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ページID:107585更新日:2023年1月22日

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少人数教育とは?少人数教育の特徴と山梨県の取り組みを解説

国は、令和3年4月の法改正により、令和3年度から5年かけて、学級編制の標準を小学校2年生から学年進行で40人から35人に計画的に引き下げることとしました。

山梨県では法律改正前から積極的に少人数教育に取り組み、現在では県内の公立小学校1・2年生に25人学級を導入しています。

当記事では、少人数教育の概要や特徴、山梨県の少人数教育の取り組みを解説します。少人数教育に興味のある方は、ぜひご一読ください。

 

少人数教育とは?

少人数教育とは?

少人数教育は、学習や生活の場面において一人一人に寄り添ったきめ細かな指導を可能とするとともに、教員の負担を軽減し、学校における働き方改革にも資するものであると考えられます。

(参考):文部科学省「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律の一部を改正する法律等の施行について」

冒頭にも述べましたが、国は法改正により、令和3年4月以降、公立小学校の学級編制の標準を段階的に引き下げることとしています。
学級編制の改正措置の趣旨は、次の通りです。

【改正措置の趣旨】

  • 誰一人取り残すことなくすべての子どもたちの可能性を引き出す教育への転換
  • 個別最適な学びと協働的な学びの実現
  • 一人ひとりの教育的ニーズに応じたきめ細やかな指導体制の構築
  • 安全・安心な教育環境の整備など

令和4年度現在、国による学級編制基準は小学校1年生から小学校3年生までが35人学級で、小学校4年生から小学校6年生は40人学級です。なお、小学校の全学年における35人の学級編制は、令和7年度に完成する見込みです。

(参考):文部科学省「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律の一部を改正する法律等の施行について(通知)」

(参考):文部科学省「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律の一部を改正する法律の概要」

 

少人数教育の特徴

学級編制の標準を40人から35人に引き下げる背景や理由は、次のことが考えられます。

【少人数教育の背景や目的】

  • Society5.0時代の到来、および多様化する子どもたちへの適切な対応
  • GIGAスクール構想(1人につき1台の端末)の加速
  • 子ども自身の特性や習熟度に応じた、創意工夫に満ちた学習指導の実施
  • 子ども一人一人に寄り添ったきめ細かな指導
  • いじめや不登校の児童生徒への対応
  • 新型コロナウイルスなどの感染症対策として、密を避けた空間づくり
  • 教員の負担軽減

参考):文部科学省「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数等に関する法律の一部を改正する法律等の施行について(通知)」

次に、少人数教育について、どのような特徴があるかを解説します。
山梨県では少人数教育推進検討委員会報告書(令和4年12月)において、中学年における少人数教育を考えるに当たり、25人学級の場合、30人学級の場合の、それぞれの考えられる特徴について次のように示しています。(なお、ここに示す内容は、どちらの学級規模が優れているのかという優位性を示すものではなく、また、双方の規模に共通して言える特徴はできる限り取り除いています。)

 

学級規模の特徴

25人学級での特徴

中学年において1クラス25人の場合、次のような特徴が考えられます。

25人学級での特徴
  • 1、2年生と同様の規模であり、教員と児童が接する機会が多く児童の安心感がある。
  • 自己肯定感や学力の向上、不登校やいじめ問題の解消につながる。
  • 教員と児童、児童同士の関係が深まり安定した雰囲気の中で学ぶことが可能である。
  • 学習面、発達面でステップアップしていく3・4年生の時期に、教員が児童に丁寧に指導できる環境をつくることができる。
  • 教員と児童の距離感が近くなり、児童に対する教員の目が行き届く。
  • 教材・教具など個別の準備、実験などの具体的活動がしやすくなる。
  • 個々の児童の課題や問題意識に沿った対応がしやすくなる。
  • 授業で全員が発言する場を設けやすくなる。

30人学級での特徴

中学年において1クラス30人の場合、次のような特徴が考えられます。

30人学級での特徴
  • 児童の自立心や責任感などが高まる3年生以降の発達段階では、集団で学ぶ環境が重要となる。
  • 多くの人との関わりから、幅広い人間関係や社会性が育ちやすく、また、自身の長所を多く見つけることができる。
  • ある程度の人間関係の規模があると、協働的な学びが行いやすく深まりやすい。
  • 多様な考え方に触れるなど、集団での生活を通して自らの考えを深めやすい。
  • 特定の児童の言動が集団に影響しづらい。
  • 固定的な人間関係が崩れても、学級内での他の居場所を見つけやすい。
  • 個々の考えや意見を出し合い、互いに学び合うという経験により、多様な見方や考え方に触れることができる。
  • グループ編制のバリエーションが広がり、学級での活動に多様性が生まれる。

山梨県の少人数教育の取り組み

山梨県の少人数教育の取り組み

山梨県では、国の方針が決定される以前から少人数教育に取り組んできました。現在では県独自の学級編制基準を定め、きめ細かな指導の充実を推進しています。令和3年4月には公立小学校1年生に25人学級を全国で初めて実施、令和4年度からは2年生にも導入するとともに、令和5年度からは小学校3年生にも25人学級を導入することとしています。

ここでは、山梨県で現在推進している少人数教育の取り組みを紹介します。

 

少人数教育推進検討委員会設置の経緯

山梨県では、少人数教育における課題を関係機関と共有し、より効果的に推進するため令和元年7月に少人数教育推進検討委員会(以下検討委員会)を設置し議論を重ねてきています。

下記は、山梨県が検討委員会を設置した目的です。

【検討委員会の設置目的】

児童生徒一人一人に向き合ったきめ細かで質の高い教育の実現を目指し、山梨県の公立小中学校における更なる少人数教育の推進について検討するため、少人数教育推進検討委員会(以下「委員会」という。)を設置する。

引用:山梨県 少人数教育推進検討委員会 「少人数教育推進検討委員会 報告書」
引用日 2022年12月2日

令和元年度、令和2年度にはそれぞれ5回にわたって検討委員会を設置し、25人学級について各学年への導入時期などを協議しました。また、令和4年度においても検討委員会を設置し、小学校3年生以降の少人数教育の推進とアクティブクラスの取り扱いについて議論してきました。今後も、学校現場や教育関係者などさまざまな立場の考え方を幅広く取り入れながら、子どもたちのよりよい教育環境を整えていく予定です。

(参考):少人数教育推進検討委員会 「少人数教育推進検討委員会 報告書」(令和3年2月)

 

25人学級制導入について

各学年における少人数教育推進の主な考え方は、以下の通りとなります。

小学校1・2年生
  • 学習面・生活面におけるつまずきを早期に見いだすことが期待できる。
  • 小学校1年生から2年生に進級する際にクラス替えを行っておらず、1年生に引き続き2年生に導入することがが望ましい。
小学校3・4年生
  • 児童同士の切磋琢磨や多様性に触れる機会を確保するため、一定規模の学級環境確保が重要となる。
  • 学習内容の変化に対応できる環境の整備が必要となる。
  • 2年生と3年生で児童数の差を小さくするべく検討が必要となる。
小学校5・6年生
  • 中学校と円滑に接続できる環境整備・学級編制が望ましい。
  • 令和4年度からは教科担任制による、きめ細かで質の高い教育が見込まれる。
中学生
  • 多人数の学級編制により、社会性や教育効果の高まりが期待される。
  • 中学生の少人数教育は国の動向を注視しながら検討することが求められる。

(参考):少人数教育推進検討委員会「少人数教育推進検討委員会 報告書」(令和3年2月)

 

少人数教育の検証の方針について

25人学級編制の導入は全国で例を見ない施策であり、これまで山梨県が実施してきた少人数教育と比べてもさまざまな面での効果が期待される飛躍的な施策です。ただし、制度の導入に当たっては効果を検証しつつ、適切な運用方法を選択しなければなりません。

少人数教育の効果検証は、主に児童への学校生活等意識調査や学力調査、学校関係者への質問紙調査によって行われます。25人学級導入前後の状況および経年による比較、非認知能力の側面と学力面の成長の相関関係などから分析し、専門家の知見も交えながら効果を検証しています。

少人数教育の導入にはさまざまな意見がありますが、山梨県知事としては25人学級編制を拡大する方針です。増員が必要となる教員を確保するため、県内の公立小学校での勤務者に対する奨学金の返還補助事業や高校生向けのセミナー開催といった施策に取り組んでいます。

(参考):少人数教育推進検討委員会「少人数教育推進検討委員会 報告書」(令和3年2月)

出典:やまなし in depth「全国初の「25人学級」が誕生して1年。学校現場はいま」

 

【令和4年】25人学級導入の現状

令和3年度に25人学級を導入した小学校を対象として少人数教育の効果を検証した結果、下記のように肯定的な回答が多く得られました。

【検証結果の例】

  • 児童の意識と教員の取り組みから
    • 25人学級では、教員が話を聞いたり、声かけを多くしたりするなどのコミュニケーションの充実を図ることができ、児童が教員や友達に自身のことを伝えやすい環境がつくられている。
  • 学校運営の視点から
    • 25人学級導入に伴う教員増により、児童への支援の体制が充実している。
    • ソーシャルディスタンスの確保など感染症対策がしやすいことや、ロッカーなどのゆとりある使用が可能である。
  • 学力の側面から
    • 個々の児童の学習のつまずきやノート記述に対する状況把握、指導・助言に時間をかけることが可能となっている。それにより、例えば、問題文の意図を正しく読み取り、的確に表現する力を育成する指導環境が作られやすくなっていると考えられる。
  • 児童の実態と学力の側面から
    • 少人数学級により、児童が学級内で発言する機会や児童一人に対する教員の声かけの回数が増加し、学力の素地となる関心・意欲の向上につながると考えられる。
  • 教員の負担軽減の側面から
    • 25人学級により、様々な業務の負担が軽減されている。とりわけ、学級担任の実務的な作業の負担が減った分、児童の支援・指導の時間が確保できるようになっている。

25人学級の導入による効果は多岐にわたっています。今後も少人数教育の効果を検証していく予定です。

(参考):少人数教育推進検討委員会「少人数教育推進検討委員会 報告書」(令和4年12月)

 

まとめ

1クラスの児童生徒数が少なくなることで、子ども一人ひとりに寄り添った指導が実現でき、教員の負担軽減にもつながります。

公立義務教育諸学校では令和3年4月1日以降、学級編制の標準が学年進行で40人から35人に順次引き下げられています。人数を減らすことで教員の目が行き届くなどといったメリットがあります。

山梨県では令和3年4月より公立小学校1年生の人数を25人学級にしています。令和4年4月からは、小学校2年生にも25人学級を拡大しています。令和5年度には、小学校3年生にも25人学級を導入し、少人数教育を推進する方針を示しており、教員確保のために高校生に向けたセミナーや県内公立小学校の勤務者に奨学金の返還補助事業にも取り組んでいます。

 

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