ページID:107699更新日:2023年1月29日
ここから本文です。
燃料電池自動車(FCV)とは、酸素と水素の化学反応により発電した電気で駆動する自動車です。走行中に水のみを排出し、二酸化炭素などの温室効果ガスを排出しないことから、環境負荷を軽減する自動車として注目されています。しかし、使用される水素は非常に燃えやすい物質であることから、不安を感じる方もいるでしょう。
この記事では、燃料電池自動車(FCV)についての基本情報を電気自動車(EV)やハイブリッド自動車(HV)との違いを交えながら述べた上、使用する水素の安全性や、燃料電池自動車(FCV)のメリットまでを詳しく解説します。
燃料電池自動車(FCV)とは、Fuel Cell Vehicleの略称で、酸素と水素の化学反応を起こし、発電した電気でモーターを回転させ走る自動車です。燃料電池自動車(FCV)はエネルギーに水素を用い、ガソリン車がガソリンスタンドでガソリンを補給するのと同様に、水素ステーションで水素を補給します。
走行中に排出されるのは水のみで、二酸化炭素等を排出せず、各自動車メーカーが技術開発・生産を進めていることで社会から注目されています。
燃料電池自動車(FCV)の仕組みは、一般的な自動車とは異なる点がいくつかあります。ここでは、燃料電池自動車(FCV)の仕組みについて解説します。
燃料電池自動車(FCV)は空気中の酸素(O2)を取り込み、タンクに入っている水素(H2)と酸素を燃料電池内に送り込むと、そこで化学反応を起こします。化学反応を起こした際に発生する電気の力でモーターを回転させて走る仕組みです。また、発電の際に発生した水は、車外へと排出されます。
国内の水素ステーション数は2022年12月現在で164か所あり、設置個所は首都圏エリアと中京圏エリアが多いです。今後燃料電池自動車(FCV)の普及に伴い、水素ステーション設置の更なる拡大が期待されます。
出典:一般社団法人次世代自動車復興センター「水素ステーション整備状況」
燃料電池自動車(FCV)と電気自動車(EV)とハイブリッド自動車(HV)の違いについて考える際には、それぞれの特徴を把握する必要があります。以下は燃料電池自動車(FCV)と電気自動車(EV)・ハイブリッド自動車(HV)の特長をまとめた表です。
燃料電池自動車(FCV) | |
---|---|
燃料 | 水素 |
モーター | あり |
バッテリー | 補助バッテリー |
燃料タンク | 水素タンク |
エンジン | なし |
電気自動車(EV) | |
---|---|
燃料 | 電気 |
モーター | あり |
バッテリー | 大容量バッテリー |
燃料タンク | なし |
エンジン | なし |
ハイブリッド自動車(HV) | |
---|---|
燃料 | ガソリン |
モーター | あり |
バッテリー | 補助バッテリー |
燃料タンク | ガソリンタンク |
エンジン | あり |
燃料電池自動車(FCV)や電気自動車(EV)とハイブリッド自動車(HV)の大きな違いは、エンジンの有無です。燃料電池自動車(FCV)と電気自動車(EV)はモーターによって走行し、ハイブリッド自動車(HV)はエンジンとモーターにより走行します。
燃料電池自動車(FCV)と電気自動車(EV)の違いは、電力の供給方法です。電気自動車(EV)は外部から電気を充電しなければなりませんが、燃料電池自動車(FCV)は燃料電池を搭載しており、水素を用いて発電するため、水素の充填が必要です。
燃料電池自動車(FCV)は、水素を使用します。水素は気体の中で最も軽く、無色かつ無臭の可燃性の気体です。また、燃焼しやすく燃焼可能濃度範囲が広いという特徴があります。
燃料電池自動車(FCV)に使われる水素について、危険ではないかと感じる方も多いのではないでしょうか。ここでは、水素の安全性について解説します。
2013年6月に開催された自動車基準調和世界フォーラムでは、燃料電池自動車(FCV)の安全性に関する国際基準が採択されました。ここでは、燃料電池自動車(FCV)の安全対策として実施されている2つのポイントについて解説します。
参考:国土交通省「水素燃料電池自動車(HFCV)の安全性に関する国際基準の概要」
水素は可燃性があるため、取り扱いには十分気を付けなければなりません。安全性を確保するための水素の貯蔵・車載方法として、現在3つの方法が採用されています。ここでは、これらの方法について紹介します。
近年、燃料電池自動車(FCV)は注目されつつあります。燃料電池自動車(FCV)のさまざまなメリットを把握し、正しい理解を深めましょう。ここでは、燃料電池自動車(FCV)のメリットについて紹介します。燃料電池自動車(FCV)の購入を検討している方や、燃料電池自動車(FCV)についての知識を増やしたい方はぜひ参考にしてください。
燃料電池自動車(FCV)は、環境負荷の軽減が可能です。ガソリン車は走行する際に大気汚染の原因となる窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)だけでなく、地球温暖化の要因でもある二酸化炭素(CO2)を排出します。しかし、燃料電池自動車(FCV)は走行中水のみを排出するため、環境に配慮した自動車としても注目を集めています。
エネルギー効率の高さも燃料電池自動車(FCV)のメリットの1つです。ガソリン自動車のエネルギー効率と比較した場合、およそ2倍のエネルギー効率を実現しており、低速域でも高効率を維持できます。
充電が不要な点も燃料電池自動車(FCV)のメリットと言えるでしょう。長時間の充電が必要な電気自動車(EV)と比べて、燃料電池自動車(FCV)は水素の充填のみで、短時間で完了します。また、1回の水素充填で電気自動車(EV)よりも長い距離を走れるという特長があり、800km以上走行可能な車種もあります。
燃料電池自動車(FCV)は騒音・振動が少ないというメリットがあります。燃料電池自動車(FCV)はモーターで走行しているため、内燃機関自動車と比べて静かに走行することが可能です。また、発進する際にも振動が少なく、滑らかな加速が特長の1つです。燃料電池自動車(FCV)は、騒音などに対する周囲への配慮はもちろん、快適な走行を実現する新世代の自動車と言えます。
燃料電池自動車(FCV)には、災害時に電力を供給できるメリットがあります。燃料電池で発電した電力を外部に供給することが可能なため、非常用電源装置として活用可能です。燃料電池バスの場合、1日9kWh程度の電気消費量の場合、およそ6日分の電気を供給する能力があります。
参考:トヨタ自動車株式会社「燃料電池自動車(FCV)の災害時活用事例のご紹介」
現在、国内ではカーボンニュートラル実現を目的とした燃料電池自動車(FCV)の普及を促進する取り組みを推進中です。例えば公共交通機関である路線バスでは、燃料電池バスを採用し、燃料電池システムの安全性をアピールしています。
しかし、燃料電池自動車(FCV)は環境に優しい車ではあるものの、価格が比較的高額です。そのため経済産業省では燃料電池自動車(FCV)を購入した場合、上限250万円まで補助金の支給を発表しています。また、水素ステーションを整備する場合も建設費の一部に補助金を出すことを発表しました。
山梨県では、燃料電池自動車(FCV)を身近に感じてもらうためのさまざまな取り組みを実施中です。燃料電池自動車(FCV)の車両無料貸出など、燃料電池自動車(FCV)を身近に感じてもらう体験活動を行っています。また、山梨県にある水素・燃料電池研究機関を巡るメディアツアーを開催するなど、水素燃料の最新技術や情報を公開することで、水素の安全性を訴えています。
日本国内で最も水素・燃料電池開発が進んでいると言われる山梨県が、普及に積極的に取り組むことで、国内の燃料電池自動車(FCV)市場の発展を牽引するという狙いがあります。
燃料電池自動車(FCV)は、充填した水素と空気中の酸素を反応させ、その際に生じた電気エネルギーで走行します。走行中は水しか排出しません。燃料電池自動車(FCV)に使われる水素は、常温では燃えやすい気体です。そのため、水素漏れを防ぐタンクや水素漏れを検知するセンサー、水素漏れに対処するシステムなどを搭載し、安全対策がなされている状況です。
燃料電池自動車(FCV)には、環境負荷を軽減するだけでなく、非常用電源として活用できるなど多数のメリットがあります。水素・燃料電池の研究開発を積極的に支援する山梨県では、今後も国内の燃料電池自動車(FCV)産業の振興に貢献してまいります。