ページID:107276更新日:2023年1月5日
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特別支援教育とは、子どもの教育的ニーズを把握し適切な指導をする教育支援のことです。さまざまな人々が生き生きと活躍できる、社会の形成となる重要な意味を持っています。山梨県では平成19年度より特別支援教育を本格実施し、さまざまな校内支援体制を図っています。平成22年度より公立小・中・高等学校の校内委員会の設置と特別支援教育コーディネーターの指名は全ての学校で行われています。
当記事では、特別支援教育とはなにか、また山梨県の特別支援教育の実施状況や「やまなし特別支援教育推進プラン2020」の取り組みについて解説します。山梨県の特別支援教育について興味がある方は、ぜひご一読ください。
盲学校
わかば支援学校(小学部授業風景)
特別支援教育の学びの場は、特別支援学校、特別支援学級、通級による指導、通常の学級です。公立小・中・高等学校では、校内支援体制の整備を図り、校内委員会の設置と特別支援教育コーディネーターの指名は全ての学校で行われています。
文部科学省における特別支援教育の定義は、下記の通りです。
特別支援教育」とは、障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち、幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導及び必要な支援を行うものです。
引用:文部科学省「第2章 特別支援教育の理念と基本的な考え方」
引用日 2022年11月18日
特別支援教育では、子どもたち一人ひとりの現状や適性を把握し、学習面や生活面で直面する困難を軽減することで個々の自立と社会参加を促します。認定される障害の多様化に伴い、従来実施されてきた特殊教育の障害に加え、知的発達の遅れがない障害も対象となる制度です。すべての学校に通う幼児児童生徒たちへの支援を充実させ、子どもの持つ個性と可能性を伸ばし、共生社会の実現を目指します。
出典:文部科学省「第2章 特別支援教育の理念と基本的な考え方」
山梨県では、現在さまざまな特別支援教育を実施しています。平成19年度に特別支援教育が本格的に実施されてからは、校内支援体制の整備などを精力的に図ってきました。令和4年5月1日時点における、山梨県内の特別支援学級の設置状況および特別支援学級在籍者における個別の教育支援計画の作成率は、下記の通りです。
区分 | 小学校 | 中学校 | 合計 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
学校数 | 学級数 | 児童数 | 学校数 | 学級数 | 児童数 | 学校数 | 学級数 | 児童数 | |
知的障害 | 142 | 162 | 563 | 68(1) | 72 | 234 | 210(1) | 234 | 797 |
肢体不自由 | 24 | 24 | 26 | 11 | 11 | 11 | 35 | 35 | 37 |
病弱・身体虚弱 | 30(3) | 30 | 35 | 11(2) | 11 | 12 | 41(5) | 41 | 47 |
弱視 | 7 | 7 | 7 | 1 | 1 | 1 | 8 | 8 | 8 |
難聴 | 13 | 13 | 14 | 7 | 7 | 8 | 20 | 20 | 22 |
自閉症・情緒障害 | 144 | 206 | 888 | 72(1) | 96 | 395 | 216(1) | 302 | 1283 |
合計 | 155(3) | 442 | 1533 | 76(4) | 198 | 661 | 235(7) | 640 | 2194 |
※括弧内は分校数(内数)を表しています。
引用:山梨県「Ⅲ 特別支援学級及び通級による指導」
引用日 2022年11月18日
小学校 | 中学校 | |
---|---|---|
特別支援学級 | 99.3% | 99.4% |
通級指導教室利用者 | 95.9% | 90.0% |
個別の教育支援計画については、平成17年度より学校卒業後の円滑な移行を目指し、適宜改定を行ってきました。平成30年度からは、家庭と教育と福祉が一層連携し、組織的、計画的な取組を進めています。
令和4年度より特別支援教育をはじめ、いじめ、不登校の生徒や、ヤングケアラーを支える「特別支援教育・児童生徒支援課」を設置し、児童生徒を取り巻く諸課題に対応しています。
ここからは、山梨県の特別支援教育の実施状況を特別支援学校・特別支援学級・通級による指導に分けて紹介します。
甲府支援学校(小学部授業風景)
山梨県では、現在下記14校の県立特別支援学校と山梨大学教育学部附属特別支援学校があります。なお、平成19年度の学校教育法施行に伴い、各学校は「○○養護学校」から「○○支援学校」に名称変更しました。
学校の種類 | 学校数 |
---|---|
盲学校 | 1 |
ろう学校 | 1 |
肢体不自由特別支援学校 | 2 |
知的障害特別支援学校 | 3 |
知肢併置特別支援学校 | 3(うち分校1) |
病弱特別支援学校 | 3(うち分校1) |
山梨大学教育学部附属特別支援学校(知的障害) | 1 |
重度の障害により通学が困難と判断された児童生徒に対しては、教員が家庭や病院に赴き指導を行う訪問教育も実施中です。
各特別支援学校では特別支援教育コーディネーターを指名しており、地域における特別支援教育に関する相談・支援のセンター校としての機能も果たしています。たとえば、盲学校は視覚障害、ろう学校は聴覚障害に関する教育相談・支援センターとして、乳幼児早期教育相談などへの対応が可能です。
また、配置された看護師や研修を受けた教員による医療的ケアを実施している学校もあります。
令和4年5月1日時点で、山梨県内に設置されている特別支援学級は下記の通りです。
学級の種類 | 小学校学級数 | 中学校学級数 |
---|---|---|
知的障害特別支援学級 | 162 | 72 |
肢体不自由特別支援学級 | 24 | 11 |
病弱・身体虚弱特別支援学級 | 30 | 11 |
弱視特別支援学級 | 7 | 1 |
難聴特別支援学級 | 13 | 7 |
自閉症・情緒障害特別支援学級 | 206 | 96 |
前年度に比べ総学級数は52学級増加しました。一部対象となる児童生徒数が少ない学級では、児童生徒の障害に応じて教育課程の編成を考慮し、集団学習の場を設けるといった工夫も行っています。
通級による指導とは、普段の学習や学校生活は通常学級で送りつつ、障害に応じた特別な指導を、指定の教室に通い個別に受ける教育形態です。山梨県内には現在、下記の27教室が設置されています。
指導教室の種類 | 教室数 |
---|---|
言語障害通級指導教室(ことばの教室) | 1(小学校1教室) |
発達障害・情緒障害通級指導教室 | 7(小学校3教室・中学校4教室) |
言語障害・発達障害・情緒障害通級指導教室 | 18(小学校14教室・中学校4教室) |
聴覚障害 | 1(ろう学校1校) |
平成18年度からは、言語障害通級指導教室へ発達障害・情緒障害を指導する教員の配置を開始し、重複障害者へ同時対応が可能な教育環境づくりを推進中です。
令和4年5月1日時点で通級指導を受けている児童生徒の数は、下記の通りとなっています。
言語障害 | 449人 |
---|---|
自閉症 | 154人 |
情緒障害 | 133人 |
LD | 309人 |
ADHD | 140人 |
難聴 | 14人 |
合計 | 1,199人 |
引用:山梨県「Ⅲ 特別支援学級及び通級による指導」
引用日 2022年11月18日
山梨県教育委員会は特別支援教育の充実を図るため、令和2年3月に「やまなし特別支援教育推進プラン2020」を策定しました。このプランは「山梨県教育振興基本計画」における「特別支援教育の推進」をもとにしており、山梨県が今後進める特別支援教育の基本方針4つを示したものです。
ここでは、令和2年度~令和6年度までを対象予定とする、「やまなし特別支援推進プラン2020」の主な取り組みについて紹介します。
出典:山梨県「やまなし特別支援教育推進プラン2020【概要版】」
基本方針の1つとなる学びを育む教育支援体制の設備では、下記のような取り組みを進めています。
施策項目 | 主な取り組みの例 |
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特別支援学校の教育環境の整備 |
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病弱教育の充実 |
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医療的ケアの充実 |
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寄宿舎の活用 |
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出典:山梨県「やまなし特別支援教育推進プラン2020【概要版】」
連続性のある多様な学びの場の充実では、下記のような取り組みを進めています。
施策項目 | 主な取り組みの例 |
---|---|
多様な学びの場における合理的配慮の提供 |
|
各地域における特別支援教育の体制整備 |
|
就学前における支援の充実 |
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小・中学校における特別支援教育の充実 |
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高等学校における特別支援教育の充実 |
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特別支援学校における教育の充実 |
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特別支援学校のセンター的機能の充実 |
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「個別の教育支援計画」の作成と活用 |
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出典:山梨県「やまなし特別支援教育推進プラン2020【概要版】」
自立と社会参加に向けた教育の充実では、下記のような取り組みを進めています。
施策項目 | 主な取り組みの例 |
---|---|
キャリア教育の充実 |
|
交流及び共同学習の推進 |
|
ICT教育の充実 |
|
生涯学習の充実 |
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出典:山梨県「やまなし特別支援教育推進プラン2020【概要版】」
質の高い学びを支える教員の専門性の向上では、下記のような取り組みを進めています。
施策項目 | 主な取り組みの例 |
---|---|
特別支援学校教諭免許状保有率の向上 |
|
特別支援教育に関する教員研修の充実 |
|
特別支援学校と他校種との人事交流 |
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出典:山梨県「やまなし特別支援教育推進プラン2020【概要版】」
県教育委員会では、総合教育センター相談支援センターにおいて、特別支援教育、いじめや不登校、ヤングケアラーなど様々な問題に関して、児童生徒や保護者、教職員にかかわる教育相談を行い、支援を実施しています。
特別支援教育とは、対象となる子どもの教育におけるニーズを把握し、適切な指導や教育的支援を行う教育施策のことです。山梨県では平成19年度に特別支援教育が本格的に実施されてから、精力的に校内支援体制の整備などを図ってきました。近年ではICT活用能力向上に向けても取り組んでいます。特別支援教育をはじめ、ヤングケアラーや不登校、いじめの児童生徒に対応する特別支援教育・児童生徒支援課も設置しました。
「やまなし特別支援教育推進プラン2020」は、令和2年度から令和6年度までを対象とする山梨県の特別支援教育の基本方針を4つ示したものです。特別支援教育の充実化を図り、さまざまな取り組みを行っています。