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ページID:107700更新日:2023年1月29日

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燃料電池とは?歴史・注目の理由・用途や山梨県での取り組みを解説

燃料電池とは、水素と酸素の化学反応によって電力を生み出す装置です。開発当初は、宇宙船のエネルギーとしての使用を目的とされていましたが、環境問題への関心が高まる近年、クリーンエネルギーとして一般利用にも目を向けられるようになりました。

この記事では燃料電池の基本的な知識を踏まえ、注目される理由、用途、メリット・デメリットなどを詳しく解説します。山梨県における普及に向けた取り組みについても紹介するため、ぜひ参考にしてください。

 

燃料電池とは?

燃料電池とは、水素と酸素を反応させて発電する装置です。水に電気を流して水素イオンと酸素イオンに分解する「電気分解」と逆の化学反応によって、電気エネルギーと熱エネルギーを発生させます。水素は、天然ガスやメタノールを改質して作られるのが一般的です。酸素は大気中から取り入れます。

燃料電池は、プラスの電極板とマイナスの電極板で電解質膜をはさんだ構造が特徴的です。プラスの電極板とマイナスの電極板には、多くの細い溝があり、電解質膜によって隔てられた溝の両側に外気から供給された酸素と水素がそれぞれ通ると、化学反応が起こります。化学反応が起こると、電気と同時に熱が発生します。

 

燃料電池の歴史

燃料電池は、1960年代からアメリカのNASAで、宇宙船のエネルギー源として研究が進められてきました。燃料電池が発電をする際には、二酸化炭素を発生させず、水を生成します。そのため、燃料電池は、宇宙船内の汚染を防ぐことができ、生成された水は飲水用として利用できるという理由で、宇宙船のエネルギー源として選ばれました。

燃料電池は一般利用には普及をしていなかったものの、世界的に環境問題への意識が高まった頃に、クリーンなエネルギーとして注目を集めます。1990年代から研究開発が活発に行われるようになりました。

日本では、1978年に文科省が山梨大学に「燃料電池実験施設」を設置します。2008年には新エネルギー・産業技術総合開発機構の事業として採択され、日本最大の燃料電池研究の拠点である「燃料電池ナノ材料研究センター(現:水素・燃料電池ナノ材料研究センター)」が設立されました。現在では、燃料電池における最先端の研究所として、環境問題、社会問題を解決できる「水素エネルギー社会」を目指して研究が進められています。

出典:国立大学法人 山梨大学 水素・燃料電池ナノ材料研究センター「センター概要」

 

燃料電池が注目されている理由

2020年に政府は、地球温暖化対策として、2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。カーボンニュートラルとは、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量から、森林などによる吸収量を差し引いた数値がゼロになることです。

出典:脱炭素ポータル「カーボンニュートラルとは」

カーボンニュートラルを達成するためには、従来の化石燃料の使用を控え、温室効果ガスを発生させない新しいエネルギーを開発する必要があります。環境への影響が少ないクリーンエネルギーの中でも、注目されているのが水素です。水素と酸素の電気化学反応から電気を取り出す装置である燃料電池は、発電時に水と熱を排出しますが、温室効果ガスである二酸化炭素は排出されません。そのため、燃料電池は、カーボンニュートラルの達成に貢献できる新しいシステムとして期待されています。

 

燃料電池の用途

燃料電池は、定置のものであれば発電施設やオフィスビル、家庭などの電気供給システムとして使用されます。また移動体向けは、自動車や船舶の動力源として使用され、幅広い用途に活用できるのが特徴です。

ここでは、我々の生活に身近なものとして、燃料電池自動車とエネファームについて紹介します。

 

燃料電池自動車

燃料電池自動車

燃料電池を搭載し、発電した電気でモーターを回して走る車を燃料電池自動車(FCV)と呼びます。電気を動力とするため、電気自動車の一種と言えるでしょう。通常の電気自動車は、搭載されているバッテリーに外部から充電して、その電力で走行しますが、燃料電池自動車は発電しながら走行するという特徴があります。

燃料電池自動車の動力源となる燃料電池は、高圧水素を「水素ステーション」で補給し、外の空気から酸素を取り込み、化学反応を起こして発電するという仕組みです。化学反応の際に生成された水は、車外へと排出されます。ガソリン車とは違い、排気ガスを出さず、水と熱のみ排出するため、環境に優しい自動車として利用されています。

 

エネファーム

エネファームとは、都市ガスやLPガスから取り出した水素と空気中の酸素を用いて電気を作り出す家庭用燃料電池です。化学反応の際には、水と熱のみ放出し、二酸化炭素を出さない環境に優しいシステムです。家庭用として作られており、燃料電池からの排熱は、お風呂などの給湯に使用できます。都市ガスやLPガスを使用して発電するため、節電効果があるのもメリットの1つです。

また、エネファームは、災害対策としても期待できます。エネファームの発電中は、災害などで停電が発生した場合でも、継続して発電を続け、最大使用電力まで電気とお湯を使用し続けることが可能な機種もあります。

 

燃料電池のメリット・デメリット

燃料電池には、さまざまなメリットがあります。燃料電池の主なメリットとしては、以下のことが挙げられます。

  • エネルギー効率が高い
    水素と酸素が化学反応を起こす際に、電気とともに熱も発生します。発生した熱を給湯などに利用できることから、エネルギー利用の効率が高いと言えます。
  • 振動や騒音がない
    燃料電池は、化学反応で発電するため、エンジンやタービンなどは使用されておらず、発電時に振動や騒音が起きることはほとんどありません。
  • 発電の際に排出されるのが水のみである
    発電の際には、水と熱のみ排出され、環境に優しいクリーンなエネルギーとして実用化されています。

次に、燃料電池のデメリットとしては、コストが高いことが挙げられます。燃料電池自体の値段が高く、一般家庭用の燃料電池は、導入するのにある程度のコストがかかります。また、燃料電池自動車も高額で販売されているため、一般家庭に普及するにはハードルが高いと感じるでしょう。国や自治体では、燃料電池を導入するための補助制度が整備されており、コスト面での課題解決に向けて動き出しています。

 

山梨県における燃料電池に関する取り組み

山梨県における燃料電池に関する取り組み

山梨県では、水素・燃料電池関連産業の集積・振興を目指して、関連産業の誘致や育成、啓発活動を行っています。

また、県内で水素・燃料電池産業に従事する人材を育成する「水素・燃料電池産業技術人材養成講座」を山梨大学と連携して開設しています。研究機関が集まっている山梨県では、水素や燃料電池についての専門人材も多いのが特徴です。水素・燃料電池分野の第一線で活躍している技術者から水素・燃料電池関連技術を学べるため、水素・燃料電池産業への参入を考えている企業には、大きなメリットとなります。

さらに、燃料電池自動車と水素ステーションの普及を目的に、2014年7月に山梨県は「山梨県燃料電池自動車普及促進計画」を取り決めました。燃料電池自動車を公用車として導入したり、関連企業に助成を行ったりと、環境に優しい燃料電池自動車の普及啓発を進めています。

出典:山梨県ホームページ「山梨県燃料電池自動車普及促進計画を公表しました」

 

まとめ

燃料電池は水素と酸素の化学反応から電気エネルギーを得る装置であり、水と熱のみ排出することから、環境負荷が少ない動力源として知られています。そのため、カーボンニュートラルを目指す世界的な取り組みの中でも注目されています。燃料電池の用途の代表例は、燃料電池自動車や、家庭用のエネファームです。高いエネルギー効率や騒音の少なさなどメリットも大きい一方で、コスト高の解消などが課題となっている状況です。

山梨県では、水素・燃料電池関連産業の集積・振興を目指し、研究開発施設の集積や人材育成などに力を入れています。また、環境に優しい燃料電池自動車の普及も進めてまいります。

 

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