文化芸術の振興に関し、すでに従来型の文化行政の枠組みである「芸術・文化の鑑賞や実践活動の支援」あるいは「文化財の保護」といった殻を打ち破り、新たな価値の創造、文化立県の確立に向けて、大きく舵を切っております。
今後も文化芸術の新たな価値を拓き、「開の国」山梨を代表する重要不可欠な要素として成長させるべく、県内外のクリエイターの活動支援と価値の創出・発信、メタバースプロジェクトの推進など、新たな価値の創造拠点としての県立美術館ビジョンの推進、「ワイン県やまなし」のさらなる訴求や、美食文化の展開による経済効果の獲得といった新たな取り組みにつきまして、挑戦を進化させて参ります。
また、スポーツの活性化につきましても、「スポーツの成長産業化」という新機軸を打ち出し、取り組みを進めてきたところでありますが、実証実験の成果などの蓄積を土台として、取り組みを進めてきているところであります。
実証実験の成果などの蓄積を土台として、他産業との連携によるビジネスモデルの多様化や収益性の追求を進め、スポーツで稼げる経済構造の確立に向けて、引き続き力を入れて全力で取り組んで参ります。
以上、取組方針の一端を述べて参りましたが、全てに共通するのは、あらゆる施策は互いに連鎖し、高めあいながら県民の「豊かさの実感」という1点に向かって収束していくべきものである、ということであります。
現在各部局におきましては、6月議会に向けた政策予算の編成作業と、新たな総合計画の策定に向けた検討作業が鋭意進められているものと承知をしております。
ぜひとも、ただいま申し上げましたことを念頭に、「成果を形にすること」にこだわり、究極目標たる「豊かさ」へのロードマップを描きながら、検討を進めていただきたくお願いをいたします。
最後に、県政運営のあり方について申し述べます。
私の県政運営に対しましては、先の知事選挙を契機に様々な御意見、御助言をいただいて参りましたが、中には、職員の皆様のお仕事にも影響を与えかねない、次のような批判的見解が含まれておりました。
まず、一にいわく、「トップダウンによる独断的、強権的な運営である」とか、二にいわく、「歴代の山梨県政を尊重せず、軽んじ否定するかのごとき運営である」との御意見でございます。
一番目につきましては、政策の意思決定の在り方や、実際の機能の仕方に対する理解を欠いているばかりか、あたかも県庁職員の皆さんが全面的に思考停止に陥っているかのような、また侮辱的な主張とも受けとめられ、私としては見過ごせないと考えております。
また併せましては、専決処分に対する決定的な理解の欠如、こういう点も指摘をしなければならないと考えています。
また二番目につきましても、およそ妥当性を欠いた御主張であると思います。
すなわち、社会情勢や時代環境が時々刻々と転変し、行政課題もこれに応じて形を変えていく以上、時の要請に応じて検証の俎上に乗せられ、時に厳しく批判され、見直されるべきは当然であります。
もちろん、私たちの県政運営に関しましても、このことは当然当てはまることを覚悟しなければなりません。
であるがゆえに、後世の批判にしっかりと耐えられるよう、常にベストを尽くすことが求められているのではないでしょうか。
この種の不毛な議論にピリオドを打つべく、ここに私は、山梨県庁という行政機構の長として、改めて県政運営の基本的な考え方を、皆様と確認をしたいと思います。
一に、まず一人ひとりが「レガシー」を創るということであります。
150年余に及びます山梨県政の歴史と、幾多の先人たちの御貢献の積み重ねがあってこそ、今の県政がある。先達への感謝と敬意を忘れてはならないことは、言うまでもない当然のことであります。
その上で、私たちは、現在と将来の山梨県民に対する責任を果たすべく、時代の要請に精一杯対応し、次の世代にとっての「足がかり」となるような県政を残していかなければなりません。
そのために、過去と未来の単なる「中継点」になるのではなく、「今」を生きる職員の皆さんなりの「付加価値」を仕事に加えていただくこと、
とりわけ、新たな課題が発生した場合には、見直しの「天与の機会」が訪れたと考え、実践に移していくこと。
そして、担当する行政分野におきまして、これまでの県政の成果として蓄積されてきた人的・物的資源、あるいは政策的知見などの情報資産に、現代的な視点で光を当て、「何か新たな展開を図ることができないだろうか」、こういうことを思考していくこと。
このような積極的な姿勢を持ち、取り組んでいただきたくお願いを申し上げます。
第二に、トップダウンとボトムアップの好循環を創ることであります。
知事という仕事には、様々な情報が集約されます。
こうした情報に基づきまして、それが県民の豊かさにつながると判断されれば、私としては日々、躊躇なく職員の皆様に検討や実行をお願いしているところであります。
しかしながら、私と職員の皆さんの間に、「情報の非対称性」があるからと言って、それが政策に関する闊達な議論の妨げとなったり、或いは職員の皆さんからの政策提案を萎縮させたりするようなことがあってはなりません。
「トップダウン」と「ボトムアップ」の健全な循環。これこそが山梨県政を浮揚させうる行政運営の在り方であります。
職員の皆さんならではの、豊富な現場情報を武器に、むしろ私に積極的な政策論争を挑んでいただきたいと強く熱望いたします。
このような姿こそ、ありうる姿であると私は信ずる次第であります。
そして、こうしたことは、すでに政策や予算を議論する様々な場面において実践をされているところでありますが、今後とも、「知事」から「主事・技師」の皆さんに至るまで、「情報流通」の密度と量、スピードを一層高め、上質な政策にまとめ上げて、世に問うていきたいと考えます。
何とぞ御留意を賜りますようお願いを申し上げます。
そして最後の最後に、豊かさ共創の時代へと、我々行政は県民の皆様とどのように向き合うべきか、考えを申し上げます。
県民一人ひとりの手に豊かさの実感を届ける。
そのためにこそ、これまで申し述べました諸策が基礎となって参ります。
そこにおきまして忘れてはならないことがあります。
「我々行政はなぜ県民とともに、県民のために、豊かさを追求し続けるのか。」あるいは、「我々はどのような豊かさを追求し続けるのか。」
その視点を忘れては、豊かさへの道はありえないものと考えます。
人それぞれの幸福こそが、豊かさの尺度であることは、言をまちません。
しかしながら、個々の幸福を育むためにこそ、社会全体、行政そのものが豊かさの方向性をしっかりと見据え、考え続けなければなりません。
もちろんこれは山梨のみならず、日本全体が、あるいは成熟した社会そのものが正面から見据えるべきテーマにほかなりません。
山梨県が追求する豊かさとは、「人それぞれで異なるべき幸福と豊かさをそれぞれの方にどう実感してもらえるのか、どう届けていけるのか。」まさにそのことにほかならないと考えて参りました。
これまでの日本社会がある共通の豊かさ像のもとで前進できた時代を経て、これからの成熟した社会の時代におきましては、「多様な価値をどう承認し合い、そして理解し合えるか」が求められているところであります。
「個性ある豊かさこそが幸福に直結する」とそういえるのかもしれません。
さらには、それぞれの個性が大きな広がりと明るい展望を持って満たされるときにこそ、「豊かさは初めて実感しうるもの、身近に感じるもの」となるのではないでしょうか。
これまでも、そしてこれから先も、山梨県が挑戦するのは、これまでの日本社会が経験したことがない新しい豊かさの創造であるべきであります。
そのプロセスにおきまして、行政と県民との向き合い方として、個性と豊かさという価値を、行政施策として、いかにして吸収し、実現させていけるのか。
豊かさ共創社会とは、県民それぞれに豊かさへの道を預け、ゆだねるのではなく、ともに築くものとする姿勢があってこそ、初めてその礎が確かなものとなるのではないでしょうか。
そこにおきましては、行政側の価値と方法を押し付けるのではなく、生活者の個性に寄り添った姿勢こそが最優先されるべきであります。
行政におけるそうした姿勢が伴ってこそ、県民自身に豊かさの充足感と、そして納得という意味での実感を育んでもらえるのではないでしょうか。
実践すべきは、個性豊かな価値を満たすことを考えた行政運営への挑戦であります。
その先にこそ、豊かさ共創社会が形あるものとなり、実りあるものになりうる、そのように信じてやみません。
職員お一人お一人が、新しい社会の創造者、クリエイターであるという自負と気概を持ち、もし迷うことがあれば、県民の姿を思い、その心に寄り添い、自らが果たすべき役割を考えていただきたいと思います。
たとえ組織にありましても、独立した創造者であるという気概を持って職務に励んでいただきたい。このように考える次第であります。
本日から、県民お一人お一人のもとに、今申し上げた豊かさをお届けするための新たな挑戦がはじまって参ります。
未来に至るまで、山梨を潤す豊かさの源を、今作り上げる覚悟をぜひとも私と共有し、ともに歩んでいただきますようお願いを申し上げまして、今年一年のはじまりにあたっての挨拶とさせていただきます。
一年間どうぞよろしくお願いいたします。
(以上)